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内閣支持率は軒並み低下したが…政権は危機状態なのか

支持率低下要因として、なぜか「LGBT法案」に言及しないオールドメディア

主要メディアが実施する内閣支持率が出そろいました。これによると、当ウェブサイトで「定点観測」的にチェックしている6つの調査に関していえば、時事通信のものを除く5つの調査で、「不支持」が「支持」を上回りました。LGBT法案ゴリ押しのせいでしょうか?もっとも、「政党支持率」だけを信頼するならば、選挙情勢分析的な立場からは、自民党が直ちに政権を失うほどの大敗を喫するという可能性は、さほど高くなさそうです。

内閣支持率は軒並み「支持<不支持」

主要メディアによる2023年6月時点の内閣支持率調査が出そろったようです。

今月に入って実施された内閣支持率調査は、いずれも支持率が減少し、不支持率が上昇しているという共通点があるほか、時事通信によるものを除き、いずれも不支持率が支持率を上回っている、という特徴がみられます(図表1)。

図表1 内閣支持率(2023年6月)
メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
時事通信(6/9~12) 35.1%(▲3.1) 35.0%(+3.2)
朝日新聞(6/17~18) 42.0%(▲4.0) 46.0%(+4.0)
産経・FNN(6/17~18) 46.1%(▲4.3) 49.2%(+4.7)
共同通信(6/17~18) 40.8%(▲6.2) 41.6%(+5.7)
日経・テレ東(6/23~25) 39.0%(▲8.0) 51.0%(+7.0)
読売新聞(6/23~25) 41.0%(▲15.0) 44.0%(+11.0)

(【出所】各社報道を参考に著者作成)

これについては、G7広島サミットが開催された5月の支持率と比べると、違いは歴然としています。先月はどのメディアの調査でも軒並み支持率が不支持率を上回っていたからです(図表2)。

図表2 内閣支持率(2023年5月)
メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
時事通信(5/12~15) 38.2%(+4.7) 31.8%(▲4.5)
読売新聞(5/20~21) 56.0%(+9.0) 33.0%(▲4.0)
日経・テレ東(5/26~28) 47.0%(▲5.0) 44.0%(+4.0)
朝日新聞(5/27~28) 46.0%(+8.0) 42.0%(▲3.0)
産経・FNN(5/27~28) 50.4%(▲0.3) 44.5%(▲0.2)
共同通信(5/27~28) 47.0%(+0.4) 35.9%(+0.4)

(【出所】各社報道を参考に著者作成)

なぜか「LGBT法ゴリ押し」を指摘したメディアはないが…

どうして支持率はここまで乱高下するものなのでしょうか。

これについて、少なくともここに挙げた6つの調査に関していえば、いずれも「マイナンバーカードを巡る問題」だの、「サミットの反動」だの、「首相長男の忘年会」だのといった要因を「支持率下落/不支持率上昇」の理由として挙げていますが、「LGBT法ゴリ押し」を挙げているものは皆無です。

このあたり、先週の『韓国紙「支持率急落は韓日首脳会談効果が消えたから」』でも指摘したとおり、内閣支持率、不支持率の増減要因としてメディアが挙げるものは、ほとんどアテになりません。というよりも支持率調査自体が一種の「藪医者による健康診断」のようなものだという言い方もできます。

内閣支持率調査自体、ときの内閣にとっては「藪医者による定期健診の数値」程度には参考にすべきものだと思います。その理由は、そもそもこれらの調査自体、民間企業である各メディアが実施するものだからです。日本の新聞、テレビなどの大手メディアは事実を正確に伝える能力が著しく低いため、「藪医者」のようなものでしょう(※個人の主観です)。こうしたなか、最近では一部の調査で内閣支持率が急落しているそうですが、これに関し韓国メディアが「韓日首脳会談で高まった支持率が下落に転じた」と報じたようです。内閣支持率は「...
韓国紙「支持率急落は韓日首脳会談効果が消えたから」 - 新宿会計士の政治経済評論

個人的には、とくに直近の日経・テレ東調査や読売新聞調査では支持率、不支持率が10ポイント前後もの変動をしている点に注目し、「解散総選挙がなくなったから内閣支持率が下がる」という、いつもの「メディア調整」が入った疑いはあると見ています。

もっとも、今回の支持率低下局面に関していえば、ツイッターなどで垣間見える「保守層」の見方を眺めていると、内閣支持率の下落は本格的なものかもしれません。「LGBT法案で岸田(氏)に対する支持を止めた」、といったツイートもよくみかけるからです。

もちろん、LGBT法自体、表向きは自民党の議員立法であり、政府提出法案ではありません。また、自民党内の一部議員の「活躍」により、法案自体がある程度「骨抜き」にされた、といった事情を指摘する論者もいます。

しかし、少なくない保守論客がこの法律に強い怒りを示していることは事実であり、なかには某自称保守論客のように、「新党を作る」などと息巻いている人もいるようです。

かつて安倍晋三総理大臣が安保法案を推進していたころ、「内閣不支持」を叫ぶのは左派的な政治的傾向を示す人に多かったのですが、今回の局面は保守的な傾向を示す人ほど、「内閣不支持」と叫んでいるという点において、やはり異例です。

いずれにせよ、こうした状況を受けて、支持率急落に「政府・与党内で衝撃が走っている」とする記事も出ています。読売新聞の次の記事などが、その典型例でしょう。

内閣支持率の急落、政府・与党内に衝撃…岸田首相はマイナ対策への注力で信頼回復図る考え

―――2023/06/26 06:59付 Yahoo!ニュースより【読売新聞配信】

政党支持率で自民党は盤石

ただし、「数字」だけで見て、現在の自民党政権が危機的な状況にあるかといえば、そこは別問題です。そもそも一部メディアが示している「政党支持率」だと、自民党に対する支持は依然として高いからです。

たとえば読売新聞の次の記事によれば、政党支持率は自民党が34%で、前回の38%からは低下したにせよ依然としてトップであり、これに日本維新の会の6%(前回7%)、立憲民主党4%(前回5%)などが続いているそうです。

内閣支持率、大幅下落41%…読売世論調査

―――2023/06/25 22:00付 読売新聞オンラインより

また、「解散風」が吹いていたころの調査ではありますが、時事通信の次の記事でも、たしかに岸田内閣に対する支持率は低いのですが、それでも政党支持率では自民党が22.4%(前回24.4%)、維新が4.5%(前回5.9%)、立民が3.1%(前回4.2%)で、やはり自民がトップです。

内閣支持下落35.1% 公邸忘年会、岸田首相「問題」7割弱―時事世論調査

―――2023年06月15日17時00分付 時事通信より

自民大敗シナリオは現時点では現実のものではない

もちろん、現実の各政党の獲得議席数は政党支持率とは必ずしもリンクしませんし、とくに小選挙区制度を採用する衆議院議員総選挙の場合、与党が大敗するためには「与党に大きな逆風が吹くこと」、「最大野党が十分な数の候補者を各選挙区で立てること」という2つの条件が必要です。

現状、立憲民主党に代わって最大野党になる可能性が高いのは日本維新の会で、解散先送りにより同党にとっては候補者を立てるうえでの猶予ができた格好ですが、ただ、解散が秋口あるいは年内、年明けすぐとなった場合は、依然として十分な数の候補者が出そろっていない可能性があります。

この点、「自公両党の選挙協力がどうなるのか」、「日本維新の会や国民民主党が公認候補者の数を増やせるのか」、「立憲民主党からの離党ラッシュが生じるのか」、など、不確定要素がいくつかあることは事実です。

ただ、前回衆院選の数値でシミュレーションをしてみると、「自民党が過半数を割り込むほどの大敗を喫する」という可能性は、現状では決して高くないというのが正直なところでしょう(※ただし、日本維新の会の候補者数や同党に対する今後の支持率にも依存しますが…)。

そうなると、結局のところ、自民党は多少議席を減らすにせよ過半数を維持し、立憲民主党も同様に、多少議席を減らすにせよ、辛うじて最大野党の地位を維持する、といったシナリオが現実的なところでしょう(※ただし、立憲民主党に関しては、ギリギリのところで最大野党の地位から転落する可能性も残されています)。

いずれにせよ、ツイッターなどで観察する限り、保守的な性向を持つ人ほど、岸田首相のことが「気に入らない」と考える人も多く見られますし、なかには「お灸を据える」という意味でも自民党大敗を願うツイートも出ていることは事実です。

しかし、そのことと「次回選挙の際に自民党が大敗を喫するかどうか」は、基本的には分けて考えるべき問題です。

このあたり、一部の人の間では「岸田(首相)は大嫌いだから、自民党は大敗を喫してほしい」、といった願望のようなものも見られるのですが、これについては冷静に、「数字に基づく分析」を行う必要があり、そうした願望と現実の数字を分けて考える必要があることは間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (12)

  • 青木率(内閣支持率+第一党の政党支持率)が60%を超えているから問題ないでしょう。自民党内で党首交代論が台頭しているのなら話は別ですが、有力な後継者がいるわけではないので。

  • 正しい分析が出来なければ、正しい対処が出来ないのは当たり前。
    岸田はマスコミの表面的な原因分析を鵜呑みにして、正しく対処できないのではないかと思う。
    まぁ、岸田政権はそれでも全然かまわないけれど。

    しかし、マスコミも批判らしい批判をしていないにも係わらず、いや、むしろ報道しない自由に守られているとさえ言える岸田政権が、これだけ支持率が下がるという事は、本当に日本国民に支持されていないのだろうな、と思う。シランケド

  • 青木の法則では、自民党支持率と内閣支持率の合計が50%を切ると危険水域ということらしいので、岸田内閣の支持率が20%台になれば危険水域になるのかもしれません。

    今後は増税、LGBT法案に伴う現場の各種ルール制定運用、マイナンバー保険証の運用、莫大なウクライナ支援金額等、支持される要素はありませんので、いずれ20%台なるものと思われます。
    但し、マスメディアは基本的にチワワ岸田さんに甘いので、各種オペレーション等で救われる可能性も高いように感じます。。
    結局、国民の意識次第ですね、自民に愛想をつかすか否か。。

  • マスコミは支持率低下の原因を、マイナカードや息子の忘年会などにしたいようですが、自民党の選挙対策本部は本当の原因を理解していると思います。
    今まで行ってきた政策が、国益を損なうもの、物価高の中での国民の負担増を伴うもの、効果が怪しいもの、多くの国民の意識と乖離した法案など、今更取り返しようのないものばかりで、覆水盆に返らずです。
    韓国のホワイト国復帰やスワップなど、保守層の神経を著しく逆撫でするような案件も控えています。
    実際の内閣支持率はもっと低いのではと思いますし、今後ますます低くなっていくような気がします。
    この調子なら、岸田首相は秋の解散も決断出来ないかもしれません。
    維新が背後に迫ってきていますので、当落線上の議員さん達は相当焦っていると思います。
    もたついている間に岸田おろしが始まりそうですね。

    • 首相の専権事項たる衆議院解散を封じられては、抜刀できないと公言しているも同然ですので、いきなりでないにしろレームダック化(死に体)が進むと判断するのが自然です。

      永遠にべた加速する男、岸田文雄首相の運転するスーパーカーは無茶なハンドルさばきが祟って、政権ごとスピンして宙に舞いつつあるということです。

      •  >マスコミは支持率低下の原因を、マイナカードや息子の忘年会などにしたいようですが

         特にマイナカードに対するネガキャンは狂気じみてますが、マスゴミはそんなに犯罪者の肩を持って無秩序な社会を現出したいんでしょうかね。「やさしい猫」と言い。

      • 世帯と一部と名乗れば誰だって手に入る紙の保険証は不正の温床なのです。潜伏中の指名手配犯は偽造保険証を身分証明書の代わりにして生活しています。
        意地張りくんの首相どの、またもや強行突破を図ろうとしましたが、紙の保険証の闇が暴かれそうになって、行政や政府のこれまでの無為無策が晒されることになることを(ようやく)理解して、大慌てで臭いものに蓋をしにかかった。

      • (書き切らないうちに送信してしまいました)

        「消えた年金」ならぬ「紙の保険証」問題
        対応を誤れば岸田政権の致命傷になる可能性は大です。

  • 岸田政権は、既に、レームダック状態になっているでしょう。

    本当に信念の無い人間というのは、どうしようもないですね。

    G7サミットの晴れ舞台の前に、不要不急のLCBT法案を強行突破するという「政治勘」の無さ。
    マイナカードのトラブルが多発しているにも関わらず、「見て見ぬふりの無責任」な姿勢。

    G7の晴れ舞台で、精も根も近も尽き果ててしまったようで、元々無かった思考力も気力も、今や完全に枯渇を通り越してマイナス状態。
    政権も本人も既にレームダックになっているでしょう。
    このサイトの分析は甘いです。

  • まずくて高い食堂だけど、(口だけ番長ではなく)防衛政務官として立派に業務をこなしながら、かつ、執行部におもねらずに以下のような発言もできる人がいるから、自民党を消極的に応援してきました。ただし、マツカワに裏切らせた上に、次の内閣改造で小野田氏のような人にもし冷や飯を食わせることがあれば、さすがに次の選挙では維新か国民に入れようかと思います。
    小野田紀美【参議院議員/岡山】SNSより:
    >通常国会でも公明の求めに応じ、自民内の保守派が猛反発していた「性的少数者(LGBT)への理解増進法」の成立を実現させた。
    こうして本来の支持者を裏切り、選挙に弱くなり、また依存する…
    憲法改正は?スパイ防止法は?対中の対策は?自民党が強くならねば叶わない

  • プーチンと同じ。岸田を変えても良くなるとは思えない。
    活動家の野党やリンやシェーシェー茂木や統一教会他宗教組織が渦巻く自民党。
    国民の不幸だ!!!
    売電の言いなり、財務省始め役人の言いなりの総理大臣。
    防衛費倍増も良いけど「日米地位協定」をなんとかしてくれよ。
    売電と交渉したのか?
    沖縄行ったようだけど車のナビに広い地域が灰色で表示されているのは見てますか?
    すべて軍事基地ですよ。