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衆院選「維新勝ちすぎシナリオ」をより精緻に検証する

当ウェブサイトでは今朝、「かなり可能性は低いが、仮に衆院選で維新が勝ちすぎるならば、岸田文雄内閣自体が崩壊してしまう可能性はあり得る」、と述べました。ただ、これについては最大野党である立憲民主党の動向とも密接にかかわってきます。そこで、本稿では今朝の議論の続きとして、自民党だけでなく、立憲民主党と含めて日本維新の会に票が移った場合のシミュレーションについても加えておきたいと思います。

今朝の『衆院選で「維新勝ち過ぎ」なら岸田内閣崩壊もあり得る』では、こんなシミュレーション結果をお示ししました。

もしも2021年10月の総選挙で、すべての小選挙区において、自民党の候補者から日本維新の会の候補者に一律で3万票が流れたとしたら、主要政党の獲得議席数はどうなったか」。

その結果は、惨憺たるものでした。

自民党は小選挙区で41議席を失い、比例代表(※)と合わせた勢力は259議席から218議席と減少し、過半数(233議席)を大きく割り込んでしまいます(※ただし、便宜上、比例での獲得議席数は変化しないものと仮定しています)。

その一方で日本維新の会は25議席を積み増し、比例代表と合わせた勢力は41議席から66議席へと1.5倍以上に増えます。この場合は立憲民主党も「棚ボタ」式に議席が増え、96議席から112議席へと16議席積み増す、という結果となりました。

「自民→維新3万票」の場合の各政党の獲得議席数
  • 自民…小選挙区187→146/合計議席259→218(▲41)
  • 立民…小選挙区*57→*73/合計議席*96→112(+16)
  • 維新…小選挙区*16→*41/合計議席*41→*66(+25)

(【出所】2021年総選挙結果をもとに著者作成)

ただ、このシミュレーションだと、自民党の議席減少だけでなく、立憲民主党の議席増加も発生してしまいます。

そこで、その後少しシミュレーションのやり方を変え、「自民党と立憲民主党がX票減らし、その分、日本維新の会が2X票増える」、というパターンについて、実験を実施できるように変更しました。

すなわち、こんな具合です。

  • ①自民、立民、維新の3政党すべてが候補を公認している選挙区では、自民、立民からX票ずつ減り、維新が2X票増える。
  • ②自民、立民の片方しか候補を公認しておらず、かつ、維新が公認している選挙区では、自民、立民の片方からX票が減り、維新がX票増える。
  • ③維新が候補を公認していない選挙区では、票の移動は生じない。

こんな仮定を置き、Xについてさまざまなパターンを置いて検証してみると、こんな具合です。

X=*5,000票だったとき
  • 自民…小選挙区187→181/合計議席259→253(▲*6)
  • 立民…小選挙区*57→*61/合計議席*96→100(+*4)
  • 維新…小選挙区*16→*18/合計議席*41→*43(+*2)
X=10,000票だったとき
  • 自民…小選挙区187→180/合計議席259→252(▲*7)
  • 立民…小選挙区*57→*55/合計議席*96→*94(▲*2)
  • 維新…小選挙区*16→*24/合計議席*41→*49(+*8)
X=15,000票だったとき
  • 自民…小選挙区187→175/合計議席259→247(▲12)
  • 立民…小選挙区*57→*53/合計議席*96→*92(▲*4)
  • 維新…小選挙区*16→*31/合計議席*41→*56(+15)
X=20,000票だったとき
  • 自民…小選挙区187→162/合計議席259→234(▲25)
  • 立民…小選挙区*57→*46/合計議席*96→*85(▲11)
  • 維新…小選挙区*16→*51/合計議席*41→*76(+35)
X=25,000票だったとき
  • 自民…小選挙区187→155/合計議席259→227(▲32)
  • 立民…小選挙区*57→*40/合計議席*96→*79(▲17)
  • 維新…小選挙区*16→*64/合計議席*41→*89(+48)

X=30,000票だったとき

  • 自民…小選挙区187→144/合計議席259→216(▲43)
  • 立民…小選挙区*57→*38/合計議席*96→*77(▲19)
  • 維新…小選挙区*16→*78/合計議席*41→103(+62)

この場合、Xが25,000票で自民党が過半数割れに追い込まれるとともに、立憲民主党が最大野党の地位を喪失する、という結果となりました。Xが30,000票だった場合には、維新は合計で100議席を超える、という計算です。

正直にいえば、どちらも非現実的です。Xが25,000票、30,000票というのは、「自民、立民の両党から公認候補が立っている選挙区で、あわせて50,000票ないし60,000票が維新に移転する」、ということを意味しているからです。

さすがに、シミュレーションとしては少し強引でしょう。

現実的には、日本維新の会がどんなに躍進したとしても、X=20,000票が関の山であり、この場合は自民党はかろうじて過半数を維持し、立憲民主党はかろうじて最大野党の地位にとどまります。

実際に自民、立民両党に「逆風」が生じるとしても、さすがに「全選挙区で両党から2万票ずつ失われ、維新が4万票積み増す」、とまで考えるには、少々無理があります。X=15,000票以下であれば、維新は多少躍進するにせよ、現状とあまり大きく議席数は変わりません。

もちろん、このシミュレーションでは比例代表を考慮していないため、多少、上記試算とはズレが生じますし、日本維新の会は最近、できるだけ多くの小選挙区で候補者を擁立しようと努力しているため、上記試算と比べ、維新は多少、議席を積み増すかもしれません。

ただ、長い目で見て維新が立民を上回る勢力を獲得する可能性はあるとは考えられるものの、やはり現時点における当ウェブサイトなりの結論としては、もしも早期解散総選挙なら、「自民党過半数維持」、「立憲民主党は多少議席を減らすにせよ、最大野党を維持する」、がメインシナリオではないかと思います。

そして、日本維新の会が小選挙区での候補者擁立を急ぐなか、時間が経てば経つほど、自民党(と立憲民主党)が議席を減らす可能性が高いというのが、現時点での当ウェブサイトの予想ですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

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  • 先ほど他の記事でのコメントもしましたが、小選挙区について調べ始めると、結構面白いものです。

    小選挙区制のご本家のイギリスでも「激戦区」(target seat)という概念があるようです。(https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50568651)

    この時のBBCの報道によれば「激戦区」とは得票率の差が10%以内のところであり、イギリス650選挙区のうち169がこの定義に当てはまるとのことです。

    日本でこの基準を使うと、2021総選挙では自民・立民しか立候補者のいない選挙区もあるので、この基準を5%の得票率の差として集計してみました。(集計は某NHK2021衆院選のページを活用。)

    その結果、①5%以内の得票差の選挙区は、289のうち64選挙区、②自民1位で5%以内で勝っているのは35選挙区、そのうち立民2位の選挙区が33(注1)、維新2位は1つ(兵庫7)、無所属は1つ(埼玉8)、③立民1位で5%以内で勝っているのは26選挙区で、自民2位が25(注2)、無所属が1つ(神奈川4)、④その他の組み合わせは3選挙区で維新1位・自民2位が1つ(兵庫6)、共産1位・自民2位が1つ(沖縄1)、無所属1位・自民2位が1つ(茨城1)となります。

    あくまで2021年の結果なのでこれ以後どう動いているかは未知数の部分もありますが、この結果からは「維新」を近畿ブロック以外で過大評価するのは早計であると判断するのが妥当でしょう。

    (注1)得票率の差が小さい順、同じ場合は地方公共団体コード順
    長崎4、北海道4、愛知8、三重2、大分2、愛知1、長崎3、千葉10、北海道3、神奈川7、静岡6、宮城1、茨城7、栃木4、神奈川6、東京23、石川3、埼玉7、長野1、東京10、愛媛3、山梨1、愛知4、岡山4、埼玉10、福岡2、東京1、秋田1、岩手3、沖縄3、長野3、愛知5、茨城6

    (注2)得票率の差が小さい順、同じ場合は地方公共団体コード順
    新潟6、佐賀1、新潟4、宮城2、宮崎1、東京19、神奈川12、東京5、福岡10、福島4、埼玉12、東京5、福島1、千葉9、神奈川13、東京18、埼玉5、広島6、北海道9、東京3、北海道11、佐賀2、北海道1、秋田2

    • (注2)で、奈良1区を落としていました。申し訳ありません。

    • この結果を逆に言えば、5%以上得票差のついている選挙区が225あるということになります。

      その数を政党別に見ていくと、自由民主党154、立憲民主党31、日本維新の会15、公明党9、国民民主党6、社会民主党1、無所属9ということになります。

      無所属には、自民党系(静岡5、岡山4、熊本2、鹿児島2)と野党系(新潟5、京都4、徳島1、福岡9、大分1)がいます。

      無所属には自民党追加公認の2人(東京15、奈良3)を含みません。

  • 維新の馬場さんは、全選挙区に候補者を立てる事と、東京都でそれなりの存在感を示せれば上出来と思っているのでは?
    大都市部以外ではまだまだだと思います。
    東京都では、自公選挙協力のごたごたや松原仁議員の立憲民主党離党など、選挙情勢が液状化してきたように感じます。
    維新が東京都で2位の得票率を獲得できるかどうか注目しています。
    維新が野党第2党になるにはあと数回の選挙が必要だと思いますので、準備不足でも良いから早く選挙をやってくれれば良いと思っています。

  • 維新の核って、何?
    中身も印象もはっきりしない。
    有名なマーケターでも雇って、企業(党)イメージと企業理念(党の綱領)と商品(目玉政策)を創り上げでもしなければ、全国政党には成れないでしょう。

    党首に、小池百合子氏でも持ってくれば、注目度が上がるかもしれないが。
    (神宮の木を切っちゃったから、印象悪いか?)
    或いは、橋下徹氏が、一時カムバックするか?
    それ位の注目度の高いことを一度、ぶち上げなくては。
    今の党首は、地味過ぎる。

    兎に角、一度、全国的なブームを創ることをやらなければ。
    一種の創業キャンペーンみたいなものですね。

    後は、印象の良い候補者を集めていくこと。
    立憲を離党した、松原氏とかはいいかもしれない。

    一方、印象の良くない人を入れたらそのマイナス効果は、プラス効果の10倍くらいになるのでは?
    どうも、某氏の発言がマスコミに取り上げられる度に、何千か何万かの票は減っているのではないか、と気が気ではない。