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岸田首相と自民党にとっての「早期解散総選挙の得失」

岸田首相が衆院解散総選挙に踏み切るのかどうかはわかりませんが、合理的に考えて、その理由はありそうです。というのも、日本維新の会が統一地方選で躍進し、衆院選でも候補者を積極的に擁立する構えを見せているからです。いまこのタイミングで解散総選挙を実施すれば、自民党は(多少議席を減らすかもしれないにせよ)過半数は確保するでしょうし、なにより維新の伸びを抑制することができるからです。ここで参考になるのが、ニューズサイト『SAKISIRU』編集長の新田哲史氏のツイートでしょう。

首相の発言が微妙に変わった…!?

産経などいくつかのメディアの報道によれば、岸田文雄首相は9日の衆院財務金融委員会で、衆院の解散・総選挙を巡り、日本維新の会の住吉寛紀議員の質問に対し、「どのタイミングで国民の信を問うべきなのか適切に判断する」などと述べたそうです。

衆院解散「専権事項として適切に判断」 岸田首相

―――2023/05/09 17:08付 産経ニュースより

答弁としては、ごく当たり前のものです。

岸田首相自身が仮に「サミット直後の6月に解散する」と思っていたとして、それを国会答弁の場で、いきなりストレートに答えるはずはありません。

もっといえば、自身が来年9月の自民党総裁選で再選されることに最大の関心を持っているであろう岸田文雄首相にとって、このタイミングで解散総選挙に踏み切るのかどうかは、よくわかりません。自民党総裁選まであと1年以上の猶予があるからです。

ただ、一部メディアの指摘によると、首相自身は今月4日時点で、衆院解散を巡って「いまは解散総選挙についてはか投げていない」と述べていたそうですので、答弁内容が微妙に変化している点については、気になるところでもあります。

新田編集長の気になるツイート

これについて、ニューズサイト『SAKISIRU』編集長の新田哲史氏が、こんなツイートを発信しています。

要するに、岸田首相自身にとって、「今すぐ解散総選挙をすること」の良い点と悪い点を並べる、というものです。

これはたしかに興味深いシミュレーションでしょう。

岸田首相の党内基盤は弱い

そもそも岸田首相の党内基盤が弱い、という点は、重要でしょう。

新田氏の指摘通り、仮に今すぐ解散総選挙した場合には、自民党は(現有勢力を減らすかもしれないにせよ)とりあえず「過半数」については制することができると思われますが、その反面、総選挙をしてしまったあとで党内政局の動きが持ち上がった場合、「切り札」を失うことになります。

とりわけ、岸田首相自身が宏池会という自民党内の「弱小派閥」出身であるだけでなく、その宏池会の内部でも基盤が脆弱であることを忘れてはなりません。岸田首相自身が首相に就任してもなお、宏池会の会長を辞めていないのは、一説によると、林芳正外相を警戒するものだとの指摘があります。

実際、宏池会の前会長で自民党幹事長経験者でもある古賀誠・元衆議院議員(2012年12月の衆院選に出馬せず政界を引退)は、林氏を将来的な宏池会会長に据えることを公に提言しているほどです。

林外相が将来的に継承を 宏池会会長巡り古賀氏

―――2023/3/10 00:23

さらには、自民党を巡って何らかのスキャンダル、支持率急落などの外部要因に加え、たとえば党内で隠然たる力を持っている菅義偉総理あたりが安倍派や二階派などを束ねて動くのだとすれば、「菅義偉再登板」の可能性も出てきます(年齢的には少々厳しいかもしれませんが…)。

このように考えたら、おそらく「自民党総裁選」だけを目的とするならば、岸田首相にとって最も良いのは総裁選直前の解散総選挙です。自民党が現在より多少議席を減らしたとしても、「そこそこの勝利」で終われば、岸田氏の自民党総裁としての再選は固いからです。

維新対策という効果も期待できる!?

ただ、もっと重要な要因があるとしたら、それは「維新対策」ではないでしょうか。日本維新の会が全国的に伸び始めているなかで、解散を先延ばしにしたら、その分日本維新の会に時間的猶予を与えることにもなりかねないからです。

毎日放送が配信した次の記事などによれば、日本維新の会は今年の統一地方選での躍進を受け、藤田文武幹事長は「解散の声もあるし、そう遠くないうちに戦いが待っている」などとしつつ、「すべての選挙区を対象に擁立作業を目指す」などと述べたそうです。

【速報】「統一地方選で躍進」日本維新の会が全国774議席に到達 馬場代表「全国どこへ行っても政府の方向性少しおかしい」藤田幹事長「衆院選全選挙区が擁立対象」

―――2023/04/24 15:00付 Yahoo!ニュースより【MBS NEWS配信】

この点、日本維新の会が議席を伸ばしていることは間違いないにせよ、仮に解散総選挙が6月になったとした場合、さすがに289の小選挙区のすべてに候補者を擁立するというのは野心的(といようりも無謀)であり、非現実的です。

だいいち、現状での日本維新の会の議席数は、衆議院では41議席であり、連立与党の一角を占める公明党の32議席を上回ってはいますが、自民党の263議席と比べれば圧倒的な少数派ですし、最大野党の立憲民主党の97議席と比べても、依然として半分以下です。

新田氏の指摘通り、維新の候補者擁立が間に合っていないなかで衆院選を6月に実施すれば、「維新の議席の伸びを抑制する」という点では、たしかに理にかなっています。こうした点を総合的に考えるならば、岸田首相が総選挙を先送りせず、今すぐ実施することには、それなりに合理性が認められると考えて良いでしょう。

岸田首相には解散総選挙の「理由」がある

といっても、これはあくまでも理論的なシミュレーションのようなものであって、「解散総選挙をするという確証がある」というわけではありません(だいいち、著者自身はべつに岸田首相とは同一人物ではありませんし、岸田首相に近い知り合いがいるわけでもありません)。

ただ、「理論的に考えて、岸田首相には今すぐ解散総選挙に踏み切るだけの合理的な理由がある」ことは間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 岸田首相は可もなく不可は少しアリ、ぐらいかな〜。政権続けたいなら解散しかないでしょう。岸田首相は特に外交には弱い。安倍・菅路線を歪め、親韓過ぎる。意味不明な笑みを浮かべるのは、日本人にしか通用せず、外国人には不審がられます。私のランク付けならC -ぐらい。
    ちなみに安倍晋三総理はA+
    菅義偉総理はA -
    麻生太郎首相はB+
    あと本来ランク外ですが、どうしてもなら以下3人は
    菅直人E -
    鳩山由紀夫E -
    野田E
    です。

    • アメリカ式に成績をつけるなら三人ともEではなくF(failure=落第)ですね。
      野田首相のときも韓国とのスワップを積極的に増額した実績などあるのでみんな差はないでしょう。

      • アメリカ政府(官僚&民主党)の評価だと、おそらく以下と推測します。
        (アメリカにとって都合の良い首相)

        岸田さん A+++
        麻生さん A++
        菅さん  A+
        安倍さん A-
        野田さん A-
        鳩山さん B-

        •  ルーピーの評価が最低なのは「無能過ぎて利用価値が無かったから」でしょうね。その辺シナチスも同じ評価だと思います。民主党政権は余りにも無能過ぎてシナチスも閉口したのでは?

  • 素朴な疑問ですけど、立憲は早期解散を望んでいるのでしょうか。(後になればなるほど、不利になると予想すれば、早期解散を望むでしょうし、この後、自民党が自滅(?)すると予想すれば、それまで伸ばすことを望むでしょう)

  • 岸田に解散する気はない。
    自民党だって「補選」で勝ったといっても内容は「薄氷を踏む」物だし、統一教会に対する逆風はまだある。
    奈良や和歌山で維新に負けてるトラウマはあるだろ。
    公明党は創価学会の「高齢化」で参院選についで地方選でも議席・票を減らした。
    補選の結果がどうあろうと、解散なんてしないよ「公明党」が反対する。
    連立与党が勝てるとしたら25年の「衆参同日選挙」まで待たないと逆風はなくならない。

  • どちらにせよ、自民党、立憲共産党含め古い政党はどんどん力を失うでしょうな
    ネットの力が強く、維新や国民、参政党は伸びそうで不確定なのはれいわ、N国

  • 岸田首相は、来年9月の総裁任期終了までに国民に信を問うのが筋だと言っています。
    今年の9月を過ぎれば残りの任期は1年未満となりますので、与野党の議員は選挙の事で頭が一杯になるでしょう。
    私が首相なら、追い込まれてからの解散は避けたいと思いますので、G7終了後での解散を選択します。
    今のところ有望な次期総裁候補もいませんし、躍進中の維新もまともな候補者をそれまでに集めるのも難しいでしょう。
    また、維新は全選挙区に候補者を立てると言っていますので、野党同士の共倒れにより自民党は議席を伸ばせる可能性もあります。
    まあ最後の議席増になる可能性が高いと思いますが。

  • 維新衆院第一党は限界無く楽観的に観て最短でもあと5年、有り得なく順当に行ったと楽観して10年~15年はかかるでせう
    馬場サンもソレ踏まえた地方議員団の充実を掲げとったわけで
    大阪維新との実績踏まえれば地方自治体の効率化から国政睨むルート以外はただでさえ駒不足が水増し悪駒ズからの早期瓦解を招くだけに終わる、自公大歓迎コースとなりそう
    そのうえ国政政党としては軸がアヤフヤで迂闊にノれないアヤシサが拭えナイのがナキドコロかしらん??

  • 「総理になってやりたいことは格別ない」けれど、「総理を長くやりたい」(出来れば池田内閣の1575日を超えたい)岸田首相にとっての最優先課題は、来年9月の自民党総裁選での再選でしょう。
     そしてまた、現状の各党支持率、小選挙区制、野党共闘の見込み薄を勘案すれば、解散総選挙をやればまず間違いなく、与党で過半数は確保できると考えられます。とすれば、自民党総裁選の近くすなわち1年~半年前、そして予算案審議に影響を与えにくい来年1月早々がAプランと考えます。
     ただ「政局は一寸先は闇」ですので、いきなり大スキャンダル(統一教会みたいな)が勃発してしまうと、大敗するリスクがあり解散できなくなるので、支持率が高いであろうG7明けも、Bプランとしてありえます(バイデンが来ないとなると可能性は薄くなるかな)。
     それと軽い支持率ダウン案件が起こり、支持率回復策としての今年秋の解散総選挙も、十分考えられます。
     維新対策は、考慮にはほとんど入らないでしょう。

  • 選挙対策でアピールするネタにするには、日韓関係の“改善”って正直弱いというか身近じゃないから使えない、使い難いと思うんですよね。

    LGBT法も大多数にとっては無関係または自分が人権侵害を被る法律になり得ますし、G7も単なるお祭りとして終わるだろうし、結局のところ子供対策や給与増額などでアピールする事になるんじゃないかと。

    で、給与増額って今年度分は過去の話しなので、岸田としては今年度末〜来年度頭辺りが良いのかもですね。

    尹錫悦政権がポシャりさえしなければ、外交関係は減点されずに済みそうですし。

  • 菅首相、再登板待望しているんですが。

    維新は、どんな政党なのか?
    今一つ政策がハッキリしなければ、全国的に浸透しないですね。

  • 何時になるか解りませんが、一刻も早く解散総選挙して岸田下ろしするべき。今の岸田は①アメリカに当初警戒され(媚中国林芳正外相就任)補う為にアメリカ絶対従属に堕し②中国への臣下振り中国の傍若無人に無抵抗③財務省の振り付け通り防衛増税と消費税増税を画策し法案化する流れ④開成閥親玉のナベツネ読売新聞のメディアへの握ったグリップでの異様なる岸田推し、支持率アップ。「統一協会潰しによる国会浪費は岸田の責任」「電撃なキーウ訪問(アメリカ指示通り)は出来レース」「日韓関係融和は反って日本人に反感」「LGBTQ法案化」等々なのに急速な支持率アップ、物凄い違和感。操作された支持率丸見え。岸田は今の時代の器の首相では無い。他に良い人居ないからだけの理由で岸田長期政権されたら堪らない。憲法改正も本気度全く見えず専守防衛から脱せらず只ひたすら日本を疲弊させて行く‼️もう勘弁。一刻も早く退陣を要求します。「沈香も引かず経も放らず」(石原慎太郎)「宦官」(亀井静香)変わらない‼️

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