韓国原子力安全委員会が26日に明らかにしたところによると、韓国政府は「福島『汚染水』海洋放出」を巡り、放流前に独自の調査結果を検討しているのだそうです。好きにすればよいと思います。ALPS処理水自体、そもそも「汚染水」ではありませんし、国際社会のルールと常識に照らして正しく評価すれば、「汚染水」という自分たちの主張が間違っているという結果になりますし、国際社会のルールと常識から逸脱した報告書ならば、国際社会の査読に耐えられないからです。
ALPS処理水、恐れるに足らず
正しい用語を使えないのは、大変に困りものです。なんのことかといえば、「汚染水」と「処理水」の違いです。
福島第一原発から発生する放射性物質の汚染水については、多核種除去装置(ALPS)で処理され、現時点では原発の敷地に蓄積されていますが、現在のところ、春から夏にかけて海洋放出が開始される予定とされています。
このALPS処理水は、ほとんどの放射性物質を、安全基準を満たすまでに浄化した水のことを意味します。
もっとも、このALPS処理水には、トリチウム(三重水素)が含まれてしまっており、現在の技術では、ALPS処理水からさらにトリチウムを完全に除去することは不可能です。
しかし、海洋放出に先立って、このトリチウム水についても安全基準を十分に満たすよう、処分する前に海水で大幅に薄めることとされており、経産省ウェブサイトの説明によると「環境や人体への影響は考えられない」、ともされています(経産省『みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと』等参照)。
この点は、まったくそのとおりでしょう。
トリチウムは自然界にも存在
環境省のウェブサイトに掲載されている『トリチウムの物性等について』というPDFファイルなどの説明によると、トリチウムは水素の放射性同位体で、半減期は12.3年と比較的長いものの、トリチウムが放出するベータ線は紙1枚で簡単に遮れるほどエネルギーが弱いとされます。
また、同資料によれば、トリチウムは降り注ぐ宇宙線により常に生成され続けており、これにより自然界には100~130京ベクレル(Ebq)程度のトリチウムが常に存在しているそうですが、それだけではありません。
過去の核実験や現在の原子力発電などによっても大量のトリチウムが生成されており、現時点では人類が作り出したトリチウムが10Ebq程度、存在しています(ちなみに同資料P4によれば、「特に、カナダ、韓国等の重水炉の重水減速材からの生成が多い」と記載されています)。
トリチウムとは?
- 水素の放射性同位体
- 半減期は12.3年と比較的長いが、ベータ線は紙1枚で遮蔽できるほどエネルギー量は弱い
- 自然界では宇宙線等により常に生成され続けており、1~1.3Ebq程度のトリチウムが存在している
- 核実験や原子力発電などによって生成されたトリチウムも10Ebq程度存在している
- とくにカナダや韓国などの重水炉の重水減速材からの生成が多い
(【出所】『トリチウムの物性等について』等)
すなわち、トリチウム自体は原発稼働と無関係に、自然界で常に生成され続けているものであり、また、人類が作り出したトリチウムについては「韓国など」から大量に放出されている、というわけです。
韓国自身も大量に放出している
こうしたなかで、韓国側からはしつこく、このALPS処理水を「汚染水」と誤った用語で呼んだ記事が出てきます。本当に困った話です。
もしALPS処理水を「汚染水」と呼ぶのなら、自分の国の原発から放出される液体についても同様に「汚染水」と呼ばなければおかしいのではないかという気がします。
経産省『世界の原子力発電所等からのトリチウム年間排出量』によると、2016年実績で見ると、韓国の月城原発からは液体17兆ベクレル・気体119兆ベクレル、古里原発からは液体36兆ベクレル・気体16兆ベクレルが、それぞれ放出されています。
経産省は約860兆ベクレルとされる福島の処理水についても、いきなり全量を放出するのではなく、毎年22兆ベクレル未満ずつ、30~40年をかけて放出することとしています(消費者庁ウェブサイト『福島第⼀原発の廃炉に向けて(ALPS処理⽔の処分について)』等参照)。
もちろん、放射性物質の海洋放出は非常に機微な問題であり、日本政府に十分かつ丁寧な説明が求められていることは間違いありませんが、それと同時に、現時点において韓国を筆頭に世界中の原発から大量にトリチウム水が放出されているという事実を思い出しておく必要があります。
また、国際原子力機関(IAEA)は日本政府に対し、周辺国などに対する丁寧な説明を要求しているものの、それと同時に現時点における日本政府の海洋放出準備を高く評価していることも事実です(『福島処理水IAEA検証完了受け韓国「徹底監視必要」』等参照)。
韓国政府による「汚染水」云々の難癖を、日本政府がまったく相手にしなくなりました。日本政府は国際原子力機関(IAEA)に対して説明を行い、国際的な基準に従い、ALPS処理水の海洋放出の準備を進めているからです。こうしたなか、IAEAが現地での検証作業を終了したことを受け、韓国政府は「徹底的な監視が必要」などと述べたそうです。汚染水ではなく処理水福島第一原発のALPS処理水のことを、韓国が一方的に「汚染水」と誤った呼称を用いたうえで、日本政府による処理水の海洋放出を繰り返し批判してきたという話題... 福島処理水IAEA検証完了受け韓国「徹底監視必要」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
このあたり、今月は韓国から野党議員が「アポなしで」来日しましたが(『「ガースー」日韓議連、韓国アポなし訪日団に恥かかす』等参照)、本来、これに不満があるのなら、日本政府や東京電力に対してではなく、IAEAに対して抗議すべきでしょう。
日韓諸懸案はあくまでも国際社会の法や常識、ルールなどに従い、透明性の高いプロセスで協議され、解決されるべきです。自称元徴用工問題を巡る「岸田ディール」は、この原則を無視した、大変に愚劣な決定ですが、こうした岸田首相の失策を部分的に挽回する動きがありました。菅義偉総理が会長に就任したばかりの日韓議連が、韓国野党議員を冷遇したことです。結局、この野党議員らは東電本社にも入れず、原発視察も拒否され、日本で地方議員1人、住人1人、診療所所長1人と会うにとどまるなど、大恥をかいたようです。例の韓国野党... 「ガースー」日韓議連、韓国アポなし訪日団に恥かかす - 新宿会計士の政治経済評論 |
独自の報告書公表?
こうしたなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には27日、こんな記事が掲載されていました。
「汚染水信じられない」不安高まると…韓国政府、日本放流前に独自の検討結果を発表
―――2023.04.27 07:51付 中央日報日本語版より
中央日報によると、韓国政府は「福島原発『汚染水』」(※原文ママ)の放流前に、独自の調査結果を発表することを検討しているのだそうです。韓国・原子力安全委員会が26日、福島汚染水対応現況説明会を開き、次のように述べたのだとか。
「汚染水放流前に独自の検討結果を公開する。時期は国際原子力機関(IAEA)が進めている汚染水放流計画評価の最終報告書の発刊後になるだろう」。
処理水のことをしつこく「汚染水」などと誤った用語を使い続けること自体、中央日報を含めた韓国メディア、あるいは韓国という国家そのものの日本に対する名誉棄損であり、侮辱そのものです。
ただ、それと同時に、「やれるものならやってみるべき」でもあります。
日本政府はIAEAに対し、十分な説明を尽くしていますし、また、処理水の放流に伴う影響ならば、すでに韓国の研究機関自身が「韓国周辺海域のトリチウム量は、現在の技術では検出できないほどしか増えない」と明らかにしています(『福島「汚染水」でトリチウム濃度は約10万分の1増大』等参照)。
韓国メディアによると、今後10年間における福島第一原発「汚染水」の海洋放出により、韓国管轄海域のトリチウム量は約10万分の1増えるのだそうです。具体的には0.001ベクレル/㎥で、現在の韓国の海域における平均トリチウム濃度が172ベクレル/㎥であることを踏まえると、「現在の分析機器では検出が難しい程度の濃度」なのだとか。日韓諸懸案といえば自称元徴用工問題が有名ですが、それだけではありません。民主党政権禍の2011年3月に発生した福島第一原発事故の影響を受け、ALPS(多核種処理装置)での処理水が福一サイトに... 福島「汚染水」でトリチウム濃度は約10万分の1増大 - 新宿会計士の政治経済評論 |
国際社会のルールで処理せよ
韓国政府自身がその「報告書」とやらを、国際的に受けいれられる客観的な基準で作成したとすれば、それはこれまでの韓国政府による「汚染水」という主張が誤っていたことを裏付ける結果にしかなりませんし、また、「汚染水放出が問題だ」とする結果が出たとしても、国際社会の査読には耐えられないでしょう。
というよりも、処理水海洋放出問題を含め、日韓間の諸懸案については、あくまでも「国際社会のルール」に沿って処理するのが正解です。
これまでの日本は、日韓諸懸案を韓国との話し合いで解決しようとしてきましたが、こうした努力は意味がないだけでなく有害です。
福島処理水の問題も、「あくまでも国際基準に照らして」処理すべき問題であることはいうまでもないでしょう。
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韓国の主張は別にどうでもいいですが、日本のメディアも必死に揚げ足をとろうとしていますね。
処理水放出「歓迎できない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/cfb6baa4e710a69cca0181dbab9fd1b4520050e8
歓迎はしないが韓迎はするんでしょうね
うまい
韓国など相手にする必要なし
2019年時点で安倍晋三元首相の指摘にまったく反論できずに勝負あり
首相、文大統領に福島の放射性物質は韓国の「100分の1以下」輸入規制念頭にクギ 産経会員限定記事https://special.sankei.com/a/politics/article/20191228/0001.html
問題となるのは風評被害を助長する日本のメディア
福島原発処理水の問題にしても、自衛隊機レーダー照射の問題にしても(その他枚挙に暇はないかもですが・・w)、韓国は「科学的」「論理的」「法的」な負け戦に感情論やゴネ得を狙って公式機関が挑んでくるのが、私には理解不可能な部分ではあります。まぁいままでそれを成功体験として許してきた日本の対応に問題があったとは思いますがw
中国や北朝鮮(ロシアも半分はそうかな)のような独裁者以外には発言の完全なる自由が認められない国が言うならまだ理解出来ますし、
匿名ネットで科学に理解のない扇動された一般人が騒ぎ立てるのも理解できます。日本でもよくあります。
その場合は自由に発言できる科学者や専門家なりが、自分たちの感情的な主張に勝ち目がない事を論理的・穏便に諭すの開かれた自由な言論社会であると思いますが、韓国ではそういう人は吊し上げにあったり国外逃亡せざるを得ないあたりに、言論の自由が未成熟なのを感じたりします。
経済や政治などといったと云った諸問題よりも、こういう「客観的論理」と「主観的感情」の切り分けにこそ、韓国とは価値観を共有するにはまだ至っていないなぁ・・と個人的に感じたりします。私は
処理水放出開始は本邦政府の政治課題であり続けて来ました。
嫌な予感がします。
女衒宦官が G7 開催を前に張り切って暗躍し、処理水放出を材料にバーター取引のようなことをするのではあるまいかというものです。
だいぶ前に韓国のマスコミは
韓国には処理水の拡散モデルもなければ
測定方法もないっていってた気がするんだけどな
先日、新橋のSL広場で、「原発とめろ 新橋アクション」とやらのグループが「処理水を海に流すな」との幕を掲げて処理水放流の反対を声高に発言されていました。 少しお話させていただきました。IAEAの採取したデータは科学的に安全とする基準に収まっているし、諸外国からの原発からも放流されているがそれらの処理水のデータは福島のものより数値が大きいのではないかと、申し上げました。すると、正常な原子炉の隔壁を経た水とは違って、デブリに直接触れた水には人間の五感やIAEAの現在の技術ではとらえられない何かで汚染されてる、とおっしゃいました。それはとても強い確信の様子で、すでに宗教的な預言のようなものと感じ入りました。預言者には勝てませんでした。
この度の、韓国の発表する「調査結果」とやらも、新橋で賜った「預言」のようなものであろうと、予言させていただきます。
捉えられない何かとやらをどうやって知ったのか、正常な原発は完璧に安全ということになるのではないか、と多段構えの高等テクですね。原発推進派による、反原発を皮肉った路上コメディパフォーマンスだって言う方がまだ納得できる。
面白い体験談をありがとうございます、ネタの引き出しが増えました。偉大なる預言者にも感謝を。
尹政権が日本に融和的というが、実態として韓国は日本に対し何も改めていない。哨戒機レーダー照射事件、偽徴用工、偽慰安婦、輸出管理、そして処理水。文政権の時と同じ対日姿勢です。韓国発の日本絡みのニュースはどれも不快なものばかり。
それなのに政官財は親韓的な雰囲気。日本側も具体的には何もしていないという説もあるけど、岸田首相はやらかすんじゃないかと常に不安です。
改めて安倍首相を失ったことが、日本にとって大きな損失だったと思い知らされます。
>日本政府はIAEAに対し、十分な説明を尽くしていますし、また、処理水の放流に伴う影響ならば、すでに韓国の研究機関自身が「韓国周辺海域のトリチウム量は、現在の技術では検出できないほどしか増えない」と明らかにしています(『福島「汚染水」でトリチウム濃度は約10万分の1増大』等参照)。
ま、文在寅政権ではありますが、その研究機関の研究員を吊るして抹殺しちゃいましたけどね笑
韓国の「正しい認識」ってのがどんな代物か、どんな力を持っているのか、良く分かる出来事ではあります。
是非やって頂きたいものです。その結果勧告の事情なんてなんて知らんけど。
でも日本も外交上の相互主義にあわせて対馬や日本海側のモニタリングポストの数値を強調しても良いのではとは思います。
何故か数値が上がり、後でベントしないといけないような事象が勧告で発生していたなんてよくありましたも。
福島の処理水の影響が無いことを科学的に証明するためにもやって頂きたいのですが、特亜三国には科学って無いのを強調するのは敵国相手に国益としてはありかと。
河野太郎が外相のとき、ソウル市と福島と東京の空気中の放射線量を駐韓大使館のHPに出してたことが有りましたが、韓国人は無反応だった覚えがあります。彼らにとって日本を貶める事が目的であって、処理水で韓国海域の放射線量が上がる事なんて気にしていないし、仮に上がったとしてもどうでも良いと思っている。
まともに相手するだけ時間の無駄です。丁寧な無視からの非韓三原則です。
バカですね。
原告側がすべて仕切ることは、無法だしリンチですわな。
普通は公平中立な第三者に任せるものだし、そのためのIAEAですわ。
押し売りが、
「理屈はどうでもいいから誠意みせろ!」
と大声を出してるみたいな。
いま、日本&日本人がやるべきことは、誰がそんなことを言ってる言い続けてるのかを、よく覚えておくことですね。
抗議もせず垂れ流してるメディアもね。
自由民主党・参議院議員の青山繁晴さんがブロックで官邸、外務省、総務省が部会にもかけずに韓国をホワイト国に戻す圧力をかけていて、4/28日に韓国をホワイト国に戻す発表があるそうです。
鈴置高史さんのレポ「岸田内閣から3匹目のドジョウを狙う韓国」では韓国が実際に使用している日本製のフッ化水素は4万トン強、ところが2018年に韓国が日本製のフッ化水素を輸入総額は8万3300トン。韓国は明らかに日本製のフッ化水素を他国に横流ししてきたのは明らかなのに岸田内閣はまたまた韓国に騙されて、売国官僚に騙されて安倍さんの遺産を台無しにするつもりでしょうか。
さまさまな嫌がらせ、反日活動を行う韓国をホワイト国に戻す話が本当なら岸田内閣は売国内閣としかいいようがない。
報道に出てます。