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韓国紙が社説等で日韓首脳会談に対し一様に失望を表明

韓国紙が一様に、日韓首脳会談に不満を示したようです。産経によると保守系紙の間では首脳会談を評価する向きもあるものの、岸田首相が謝罪を表明しなかったことを巡り「韓国国民の期待に応えるものではなかった」などと失望。左派メディアは批判一色だそうです。ただ、これらの韓国紙が、「岸田リスク」を認識している様子はありません。

酷い岸田ディール

先日の『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』を含め、当ウェブサイトではしばしば指摘しているとおり、韓国政府による自称元徴用工問題の「解決案」は解決にも何にもなっていません。

「仮定のご質問には答えません」は岸田首相がちゃんと考えていない証拠衝撃的な「岸田ディール」。振り返れば振り返るほど「信じられない内容」と言わざるを得ません。とくに韓国の「ちゃぶ台返し」の可能性については、岸田文雄首相は記者会見で「仮定の質問には答えません」と述べ、シャットアウトしてしまいました。こうした記者団とのやり取りから浮かぶのは、「キシダ・フミオ」という政治家の「実務担当能力のなさ」、「戦略的思考力のなさ」、そして「プライドの高さ」です。不誠実な「キシダ・フミオ」岸田ディールの衝撃:首...
岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ - 新宿会計士の政治経済評論

その理由はいくつもあるのですが、そのひとつは、韓国国内において2018年の大法院判決を無効化する措置などが講じられていないにも関わらず、岸田文雄首相が韓国の案を「評価する」などと軽々しく述べてしまったことでしょう。

巷間では「新たな謝罪を口にしたわけでもない」などとして、岸田首相については「ぜんぜん譲歩していない」などと擁護する意見もありますし、酷いケースになると、「日本国民が受けた実害はない」、などと(根拠も示さずに)主張している人もいるようです。

ただ、逆に言えば、この「岸田ディール」、あるいは韓国から見た「尹錫悦(イン・シーユエ)ディール」、韓国にとっては大勝利そのものです。

文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に破壊された日韓関係が、日本の岸田「宏池会」政権のおかげで、韓国側はたいした譲歩なしに「関係修復」にこぎつけたわけですから、韓国としては宮澤喜一以来の「宏池会政権」という「キシダチャンス」を最大化したことになります。

韓国紙は一様に不満?

さぞや韓国国内では高笑いが聞こえているに違いないと思っていたところ、産経ニュースにこんな記事が掲載されていました。

韓国紙、日韓首脳会談に不満「日本が呼応せず」

―――2023/3/17 10:52付 産経ニュースより

産経によると16日の日韓首脳会談から一夜明け、韓国各紙は17日の社説で「一様に不満を表明した」のだそうです。

保守系メディアでは、たとえば朝鮮日報が対韓輸出管理適正化措置の「解除」やGSOMIA正常化などを会談の成果として評価しつつも、自称元徴用工問題で岸田首相の「おわびと謝罪」に関する直接的な言及がなかったことが「韓国国民の期待に及ばなかった」と述べたのだそうです。

また、同じ論点については中央日報も、岸田首相が歴代内閣の歴史認識の継承を表明するにとどまった点に「失望」を表明した、などとしています。

これに対し革新系メディアはハンギョレ新聞が「日本の外交的圧勝」、京郷新聞が「日本から少しでも誠意ある呼応措置を引き出す」という「一抹の期待」が「水の泡になった」などと述べているのだとか。

このあたり、なかなかに興味深い反応と言わざるを得ません。

利権自体が強欲で崩壊するのはよくあることですが、今回の成果が「宏池会政権」だからこそ実現できたものだったという謙虚さがかけらも見えません。

それに、もしも統一地方選の敗北などを契機に自民党内で岸田政権への「責任論」が高まり、「サミット花道論」が実現した場合、後任の首相が韓国にとって望ましい人物であるという保証もありません。

個人的には2021年9月の自民党総裁選で岸田首相に次ぐ票を得た高市早苗・経済安保担当相が次期総理に就任してほしい、といった希望もないわけではありませんが、この場合、「高市総理」は韓国に対し、安易な妥協を継続するという可能性は非常に低いでしょう。

岸田リスク

もっとも、現状の自民党内の派閥力学に照らし、「高市総理」が実現する可能性は低いというのが著者自身の見解です。

こうしたなか、『菅総理の「口の重さ」自体が「再登板」の意欲の証拠か』などでも紹介したとおり、一部のジャーナリストらの間では、「万一の際には」自民党内の政治力学等に照らし、菅義偉総理大臣の再登板の可能性が高いとの意見も見られます。

いまから2週間前に公開されたインターネット番組に、菅義偉総理大臣が出演しました。その内容自体もさることながら、興味深いのは菅総理の「話す速度」と「表情」です。これに関し、ネット番組の司会者である長谷川幸洋氏が産経新聞の元政治部長である石橋文登氏に発言を振ったところ、非常に腑に落ちる説明がありました。菅総理が出演した2週間前のネット番組少し古い話題ですが、菅義偉総理大臣が先日、YouTubeチャンネル『長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル』に出演しました。ちょうど2週間前の2月1日に公開されて以来、現...
菅総理の「口の重さ」自体が「再登板」の意欲の証拠か - 新宿会計士の政治経済評論

故・安倍晋三総理のもとで長年官房長官を務めてきた菅総理は、ジョー・バイデン米大統領とも親交が深く、日韓関係のこれまでの経緯を、(下手したら)岸田・現首相よりも深く知悉しています。

余談ですが、「菅総理再登板」シナリオが日本にとって良い結果をもたらすかどうかはよくわかりません。とくに、産業・エネルギー政策において、太陽光発電の推進などの過去の失策を取り戻すことができるかどうかは、日本経済にとって死活問題となりかねないからです。

ただ、少なくとも日韓外交については、「岸田路線」は修正を迫られるでしょう。

いずれにせよ、この「岸田首相が辞めるリスク」があるという点については、韓国側のメディアからはほとんど認識が見えて来ていません。

このあたりもなかなかに興味深いところではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (35)

  • 岸田首相が追い込まれて辞任するようなことは、現状ではありえないです。河野氏や茂木幹事長は党内では人気がなく、萩生田政調会長は、統一教会とずぶずぶな関係なので、しばらく無理。高市氏は安倍元総理がいないのでもっと無理。政治評論家の田崎氏によると内閣改造して、年内衆議院選挙をやって、勝利して政権基盤を固める可能性があります。菅首相は完全に過去の人なので再登板の可能性はなくはないですが、低いです。

  •  インターネットの普及、オールドメディアの衰退に伴い、日本国内の保守派(常識ある人々)の声が広く届くようになり、日本政府が韓国に対し、安易な妥協をしづらくなった、ということだと理解しています。自民党からすれば、自らの支持基盤の声を無視できません。
     その意味で、今回の”徴用工合意”(もちろん厳密には合意ではない)は、これまでの日韓外務交渉とは一線を画すエポックメイキングなものと、評価しております。今後も「日本が過去の植民地支配への贖罪意識から一歩下がる」「たして2で割る」「意味もなく謝罪を続ける」「両国政府が合意後、世論が持たないと、韓国が更なる譲歩を求める」などの悪弊は、根絶されるでしょう。
     岸田政権の行く末については、私は岸田政権の支持者では断じてありませんが、①今年4月の統一地方選、国政補選で勝利②今年秋~来年4月のしかるべき時期に解散、総選挙で勝利、を経て、来年9月の自民党総裁選で、再選というのがメインシナリオかと、思います。新型コロナのような大型パンデミック、東日本大震災のような大型天変地異や、ロッキード事件のような大型政治事件がない限り、その可能性が最も高い、と考えます。
     安倍派は後継争いで中核がなく、菅グループはご本人の実務能力に比しあまりにも発信力が弱く、アンチ岸田の旗頭となれそうにありません。河野さんは親分麻生と支援者菅の板挟みでしょうが、暫くは様子見です。岸田・麻生・茂木+安倍派一部の新主流派が当面席巻すると見ています。
     ただ岸田首相は、前任の菅首相のように広く意見を聞くのではなく、木原官房副長官や一部の側近の意見に流されやすいようなので、大チョンボをしでかして、退陣ということも、あるかもしれません。
     
      

  • サムライアベンジャー(「匿名」というHNを使うことは在日の通名を使うのと同じ行為) says:

    中央日報「「日本の呼応は足りないが、まだ始まり」…」
    https://japanese.joins.com/JArticle/302190#JCOMMENT

    岸田を責めてどんどん譲歩させようという用日根性丸出しのように見えますね。
    一度の譲歩は始まりに過ぎず、これからどんどん要求してきますよ。

  • >韓国各紙は17日の社説で「一様に不満を表明した」のだそうです。

    韓国人は、本当の意味での日韓関係正常化は望んでいないと思います。
    本当の友好国になれば、謝罪を要求し続けることも、賠償を要求することも、慰安婦像を世界中に立てまくることも、日本を貶めることも出来なくなってしまします。日本人は韓国人にとって頭を下げてくれる大変貴重な存在なのです。
    この快感を韓国人が捨てるわけがありません。
    例え100%日本が譲歩したとしても、謝罪に心がこもっていないとか恨みは1000年消えないとか、弱みを見せると収まるどころか益々かさにかかって騒ぎ出すこと必定です。
    今回の岸田首相の譲歩に対して、習近平やプーチン、それから多分バイデン大統領も、そのお人好しぶりに呆れていると思います。
    やはり、もう一つ保守系の政党を作って切磋琢磨してもらわないと、日本の政治はいつまでも未熟なままだと思います。

    • 日韓首脳会談 元徴用工問題で「求償権の放棄」確約得られず、by 夕刊フジ

      やはり日本の完敗ですね、そもそも日本に対する求償権の存在を日本自ら認めたということが、「解決済」のスタンスを取ってきた方針の変更となります。

      そもそも尹錫悦大統領は、バイデン政権を顔を立て、自己の任期の間のみ日韓関係が改善すれば良いと考えているのでしょう、その意味で、バイデン政権も次期の共和党政権に火種を繰り延べることで共和党政権にダメージを与えうると考えたのかもしれません。

      それにしても、求償権問題を取り上げているのは産経系のメディアのみ、とことん腐っていますね。

      • 自称元徴用工が日本企業または日本政府に債権を持っているという前提を日本は否定しているのだから、そもそも債権がないところに求償権はでてこないでしょう。

        「日本の借金払っといてやったからね、後で払ってね」
        「なにその借金って?日本にそんな借金ないけど」

        • 財団の日本政府に対する求償権の放棄を韓国に迫るということは、求償権の存在そのものを認めているということになるのではないでしょうか?

          従来通り「解決済」というスタンスを通していれば、おっしゃるように、自称元徴用工が日本企業または日本政府に債権を持っているという前提を日本は否定している、ということになるかと思います。

    • はるちゃん  様

        仰る通りですね。

      >今回の岸田首相の譲歩に対して、習近平やプーチン、それから多分バイデン大統領も、そのお人好しぶりに呆れていると思います。

       米国からの対日圧力云々は、小役人はいざ知らず、バイデンはそんなつもりは全く無いと思います。”条約・合意を守らない、嘘つき、コソ泥推奨”国 の 外交員の嘘八百に悪意の反日米国人が悪乗りし、無知な米国人とインテリジェンスのない日本の政治屋と仕事をしたくない小役人の合作のほとんど嘘の様なものだと思います。

       歴史と事の本質を弁えない米国軍人が、3カ国連携が出来ると良いなくらいのノリで日本に”受け入れてくれたらいいな”位の事を言ったかもしれませんが、それを説得して味方にするのが本来の役目なのに、真に受けた顔をしてインテリジェンスのない日本の政治屋を騙しにかかったのが真相ではないかと邪推しています。

      プーチン、中共、南北朝鮮、無学な米国軍人(全員ではないが)が日本は独立国ではなく米国の属国と考えてしまうのも仕方のない事かと。

      次世代の党も問題はあったのでしょうが、もう少し応援しておけば、と思ってしまいます。

  • ノラリ クラリ 時間を掛け続けていれば
     勝手にコケるかと。

    中国 米国 世界の経済を思えば
     彼の国の経済は、もう左程持たないので。

     尹錫悦 大統領は、現状を把握しているので、
     焦っているのではないかと

    放っておけば、傲慢不遜な態度で抱きついてくるかと。
     そして、世界から嫌われる。

    私は、西村さん(安倍派)に託してみたいなと思っていますが
     どうなることやら。

  • 更新ありがとうございます。

    結局多くの韓国人にとって、輸出管理の「適正化」は、本音ではどうでも良かったのでしょう。

    次期主力半導体素材は一部の韓国企業にとって死活問題かと思いますが、個別許可を取れば輸入自体はできました。特にそれが原因で韓国企業の業務が滞ることもありません。最初から論理が破綻しており脊髄反射的に反応していた面もあるかと思います。

    目的外使用を望んでいた文政権にとっては痛手だったということでしょうか。鈴置論考に見られる「日米の武器」という観点では、再び日本に促せば容易に再現可能だと現米政権は思っていそうです。

    それに韓国内で騒ぐには「情に訴える」点で、自称元慰安婦や自称元徴用工に及ばなかったのだと思います。

    そういった意味では「謝罪」と「賠償」を延々と請求できる可能性がある、自称元徴用工問題の方が「トレンド」だったのでしょう。「謝罪」にこだわるのは、その辺りの事情かと推測しています。

    まあかと言って、キシダディールの愚かさが軽減されるかどうかは別ですが。

  • いつものことですね。
    韓国外交にとって対日勝利とは、日本人が全員韓国人の前にひれ伏して謝罪することなのです。
    つまり未来永劫韓国外交が日本に対して勝利の美酒に酔いしれるのは無理であり、日本から見たら韓国の勝利でも負けたと嘆き、政府を批判するのです。
    その様子に、日本側が勝った、あるいは痛み分けだと錯覚する層が出るという良くない副作用もあります。

  • 輸出管理の件ってそもそも金銭的な損失は全くなくて、単に日本に「貿易管理後進国」の烙印を押されて、日本に指導される立場になったことがきにいらなかっただけなんですよ。

    ただ、それを輸出規制と言ってしまうことで、自ら目的を忘れてしまったことが笑えてしまいます。

    信用の証である「ホワイト国」を取り戻せず、態勢不備が認められるグループBに留め置かれたことで、彼らがえたものは何もありません。そもそも3品の輸出管理は経済的な影響は何もないのですから。

    唯一の攻撃手段であるところのWTO提訴をこんなことで取り下げてしまって、皆様が心配される中ではありますが私は大笑いしてしまいました。

    わけわからないGSOMIAも正常化したみたいですし。そもそも誰も聞いてない口頭でのたわごとを撤回しただけですが。そもそも口だけなので撤回も簡単。何ら効力がなかったことも同時に露見。

    韓国の歴史的惨敗。もうしばらくでそういう結論になると思います

  • 「評価する」は外交上どういう意味があるのだろう。岸田が自分で言っているというよりも外務省からの指示ではないか?
    ネットで調べるとネガティブな場合は、その程度に応じて

    懸念 <強く懸念< 憂慮< 深く憂慮< 遺憾< 極めて遺憾< 非難< 断固非難
    の8段階があるという。

    ポジティブな場合はネット上見当たらなかったがたぶん

    評価する<歓迎するくらいは思いつく。

    •  クワラスワミ報告書の「take note」をマスゴミが勝手に拡大解釈して騒いだ一件を思い出しますね。

  • やはり韓国世論は今回の件を全然「勝利」と認識していない様ですね。
    むしろ自称徴用工問題で日本企業に金を出させられなかったので「敗北」と認識している模様。

    「何とかして今韓国で”ロウソク”が起きるのは避けたい」と考えていた勢力は
    「結局ダメなのかよちくしょー!?」と叫ぶ羽目になるかも?

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