X

立憲民主党からやっぱり出てきた「ネット番組規制論」

やっぱり出てきました。ネット空間の言論の自由に制限を加えようとする主張です。テレ朝newsによると、立憲民主党の石川香織衆議院議員は14日、「ネット動画などの社会的な影響は大きくなっている」とし、松本総務相に対し、インターネット上の番組を含めた政治的公平性をどうとらえていくのかを問い質したうえで、「社会が考えなければいけない課題だ」と述べたそうです。自由な言論空間に制限を加えようとは、大変な思い上がりです。

テレビ局が無視する放送法第4条第1項

高市氏が怪文書を捏造と批判:本質は業界の放送法違反』でも指摘したとおり、そもそも日本のテレビ局(NHKや民放)における最大の問題点のひとつは、放送法第4条第1項の規定をちゃんと守っていないことにあります。

高市早苗・経済安保担当相は3日、立憲民主党の小西洋之参議院議員が公表した「放送法の解釈を巡り官邸が総務省に圧力をかけた」ことを示すとされる文書の記載内容を「捏造」だと述べ、もしそれが捏造出なかった場合には閣僚・議員を辞職すると応じたことが話題になっています。ただ、怪文書そのものの信憑性もさることながら、ことの本質は放送業界が放送法をさらさら守っていないことにある、という点については、改めて指摘しておく必要があります。放送法第4条第1項と放送不祥事椿事件とBPOの発足放送法第4条第1項という条...
高市氏が怪文書を捏造と批判:本質は業界の放送法違反 - 新宿会計士の政治経済評論

放送法第4条第1項は、放送事業者に対し、番組内容が公安、善良な風俗を害しないことに加え、政治的公平性を確保するとともに、報道では事実を曲げないことと、意見が対立している問題に関してはできるだけ多くの確度から論点を明らかにすること――などを要求しているものです。

放送法第4条第1項

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。

二 政治的に公平であること。

三 報道は事実をまげないですること。

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

しかし、日本のテレビ業界はこの放送法第4条第1項の規定をほとんど守っていません。『椿事件から玉川事件へと連綿と続くテレビ業界の問題点』などでも指摘してきたとおり、テレビ業界では「角度を付けた報道」が横行しているからです。

とある参議院議員が1993年に発生した「椿事件」を「テレビ局に対する政治介入を許した痛恨事」、などと述べたそうですが、この「玉川事件」は歪んだ事実関係が大々的に報じられたという意味で、椿事件と本質的にはまったく同じです。「椿事件」と比べると、今回の「玉川事件」、正直、大したインパクトがあるとも思えませんが、この問題が連日のように炎上しているという事実は、インターネットとテレビ業界の力関係が完全に逆転しつつあるという状況を示すものでもあるのです。玉川事件と放送法玉川事件のインパクト:テレ朝の処分に...
椿事件から玉川事件へと連綿と続くテレビ業界の問題点 - 新宿会計士の政治経済評論

報道しない自由vsネットの出現

1993年の「椿事件」、2009年の「メディア禍」とそれに続く民主党政権禍は、その悪しき事例でしょう。しかも、昨年9月には、故・安倍晋三総理大臣の国葬儀に際し、テレビ朝日の番組でコメンテーターとして出演した同社の従業員・玉川徹氏が番組内で堂々とウソをついたという事件も発生しています。

テレビの報道の問題は、内容が偏っているだけではありません。酷い場合は最近の「Colabo問題」のように、ほとんどろくに報じられない問題すらあります。まさに「報道しない自由」、でしょうか。

いずれにせよ、テレビ業界の不祥事が連綿と続いていること自体、テレビ業界が「政治的公平性」を守ろうとしないという証拠であり、正直、テレビ業界に放送法の遵守を求めること自体、あまり期待できないのではないでしょうか。

もっとも、救いはあります。ネットの出現と発展です。

昨今、インターネット環境が急速に普及・発展し、私たち一般人は容易にネットで情報を得ることができるようになりました。テレビ、あるいは新聞を含めたオールドメディアの報道が偏っていたとしても、さらにはオールドメディアが報じなかったとしても、私たち一般人は、さまざまな出来事を知っています。

もちろん、ネット上の情報が「偏りなく客観的で公正なものである」というものではありませんし、ネット上でも報じられていない内容が、もしかしたら存在する可能性も否定はできません。

さらには現実問題として、ネット上にも偏った情報、中立的ではない情報などがあふれています。「東京・山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士」が運営するウェブ評論サイトなども、見る人が見れば極端に偏っているに違いありません。

参入障壁のないネット空間

ただ、ネットには、新聞、テレビを中心とするオールドメディアにはない、決定的な特徴があります。

それは、「参入障壁」と「多様性」です。

まず、新聞、テレビの場合は、新規事業参入することが極めて困難です。テレビ局を新規に開業しようと思ったら、まずは総務省から放送免許を交付してもらわないといけませんし、多大な設備投資も必要です。新聞社の場合は輪転機などの設備投資も必要ですし、宅配網も構築しなければなりません。

その結果でしょうか、日本の場合、メディアの数がとても少ないのです。

全国放送を行っている地上波のテレビ局は、NHKに加え、民放が大きく5系列です。在京局の場合は日テレ、テレ朝、TBS、フジ、テレ東、在阪局の場合は毎日、朝日、関西、読売、テレビ大阪といった具合で、これら以外にローカル局はあるものの、あなたがお住まいの地域で視聴できるのは10チャンネルもないでしょう。

また、全国紙も同じく5社(読売、朝日、毎日、日経、産経)であり、これら以外にもブロック紙(中日新聞など)や地方紙がありますが、それでもあなたがお住まいの地域で発行されている新聞は、10紙あるかどうか、といったところではないでしょうか。

これに対し、ネット上の言論空間は、新規参入が極めて容易です。

設備投資といえば、極端な話、ネット環境とPCさえあれば十分ですし、YouTubeやニコニコ動画などで自身のチャンネルを開設する場合はカメラとマイクがあれば十分で、べつにどこかの官庁から許認可をもらう必要もありません。ツイッターなどのSNSをやるだけであれば、スマートフォンでも十分であり、PCすら不要です。

実際、インターネット空間の場合、ニューズメディア、ウェブ評論サイト、ブログサイト、SNSなどは無数に存在し、それらがいったいいくつあるのか、そもそもよくわかりませんし、日々、新しいニューズサイトも立ち上がっています。(※実際、今月は著者自身が協力した新たなサイトも立ち上がりました)。

このあたり、『社会のネット化でだれもがOSINTジャーナリストに』でも指摘したとおり、まさに「OSINTジャーナリスト」は百花繚乱状態です。

案外、誰もがジャーナリストになれる時代が到来したのかもしれません。当ウェブサイトで好んでいる「公開情報をベースに議論を組み立てる」という手法は「OSINT」とも呼ばれるそうですが、ネット時代が到来したことで、このOSINTの手法は私たち国民にとってすぐ隣に存在するのです。OSINTとウェブ評論よくこんなサイトが続いたものだ当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』は2016年7月以降、「読んでくださった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に、誰にでも確認ができる客観的な事実関係や統計数値、法規...
社会のネット化でだれもがOSINTジャーナリストに - 新宿会計士の政治経済評論

つまり、情報の発信者が多数出現し、人々はそれらの多数の情報から、好きなものを取捨選択することで、さまざまな意見を形成することができるようになってきたのです。

ネットがなかった時代だと、新聞やテレビの報じている内容が一種の「スタンダード」のようなものでしたが、ネット空間が持つ力が強まった現代社会においては、もはやそうではなくなりました。新聞やテレビが世論誘導を図ろうとしても、それが難しくなってしまっているのです。

そもそも一握りのごく少数のメディアが、偏った意見を「これが正しい情報だ!」などと押し付けるのではなく、最初から「左に偏った情報」(?)や「右に偏った情報」(?)が多数溢れるネット言論空間のなかで、おのおの自身が納得できるような意見を形成していき、その結果、国民世論が形成される――。

著者自身、正直、これで良いと思います。

やっぱり出てきた!ネット規制論

ただ、そうなってくると、困った立場に置かれるのが、既得権益層です。

なかでも新聞、テレビなどの情報独占に守られていた組織――とくに、官僚機構や特定野党――にとっては、ネット上の有象無象のサイトが自分たちの「知られては困る不都合な事実」をさかんに報じ始めているという状況は、非常に脅威的です。

たとえば特定野党がいつものように怪文書で与党を攻撃しようとしたところ、ネット空間で注目を集めてしまい、思わず自分自身が「炎上」してしまったという某議員の事例もあります。これもネットが出現する以前だと考えられなかったような話でしょう。

こうしたなかで、やはり出てきたのが「ネット規制論」です。

ネットにも「政治的公平」が必要か…国会で議論に

―――2023/03/14 16:00付 Yahoo!ニュースより【テレ朝news配信】

テレ朝newsが14日に配信した記事によれば、立憲民主党の石川香織衆議院議員が国会で、放送法第4条における「政治的公平」に関連し、「政治的な思想が前面に出ている番組」がネット上で多く存在すると指摘。これについて松本剛明総務相に対し、次のように質問したそうです。

こうしたネットも含めて政治的公平性をどう捉えていくのか、どういう姿勢が総務省に求められていくのか」。

これもおかしな発想です。

そもそも論として、少数の社が情報発信を完全に独占してしまっている現在のオールドメディア空間において、政治的公平性自体がほとんど確保されていないという実情を踏まえると、「ネット空間の政治的公平性」とは、片腹痛い議論です。

テレ朝によると松本総務相は「インターネット上の映像配信サービスは放送法の適用を受けないサービス」として、放送法第4条の適用を受けることはないと明言したそうですが、これも当たり前の話です。

ただ、石川議員はこれに対し、「ネット動画などの社会的な影響は大きくなっている」、「社会が考えなければいけない課題だ」などと述べたそうですが、思い上がりも甚だしい発想と言わざるを得ません。そもそもネット空間は国民の多様な意見表明の場そのものだからです。

このあたり、立憲民主党関係者や、オールドメディア関係者らは、ことあるごとに「表現の自由」だの、「報道の自由」だのと言い募りますが、じつは「表現の自由」、「報道の自由」の最大の破壊者は、オールドメディアと特定野党そのものです。

異論を述べた党員を除名処分にした日本共産党の例に見るまでもなく、極左政党や全体主義者らが議論を嫌うというのは有名な話ですが、逆に、ネット空間での言論の自由が完全に保証されていることは、日本社会が今後、世論をオールドメディアから取り返し、健全性を回復するうえで極めて重要なカギです。

そして、立憲民主党のなかに、このネット空間の言論に制限を加えるべきだとの考えを持つ議員がいるということがわかっただけでも、非常に有意義だったといえるのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • 言論の自由を掲げて、他人の言論の自由を踏みにじる。
    少数の意見を聞けといって、多数の意見を無視する。
    LGBTの心情が、といって、一般女性の心情はお構い無し。
    差別をなくす、といって、差別しまくる。
    とっても分かりやすい行動原理ですね。
    悪魔は天使の姿でやって来るそうです。人の善意につけこんで自分の利得をはかる。ネットが普及して、事例が周知されたおかげで、日本人もこのパターンに少し耐性がついたのではないでしょうか。

  • webコンテンツの政治的平等性に言及するなら、なぜテキストメディアは取り上げないのか。
    なぜ書籍に言及しないのか。
    仮に「動画コンテンツの政治的平等性担保が必要だ」って主張するにしても、そういう振り返りはしないんでしょうか。周りの人はアドバイスしないんでしょうか。
    webのテキストコンテンツや書籍や新聞や、そういったものまで考えれば、あ、無茶な主張だなって気付きそうなのに。

  • テレビ放送とインターネット放送は違う。公共の電波を使って放送するのと、インターネット回線を設置しなければならい放送を一緒くたにするなって話。

  • いかにも行き着くところが「民主」集中制という名の反民主的な共産主義社会を是とする左翼らしい言論弾圧案ですね.

    日本のマスゴミなど「文化人」という名の反文化的な人種が集う界隈では,言霊教徒は言葉の字面に縛られ言葉の意味に基づき論理的に考えるのが苦手という弱点を突いて,自分達の意見以外は認めず封殺するのを躊躇しないという点で最もリベラル=自由主義者とは縁遠い左翼の連を「リベラル」呼ばわりして日本国民が左翼の危険性に気付き難くしようと腐心してますが.

    しかし日本でも漸く若い世代の人達は,日本民族の最も大きな欠点である言霊に縛られ難くなり現実を見て考え判断する思考スタイルへと変わって来たように感じます.(この若い世代の脱言霊&リアリスト化が,言霊を悪用し望む方向へと大衆を誘導しようとし続けて来た旧来のマスコミの垂れ流す「情報」を若い世代が信じなくなった理由ではないのか?と個人的には考えています)

  • >ネット空間の政治的公平性

    あれもこれも有象無象が混在できているんだから公平性は確保できてるんだ、ってのじゃダメなのかな?

    規制とか考えるよりも、そういったものだという前提でリテラシーを育む方が、楽ちんな気がするのです♪

  • 定期的に出てきますね。「ネットを規制したい!」と言う
    マスコミとその協力者たちの本音。

    今更できる確率はかなり低いでしょうが、それでも警戒が必要なのは確かです。
    こんな趣旨の発言は叩いて叩いて叩きまくって潰すのが吉でしょう。

  • 議員、政府、報道機関が結託してネットと対決する構図がよりはっきりして来ました。
    社会の分断とは、彼らに対する不信が出発点であることに気が付いていないのです。いよいよ目障りになって来たので、本性があからさまに。

  •  極単純に考えれば、参入障壁が無く数多の小市民が発するネット情報は低俗で信頼性が低く、選ばれた機関のみが潤沢な資金を基に発する情報は高尚で確度精度が高いはずです。それなら別に何の規制や監視をせずとも、メディアはその牙城を崩されることなどありえなかったはずです。
     ですが実際は。メディアは法制度に保護され潤沢な資金をっしょーーーもない情報にばかり使い、肝心な分野では世論操作に明け暮れている。ネットの有象無象の情報を各人が慎重に精査し取得した方がよほど有意義になってしまっている。まずメディアの方がしっかりしろというハナシですわ。
     「公平」というのは不利になった方が言い出すのが常ですが。ネットはその誕生からすでに残酷なほどに公平です。

     あ、左翼界隈が高齢化しすぎて、ネットの利用そのものが不利とかはあるかもネ……選挙ガールズでしたっけ?あの加齢臭というか腐敗臭がすごいの、どうなったやら。

  • 安価に電波を割り当てられて特権化している放送メディアが政治的に偏向しているのは問題だが、誰でも好きなだけ参入出来る通信メディアが政治的に偏向しているのならそれは民意以外の何者でもないのだから問題無いでしょう。
    立民の皆さんは民意をないがしろにするようなことばかり言ってないで、電波の方の政治的偏向に対して文句を言ったらいかがでしょうか?
    お前たちクズメディアが我々に有利な報道ばっかするせいで我々はそっぽを向かれてるんだー!って。

  • 特定秘密保護法にあれだけ反対して亡命するとまで言っていながら官庁の行政文書はダダ漏れさせてネット配信しているし、言論弾圧して検閲しようとか言い出すし…

    立民議員って寝ててくれた方が国政はかどる。

1 2 3