世界的な資源高の影響もあるのでしょうか、韓国は今年1月までの時点で10ヵ月連続で貿易赤字を計上しています。ただ、データで見ると、対中貿易でも赤字に転落しているため、単純な「資源高」ではなく、韓国の輸出競争力そのものが低下している可能性が示唆されます。こうしたなか、韓国メディア『中央日報』には14日、世界の貿易高における「メイド・イン・コリア」の割合が急落しているとして危機感を示す記事が掲載されたようです。
貿易統計で見る韓国
当ウェブサイトでひとつ注目しているデータがあるとすると、それは貿易統計です。
とくに、「日本がどの国との間でどんな品目をいくらやり取りしているのか」、といった情報を確認していくと、近年の世界的な資源価格高騰が日本の貿易収支を圧迫している状況や、原発の早期再稼働・新増設が望まれる、といった「当たり前の結論」が見えてくるものです。
ただ、ここで本稿では少し趣向を変えて、日本以外の国――具体的には、韓国――の統計データを眺めてみたいと思います。
一部の経済評論家の間ではよく知られているとおり、韓国は貿易依存度(GDPと比べた輸出や輸入の規模)が高い国のひとつでもありますが、それだけではありません。国ごとに見ると、中国との貿易高が非常に大きい、という特徴を持っているのです。
主要な貿易相手国
図表1、図表2は、韓国銀行のデータをもとに、韓国の主要な輸出入の相手国を列挙したものです(※ただし、韓国銀行のデータに収録されている国の数が限定されているため、ランキングは正確なものではない可能性がある点については注意してください)。
図表1 韓国から見た輸出相手国(2022年1月~12月)
輸出相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | 6836億ドル | 100.0% |
1位:中国 | 1558億ドル | 22.8% |
2位:米国 | 1098億ドル | 16.1% |
3位:日本 | 306億ドル | 4.5% |
4位:香港 | 277億ドル | 4.0% |
5位:台湾 | 262億ドル | 3.8% |
6位:シンガポール | 202億ドル | 3.0% |
7位:インド | 189億ドル | 2.8% |
8位:豪州 | 188億ドル | 2.7% |
9位:フィリピン | 123億ドル | 1.8% |
10位:マレーシア | 115億ドル | 1.7% |
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
図表2 韓国から見た輸入相手国(2022年1月~12月)
輸入相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | 7314億ドル | 100.0% |
1位:中国 | 1546億ドル | 21.1% |
2位:米国 | 818億ドル | 11.2% |
3位:日本 | 547億ドル | 7.5% |
4位:豪州 | 449億ドル | 6.1% |
5位:サウジアラビア | 416億ドル | 5.7% |
6位:台湾 | 283億ドル | 3.9% |
7位:ドイツ | 236億ドル | 3.2% |
8位:インドネシア | 157億ドル | 2.2% |
9位:UAE | 155億ドル | 2.1% |
10位:マレーシア | 152億ドル | 2.1% |
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
これで見ると意外なことに、輸出、輸入ともに相手国のトップは1位が中国、2位が米国、3位が日本で、この順序は変わりません。日本の場合だと昨今の資源高の影響で豪州、サウジ、UAEといった資源国からの輸入が急増しているのですが、韓国の場合はそうではないのです。
(※ただし、2023年1月のデータに関していえば、輸入において豪州と日本の逆転が生じています。)
これは、「日本やドイツなどから生産に必要な部品などを仕入れ、韓国国内で加工して製品を作り、中国、香港、米国などに輸出する」という韓国の伝統的な貿易構造が大きく変わっていないことの証拠でしょう。
中国、日本の双方に対し巨額の貿易赤字
ただ、内訳で見ると、細かい変動が生じています。
たとえば、韓国の対中貿易に関しては、長年、貿易黒字を計上し続けてきましたが、昨年5月ごろから断続的に対中貿易収支が赤字に転落することが増え、2023年1月には過去最悪レベルの39.7億ドルというぼうえき赤字を計上しています(図表3)。
図表3 韓国の貿易収支(対中国)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
このことは、韓国の貿易赤字が単なる資源高によるものではなく、どちらかといえば輸出競争力自体の低下によるものであることを示唆しています。
これに対し、その一方で、日本との間では巨額の貿易赤字を垂れ流すという構造はほとんど変わっておらず、日本からの輸入額もおおむね毎月40億ドル前後で安定していることがわかります(図表4)。
図表4 韓国の貿易収支(対日本)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
つまり、1番目と3番目の貿易相手国である中国と日本に対し、それぞれ巨額の赤字を計上している、という構造です。
韓国は全体として10ヵ月連続の貿易赤字に
その結果でしょうか、韓国の合計の貿易収支は赤字に転落することも増えており、とくに2022年4月以降、今年1月まで連続して10ヵ月貿易赤字を計上していて、とくに1月の赤字は126.5億ドルと、今世紀で最悪の水準に達しているのです(図表5)。
図表5 韓国の貿易収支(合計)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
韓国といえば昨年、ウォン安が進行したことで、自国通貨安にともなう輸出競争力拡大の恩恵を受けていたはずなのですが、実際の統計で見ると、そうはなっていないのです。
とくに日本の場合は円安効果で昨年は日本企業の経常利益が過去最高水準に達したという話題がありましたが(『「円安ショック」?製造業の経常利益水準が過去最大に』等参照)、日本が円安の恩恵を受けているのに韓国はウォン安の恩恵を受けていないのは、一見すると不思議な減少です。
昨日公表された法人企業統計を眺めてみると、2022年9月期における経常利益は、製造業が牽引する格好となり、全産業において9月期としては過去最大でした。また、非製造業に関していえば、必ずしも経常利益は過去最大だったとはいえない一方で、製造業に限定していえば、データが存在する過去と比べて最大に達しました。「悪い円安」論はいったいどこに行ったのでしょうか?法人企業統計で経常利益が過去最大水準に!昨日は、法人企業統計が公表されています。これについて、予想通りというべきでしょうか、製造業を中心に、経常利益... 「円安ショック」?製造業の経常利益水準が過去最大に - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、これも冷静に考えると、韓国の貿易構造上、やむを得ない話です。というのも、韓国は日本やドイツなどの先進国から素材、部品、装備(韓国語で「素部装」)を輸入し、それを加工するという、「加工・組立貿易」の高度版をやっているだけの話だからです。
自国通貨安になったからといって、輸出や貿易黒字が増えるわけではなく、それどころかここ数ヵ月は輸出が縮小し、輸入が高止まりするという状況が続いているのは気になるところです。
中央日報の危機感:「メイド・イン・コリアの縮小」
これに関連し、興味深い解説記事を発見しました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、次の記事です。
縮小する「メイド・イン・コリア」の割合…輸出、為替相場効果も通じない
―――2023.03.14 08:16付 中央日報日本語版より
中央日報によると、世界貿易機関(WTO)の輸出入統計を分析した結果、2022年7−9月期における世界の輸入高6兆4625億ドルのうち、韓国産は1741億ドルで2.69%にとどまり、2009年以来の13年ぶりの最低水準だったというのです。
その理由について中央日報はこう述べます。
「米国と中国が主導する供給網再編の中で韓国製品の立地が狭まっているという意味だ。韓国の輸出で20%近い割合を占めている半導体景気が冷え込んだ影響も大きかった」。
「何より『ウォン安→韓国商品の価格競争力上昇→輸出好況』というこれまでの公式がこれ以上通じなくなった。昨年下半期の為替相場が1ドル=1300~1400ウォン台で推移する弱気相場の中で輸出景気はさらに早く後退した」。
韓国の貿易構造上、ウォン相場が下落すれば、外国(たとえば日本やドイツなど)から購入してくる半製品、生産装置などの価格が押し上げられますが、それだけではありません。つまり、米中貿易対立に加えて米国発の半導体規制、さらには半導体不況のショックで、韓国の輸出競争力が下がっている、というわけです。
これについて中央日報はこう指摘します。
「韓国の輸出市場に立ち込める暗雲は今年に入りさらに深まった。1月から今月10日までの累積輸出実績は前年同期比12.6%のマイナスだ。累積貿易赤字だけで228億ドルに迫る」。
「米中堅銀行のシリコンバレー銀行(SVB)破綻で世界の金融市場は薄氷を踏んでいる」。
なるほど、韓国政府関係者が抱いているであろう恐怖心が伝わってきますし、現在の韓国政府が日本との関係「改善」を急いでいるという事情は、経済、金融面からも明白です。
いずれにせよ、韓国政府の最大の狙いのひとつは、日韓通貨スワップの復活にあるのでしょう。
その規模は、2011年の「野田佳彦スワップ」(ドル建て400億ドル、円建て300億ドルの合計700億ドル)や2020年の米韓為替スワップ(ドル建て600億ドル)、さらには日印通貨スワップ(750億ドル)に倣い、600~1000億ドル、といったところでしょうか。
宏池会政権がこれにどう反応するか――。
くれぐれも、野田佳彦スワップの二の舞だけは勘弁していただきたいと思う次第です。
View Comments (19)
韓国の経済的安定は、ひいては安全保障上の安定に寄与するものとして日韓シャトル外交でスワップも再開されて、四年後の大統領交代で食い逃げされるところまで見えます。
岸田は頼りないですね
防衛費増額の件も含めて考えると
岸田は対中戦略を進めるアメリカに言われて 防衛費の増額を決めて
さらに在韓米軍が困らないように
韓国と和解するように言われたから 今回の徴用工問題に賛同した
という風にも見えます
極端な話
アメリカが日本に スワップやホワイトリストで韓国を保護しろ!
と命令されたら・・・岸田はやると思うなぁ
絶対岸田の馬鹿は通貨スワップ結ぶぞ!
通貨スワップを結んだら悪夢でしかない。本格的に韓国に騙され続ける外交に逆戻りだ。
>とくに日本の場合は円安効果で昨年は日本企業の経常利益が過去最高水準に達した
日本は遅れている、日本はダメだ。日本経済新聞社の基本話法は今も昔も変わりません。彼らに経済や未来を語らせるとロクなことにならない。人は言います「ニッケイ4946、バ〇になる」若い世代のひとたちにはひょっとしたらこのサイトのコメントは目に触れていないのかも知れませんが、日経・NHK に進取を気取らせるな、常に彼らの先を行け、というメッセージを贈りたいです。
韓国の競争力低下はもう何年も前から進んでいて、今までは半導体の好調に隠れて数字に表れなかっただけです。その原因も明らかで、手取り足取り面倒みて貰っていた日本に嫌われたためです。日本としては、ちょっと良くなるとすぐに勘違して嫌がらせしてくる隣国をこれ以上助ける理由はないでしょう。「情けは人のためならず」日本人同士では通用するこういうロジックが世界では通用しない、高い勉強代でしたが、さすがに身に付いたのではないでしょうか。
詐欺に何度も引っかかる人の名簿があるそうです。
被害にあった人は、まさかまたオレがだまされるとは!でしょうが。
韓国のクレクレ詐欺に何度も引っかかってたら、騙さられる方(日本)も頭がおかしいとなります。
日本の保守層???にも韓国に騙されても悦んでいますので・・・・。
>くれぐれも、野田佳彦スワップの二の舞だけは勘弁していただきたいと思う次第です。
キシダさん、せめて最近の歴史だけでも学んでほしい。騙されるのは何度目だよ~~~
日本国民への特殊詐欺の解明
指示役 日本外務省
掛け子 韓国
出し子 キシダさん
受け子 経団連
まさかね・・・。
韓国は昨年1年間の対日貿易赤字が240億ドル、さらに10か月連続赤字(^^)v。なかなか結構な事で。しかし日本からの輸出も、もっと減らして貰っていいですよ。
今時「メイド・イン・コリア」とかいう消費者向け商品は見当たりませんが(笑)?部品ならまだたくさんあるのでしょうか?発火や爆発、劣化等、商社やメーカーは十分気をつけて、損切りして下さい。スワップなんて、とんでもない。1,000億ドル?ウクライナに無利子で貸したほうがマシ!
(韓国の春。緊張の春。)
春ですね。あゝ配当の 春ですね。
>米議員が韓国車の盗難続出に苦言「車に保安装置なく治安危機を招いた」
コリアエコノミクス 2023/3/14
https://news.nifty.com/article/world/korea/12329-2153845/
アメリカみたいな国で、イモビライザーもまともに積んでないクルマ売ったら、
そら盗んでくれ、言うてるようなもん。
分かってて、そんなクルマ売るんは、
これ以上高い値段付けたら、誰も買うてくれんから、仕様おません、いうことやろ。
なんでそうなるん?
やっぱり、労賃上げすぎたせい?
そうやとしたら、これも文災害のひとつ、いうことになるんかいな(笑)。
イモビライザーを自力で開発する技術力がないという可能性も......
スワップを結んでホワイト国に戻して、その何年後には、お決まりの大統領が竹島上陸か。