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むしろ重要なのは「日本政府の対応」=自称徴用工問題

韓国政府が本日にも公表するであろう自称元徴用工問題への「解決策」を巡っては、青山繁晴参議院議員は「岸田文雄首相が何らかの決断を下しているわけではない」との自身の心証をブログに綴っています。また、韓国最大手の保守紙の一角を占める朝鮮日報の記事を読んでも、「日本政府の決断」がなされたのかどうかについては確認が取れません。

週末、日韓のメディアが相次いで報じている「韓国政府が6日に発表する予定の『強制徴用問題』(※自称元徴用工問題)の解決策」について、可能な限り冷静に報道されている内容をだいたい次の3点から構成されていることがわかります。

日本企業が参加しない財団を通じた第三者弁済

2018年の大法院(※最高裁)判決で勝訴した「強制動員被害者」(※自称元徴用工)に対しては、韓国行政安全部傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」を通じ、ポスコなどの韓国企業の出捐(しゅつえん)金を財源とする基金から賠償金を支払う、とする案を韓国政府が6日、一方的に発表する。基金に日本企業は出捐しない。

日本政府による「おわびの談話」の継承

韓国政府の「解決案」公表に対し、日本政府は韓国に対する「おわび」が含まれた「過去の談話」を承継する方針を改めて表明する。

日韓企業が共同で「未来青年基金」を設立

日韓両政府は両国の財界を代表する経済団体連合会(経団連)、韓国全国経済人連合会(全経連)とともに、「未来青年期金」を作り、両国の青年世代を支援する事業を推進する。2018年判決で敗訴した日本製鉄や三菱重工業も、この財団に出捐することができる。

これに加え、日本政府が2019年7月に発表した対韓輸出管理適正化措置を巡っても、「韓国が徴用工解決策を出すのを見極めたうえで、WTO提訴を取り下げるのと引き換えに、輸出『規制』を日本政府が解除する」、といった報道もあります。

もちろん、「輸出『規制』」とは対韓輸出管理適正化措置の誤りですが、ここで重要なことは、「徴用工」「輸出規制」を包括的なパッケージとして解決し、日韓関係を正常化する、という流れでしょう。

世の中的には「この解決策は日本にとっても次善のものだ」、「厳しい安保環境を考えたらやむを得ない」、などと寝言を述べる者もいるようですし、「おわび談話の承継」に至っては、「新たな談話を出すわけじゃないから問題ないでしょ?」と述べる者もいるほどです。

正直、「目を覚ましてください」と言いたくなります。

そもそも自称元徴用工問題自体、山積している日韓諸懸案(竹島不法占拠問題、自称元慰安婦問題、仏像窃盗問題、日本海呼称問題、火器管制レーダー照射問題、GSOMIA破棄騒動など)のひとつに過ぎません。

これらの多くが未解決ですし、自称元徴用工問題に至っては2019年7月に韓国が日本側の国際仲裁手続を無視した問題も未解決のままですが、これらの問題を放置したままで「包括的なパッケージとして解決」というのも、ムシが良すぎます。

というよりも、「安全保障上、日本が韓国との協力を必要としている」という命題と、「その協力のためには日韓諸懸案の解決が必要だ」とする命題は、理論的にまったく繋がりません。安保協力は、それこそ(韓国が大好きな言葉を敢えて使うならば)「ツートラック外交」で何とかなる話です。

正直、もしも日本政府が本気でこんな与太話に乗っかろうとしているとは思いたくありません。

(そういえば、週末から今朝にかけて、auの携帯端末を使用した匿名のコメント主から「日本政府は譲歩しようとしているわけではない」とする旨の書き込みが散発的になされているようですが、まさか外務省の工作員でしょうか?こんな弱小ウェブサイトに工作活動とは、ご苦労様なことです。)

こうしたなかで、青山繁晴参議院議員が自身のブログを相次いで更新しているようです。

このうち日曜日の夜に更新されたブログ記事では、青山氏自身が電話にて岸田文雄首相に対し、直接の申し入れを行ったと述べています。

外務省と官邸 ( の一部 ) が「やろうとしている」と報道されている、韓国との妥協に反対です  特に「痛切なお詫びと反省」を岸田総理が口にしたり、ホワイト国 ( グループA ) に戻すことに強く反対して、岸田総理に直接、申し入れました

―――2023-03-05 20:52:59付 『青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road』より

青山氏は「岸田首相が答えた内容」については伏せつつも、NHKや読売新聞などの「一部報道」については「報道が先走っていることも事実」、「外務省や総理官邸のなかで、こうしたことが画策されている疑いもある」としつつも、次のように述べます。

自由民主党の部会には、こうした動きは一切、何も諮られていません」。

そのうえで、「一部のメディアに対して『水面下では、韓国とまもなく合意する運びになっている』と勝手にリークする政府幹部がいるから、上記のような報道になっている」と指摘し、次のように述べています。

そのようにリークすることは、岸田総理が了承したものでは無いことは、内部情報から把握しています。<中略、今回のリークは>政府内の親韓派の勝手なたくらみです」。

そのうえで、青山氏は首相と電話した結果、「報道が先行しているのであり、何も決まっていないという確証は得た」と述べています。

この記述をどこまで信じるべきか――。

青山氏といえば、「日本の尊厳と国益を護る会」を組織し、独自の活動を精力的に行っている人物でもあるため、個人的には是非とも応援したいという気持ちもある一方で、果たして青山氏の述べている内容を妄信して良いのか、という点には、若干の疑問も残ります。

というのも、青山氏が6日の早朝にもブログを更新しているのですが、そこに違和感を覚える記述も含まれているからです。

親韓派の攻勢は、アメリカの圧力を背景に、怒濤のように

―――2023-03-06 07:30付 『青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road』より

青山氏は6日付のブログ・エントリーで、「日韓関係の劇的な改善」という報道が「どっと溢れている」理由について、「その背後には対中の軍事態勢を確立したいアメリカの意向が強く働いている」と述べます。

果たして、そうでしょうか。

そもそも論として、米国のジョー・バイデン政権が推し進める「対中半導体同盟」に、韓国は加わろうとしていませんし、日本政府による対韓輸出管理適正化措置自体も、輸出管理上の米国の韓国に対する扱いと平仄を合わせたものだという言い方すらできます。

もちろん、米国としても日韓関係が円滑に動くようになることは歓迎するはずですが、2015年の日韓慰安婦合意のときのような、「国際法の原理原則を日本に捻じ曲げさせてでも韓国に譲歩させる」という兆候は、現在のところ、見られません。

やはり、当時のジョー・バイデン副大統領(つまり現在の米国大統領)が仲介の労を取った2015年の慰安婦合意を、韓国自身が破ったというのは、重く見ておく必要があります米国自身が韓国を信頼していないのです。

そのような文脈からして、青山氏の次の記述には、どうも全面的には同意できないのです。

ゆうべ、岸田総理に電話したとき、総理の煩悶が伝わってきました。煩悶のいちばんの理由は、アメリカの圧力だと考えます」。

こうしたなかで、細かい話ですが、もうひとつ、こんな話題もあります。

【3月6日付社説】徴用問題の解決策、慰安婦合意の前轍を踏まないためには日本の呼応も必要だ

―――2023/03/06 08:24付 朝鮮日報日本語版より

韓国の保守系紙としては最大手の一角を占める『朝鮮日報』の日本語版に6日朝掲載された社説では、この自称元徴用工問題の「解決策」を巡って、「韓国国内で反対意見も多い」としつつも、韓国紙にしてはめずらしく2018年大法院判決が国際法違反であるという点を(不十分ながらも)認めています。

そのうえで、社説はこう述べます。

日本政府は過去の協定ばかりを主張するのではなく、韓国政府の決断に応えるべきだ。<中略>徴用合意が過去の慰安婦合意の前轍を踏むか、あるいは未来志向的な韓日関係の新たな足がかりになるかは日本側の対応に懸かっている」。

控え目に言ってとんでもなく無礼な主張です。

日本に対し「国際法を破ってでも韓国に譲歩しろ」と要求しているのですから、私たち日本国民としては、「ふざけるな!」という叫び声を上げたくなるようなものです。

ただ、「日本はこれに呼応せよ」と朝鮮日報が述べているという事実は、日本政府がこれに呼応するかどうかをまだ確約していない、という可能性を示唆するものです。

いずれにせよ、本日にも韓国政府が公表するであろう「解決案」については、その内容そのものよりも日本政府の対応の方が重要であることは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (29)

  • 松野長官の本日11時以降の会見を視聴したところ、気になる内容は次の通り。

    • 旧朝鮮半島出身労働者問題を巡る一連の報道は承知しているが、現時点で韓国政府からの措置の発表は行われておらず、仮定の質問にお答えすることは差し控える
    • 旧朝鮮半島出身労働者問題は昨年11月の日韓首脳会談において両首脳間で日韓間の懸案の早期解決を図ることで改めて一致し、外交当局間の意思疎通を継続している
    • 1965年の国交正常化以来続いてきた友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係を健全な関係に戻し、さらに発展させていくため、韓国政府と緊密に意思疎通していく
    • 歴史認識に関する過去の談話の継承については、本日の予算委員会で岸田総理からも申しあげたとおり、岸田政権としても歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考え
    • 日韓首脳間の今後の外交日程は決まっていない
    • 経団連の対応につき政府としてお答えする立場にはない
    • 必ず蒸し返えされる。その時、総理をしているかどうかはわからないが、国益を損なった責任をどう取るのか。
      三度も騙された無能な政治家。
      アメリカとて慰安婦合意を反故にした経過を知っているのだから無理押しはできないはず。韓国を信頼していない。

      • 同じ相手に2度騙されるような救いようのない無能な人は同じ相手に何度でも騙されます。このままにしておくと3度では済まないと思いますよ。

  • こんにちは。

    歴史を紐解くに、K国は世論工作だけで自称半万年を生き延びた国です。
    決して侮ってはいけません。
    武士が商人に1対1で口で勝てるわけはありません。
    かの国に対しては、オープンで国際法に則った協議が肝要です。
    それにより世論工作を封じるのです。
    それしかないと考えます。

    失礼しました。

  • 青山先生は頑張ってますが、岸田が何かやらかしているのではという疑念が私もぬぐえません。
    官房長官の記者会見の文言も菅政権まであった「我が国の一貫した立場に基づき」がないので、どうしても不安を覚えます。
    答え合わせの日が近づいてますが、どうなることやら。

    • > 官房長官の記者会見の文言も菅政権まであった「我が国の一貫した立場に基づき」がないので、どうしても不安を覚えます。

      同感です。さらに昨春の首脳会談会談に岸田さんが応じた際の状況に似ていることも不安材料です。
      あの時も両国マスコミの首脳会談を示唆する報道が相次いだ挙句、挨拶程度とはいえ岸田首相がいとも簡単に首脳会談に応じ、非常に落胆したことを思い出しました。狡猾な韓国対脇が甘い岸田首相は不安しか覚えません。

  • 岸田氏は3度も韓国に騙され、歴代最も愚かな首相ということで歴史に名を残すかどうかの瀬戸際ですね。
    「未来青年基金」って慰安婦財団の焼き直しでしょ。

    • 「未来青年基金」とは言い得て妙です。
      「三菱重工等の日本企業が払う賠償金」は韓国の思惑通り「日韓併合は違法」の根拠となり、未来永劫韓国人はずっと日本に請求できる賠償金となるのですから。

  • マスゴミの、韓国解決提案公式発表=解決へというミスリード的な見出しで報道する姿勢はなんなんんでしょうか?
    もう全ての見出しは、「元徴用工問題解決へ」みたいな感じで不愉快ですね。
    これは会計士様の見立てでは外務省のマスゴミへの圧力なんでしょうか?
    それともいつものマスゴミの思惑なんでしょうか?

    • 官庁に批判的なことを書いたら、その官庁に出入りできなくなる(あるいはいやがらせを受ける)と思っているんでしょうか。中国に批判的なことを書いたら、中国に出入りできなくなるみたいな。話者の言い分だけを垂れ流す記事が多すぎて、本当に不快です。
      官僚との癒着や記者の談合を助長する記者クラブは解体すべきでは。韓国やその他の国ではどのように自国の政府を取材しているのか、ご存知のかたがいれば教えてください。
      あと、この件でしつこくリークと洗脳?を続けている「日本政府関係者」は名指しで処分してほしい。議員と閣僚だけ失職のリスクを負うのはフェアじゃない。

  • アメリカの圧力というのは、青山議員の憶測でもあるでしょう。
    ただ、韓国側がアメリカにも手を回しているはずです。
    アメリカの圧力を使って日本を動かそうと工作はしているでしょう。
    実際、どの程度かは想像できませんが。

  • この問題は単なる日韓の二国間問題ではなくて、日本の自主性が問われていると思う。韓国が言うから、とか米国が言うから、では無く、日本がどうしたい、かだと思う。ヤフーニュースで、佐藤議員が岸田首相に、過去の談話を表明するのか、と質問したら、首相は定期的に反省を表明する事は大事、と答えたとあった。
    やはりこの人は只のお人好しで、国家観の無い凡人だと思った。新宿会計士さんが口を酸っぱくして説明している韓国の騙しにまんまと乗せられている。
    後の頼みは菅さんだけ。時計の針を戻さないよう期待しています。

  • 私も青山氏のブログを拝見しました。
    仮に岸田首相が米国から直々に圧力を受けて煩悶しているとするなら、自由民主党の部会が一切何も諮られてない事なんてあり得るのでしょうか?

    それとも岸田首相が煩悶している米国の圧力は外務省の親韓派による単なる口聞きの類なのでしょうか?

    どうも青山氏の5日と6日の内容の整合性が合わないように思いますがいかがでしょうか。

  • 米国の圧力については何とも計りかねますが、故安倍元首相、菅前首相の時は慰安婦合意の反古をテコにアメリカに対しても言うべきことは言える関係を築いていたのに対し、岸田首相は米国との関係がそこまで円滑ではなくなっているということはあるかと思います。一応本日の国会では佐藤議員の問いに対して林外相が「一貫した立場で緊密に意志疎通」と答えてはいましたが、非常に心許ないですね。経団連の財団設立など外堀がほぼ埋められた状況で岸田首相が原則論に立ち返って「一貫した立場」を通すことができるかどうか、冷静に見守りたいと思います。

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