X

「なぜ自民利権を批判しない?」読者の疑問に答えます

当ウェブサイトにやや論旨不明ながらも興味深いコメントがつきました。当ウェブサイトが普段から官僚、メディア、野党などの利権構造をやたらと批判するわりに、どうして「自民党利権」については批判しないのか、というものです。自民党「利権」などと言われても困ってしまいますが、いちおう、きちんとした答えがあるとすれば、曲がりなりにも自民党は選挙という正当な民主主義のプロセスで選ばれているからだ、というものでしょう。

腐敗トライアングル

腐敗トライアングルの頂点にある財務省

【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」』では、「官僚・役人」、「新聞・テレビを中心とするオールドメディア」、「特定野党」という三者を「腐敗した利権のトライアングル」と位置付けたうえで、そのトライアングルが中心に存在するオールドメディアから崩壊し始めている、とする議論を展開しました。

社会のネット化が進展して、一番困る人たちは新聞・テレビを中心とするオールドメディア産業関係者であることは間違いありませんが、それだけではありません。官僚・役人や野党議員なども、かなりの割を食うことが予想されます。いったいどういうロジックでしょうか。ここで考えておきたいのが「腐敗トライアングル」という重要な論点です。腐敗トライアングル昨日の『騙せなくなる日本:「自称徴用工」年内妥結は困難に?』では、自称元徴用工問題に見せかけて、当ウェブサイトなりのちょっとした「問題意識」を展開しました。それが...
【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」 - 新宿会計士の政治経済評論

この三者、基本的には「自由主義に基づく経済競争」「民主主義に基づく選挙」などの手続から逸脱し、不当に大きな政治権力、社会的影響力を持っている(あるいは「持っていた」)、という共通点を持っています。

この中で最もわかりやすいのは、財務省でしょう。

財務省は霞が関の官庁のなかでも最も権力を持っている組織のひとつですが、その権力の源泉は、「カネの力」にあります。

財務省には外局としての国税庁があり、その国税庁には税務に関する質問検査権があります。「故人献金」などでもおなじみの某元首相のように、並みの政治家などはあっという間に財務省に首根っこを掴まれてしまうでしょう。

その一方で、財務省には内局としての主計局があり、予算配分を采配しています。このため、財務省としては自分たちに恭順の意を示す政治家に対し、その政治家の出身選挙区に巨額の予算を配分する、といったことも可能です。

財務省の最大の目的は税「率」の最大化

こうした国税調査という「鞭」、予算配分という「飴」をうまく使い分けながら、財務省は政治家をコントロールしているのですが、これも大変におかしな話です。

そもそも財務官僚は、選挙で選ばれたわけではないからです。

選挙で選ばれたわけでもない財務官僚らが国の財布の入口(国税庁)と出口(主計局)を一手に支配し、選挙で選ばれたはずの政治家をコントロールしつつ、自分たちの利権を拡大するために増税をゴリ押ししてきたわけですから、これは本当に罪深い話です。

ちなみに著者自身の想像ですが、おそらく財務官僚の最大の目的は、「税の最大化」と「新税の創設」にあります。極端な話、税収よりも税率が大切なのであり、もっといえば、GDPの最大化よりも税率の最大化の方が大切なのでしょう。

したがって、「選挙で選ばれたわけでもないくせに事実上の政治権力を持ち、国民経済を悪化させている者たち」を「国民の敵」と呼ぶならば、財務官僚こそ「国民の敵」そのものです。

余談:昔のショートショート

なお、ちょっとした余談です、

著者自身、若いころは星新一のショートショートにずいぶんと嵌った記憶があります。そのなかで印象深いのが、こんなストーリーのショートショートです(記憶ベースで書いているため、ディテールでは異なっている部分があるかもしれませんが、ご容赦ください)。

ある殺し屋のもとに国税官が訪れた。国税官は調査の結果、この殺し屋がとある殺人事件の主犯であることを突き止めたからだ。殺し屋は観念し、犯行を自白したが、これに対し国税官は『受け取った報酬に相当する所得税を納付せよ』と告げて去って行った」。

つまり、国税官は殺し屋に対し、殺人罪ではなく所得税法違反(脱税)で捜査を行っていたのであり、自身の目的である所得税さえ徴収できれば、殺人罪での立件には興味がない、というオチです。

まだまだあるぞ!役人の利権構造

さて、余談はこのくらいにして、本題に戻りましょう。

「選挙で選ばれたわけでもないくせに利権を持っている」という者は、なにも財務官僚・財務省の役人らに限られません。

たとえば文部科学省は大学などの許認可権を握っていますが、「F欄大学」などと呼ばれる粗悪な大学が乱造され、いくつかの学校では定員割れが常態化するなか、中国人などの留学生を大量に入学させるなどして無理に定員を維持しているケースもあるようです。

そのうえで、私学に対しては私学振興助成法に基づき、教育経費の最大半額が公費で補助されます。粗悪な大学を乱造すれば、それだけ国民の貴重な税金が無駄遣いされる、というわけです。

なお、そもそも私学振興助成法自体が、「公の支配に属しない教育事業」に対する公金の支出を禁じた日本国憲法第89条の規定に明らかに違反しているという論点もあるのですが、この点については本稿では議論を割愛したいと思います。

日本国憲法第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

(※余談ですが、日本共産党は『「私学助成は憲法違反」か?』というページで、私学振興助成法は憲法違反ではない、などとする1999年9月23日付の見解を掲載していますが、日本共産党が賛成しているという時点で、やはり違憲性が極めて強い立法ではないかと疑わざるを得ないところです。)

官僚機構→「ヤギ」→野党議員

そして、この官僚機構が記者クラブを通じ、「紙を食べさせることで飼っているヤギ」が、オールドメディアを中心とする記者クラブに所属する記者の皆さんでしょう(「ヤギ」の意味については『新聞記者を鳩やヤギに例えた髙橋洋一氏に謝罪を求める』等参照)。

先ほどの『新聞衰退は自業自得 これからはウェブ言論繚乱の時代だ』の続きですが、現代ビジネスというウェブサイトに、嘉悦大学教授の髙橋洋一氏が、まことに興味深い論考を寄稿されています。新聞社に対してチクッと刺すような論考が小気味よいと感じるのは私だけではないと思います。髙橋洋一氏の要点を突いた良文「押し紙」の問題、偏向・捏造報道などの問題などを巡り、私がかねてより新聞の社会的意義については強い疑念を抱いているという点については、以前から当ウェブサイトでも主張しており、この話題は今朝方も『新聞衰退...
新聞記者を鳩やヤギに例えた高橋洋一氏に謝罪を求める - 新宿会計士の政治経済評論

想像するに、官僚機構にとっても、自分たちが垂れ流す「紙」を食べてくれる「ヤギ」たちは、情報統制しやすいという意味では大変に都合が良いのですし、「ヤギ」の側にしても、たいした勉強もしないわりに、あちらからニューズバリューのある情報を流してくれるのは嬉しいのではないでしょうか。

オールドメディアは自民党などの政治家をやたら舌鋒鋭く批判するわりに、官僚機構については滅多に批判することがありませんが(「もりかけ問題」における公文書偽造事件などはその典型例でしょう)、やはり「飼い主」に対しては批判の舌鋒は向かないのかもしれません。

また、オールドメディアが特定野党を、ときとして「報道しない自由」まで駆使して一生懸命に守ろうとするのも、「腐敗トライアングル」が「強すぎる与党」を嫌うからだ、とする仮定を置けば、スッキリと整合的に説明することができます。

実際、立憲民主党などの特定野党に対しては、くだんの「脱糞」疑惑(『立憲民主党「脱糞疑惑」続報が参院選後に出てきた理由』等参照)などを例に挙げるまでもなく、オールドメディアはそのスキャンダルを滅多に報道しようとしません。

参院選後に意外な話題が出てきました。例の「脱糞疑惑」に続報が出てきたのです。週刊ポストの報道によれば、今年5月に愛知県内の高級焼肉店で発生した(と報じられた)「立憲民主党関係者脱糞疑惑」では、愛知選挙区で当選を果たしたばかりの斎藤嘉隆参議院議員が同席していたというのです。「もりかけ・さくら」で「疑われた側が説明責任を果たさねばならない」とする姿勢を堅持してきた立憲民主党こそ、本件で徹底的に説明責任を果たさなければなりません。2022/07/25 16:00追記敬称が抜けていましたので修正しております。また、...
立憲民主党「脱糞疑惑」続報が参院選後に出てきた理由 - 新宿会計士の政治経済評論

そして、オールドメディアもさまざまな制度により守られています。

新聞業界の場合だと再販売価格維持制度、戸別宅配制度、消費税の軽減税率制度、さらには新聞社の株式譲渡を制限することを可能にする法律(正式名称は『日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律』)などがその利権の典型例です。

また、テレビ業界の場合だと、とくに地上波テレビ局に関しては「電波利権」により、新規参入が事実上排除されていますし、NHKの場合は放送法という法律そのものによって受信料収入が保証されているという状況にあります。

野党は野党で、ろくに勉強もしなくても、オールドメディアが「報道しない自由」で守ってくれますから、議員としての特権(巨額の歳費に加え、毎月100万円の非課税の「文書通信交通滞在費」、無料のJRパスなど)を享受しつつ、週刊誌片手に適当にスキャンダル追及をしていれば良いという、非常に楽な商売です。

自民党「利権」とは?

「なぜ自民党利権に甘いのですか?」

その意味で、官僚、メディア、野党議員は、まさに「腐敗の利権トライアングル」と呼ぶにふさわしい存在だ、というのが、当ウェブサイトのこれまでの説明です。

こうしたなかで、当ウェブサイトには昨日、こんなコメントが寄せられました。

前々からずっと思っているのですが、このサイトの主は野党だのマスコミだのの利権に五月蠅い割に、自民党の利権に甘いのが不思議でならないです。野党の利権なんて、万年与党の自民党のそれに比べたら質的にも量的にも取るに足らないものでしょうに。

岸田氏は有能か無能かで言えば無能だと思うけど、自民党という狭いムラ社会の中の政治力学で選ばれた程度の人材が、一国のトップを務めるに値する器で無いのはごく当たり前の話で、彼が退陣しても次もその次も基本的には外れの可能性が高いと思います。<中略>

岸田氏が国民や国益を軽視しているかのような政策を行うのも、彼自身の資質や思惑だけではなく、万年与党の自民党が抱えている腐れ縁から来る利権をまず優先し維持しようとするが故だと思います。

読みやすくするために、引用に当たって改行設定を変更しています。

全体的にやや難解であり、とくに「万年与党の自民党の利権」に至っては、はたして何を意味しているのか、いまひとつよく理解できませんが、少なくとも「このサイトの主」が「野党だのマスコミだのの利権に五月蠅い」理由について、このコメントを寄せてくださった方が理解してくださっていないことだけはよくわかります。

自民党は「利権」とは言い難い

ただ、このコメントについては次のように読み替えたうえで、これについてはきちんと説明しておく価値があると思います。

どうして『新宿会計士の政治経済評論』は官僚、メディア、野党の利権構造を批判するわりに、自民党を批判しようとしないのか」。

いちおう簡単に反論しておきますが、当ウェブサイトで自民党をべた褒めした記憶はありません。『国民民主党が「台風の目」に?連立観測報道を考察する』なども含め、普段から当ウェブサイトで説明している通り、著者自身は自民党のことを、「寂れた食堂街の、マズくて高い食堂」のようなものだと考えています。

国民民主党の玉木雄一郎代表が入閣するかもしれない――。こんな報道が出てきました。報じたのは時事通信です。個人的に玉木氏という人物には、例の「加計学園『問題』」に関連する疑惑の説明が不十分だという不満を抱いている反面、国民民主党の主張は経済的には非常に正しいものが多いとも考えており、加えて同党は憲法改正に前向きとされています。国民民主党は、日本の政治を良い方向に変える「バケツの水」となり得るのでしょうか?サマリー 「池の水理論」とは、濁った池を洗浄するためにバケツで少しずつ水を入れ替えることをい...
国民民主党が「台風の目」に?連立観測報道を考察する - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、それ以上に、著者自身は自民党を「利権」と呼ぶことには非常に大きな抵抗があります。自民党は曲がりなりにも、民主主義の手続に従い、正当に選挙された結果として、国会で第一会派を形成しているからです(といっても、参議院では過半数割れしていますが…)。

もちろん、自民党もそれなりに長年、「与党」をやっていますので、そこそこ不透明な利権が発生しているのかもしれませんが、少なくとも「官僚利権」「メディア利権」「野党利権」などは、これとは比較にならないほど大きく、かつ有害なものなのです。

日本の選挙制度は不公正なのか?

このあたり、「自民党が素晴らしい政党だから」、国会で多数を占めている、というわけではないことは間違いないでしょう。正直、「自民党以外の政党があまりにもダメ過ぎるから」、結果として自民党が勝ち続けているに過ぎないのです。

しかも、衆議院議員選挙の場合は小選挙区を主体としているため、ちょっとした支持率の差が大きな議席差につながります。結果的に自民党は有権者の過半数から支持を得ているわけではなく、選挙制度の都合で、圧倒的多数の議席を得ているに過ぎないのです。

しかしながら、諸外国の事例を見ても、選挙制度は「厳密な得票順」とはならないケースが多いのが実情です。

たとえばギリシャの国会は定員300人の一院制ですが、選挙は比例代表制であり、250議席は投票結果に基づき配分され、第1党は追加で50議席が割り当てられるという制度だそうです(2014年10月付・『衆議院欧州各国憲法及び国民投票制度調査議員団報告書』P26参照)。

また、多くの国では「足切り」として、政党得票率が一定水準以下であれば、議席を与えられないという制度を採用しています。

たとえばドイツの場合だと、連邦議会の比例代表で政党が議席を得るためには比例代表の5%を獲得するか、小選挙区で当選者が3人以上いる場合に限られます(ドイツ連邦共和国大使館『第20期連邦議会選挙(2021年9月26日)』等参照)。

こうした諸外国の実例に照らし、日本の衆参両院の選挙制度が著しく不公正なものだとはいえません。

余談ですが、さらにいえば、「投票したい候補がいないから、私は棄権した」「私は白票を投じた」、などと偉そうにのたまう方もいらっしゃるのですが、そのように主張すること自体、この民主主義国家において極めて恥ずべきことだと知るべきでしょう。

普段から当ウェブサイトにて指摘している通り、棄権・白票は白紙委任と同じです。正直、「誰かに強制されて棄権・白票を投じた」というのなら、まだ話はわかりますが、自発的な意思としてそのような行動を取っている以上、そのような行動をした有権者の意思が国政に反映されないのは当たり前の話です。

自民党が勝ち続けていることが日本にとって良いことなのか?

こうした点を踏まえるならば、残念ながらくだんの読者の方がおっしゃるような「自民党利権」などというものは存在しません。

個人的に自民党は好きな政党ではありませんが、少なくとも2012年12月の衆議院議員総選挙以降、8回の大型国政選挙で、自民党は毎回勝ち続けています。なかにはメディアが捏造した「もりかけ疑惑」で自民党に逆風となったにもかかわらず、結果的に自民党が圧勝した2017年10月のようなケースもありました。

オールドメディアが一生懸命に応援しているわりに、野党(旧民主党、旧民進党、立憲民主党など)はほとんど選挙で勝つことができず、オールドメディアが批判的な姿勢を取っている自民党が勝ち続けているわけですから、これは素直に自民党が民主主義の手続で正当に権力を維持しているものだと言えるのです。

なお、誤解しないでいただきたいのは、民主主義の手続に則って自民党が勝ち続けていること自体は事実であるにせよ、それが日本にとって本当に良いことかどうかは別だ、という点でしょう。

どんな組織でも権力を握り続けていれば腐敗しますし、実際、自民党議員の不祥事も多いのです(所属議員が多いという事情もありますが…)。

それに、現在の岸田文雄・自民党総裁(首相)が党内の意思形成プロセスなどをすっ飛ばし、「1兆円増税」を言い出しているのを見ると、やはり個人的にはウンザリするのを止めることができません。1兆円増税は、少なくとも参院選前の政権公約には含まれていないからです。

少しずつしか変わらない

たった1回の選挙で劇的に良くなるというものでもない

このあたりは、「選挙では自民党に投票したけれども、自民党政権なら無条件に支持するわけではないよ」、という人も多いのではないかと思います。

当ウェブサイトなどは参院選前に、「自民党を支持しているけれども岸田首相は支持できないという人は、宏池会以外の自民党候補者に投票してはどうか」、などと呼び掛けていたサイトです(『岸田首相に不満持つ保守こそ宏池会を狙い撃ちにすべき』等参照)。

果たして岸田首相は政治的指導者として優れているのか、劣っているのか――。こうした論点の重要性もさることながら、私たち日本国民が認識しなければならないのは、自民党政治は基本的に首相の力量だけでなく、派閥の力関係でも決まるという事実です。くどいようですが、岸田首相に不満があるからといって、自民党支持者の方が「自民党にお灸を据える」という判断をすることは控えた方が良いでしょう。参議院は任期が6年で解散がないため、賢明でない投票行動をすれば、政治が停滞するリスクがあるからです。「自民党にお灸を据えろ!...
岸田首相に不満持つ保守こそ宏池会を狙い撃ちにすべき - 新宿会計士の政治経済評論

せっかくの貴重な1票を行使するなら、「よりマシな候補」、「より酷くない候補」に投票すべきなのです。

ついでに申し上げておくならば、1回や2回の選挙で国が劇的に良くなる、ということはあり得ません。

世の中には「革命思想」、つまり「暴力によって政府を倒し、人民が権力を握れば、すべての人々が平等で豊かな社会を作れる」、といった幻想を持っている人もいるようですが、これは幻想に過ぎません。

あるいは最近だと、「右側」でも似たような発想を持っている人もいるようです。「日韓断交し、千島・樺太の所有権を国際社会に主張し、所得税の累進課税を強化します」など、実現可能性が非常に低い絵空事を述べているケースもあるようです(右に行き過ぎると一周回って左になるのかもしれません)。

「食堂街」「鉄道工事」「池の水」

当ウェブサイトではこれまで、冒頭でも紹介した「寂れた食堂街理論」だけでなく、「鉄道工事理論」、「池の水浄化理論」などを提唱してきました。

寂れた食堂街理論

政党を食堂に例えるなら、自民党は寂れた食堂街にある、高くてマズいボッタクリ食堂のようなもの。メニューに自民党食堂の悪口しか書かれていない立憲民主党食堂を筆頭に、ほかの食堂があまりにも酷過ぎるがために、結果的に自民党食堂が選ばれ続けているに過ぎない。

鉄道工事理論

選挙とは、超過密ダイヤで運行されている鉄道路線を改良するための工事のようなもの。駅を改造するにしても、路線を高架化・地下化するにしても、日々、大量の列車を安全に運行しながら、計画的に少しずつ工事を実施するしかない。

池の水浄化理論

日本社会を庭の池に例えるならば、選挙とは、濁った池を浄化するために、バケツリレーで少しずつ水を入れ替えるようなもの。うっかり汚れた水を再び池に入れてしまうこともあるが、「全体として」池の水がきれいになっているかどうかで評価するしかない。

このうち「鉄道工事理論」は、首都圏などの大都市圏にお住まいの方ならば、何となく理解していただけるのではないでしょうか。

大都市圏では日々の通勤などで鉄道システムがフル稼働していることが一般的であり、こうしたなかで「開かずの踏切」問題などを解消するためには、一部区間を高架化・地下化するなどの対策を講じなければならないこともあります。

このあたり、ゲームの世界だと、現在の路線を周囲の建物とともにブルドーザーか何かで破壊し、新しい線路を引けばお終いですが、現実の社会だとそういうわけにはいきません。

工事を進めるためには、事前に綿密な計画を練ることが必要ですし、日中の過密ダイヤを避けるために夜間に工事を行わざるを得ないこともあるでしょう。ときとして用地買収も行わなければなりませんし、そのときにはさらに工期が伸びるのです。

つまり、日本という社会はすでに完成していて、民主主義のプロセスに従って社会が運営されているのであり、この社会を良い方向に変えていくためには、理想を掲げつつも現実を見据える以外に方法はありません。すべての利権を一気になくすことは難しいからです。

なぜ楽観的なのか

ただ、著者自身はこれに関し、じつは極めて楽観的です。

オールドメディアが情報発信を独占していた時代ならともかく、現代社会では日々、インターネットの社会的影響力が増大しているからです。

ネットの世界では、情報の「タテ検証」や「ヨコ検証」が簡単に実施できるという特徴があります。「タテ検証」とは、同じ人物・組織のこれまでの発言、情報発信を時系列に並べるという作業であり、また、「ヨコ検証」とは、同じ時期に他者・他国などがどのような制度を採用しているかを並べるという作業です。

かつて、インターネットの威力が現在ほど強くなかった時代であれば、官僚機構は限られた数のメディア対策さえしっかりとやっておけば、国民世論についてはいくらでも誘導することができたのかもしれません。「国の借金」というプロパガンダを煽り、「増税やむなし」の世論を作り上げるという財務省の手法などは、その典型例でしょう。

しかし、現代ではそういうわけにはいきません。官僚機構がお得意の「腐敗のトライアングル」を使ってメディア対策を万全に済ませようとしたところで、怪しげな会計士を自称する者が運営するウェブサイトを含め、世の中に無数に存在する独立系ウェブ評論サイトのすべてを黙らせることはできないからです。

こうした理由から、増税を巡って宏池会政権が財務省に対し、下手な譲歩をすると、政権が吹っ飛ぶことになる――。

これが、現時点における当ウェブサイトの「希望的観測」、というわけです。

(なお、「財務省」を「外務省」「総務省」「文科省」などに、「増税」を「対韓譲歩」や「NHK利権擁護」、「F欄大学温存」など置き換えていただければ、同じ構図が成り立つのではないかと思いますので、是非ともお試しください。)

新宿会計士:

View Comments (38)

  • 「少なくとも現時点では自民党が一番マシだから仕方なく自民党を支持している。
    自民党よりマシな政党が現れるのなら大歓迎だが、そんな様子はない。
    もちろん自民党にも問題はあるから、そこは批判していく」

    結局はこの三行で済むんですよね。ただし、自民党を敵視している人にはこれが通じない。
    「自民党が一番マシ!?ありえない!」と強く信じているので、平行線議論にしかならない。

    • 雪だんご様
      >自民党を敵視している人にはこれが通じない。
      彼らにとって、利権まみれの悪の政党のことを自民党と呼んでいるのです。(だとしたら、他のすべての政党も、小自民党でしょうか)
      蛇足ですが、理想は実現しないから美しい。だから、政権政党は、理想からズレていく。

      • 「自民党さえ倒せば未来はバラ色!自民党がこのまま存在したら日本は滅びる!」
        「〇〇党こそ救世主!〇〇党を信じない奴はそれだけで罪!」
        こういう極端な意見がかなり多いんですよね、なぜか。

        「自民党よりマシな政党はちゃんとあるぞ。話くらい聞いてくれよ」
        こういう”断りにくい”態度を取れる人が妙に少ない……と言うか、
        アンチ自民の野党支持者は”自民党支持者とは口を利きたくない!”と言う
        態度すら珍しくない。それでどうやって世論を変えるつもりなのやら。

        • 自民党をサタンとして、自民さえなくなれば世の中全てが良くなる! というカルトだから仕方ありません。
          どうしてそうなるのかとか言う理屈は無いんです。

          自分で考えたり反論する相手は異教徒だから敵、神…というか紙(にゅーずぺーぱー)の教えは絶対なんです。

          • 生え際さま
            >自民党をサタンとして、自民さえなくなれば世の中全てが良くなる!というカルトだから仕方ありません。
            そのカルトの教えによると
             自民党はサタンである。その自民党の頭目は安倍元総理である。その安倍元総理を倒すためなら、でっち上げの疑惑を作っても許されるし、暗殺しても正当化される。
            ということでしょうか。
            それと日本社会が分断されているのは、我々のカルトに入信しない異教徒がいるからで、その異教徒がいなくなれば、日本の分断はなくなる。
            ということでしょうか。

          • もし、そんなカルトがあるのなら、旧統一教会問題と同じく、取り締まる必要があるのではないでしょうか。

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    リベラル系メディア:「自民党が選挙で勝ち続けていること自体、けしからん。(だから、日本のためを思って)民主党政権をつくるために、印象操作したのだ)」
    へミニスト:「女性議員が増えないこと自体が、けしからん。だから、一票の格差を無視しても、選挙制度を改正して、女性議員を少ない票でも当選させるべきだ」(ならば、多様性のためにも若者を代表する議員も、無理やり当選させるべき、と思うのですが)
    朝日新聞:「朝日新聞が報道していない事実を、拡散するのはけしからん。朝日新聞が報道したことだけが事実なのだ。愚民は、黙って朝日新聞を読んでいればよいのだ」
    新宿会計士:「自民党利権疑惑は、朝日新聞が報道してくれるので、棲み分けで、こちらは朝日新聞が報道しない利権を追及します」
    これって、笑い話ですよね。

    • 実の所、ネット上だと自民党支持や野党批判が目立つのは
      「既存のメディアがやるべきなのにやっていないから」が一番の理由だと思います。
      「マスコミがやらないなら自分でやる!」となっているのではないかと。

      もしマスコミが平等に報道すべき事を報道していたら、こんな”自民びいき”
      (もちろん、ネット上にもアンチ自民は沢山居ます)は起きていないと思います。

      笑い話のはず、なんですが……嫌な現実でもあります。

    • 私の思春期時代、昭和50年代から
      政治家は悪、
      ジャーナリストは正義、
      などという印象操作が行われて
      映画ドラマ小説漫画アニメと
      様々な媒体で
      そのような巨悪に挑む正義の報道みたいな作品がちまたにあふれ、
      それが当たり前みたいに受け入れて来ましたけど、

      それらを撮っている書いている人間の方に問題があることが曝されるようになったのは
      やはりネットが普及したおかげです、

      ある意味カルト教と同じ
      自分の作った作品、弁舌で
      大衆が踊ることが楽しくて仕方ないのでしょうね、

      その大衆はすでに目が覚めて
      ジャーナリストなる胡散臭い勢力を白眼視していることに
      本人達が気付いてないだけで、

      たまにこのような
      ジミンがー、ニホンがー、
      と騒ぐヤカラが現れますが、

      こちらのサイトでは
      皆さん大人の対応で、
      やんわりと諭して退場をうながしていたりと、
      上手く自浄作用が働いています、

      たまに
      あのオールドウヨクさん、
      お元気かな~、などとたま~に思いだしますね。

      • オタク歴40年の会社員さま
        >政治家は悪、ジャーナリストは正義、などという印象操作が行われて
        ということは、これから、正義のジャーナリストが政治家を倒す、というドラマが量産され、それをマスゴミが宣伝しまくるのでしょうか。そして、それを酷評するネット民を、名誉侵害で訴えまくるのでしょうか。

        • 真面目な話、
          自民利権より
          大陸、半島からの闇の利権の方がはるかに危ないのでは、

          少し前に
          新聞記者なる映画ありましたよね、
          私は観てませんけど

          原子力戦争、野生の証明、
          皇帝のいない八月、
          ブルークリスマス、
          作り手の妄想が込められた懐かしい大作の数々、

          困ったことに巨匠と呼ばれる方々が
          この様な作品を手掛けていることが問題です。

  • >余談ですが、さらにいえば、「投票したい候補がいないから、私は棄権した」「私は白票を投じた」、などと偉そうにのたまう方もいらっしゃるのですが、そのように主張すること自体、この民主主義国家において極めて恥ずべきことだと知るべきでしょう。

    ふとした思い付きですが投票棄権は素っ裸に例えられるかもしれませんね。

    「あんたなんで和服を着てるの?」
    「僕は和服が好きなんです」
    「あんたなんでジーンズ履いてるの?」
    「別になんでもよかったんですけど。。。」
    「あんたなんで素っ裸なの?」
    「着たい服が無かったものですから。」
    極めて恥ずべきこと。

    選挙の棄権は公衆猥褻で刑法犯?(笑)

    • 素っ裸の人は自分を素っ裸とは思っていないでしょう。
      「バカには見えない服を着てる!」
      つまりは裸の王様です。
      白紙投票する人は自分が賢いと思っています。

      • ストリーキングとかヌーディストビーチとかは、意識高い系(俺はアタマがいいと思ってる系)の人たちが多い気がしますので、そういうところも似てるかもしれませんね。

        親に訊いてみたらエエのにね。
        「極めて恥ずべきこと」
        と言われるに決まってますが。

    • >ふとした思い付きですが投票棄権は素っ裸に例えられるかもしれませんね。

      ひ、酷い…ww

  • ショートショートについて少し野暮ですが一言

    国税官が刑事事件の立件までしましたっけ?
    これ、官僚機構の縦割りをデフォルメしてるだけではないかと思います。
    もしくは、自分の仕事しかしない(警察に通報くらいしてもいいじゃないか)官僚への揶揄でしょうか。

    財務省が悪なのではなく、財務省が政治力を持っていること(そしてそれを自分たちの為に濫用しているような話が多いの)が悪なのではないかと思う次第です。
    税のエキスパートは国家に必要ですから。

    • >国税官が刑事事件の立件までしましたっけ?

      たしか国税官の上司がコンピューターで、殺し屋に対して殺人の動かぬ証拠を突き付けた国税官がその場で上司のコンピューターに問い合わせ、「受け取った報酬に相当する所得税を納付せよ」という命令を引き出して、それを犯人に伝達する、というオチだったと思います。要するに、そのショート・ショートでは、税務署の関心事は所得税法違反のみであり、殺人容疑については無関心だ、というものでしょう。

      ちなみに現在の財務省も、税「率」の最大化にしか関心がなく、GDPの最大化に対しては無関心ですので、星新一の世界観は現実と合致しているのかもしれませんね。

      引き続き当ウェブサイトのご愛読とお気軽なコメントのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

      • 少々ズレますが、 星新一のショートショート「白い服の男」が忘れられません。

    • 少し前に(あの)NHKで星真一のショートショートをやっていました。
      その中にこの話はなかったと思います。
      財務省に配慮したのでしょうかね?

    • 税務調査は"増差がすべてに優先"とは聞きますから…

      とりあえず歳入と歳出を財務省にまとめとるんがイカンでしょう
      ちゃんと別けとくべきやないかと思いま

  • 安倍一強時代の弊害で、「過小記載は秘書がした事」と言ってたのに、特捜部には認識していたと述べた薗浦衆院議員みたいなカスが増えましたが、こうしてちゃんと取り締まられるあたり、政治権力者に対するチェックはしっかり機能してるのかな、と。

    与党利権はあると思いますが、それは自民党利権では無いと思います。

  • 「万年与党の自民党の利権」について、自民党に限らず族議員という者がいて、
    「族議員の役割としては、特定の業界団体や利益団体のために、法律作成や政策の調整をしたり、許認可権を持つ省庁に口利きをしたり、補助金等の配分や公共事業の箇所づけに介入する等、様々な行為があった。(ウィキペディアより)」
    が利権に結び付き易いと思います。

    カネの匂いがプンプンする巨大プロジェクトになると、上は国会議員から末端は地元の地廻りに至るまで利権がらみの人々がわんさか群がります。利権の調整は必須ではありますが、裏でカネが動いて時に不可解な政治的決着となることを聞いたりもします。 自民vs野党という目で捉えれば、政権与党になれば多かれ少なかれそうなるのであって、自民利権というわけでもないと思いますが。

  • 利権と言えば官僚の方が問題だと思います。
    たとえば、私はエネルギー管理士という資格をもっているのですが、これは経産省の管轄で省エネ法によって企業を管理するときに必要な資格です。
    それで、その法律の補助をするのに省エネルギーセンターという一般財団法人があります。
    これが経産省官僚の天下り先になっていると同時に、やっている事業の過半は必要ないものです。
    職業柄よく目につくので例に挙げましたが、他の法律ごとにそれにぶらさがる役人が国、県、市のレベルに応じていくらでもいると思います。
    公金の動くところには利権が発生し固定化するのを少しでも打破したいのですが・・

    • 昔 運転免許更新時には交通安全協会なるものから 交通安全の冊子を強制的に購入させられていましたが いつ頃からか お願いに変わりました。ここも警察の交通安全課の天下り先だった。もしかしたらエネルギー管理士という資格も更新ごとにお金が必要なのでは?

  • 自民党の利権とは、すなわち「日本国民の為の政治」でしょう。
    (派閥などにより異なると思いますが、概ねで)
    自民党が嫌いな人の中には、少なからずこの利権を快く思わない勢力がいると思います。

  •  いつも拝読させて頂いております。
    「投票したい候補がいないから、私は棄権した」「私は白票を投じた」、などと偉そうにのたまう方もいらっしゃる。
     確かにそうなのですが、選挙の投票時に小選挙区制の為、自分の投票選挙区に支持できない候補者しかいない場合があるのです。それでも候補者を選択しなければならないのでしょうか。
     選挙には毎回参加していますが、特に衆院選の時に私は困っています。

    • 当方の選挙国もろくでもない候補者は多くいます。
      そういう場合、その中でも最悪から順に並べて、その最悪が当選したり影響を及ぼせないような候補に票を投じるよう心がけています。

      たとえ碌な候補がいなくても、選択できる限りは権利を放棄するのは勿体ないと思いますよ。

1 2