「NHKと契約しない」と叫ぶ「日本改革党」の沓澤亮治氏のツイートを眺めていて、ふと気づいたのですが、「NHKと契約しない」を徹底していけば、最終的には「テレビを捨てるしかない」という結論になります。そうなると、割を食うのは民放でしょう。逆にいえば、テレビのチューナーレス化を防ぐためには、民放こそ率先してNHKのスクランブル化を唱えるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
目次
沓澤亮治氏「NHKと契約しない」
ちょっとした気づきです。
元豊島区議で「日本改革党」の代表を務める沓澤亮治(くつざわ・りょうじ)氏という人物がいらっしゃいます。著者自身は正直、沓澤氏や「日本改革党」の主張について詳しいわけではないのですが、それでもツイッターをやっていると、しばしば沓澤氏のツイートを目にします。
こうしたなか、沓澤氏がこんな趣旨のツイートを発信していました。
「NHKスクランブル化でこれら全てが解決します。/捏造報道偏向報道の報道犯罪(契約しない)/豪華番組を外国に無料提供(契約しない)/紅白の不自然な人選(契約しない)/今日のデモによろしくご参集ください」。
このツイートに記載されている3つの内容のうち、「日韓歌合戦」の件については『NHK会長、紅白出場歌手めぐり「知ってる人少ない」』などを含め、当ウェブサイトでも最近、しばしば取り上げてきたとおりです。
今年の『紅白歌合戦』に出場する歌手について、「応援している歌手はだれか」と尋ねられたところ、NHKの前田会長は「知ってる人少ないんで、すみません」と苦笑交じりに語ったのだそうです。もしかして、『紅白歌合戦』(あるいは「日韓歌合戦」)自体、会長自身も知らないような人がたくさん出場しているということを、暗に認めたのでしょうか?日韓歌合戦以前の『「日韓歌合戦」はNHKの公共性議論する好機のひとつ』でも取り上げたとおり、NHKの今年の『紅白歌合戦』では、韓国系のアーティストが5組も出場し、しかもその... NHK会長、紅白出場歌手めぐり「知ってる人少ない」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
人々が問題意識を持つきっかけとしては大変に良い
このあたり、沓澤氏の主張に批判的な人からすれば、『紅白歌合戦』における「不自然な人選」を含めたNHKのさまざまな問題を、「NHKと契約しないこと」、「スクランブル化すること」などによって解決することができるのかどうかにツッコミを入れたいと思うかもしれません。
また、「デモ活動をすればNHKのスクランブル化が実現するというものでもないだろう」、などと考える人も、なかにはいるはずです。とくにこのネット社会、街頭でのデモ活動よりも、ツイッターなどのネットを通じた活動の方が、有効性は高いといえるかもしれません。
ただ、個人的な感想を申し上げるならば、沓澤氏の主張は、着眼点が面白いと思いますし、沓澤氏の行動(ツイートやデモ活動など)の結果「テレビを設置したらNHKと契約しなければならない」という現在の放送法の規定に、多くの人が矛盾を感じるきっかけになるのであれば、結果的には大成功といえるでしょう。
こうしたなか、もうひとつ気になる点があるとしたら、沓澤氏のツイートに含まれる「NHKと契約しない」を徹底した場合、いったい何が発生するか、です。
「テレビ設置」なら「契約義務」、であれば…
放送法の規定に基づけば、テレビを設置した場合には、NHKと「受信契約を締結しなければならない」とされています。
放送法第64条第1項本文・抜粋
協会の放送を受信することのできる受信設備(次に掲げるものを除く。以下この項及び第三項第二号において「特定受信設備」という。)を設置した者は、同項の認可を受けた受信契約(協会の放送の受信についての契約をいう。以下この条及び第七十条第四項において同じ。)の条項(以下この項において「認可契約条項」という。)で定めるところにより、協会と受信契約を締結しなければならない。
ということは、法治を愛する私たち善良なる日本国民は、テレビを設置すればNHKと受信契約を締結し、したがって受信料を支払わなければならなくなる、というわけです。すなわち、もしもNHKと何が何でも契約したくないと思えば、「テレビを設置しない」、という選択肢しかありません。
そして、もしも総務省がこの放送法第64条第1項本文の規定を死守し、NHKもスクランブル化を頑なに拒絶する場合、経済合理性に照らし、次に出てくるのは「合法的にNHKとの受信契約を回避する」という流れではないでしょうか。
それを突き詰めれば「テレビを捨てる」しかない
「合法的にNHKとの受信契約を回避する」――。
ここまでいえばわかると思います。人々がどこかのタイミングで、いっせいにテレビを捨て始める(かもしれない)、ということです。
そうなると当然、影響を受けるのは民放でしょう。
先日の『儲からないけれどTVer注力せざるを得ないTV業界』でも指摘しましたが、すでに民放各局にとっては、インターネット上で番組を配信する事業に乗り出しています(というか、「乗り出さざるを得ない」、と申し上げたほうが正確でしょうか)。
民放各局が共同運営する「TVer」と呼ばれるテレビ番組配信サイトが普及し、NHK受信料制度を嫌う人がチューナーレステレビに乗り換えていけば、そのうち本当に地上波テレビ業界が絶滅するかもしれません。すでに新聞業界では、紙媒体の新聞がどんどんと売れなくなり、新聞社がネットに取り込まれるという現象が生じていますが、テレビ業界もこれの後追いをしているのではないでしょうか。テレビ業界は「見ない人との闘い」テレビ業界は現在、「テレビを見ない人との闘い」に陥っている、などと指摘されるようになりました。在京... 儲からないけれどTVer注力せざるを得ないTV業界 - 新宿会計士の政治経済評論 |
つまり、民放としては「地上波テレビがなくてもインターネットがある」という家庭に番組を届けるシステムを、すでに持っているのです。仮に「NHKの番組を視聴できなくても良いから、NHKに受信料を絶対に払いたくない」、という人であれば、インターネット回線さえあれば、TVerで民放だけを視聴することができます。
つまり、テレビを捨てるかどうかを躊躇していた人たちも、「TVerを使えば(民放の番組については)視聴できる」ということに気づけば、「NHKの番組を絶対に視聴しない」と割り切ることができれば、テレビを捨てても良いのです。
もちろん、PCの場合、画面の大きさや気軽にスイッチを点けられるかどうかなどの操作性の問題もあるため、現状では今すぐ人々がテレビを捨て去るというものではないでしょう。
しかし、徐々にではありますが、世の中には「チューナーレステレビ」なるものが登場し、浸透し始めています。現在のところ、大手メーカーはチューナーレステレビには大々的に参入していませんが、人々のニーズがあれば、そのうちどこかのメーカーが作り出す可能性だってあるでしょう。
そうなると、今後5年、10年という期間で見れば、どこかのタイミングで一斉に国民のテレビ離れが発生する可能性が高いです。
民放こそNHKスクランブル化を叫ぶべきでは?
ただ、それと同時にTVerは地上波と比べて、民放に対しあまり収益をもたらさないという特徴もあります。
新聞社がウェブ版の開設に乗り出さざるを得なくなり、紙媒体の新聞がメインストリームを占めていたころと比べ、どの新聞社も軒並み収益が低迷しているとの話はよく耳にしますが、民放テレビ局もこれと同じ未来を目指しているのかもしれません。
逆にいえば、民放テレビ局がインターネット時代における業績悪化から逃れるためには、「テレビのチューナーレス化」を食い止める以外に方法はなく、そのためにはむしろ民放こそ率先してNHKのスクランブル化を求めていくべきではないでしょうか。
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民放はNHKの広告導入には危機感を持っているようだけど、スクランブル化にも触れないのは、結局電波オークションを心配しているように思います。
既得権益の死守と言う点では民放とNHKは完全に利害が一致しますからね。
紅白は元々見るつもりはありませんでしたが
例の出場者ラインナップを見て
契約解除を考え始めました
民放はイヌHK以上に見る価値感じませんし
中古の PC ディスプレイ価格を確認しました。これに Chromecast を組み合わせれば。
NHK 受信料に棄てるお金がもったいなくなること間違いなし。
船井電機あたりから物理的にNHKだけを映らなくしたチューナー内蔵TVを作ってくれればかなり売れると思うんですが。
「テレビ設置」だけなら「契約義務」はありません。正確には、「受信設備の設置」です。
受信設備とは、アンテナまたはケーブルTV用のチューナー+配線(同軸ケーブル等)+TV(受信機)がすべてそろっているのが条件です。一つでも欠けていれば「受信設備の設置」にはなりません。
ですので、契約者が、自分でアンテナ、もしくはケーブルを撤去した場合には、TVをそのままにしておいても解約ができます(ネットではTVを処分しなければ解約できないという誤報が出回っています)。
実際に小生は、今回解約をしましたが、申請用紙の解約理由を選ぶ項目の中に「ケーブルの撤去」という欄がありまして、そこにチェックを入れて返送して、解約が完了しました。
残ったTVは、PCのモニターとしてネット巡回やYoutubeを見るのに使っています。
「NHKと契約しない」ならばテレビを捨てるしかない
・・・というテーマは、なんとなく
「統一教会を排斥する」なら既存の宗教を捨てるしかない
みたいな水平展開が連想できますね。
NHKをのさばらせておくと他の民放が迷惑するみたいに、統一教会をのさばらせておくと他の宗教団体が迷惑する、という構図も同じ。
迷惑してるはずなのに他の民放が下を向いて黙っているみたいに、迷惑してるはずなのに他の宗教団体が排斥立法に黙り込んでいる、のも似てますね。
(笑)
地上波放送という番組の送信方法がとてもコストのかかる送信方法なので、テレビ局はそれだけ稼がなければならないだけで、番組の制作や送信にそれほどコストがかからなければ、視聴者が少なくて収入が少なくても、ビジネスとしては成立します。その極端な例は個人でやってるユーチューバーだけど、そこまで行かなくても海外のテレビ放送は、専門チャンネルもたくさんある 「多チャンネル放送」 があたりまえです。
日本でテレビ番組がネット配信・ネット視聴が主流になると、いちばん困るのは地方の民放局だといわれています。地上波で全国放送するには30局くらいで全国ネットを作らなければならないわけですが、民放の場合、系列局といっても地方局は全て別会社で 「番組をネットしてあげる代わりに、広告料もキー局からもらう」 という仕組みになってますから。
よその局が制作した番組を放送するわけだから、普通は制作局にお金を払って番組を買うものだと思ってしまいますが (そういう番組もあるけど) ほとんどの場合は逆で、地方局は 「おい、キー局。番組をネットしてやるから、広告料もよこせ!」 というビジネスモデルです。文字どおり 「濡れ手に粟」 の商売ですね。それでも昔は 「全国ネットの番組」 だと、広告料収入が桁違いだったので、キー局は少しでもネット局を増やそうとして、そういうやり方が一般的になったようです。(昔は番組放送中に、ネットしている地方局の名前と 「全国〇〇局ネットでお送りしています」 という文言がテロップ表示されたりしていましたよね。)
海外では一般的な 「衛星放送+ケーブルテレビ」 というテレビの視聴方法が、日本ではあまり普及しなかったのも、これが理由です。BSやCSなら最初から全国放送なので、地方局も全国ネットも必要ありません。なので本当は地上波テレビのデジタル化 (地デジ化) なんかに莫大な国費を投入するより、全ての局を衛星放送に移行させて、誰でも 「多チャンネル」 を見れるようにした上で、地上波テレビは廃止すべきでした。「ローカルニュースや天気予報、地元エリアの情報番組などはどうするの?」 と思う人もいるかもしれませんが、CS放送ならチャンネルが何百とあるから、ローカル番組も全国放送して、見たい人はどこに住んでいても見れるようにすればいいだけです。
CS放送は番組 (電波) の送信にはコストがかからないので、少ない視聴者でもビジネスとしては成立しただろうし、おもしろいローカル番組があれば、すぐに全国的な人気になったでしょう。(実際、他の地方でも遅れて放送されたり、CSの専門チャンネルで放送されたりしているローカル番組は多いです。) そうして、テレビ局のビジネス自体がネットの動画配信サイトと近くなって、今のような 「テレビ番組をネット配信すると、テレビ離れが加速して、自らの首を絞める」 という事もなかっただろうと思いますね。
ちなみに全国一社のNHKは、民放よりずっと早く番組のネット配信を開始しています。民放の 「TVer」 がスタートしたのは2015年、「NHKオンデマンド」 がスタートしたのは2008年ですから。また、全ての番組が全国放送で、ローカル番組が1つもないEテレは、現時点でも地上波放送である必要はありません。
テレビを見ていた側としても、地方民放局が期待していたのは「キー局の人気番組を流してくれること」であって、地元の情報への期待は余り無かったです。ローカルCMなど、話のネタとしては良かったですが...
だいたい「地元」の情報といっても100km離れた県庁所在地や150km先の隣県の商都の話題など、見て聞いても一体どうしろと...地域の情報というならばケーブルテレビ位の狭い範囲でないと直接役立つ情報は出せないし得られないように思います。
地方民放局は合併縮小していくでしょうが、「放送技術の開発だけでなく浦々へのインフラ維持も重要だ」などと称して「受信料の一部を経営が苦しい民放局に配分」などという話もあり得るのでは、と思ったりします。
地方民放局が期待していたのは、ではなく、地方民放局「に」期待していたのは、でした。誤記失礼しました。
先日は受信料を民放局にも配分云々とコメントしましたが、こちらは「公共メディア料金」として民放どころかネットさらに新聞まで巻き込むとは...
https://toyokeizai.net/articles/-/638715
『公共メディア料金(という美名のマスゴミ延命金)で維持(費の極々ごくごく一部を負担)しているインターネットだから、オールドメディアが承認した情報しか通しませーん』という未来が浮かびました。
その記事は 「メディア・コンサルタント」 という肩書きの人が書いたものですね。ポジション・トークなのか、本気でそう思って書いているのか分からないけど、あまりに既存メディアを持ち上げすぎていて、一般の読者や視聴者の感覚からはズレてますね。
ただ、メディア・コンサルタントでさえ、結論は 「もう自助努力だけでは無理だから、みんな助けて。既存メディアには助けるだけの価値があるから。」 なんですね。でも一般の読者や視聴者は、はたしてそこまで既存メディアに価値を見出しているか?ですね。
ちょうどBBC会長が 「2030年には地上波テレビは終わり」 と言ったことが話題になってますが、もしBBCがネット配信になったら、見ていない人から料金を徴収するのは、さすがに無理でしょう。ずっとBBCをモデルにしてきたNHKがどうするか?見ものですね。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_63918583e4b0977ef445aa17
単身赴任を機会にテレビは設置しませんでした。一度NHKの集金人さんが来ましたが、部屋の中を見せてテレビがないこと、アンテナにつながるコードも無いことを確認してらそのまま帰っていきました。テレビが無くても快適に過ごせています。正直テレビは不要ですね。
NHKの契約問題は、TV受信機との関係で「憲法違反」としか思えませんがねぇ。NHKはスクランブル放送化以外に、法治国家の日本ではいつまでも不法労働収入を上げ続けることはできないと世の中に知らしめることが重要ですね。
野党は、なぜ、このNHK問題で国民を味方にしようとしないのでしょうかねぇ。