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「日韓歌合戦」はNHKの公共性議論する好機のひとつ

NHKが今年の大みそかに放送する番組は、「日韓歌合戦」なのでしょうか。なにせ、デビューして1年前後のグループを含め、5組もの韓流スターを登場させるのです。もともと『紅白歌合戦』に公共性はないとするのが著者自身の持論ではあるのですが、NHKはその「公共性のなさ」を隠そうともしなくなってきたのでしょうか?いずれにせよ、NHK問題を議論するうえで、大変良いきっかけとなるかもしれません。

もはや「日韓歌合戦」?

果たして「紅白歌合戦」なのか、「日韓歌合戦」なのか――。

NHKが16日に発表した、『第73回NHK紅白歌合戦』の出場者を巡って、写真週刊誌『FLASH』が配信したこんな記事が、『Yahoo!ニュース』に掲載されていました。

「紅白見ない」がトレンド入り「韓国枠5組は異常」「ジャニーズも6組」「工藤静香に篠原涼子」曖昧な選考基準に集まる不満

―――2022/11/18 20:16付 Yahoo!ニュースより【FLASH配信】

これは、なぜか紅白歌合戦に韓国の歌手らが5組も参加することになったことに関連し、ネット上で強い批判が生じている、などとする話題です。

FLASHによると今回出場する5組には、それぞれ2021年12月と2022年5月にデビューしたばかりのグループが含まれており、これについて「芸能ライター」は「異例であることはたしか」だと指摘。出演する歌手の「選考基準があまりにもあいまいだ」、などと述べているのだそうです。

NHKの公共性とはなにか?

ちなみにこの「選考基準」について、NHKの杉山賢治・実施本部長が選考基準について、「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画にふさわしいか」の3点だと説明していたそうですが、「世論の支持」という時点で、紅白歌合戦どころかNHKの存在自体が怪しいのではないか、という疑問はとりあえず脇に置きます。

デビューして間もないグループを含め、日本国民からなかば強制的に受信料を徴収しているNHKが、なぜか韓国のグループを「看板番組」に積極的に出演させているというあたり、「NHK公共性」というものについて、改めて議論するきっかけにすべきでしょう。

このあたり、著者自身はNHKという組織自体、戦後日本の矛盾が凝縮された、一種の「歪み」のようなものだと考えています。

そもそも放送法では、NHKの放送を受信することができる設備を設置した者に対し、NHKと「受信契約を結ぶ義務」を課していますが、これもかなりおかしな話です。本来、「契約」とは自由意思で締結するものなのに、法律で「契約を結ばなければならない」というのも、私法の常識からは、かなりの違和感があります。

もちろん、世の中には「強制契約」という概念もありますが、これはおもに国民生活に大きな影響を与える事業者(たとえば水道、電気、ガス、鉄道、バスなど)に対し、一般消費者からの契約の申し込みを拒否することはできないというものです。

したがって、「視聴者がNHKに対し、受信契約を申し込んだら、NHKとしてはそれを拒否することはできない」という規定ならば話はまだわかります。というのも、「嫌なら見ない」という権利が消費者に残されることになるからです。

しかし、現実の契約はこれとは逆に「テレビを設置したら、視聴者は受信契約を拒否することはできない」という性質のものであり、ほかの公共サービスとは大きくあり方が異なってしまっています。

公共性の3要件に背くNHKの番組

というよりも、そもそもNHKは「公共サービス」といえるのでしょうか。

NHKウェブサイト『公共放送とは何か』によれば、公共放送は「営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送」と定義されています。

公共放送とは?

①営利を目的としていないこと

②国家の統制から自立していること

③公共の福祉のために行うこと

この①~③、どれも怪しいものです。

デビューしたての韓流スターをゴリ押しすることは、その韓流スターの宣伝を目的としているのではないかとの疑いをもたれても当然でしょうし、NHKの受信契約自体が放送法という「国家の統制」によって保証されているという現実があります。

さらには必要な許可を得ずに熊野古道を破壊してみたり、許可を得ずに尾瀬で勝手に道を封鎖してみたり、と、NHKが現在行っている放送が「公共の福祉」に合致しているのかについては、かなり微妙です。

というより、下手な優良企業とさして変わらない受信料収入を得て、職員1人あたり1500万円を遥かに超える人件費を計上し(『現代の貴族・NHK職員の平均人件費は1500万円超』等参照)、連結集団内に巨額の資産を蓄え込んでいる現在のNHKに、公共性はあるのでしょうか。

現在のNHKが公共放送を担う資格は?

もちろん、個人的には「公共のためにする放送」というものがあっても良いと思いますが、現在のNHKが「公共放送」を担う資格があるのか、という点は、別問題です。もっと言えば、政府インターネットテレビを拡充し、それをそのまま公共放送にしても良いのではないか、といった論点もあり得るからです。

ここで公共放送を「視聴率を気にせず公共性が高いコンテンツを流すメディア」と位置付けるなら、たとえば各省庁の大臣・長官らの記者会見、国会審議中継、気象庁の天気予報・災害情報などを専門に流すという意味で、政府インターネットテレビを拡充するのがもっとも手っ取り早い話です。

いや、もっと身も蓋もない話をいえば、いくつかの省庁はすでにYouTubeなどの動画サイトに公式チャンネルを持っていて、それらのチャンネルに動画を配信しています(もちろん無料です)。

わざわざ地上波向けに番組を作って流すのではなく、YouTubeなどに配信している動画をそのまま「国営放送チャンネル」かなにかで同時配信すれば良い話でしょう。

また、NHKが過去に制作した莫大なコンテンツについても、それらは過去にNHKが受け取った受信料で製作されているわけですから、これらは国民の共有財産として、NHK自身が保有する都心部の優良不動産物件、1兆円を超える金融資産などとともに国庫に返納させるべきではないでしょうか。

あるいは、国営化して職員1人あたりの人件費水準を国家公務員並みに圧縮し、チャンネルを大きく削減するのを受け入れるか、それとも現在のチャンネルや職員待遇を維持したまま余剰資産を国庫返納させたうえで民営化し、スクランブル化するなり、CMを流すなりするかをNHK自身に選ばせるべきではないでしょうか。

こうした議論をするうえで、今年の「日韓歌合戦」はちょうど良いきっかけになるのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (38)

  • おはようございます。
    早朝からの記事更新ありがとうございます。

    紅白はオファーをしても断られることもあるようです。
    やはり、多かった意見の通り、一契約一票で希望出演者を投票で決める。スポンサー様の意向なら、オファーされたアーティストも断り難いのでは。

    とにかく、NHKは受信料納付者をスポンサー様と認識していないから、嫌われると思います。
    過去の製作番組もスポンサー様には無料で配信すべきで、不動産収益はスポンサー様に配分すべきで、民間では当たり前と思います。

  • 最近のNHKの韓国推しは「小さなものから大きなものまで」。

    ●サッカーW杯のスポーツニュース枠に韓国歌手が出たことをサラッとねじ込む
    ●元講談社編集者の妻殺し裁判について、圧倒的に被告サイドに寄り添ったニュースを繰り返し流す
    ●ニュースVTR作成者の名前に中韓系記者名多数
    ●バラエティ系の番組には必ず韓国ネタを何かしらの形で入れ込む
    ●国際ニュース番組でバリューが低そうな韓国ニュースも取り上げる

    もはや「1日1韓国」がノルマになってるのかと思うほど。
    日韓歌合戦だって「日本人メンバーがいるから外タレじゃなく日本人枠で大丈夫です」って思惑丸出し。
    kpopは忠誠心の高いファンが多いらしいから、その部分だけでもリアタイ視聴率稼ぎが目当てなのかもしらんが普通にその他大勢の視聴者の反感かっていることは完全スルー。

    • 放送法第83条(広告放送の禁止)
      1 協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。
      2 前項の規定は、放送番組編集上必要であつて、かつ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない。

      この規定で、紅白で歌詞変更を検討・要求された事例もいくつもあるようです。
      その割には「Galaxy」とか「iPhone」を普通にニュース番組で紹介していますよね。

    • 私が最初にNHKの韓国押しに気がついたのは国谷裕子氏がキャスターを務めていた「クローズアップ現代」です。何十年も前ですが職場のパソコン利用がテーマで何故か当時見たことも聞いた事の無いサムソン製のパソコンがスタジオに置かれそのロゴマークがアップで映されることが暫く続きました。職場のパソコンと言えば当時は国産では東芝、富士通、NEC。外国製ではヒューレットパッカード、デルが全盛でした。本当に露骨な奴らでした。

  • 「日韓歌合戦」
    この企画,面白そうですね。審査員は日韓以外の人達で。

    P.S. 出場歌手の問題は,日本の少子高齢化と,歌番組が減ってネット移行した結果でしょう。私も新曲はネットで仕入れていますが,紅白の選曲はそれについていけていない。最近の20代以下の若い人達向けの歌,面白い曲が多いですよ。テレビでは流れませんが。

  • NHKについて、動画コンテンツは国民の資産とするのには賛成ですが、単年単位で利益が出たら国庫へ返納ってすると赤字分は国庫から補填ってなってしまいそうですね。

    お金を出せば口も出すってなりますが、今まで通り放送法など関連法規による口出しになるでしょうし。

    韓流グループについては、それよりもご当地アイドルグループを地域別で出場させるのが良い気がするんですけどね。

    もしかしたら、NHKは『韓国は日本の一地方である』との認識なのかも知れませんが、『韓国は中国の一地方である』くらいが良いと考えるのですが。

  • NHKは今年の紅白を世界を意識していると言い訳しているようですが、それならなぜ韓国アイドルに偏るのでしょうか。韓国にはアイドル歌手しかいないのですか。
    中国やアメリカ、ヨーロッパはなぜ無視するのでしょう。

    日本国民の受信料を使って、なぜ韓国アイドルを世界に宣伝してあげなければならないのでしょうか。

    民法なら番組内容が気に入らなければスポンサーを降りることができますが、NHKに対してはそういうことは出来ないし、意見をきちんと反映する仕組みがないのはやはり可笑しいと思います。

  • 10日ほど前にNHKの問い合わせフォームで日本で実際のない朝鮮のグループが選ばれる報道があるが、なぜ日本人でないか問い合わせましたが未だに返事がありません。
    問い合わせフォームに、回答を二次利用するなと書いてあったので、それにも文句書いたからでしょうか。
    ヤフー知恵袋をみたら、四回目でやっと回答にもならない返事があったと書いてあるのを見ました。
    本当に殿様商売ですね。

  • https://news.yahoo.co.jp/articles/17d636da6634c7a1b1c455c005d48f6e454f8178?page=1

    テレビの問題はPUT(総個人視聴率・各局個人視聴率の合計)が下がり続けていることに尽きる。

    民放各局は広告料以外の収入源(配信、不動産)を求めるのは当然の流れ。
    これでNHKが従来通りの受信契約を求めるのは無理がありすぎる。

    幸いにテレビは視聴率という結果が出る。

    今回の歌合戦は若者向けにK-POPを取り入れたのだろう。
    若者はもはやテレビを見ないといわれるが視聴率はどうなるのか?
    高齢者のテレビ離れが進んでしまうのではないのか?

    ある意味で今年の紅白歌合戦は要注目と言える。

    • トシさま
      >今回の歌合戦は若者向けにK-POPを取り入れたのだろう。
      (もちろん、私が怒られること覚悟ですが)NHKとしては、K-POP推しのオバサンが「K-POPアイドルを出演させろ。そうすればNHK受信料を下げないことも許される。どうせ、亭主のこずかいを減らして払うのだから」と騒いでくれることを期待しているのでしょう。

      • 引きこもり中年さま

        私が勘違いしていましたw
        NHKは普通にK-POPを高齢者に向けて届けるのですね。

        納得です。

  • 昔、大物アナウンサーが大阪へ転勤になり話題になった事が記憶に有ります。転勤の理由が紅白歌合戦で出場者の名前を間違えたからだとか。当時から紅白には興味が無く観てませんでした。紅白ってそんなに権威が有ったのかと驚いた記憶があります。これを知ったのは新聞でした。当時新聞を読んでいたのか~

    • 都はるみを美空ひばりと間違えた件ですかね?
      紅白の権威、というよりは美空ひばりに対する不敬、という意味合いの方が大きかったんじゃないですかね?

  • 世知辛い話ですが、日本国民から強制的に金を徴収するNHKは、内需拡大のためにも、日本国内で、出演料を使ってくれる歌手、タレントを出演させる義務(?)があると思うのですが。「NHKは公共放送だから、視聴率でなく、国民の生活のためにあるのだ」と開き直れたら、反論は難しいと思います。誰か国会で質問してくれないでしょうか。

    • すみません。追加です。
      今年のNHK紅白歌合戦の視聴率が上がらなかったら、NHKへの批判が高まると思うのですが。(というより、そもそも大晦日のテレビ全体の視聴率が、下がってきていると思うのですが)
      逆にいうと、視聴率が上がれば、批判を封じ込められる、ということです。

    • NHKも開き直って、「高齢者の、高齢者による、高齢者のためのNHK紅白歌合戦」と銘打って、出演者に若者(?)がいない、観客席も高齢者だけ、視るのも高齢者だけにすれば、こんな無理をしなくても良いのではないでしょうか。(となれば、開始時間もお昼すぎから夕方までになります)

      • もう、その市場は「年忘れにっぽんの唄」にとられているのでは...

      • 私の様な年寄りでも紅白歌合戦は40年以上観ていません。年寄りだからとの意見はむかつきます。皆様が歳を取らないなら解りますが、皆様も年寄りになります。

        • トトちん様
          NHKとしては、実際に高齢者が紅白歌合戦を視ていなくても関係ありません。「NHKは紅白歌合戦を高齢者のために放送している。なので、無理に若者に視てもらうようにしていないので、若者からの批判は当然である。高齢者のためなので、NHK受信料を払え」と言えれば良いのです。(つまりNHKとしては、紅白歌合戦に文句をつけているトトちん様は、若者なのです。文句をつけなくなって、高齢者になるのです)
          蛇足ですが、NHK職員としては、「自分の定年まで、今のNHKが続けばよく。その後のことは知らない」と思っているのではないでしょうか。

        • トトちん 様

          ハードコアなご年配の投稿を見ると嬉しくなります。
          歳を経て心理的ブレーキの緩みで顰蹙を買う話も珍しくないなか、こちらで自称年配の方の美文や知性の高み、気負いのない経験談、ときに気骨の有り様を拝見するのが私の楽しみです。
          良い歳を重ねていらっしゃる方の文を見るにつけ歳をとるのも悪い事でないと思えるのです。

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