X

菅総理の処遇が焦点=内閣改造で

9月にも予想される内閣改造・自民党人事を巡り、いくつかの観測が流れ始めました。そのひとつでしょうか、時事通信には本日、岸田首相が菅義偉総理を何らかの要職で起用する可能性を指摘しています。背景には自民党内の力学などへの配慮もありそうですが、それ以上に384日の在任期間で極めて大きな成果を上げた菅総理が再び表舞台に出てくるのだとしたら、それは素直に期待して良いのではないかと思う次第です。

参院選で自民党が「勝利」、今後の焦点は内閣人事

今月は安倍晋三総理の暗殺などの衝撃的な事件もありましたが、参院選では自民党は改選124議席(プラス補選1議席)のうち半数以上の63議席を占め、非改選と合わせた勢力も119議席と、単独過半数には満たないにせよ、まずまずの勝利をおさめました。

(※ただし、『少数政党の出現:自民党は比例でむしろ議席を減らした』でもふれたとおり、当ウェブサイトとしては、今回の参院選を「自民党の手放しでの勝利」とみるべきではないとは考えているのですが、この点についてはまた別の論点です。)

少数政党が議席を得て、政治的に意味はあるのか「自民党は圧勝」?たしかに議席全体では改選過半数を獲得するなど、自民党が大いに躍進しました。ただ、比例代表だけを眺めてみると、また違った景色が見えてきます。じつは、比例代表では前回と比べ1議席減少しています。そして、立憲民主党、公明党、日本共産党といった古い政党も議席を減らしているのですが、その分、誰が躍進したのかが気になります。詳細を眺めていくと、日本維新の会に加え、れいわ新選組、参政党、N党といった新興勢力が伸びているのです。新勢力図参院比例の...
少数政党の出現:自民党は比例でむしろ議席を減らした - 新宿会計士の政治経済評論

岸田文雄首相は参院選を無事に乗り切った格好ですが、こうしたなか、当面の政治的な課題が内閣改造にあることは間違いないでしょう。

岸田派は少数派閥

ただ、ここでひとつ、忘れてはならない点があるとしたら、岸田首相の出身派閥「宏池会」(岸田派)が、自民党内では少数派である、という事実でしょう。

参院選前の集計で恐縮ですが、安倍派は衆参で100人近い議員を擁し、圧倒的な多数派であるのに対し、岸田派は50人に満たず、衆議院では第5派閥に過ぎません(図表)。

図表 自民党の主な派閥
派閥名称 衆議院 参議院
清和政策研究会(安倍派) 60名 34名
平成研究会(茂木派) 33名 21名
志公会(麻生派) 38名 11名(※)
宏池会(岸田派) 33名 12名
志帥会(二階派) 34名(※) 8名
「菅派」 15名 11名
その他 50名 12名
合計 263名 109名

(【出所】著者調べ。ただし、衆参両院議長は除外。なお、麻生派には無所属の藤末健三参議院議員が、二階派には無所属の三反園訓衆議院議員が含まれているようであり、これらを含めた場合、麻生派の参議院議員は12名、二階派の衆議院議員は35名となる。また、「菅派」については衆院の「ガネーシャの会」、参院の「菅義偉を支える参議院議員の会」を合算した数値を示しており、「令和の会」については除外している)

しかも、安倍派は安倍総理という「重鎮」を失い、もしも岸田首相が今後、外交で中国などに譲歩したり、内政で財務省などに譲歩したりすれば、安倍派が黙っていないかもしれません。「抑え」がないというのは、じつに厄介な状況なのです。

このように考えていくと、岸田首相としてはむしろ以前にもまして派閥に配慮しなければならないでしょう。

時事通信「菅氏の処遇が焦点」

こうしたなか、時事通信には本日、こんな記事が掲載されていました。

菅前首相の処遇焦点 勉強会見送り静観モード―内閣改造

―――2022年07月27日07時10分付 時事通信より

時事通信によると、岸田首相が9月上旬に検討している内閣改造・党役員人事で、菅義偉総理の処遇が焦点となる、などと記載されています。

政権を一段と安定させるには菅氏の存在が大きいとの見方は強く、首相の念頭には入閣案もあるとされる」。

このあたり、時事通信によれば、岸田首相は内閣改造・党役員人事を巡って、「適材適所」と述べるにとどめてはぐらかしたそうですが、岸田首相の反応も、ある意味では当然のことでしょう。

もっとも、時事通信によれば、「安倍政権時に官房長官だった菅氏から疎まれた首相は、逆に菅政権末期に党総裁選に名乗りを上げ、結果的に菅氏退陣の引き金を引いた」とあり、「両者の関係は良好とは言えない」と述べます。

その岸田首相が菅総理の動向を「最も気にしている」理由は、なんといっても菅総理が安倍総理のもとで官房長官を務めていた時代、人事を握り霞が関に睨みを利かせ、公明党との太いパイプを生かして与党の連携維持に尽力した「実績を評価する声は根強い」からなのだとか。

時事通信はまた、岸田首相が今年に入って3回、衆院会館にある菅総理の事務所に足を運んだ、などと指摘していますが、その菅総理の側も安倍総理の暗殺を受け、勉強会の立ち上げを見送るなど、政局的な動きを控えているそうです。

有能な人材は表舞台に立つべき

ただ、政局云々もさることながら、『菅総理辞職:日本にとって価値ある384日が終わった』でも報告したとおり、菅総理は間違いなく、日本史上に名を遺す名宰相のひとりでもあります。

菅義偉内閣が本日、総辞職しました。在職日数は384日で、今世紀に関していえば、小泉元首相、安倍総理の2名を例外とすれば、菅総理を含めてすべての首相が1年前後で退陣した格好です。ただ、菅政権の384日は、日本にとって非常に価値があるものだったことは間違いありません。菅義偉内閣は384日で総辞職菅義偉内閣が本日、総辞職しました。菅内閣が総辞職 首相在職384日で幕―――2021年10月04日09時27分付 時事通信より昨年9月16日に就任して以来、菅義偉総理大臣の在任期間は本日までで384日であり、これは森義朗元首相(2000年...
菅総理辞職:日本にとって価値ある384日が終わった - 新宿会計士の政治経済評論

こうした有能な人材は表舞台に立つべきですし、もしも菅総理が閣僚などの何らかの要職(たとえば副総理兼外相、など)で起用されるならば、なにかと「危なっかしい(※著者私見)」岸田首相をうまくサポートするという点でも期待できるのかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (18)

  • 大変恐縮ですがお願いがあります。
    菅総理、安倍総理には総理の前に「前」「元」をつけてほしいです。一文に首相、総理、総理が並列されているのは奇妙であり読者に誤解を与えかねません。面倒であれば「以下敬称略」として菅氏、安倍氏でもよいと思いますがいかがでしょうか。

    また、この記事だけではないのですが「議論」という熟語を多用されてます。意味は複数人が論じ合うことですが、「議論」を誤用している場合があります。どうしてもそこで目が留まってしまうので、「議論」を→記事、論評、批評、見解、主張等に変えて頂けると助かります。

    細かいことを書いて申し訳ないです。

    • 総理について
      付ける付けないは自由でよいのでは?
      一般常識と読解力があれば何も誤解は生じないかと。

    • 敬称略
       簡単に言えば「呼び捨て」のこと
      敬称略なら「安倍」「菅」です

    • 首相経験者の様な高位者については退任後もその敬称でお呼びする慣習があるようです。

      新宿会計士様もそのことを念頭にされつつわかりやすい様に、現職の岸田氏については「岸田首相」、元/前首相の安倍氏、菅氏については「安倍総理、菅総理」と表現されていると思っておりました。

    • 明確に間違った記述でもない限り、そんな細かいことで目くじらを立てる必要もないかと。
      菅さんや安倍さんの経た役職なんて普通の国民から見たらわかることです。誤解を与えかねない、というのも杞憂であろうと思われます。

      オールドメディアの報道でも、民主党三羽烏を未だに「元首相」や「元総理大臣」などと呼称しています。

  • あ、今日気づきました。
    菅氏は麻生・安倍に並ぶ「総理格」だったんですね。

    菅氏が重用されるのは歓迎なんですが、セクシーなのがくっついてきそうなのが気になります。

    • 元ジェネラリスト様

      ね!
      神奈川とか横浜って人材いないでしょ!
      菅前総理、秋田の人だし。

      未だに高度成長期の名残で労組だのテレビ局のアナウンサーとか芸能人あてがわれるんです。
      得票数とか見ると県民や各市民がそれぞれの選挙で飽き飽きしてるのがわかるんですが、政党にはそれがわかってない。
      誰か芯のある人が現れたら入れ食いなのに。

      まぁ一票の格差で他の都道府県の1/3人前しか公民権認められていない県ですから…
      税金も1/3でバランスとって欲しいもんだ。

      • 神奈川ですが、いつも選挙で悩みます。
        ビミョウ、というやつです。
        だけど決めねばなりません。(笑)

        • 知事もいい加減黒岩には引っ込んで貰いたいんですがロクな選択肢がありません@甘利地元県民

  • 麻生総理は菅総理を閣内に送りたい様だとの観測はどこかで見ましたが…最近の麻生菅会食はそういった意味合いだとかで、閣内入りを視野に勉強会立ち上げを足踏み中といった記事も見たように思います
    ただ菅総理は「趣味は安倍晋三」と発した程のひとですから、結果的に閣内に入ったとしても、麻生総理と菅総理に岸田首相のお三方で同床異夢となってしまうのではないか?という野次根見立てもしてしまいそうではあります…
    あーでも河野太郎氏に対するスタンスは麻生さん菅さんは近い?かも??

  •  仮に、菅義偉氏が次期改造岸田内閣で要職に起用された場合には、岸田首相や林外相(?)が韓国に対して安倍元総理の遺志に反する譲歩を企てた場合に、強力なストッパー役を果たされると思いますので、安心できます。さて、どうなりますやら、楽しみです。

  • 菅前総理を入閣させるのであれば、副総理兼総務相あたりと予想します。軽量ポストでは意味がありませんし、さりとて外相や財務相に向いているような気もしませんので。
    ついでに、甘利明氏を外相か財務相あたりに据えられれば良いのですけどねぇ。

    • 報道では副総理を用意しているようです。まあ麻生さんの負担軽減と言う事でしょうか

  • 岸田首相が安倍路線の踏襲を選ぶなら、菅副総理という選択は内外に対する岸田路線の意思表示としては効果的かと思います。
    岸田首相の政策に対する予見可能性が高まることは、国際政治と国内政治の安定にとって大変有益かと思います。
    岸田色?に拘って、宏池会的中庸路線を選択した場合は、国際的にも国内的にも不安定化するような気がします。
    FOIPと低金利政策の継続に加えて、教育改革、子育て支援などやるべきことは決まっていると思いますが。

  • 菅は政策は極めて有能だが政局が決定的な弱点。

    官房長官時代から周りに派閥を作るよう言われたが作らず。
    首相就任の支持率が高いうちに解散せよと周りの長老たちに強く言われたが解散せず。
    地元の関係があったにせよ小石河連合の後見となって保守岩盤の顰蹙を買う。

    このように菅は政局を決定的に苦手としているし、やや独善的な面が見られる。
    勉強会からの派閥形成など数年遅れ、周回遅れの遅すぎる行動でしかない。

    菅の暴露本によると他人の手柄を横取りして自分のものにする岸田を嫌うとあった。
    岸田首相のもとで重職についた菅がどう振舞うかは大変に興味深い。

    • 私が思うに菅氏は政局だのといった政治家としてのエゴや党利党略よりも、コロナ禍という未曽有の国難を乗り切ること、東京五輪を成功させること、安倍さんのやり残したことを少しでも前進させることを愚直に優先したのではないかと思っていますけどね。
      あれだけマスゴミや特定野党に言いたい放題言われても耐え忍んで殆ど反論しなかったのは、そういう思いの表れかと。
      官房長官時代の定例会見のやり取りを見ていれば「原稿見ないと喋れない」とか「自分の言葉を持たない」とかいう誹りは当たらないと思うし。

      • 資質と適正の問題かと。

        菅の資質、適正は官房長官であり首相ではない。
        自民の首相に絶対に必要なのは「選挙に強い」こと。

        ここを示せなかったのが菅であり岸田の後塵を拝した。
        決して菅を下げているのではなく適所適材のはなし。

        岸田政権下の菅に期待したい。