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「子会社の不祥事」報じないNHKに公共放送資格なし

NHKの子会社「NHKグローバルメディアサービス」の44歳の元職員が合計1.8億円の乗車券などを騙し取った疑いがもたれている件について、NHK自身が報じていないという事実をどう見るべきか――。いわば、NHKが「公共放送」を騙る資格を持っていないことを、NHK自身が認めているようなものです。

限りなく怪しい「公共放送の定義」

問題:次の文章を読んで、正しいか、間違っているかを答えなさい。

NHKとは、公共放送である」――。

NHKは、公共放送であると自称している組織として知られています。

ただ、「公共放送」と言われても、なんだか意味がよくわかりません。

NHKウェブサイトの『よくある質問集』というページには、こんな「定義」(?)っぽいものが掲載されています。

公共放送とは何か

電波は国民の共有財産であるということからすると、広い意味では民放も公共性があるということになりますが、一般的には営利を目的として行う放送を民間放送、国家の強い管理下で行う放送を国営放送ということができます。これらに対して、公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送といえるでしょう。

NHKは、政府から独立して 受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体であり、今後とも公共放送としての責任と自覚を持って、その役割を果たしていきます。

―――NHKウェブサイト『よくある質問集』より

ここに記載されている内容、「定義」というにしてはちょっととっ散らかっているのですが、敢えて要約すると、NHK自身が考える「公共放送」とは、次の3つの要件を満たす放送のことだということです。

公共放送の3要件
  • 営利を目的としていないこと
  • 国家の統制から自立していること
  • 公共の福祉のために行うこと

(【出所】NHKウェブサイト記載を参考に著者作成)

ということは、この3要件に照らし、現在のNHKに公共放送を名乗る資格があるかを判断するのが手っ取り早そうです。

関連会社で利益をロンダリングするNHK

まず、「営利を目的としていないこと」については、微妙です。NHK自身、たしかに「営利社団法人」ではありませんので、「非営利組織である」といえなくはありません。

ただ、NHK自身が行っている放送は、年末恒例の『紅白歌合戦』に代表されるとおり、営利性と無縁とは言い難いものも数多く含まれています。紅白歌合戦の場合はその年の人気歌手をド派手な舞台で歌わせ、審査員には野球選手などの著名人を多く招きます(最近だとユーチューバーも招かれるそうです)。

また、NHK自身が受信料で製作したコンテンツについては、NHKの子会社などを通じてDVD、ビデオ、出版物、キャラクターグッズ、イベント、上映、モバイル展開など、商業目的で二次利用されています(NHKウェブサイト『番組の二次利用』等参照)。

受信料で製作したコンテンツを、子会社・関連会社などを使用して二次利用して儲け、それを「ロンダリング」するという行動自体、理解に苦しみますが、そもそも商業目的の二次利用自体、これを「営利を目的としていない」などと言われても、ちょっと困惑してしまいますね。

(※余談ですが、職員1人あたり1600万円近い人件費を計上し、連結集団内に多数の優良不動産物件に加え、年金資産を含めて時価1兆円を超える金融資産を抱え込んでいること自体、「営利団体」あるいは「暴利団体」と呼ぶにふさわしい気がします。)

国家の統制で成り立つNHKは自ら公共性を否定している

一方、「国家の統制から自立している」かどうかに関しては、答えは明らかに「NO」でしょう。

そもそもNHKは受信料を前提として成立している組織であり、NHKが受信料をなかば強制的に視聴者から巻き上げる根拠が、放送法(第64条第1項本文)という「国家が作った法律」で、視聴者に対して受信契約の締結が義務付けられていることにあります。

当然、NHKには総務省・総務官僚を批判することなど出来っこありません。総務官僚の起源を損ねて放送法第64条第1項本文の規定を廃止されてしまえば、NHKの存続自体が危うくなるからです。

もしも本当にNHKが「国家の統制から自立している」というのならば、そもそも視聴者に契約を強制する放送法の規定をなくし、スクランブル化したうえで純粋に国家の統制なしに事業を運営しているべきでしょう。

(※もっとも、半強制的にライセンス料を負担させるというのは、英国のBBCなどでもみられる話ではありますが…。)

いずれにせよ、NHKが「公共放送」の要件に「国家の統制から自立する」なる項目を掲げていること自体、NHKが「公共性」を自ら否定しているのと同じでしょう。

NHKの放送に、公共性はあるのか?

そのうえで、「公共の福祉のために行う放送」という要件については、「公共性」自体の定義が不明なのですが、日本語でいう「公共」という言葉は、「広く社会一般の利益」、といった意味合いがあることが一般的でしょう。

ということは、たとえば「民放各局が報じないような事件・事故」であっても、きちんと丁寧に取材して報じていれば、「NHKは公共の福祉のために放送を行っている」、などといえるかもしれません。

では、こんな事例はいかがでしょうか。

乗車券不正詐取か 容疑の元NHK子会社社員逮捕

―――2022/6/1 12:32付 産経ニュースより

産経ニュースに本日12時半ごろに掲載された記事によれば、NHKの子会社である「NHKグローバルメディアサービス」の44歳の元従業員が1日、虚偽申請に基づき電車の乗車券などを詐取した容疑で警視庁に逮捕されたのだそうです。

直接の逮捕容疑は2021年10月、東京都渋谷区の旅行業者に虚偽の申込書を提出し、乗車券・新幹線特急券など約120枚・100万円相当を騙し取ったことですが、この容疑者は、2017年から21年にかけて、合計約780回、約1億8千万円分の乗車券などを騙し取った疑いも持たれている、とのことです。

少なくとも本日14時30分時点ではまだNHKウェブサイトには掲載されていない模様

5年間にわたってこんな多額の金額を詐取されるまでまったく気づかないNHK子会社自体、企業統治に深刻な欠陥でもあるのではないかと思わざるを得ませんが、ただ、それ以上に驚くのは、本稿執筆時点において、NHKがこの事件を無視しているという事実です。

…。

ここに列挙しただけでも、本日11時49分から13時58分にかけて、多数のメディアがこの事件を報じているのですが、情報源に注目していただくとわかるとおり、報じたメディアにNHKは含まれていません。

少なくとも14時30分時点において検索してみても、NHKがこれを報じたという事実はありません(いや、もしかして例の「noindex」タグを使用している可能性に加え、本稿で指摘したことを契機に、NHKがアリバイ作りのためにシレッと配信するという可能性などについては否定できませんが…)。

ちなみにNHKは経営の実態を見え辛くするために、多数の関連会社を作り、コンテンツの二次利用権などを含めてさまざまな利権を連結集団内でロンダリングしているフシがあります。

今回の非常識な額の使い込み事件の背景にも、NHKを巡るコーポレート・ガバナンスの問題があることは間違いないのですが、上記で列挙したメディアもこのあたりの事情についてはあまり深く踏み込んでいるフシはありません。

いずれにせよ、オールドメディアが取り上げないのならばネットが取り上げるだけの話です。

幸いなことに、ネット上ではNHKを含めたメディアなどの不祥事も、半永久的に残すことができます。「NHKが公共放送として存在する資格がない」という事例は、NHKが自ら積み上げてくれる格好であり、ネット側はそれらを黙々と収拾し続ければよいのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (4)

  • 以前「NHKの犯罪率は異常に高い」とする説が2ちゃんねるなどでしきりに取り上げられていましたね。

    最近、許せなかったものにこんな事件がありました。

    某NHK支局の職員らが、休暇でエゾシカ猟のために入山していたところ、猛吹雪で車が立ち往生し、当該職員がロードサービスに救助要請したものの、勝手に避難してしまい、助けに向かったロードサービスの男性が探せども要請者が見つからず、体力を消耗し雪に埋もれたまま亡くなったという何とも痛ましいものでした…今も許せない…

  • NHKと言えば、5/27に兵庫県警記者クラブを除名された件の方が公共放送として問題ありかもしれませんね。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/63bf144ee6c54dad2308f2e264811e600abaacf9
    なんでも記者クラブ代表として遊覧船事故被害者から全社に共有するように手渡された資料を独占して放送とか。
    まあ、記者クラブ自体が既得権益の利権集団ですから、除名処分となっても、談合で数ヶ月くらいで復帰するのでしょうけれど。

    • ん?100万円?

      逮捕容疑の被害額だけを報じているので、余罪までを含めた各社報道の1.8億円と大きな乖離が生まれてしまっているようです。

      火に油を注ぐとは、まさにこの事ですね。