ロシアと西側諸国の緊張が航空業界にも及んできました。英領バミューダがロシア機に対する耐空証明を停止したことを受け、航空業界でも西側諸国とロシアの緊張関係が高まっているようです。ロシア側はこれに対し、国内的に耐空証明を継続するとする法律にプーチン大統領が署名したほか、「リースされた航空機をロシアの航空会社に帰属させる」などの法律も検討されているようです。
航空業界に及んできた経済制裁
ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、西側諸国の経済制裁が多方面に及んでいます。こうしたなか、少し前から指摘されていた、ロシアに対する航空機を巡っても、何やら気になる動きが出てきたようです。
最近だと欧州諸国がロシア機に対し、領空の通過許可を出さないという措置を講じ、ロシアも対抗措置として欧州機の領空通過を認めない措置を講じているため、結果的に航空便の世界では大きな物流の混乱が生じているようです(『見えてきた対ロシア制裁議論:航空便ではすでに影響も』等参照)。
英国「ロシアを常任理事国から解任する案を議論する用意がある」ロシアに対する経済制裁が、各方面に及んできています。Bloombergは本日、EUが打ち出すロシアに対する具体的な金融制裁について報じています。また、英国ではロシアの常任理事国からの解任という議論が出ているほか、すでに航空便の世界では、欧州系航空会社のロシア領空通過禁止措置の影響で、日本路線が減便の憂き目に遭っているようです。ロシアの7つの銀行に対するEUの制裁ロシアに対する経済制裁の概要が、少しずつ見えてきました。Bloombergは日本時間の今朝... 見えてきた対ロシア制裁議論:航空便ではすでに影響も - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、これに加え、昨日はもう少し衝撃的な話題もありました。
ロシア航空機、バミューダが耐空証明停止-SMBCはリース契約解除
―――2022年3月14日 11:46 JST付 Bloombergより
Bloombergによると、英領バミューダの民間航空局は13日、「航空セクターに対する国際的な制裁」を受け、「ロシアが運航する旅客機の安全監視を継続する能力に重要な影響を及ぼしている」として、ロシアに関係するすべての航空機の耐空証明の登録を13日付で停止したのだそうです。
基本的に、航空機を飛ばすためには、耐空証明(※)が必要だそうです(※なお、「耐空証明」のことを、英語では “Certificates of Airworthiness” などと呼び、航空業界ではこれを “C of A” と略することもあるのだそうです)。
ロシア側は耐空証明の国内化とリース資産没収で対抗
ロシアの機体なのに「バミューダ籍」というのも奇妙に聞こえますが、このあたり、税金の関係でわざとバミューダで登録するということは一般に行われている話でもあります(一説によるとロシア国内の航空機のうち700機と半数近くがバミューダ籍なのだとか)。
また、Bloombergによると、ロシアが外国から借り入れている旅客機は10日時点で523機、市場価格約103億ドルと推定される、などとしつつ、今回のバミューダの判断を契機に、リース各社がロシアに対するリース契約の解除の判断を加速させる可能性があると指摘。
実際、三井住友フィナンシャルグループや住友商事からなるコンソーシアム傘下のSMBCアビエーションキャピタルなどは、ロシアの航空会社とのすべてのリース契約をすでに打ち切った、などとしています。
ただ、これに対し、ロシアのタス通信によると、プーチン大統領は14日、「民間航空の支援措置に関する法律」に署名。「ロシア企業がリースで借り受けた外国の飛行機の権利を登録し、国内の耐空証明を発行する」ことが可能になった、としています。
Putin signs law on registration of rights to foreign airplanes
―――2022/03/14 20:21付 タス通信英語版より
おそらく、このタス通信の報道は、バミューダ籍のロシア機などが耐空証明を取り消されたことを受けたロシア側の措置でしょう。
リースされた資産の没収を検討も?
また、ロシア側ではリースされた航空機を西側諸国に返還せず、これらをロシアの航空会社の所有物とする法律も議会に上程されているのだそうです。
Russia proposes registering leased planes as airlines’ property
―――2022/03/10 23:05 GMT+9付 ロイターより
個人的には、ロシア当局が西側諸国から貸与されている航空機を接収したとして、整備をどうするつもりなのかは気になるところです。
いずれにせよ、2月24日のウクライナ侵攻とともに、ロシアは名実ともに、法治国家ではないことが西側諸国に示されてしまっている格好であり、なんだかロシアがますます、私たち西側諸国からは「はるかに遠いところ」に行ってしまっているように思えてならないのです。
View Comments (16)
ジャイアンなみになってきましたね。国家としての所業とは思えません。
ジャイアン。
ISSでコロニー落としするようですし。
「貴公は、ヒットラーのしっぽだな。」
現実がアニメの後追いしてはいけませんね。
プーチン「ヒットラーの尻尾の戦いぶりをご覧ください」
??「意外と大統領も甘いようで」
もう死亡フラグ立ってるよw
耐空証明は、簡単に言うと登録された国で取って世界に伝えるで飛行が可能になります。
飛行時間に合わせて、定期的に部品交換も含めた整備が必要なため、メーカーのある国と為替的に切り離されてしまうと遅かれ早かれ1年で耐空証明は切れます。
部品によってはいつ墜落してもおかしくないとなるので、登録を無理やりロシア国内にしても、ロシア国内の耐空証明が取得できなくなるので耐空証明の検査を緩くした法改正もするんでしょうね。
今のものはライフサイクルは実は長いのですが事故が1年ぐらいで起きてもおかしくないです。意地でどうにかなるものを通り越しそうですね。死傷者が出ないことを祈ります。
既に二次制裁の対象化を嫌気してか中共は部品供給を(表向き)断ったようですが…ハテサテ
リース品の接収なんて事をすれば、ウクライナ戦争が終わったとしても、ロシア企業にリースしてくれる西側企業がいなくなるか、リスク込みでアホみたいに高い料金設定にされるか、どちらにせよ自分で自分の首を絞める結果にしかならんと思うのだが、プーチンは何を考えてるん?
①脊髄反射で場当たり的な対応をしているにすぎず、ナニモ考エテナイ
②コノ後世界征服するからモウマンタイ
③その他
M1A2 様
基本仰る通りでしょう。
しかし、今は戦時なので、この戦争に勝つことを最優先しているのだと思います。
世界は、未だ”勝てば官軍、負ければ賊軍”ですから。
認めるところはどこもないと思いますが、ロシアに言わせれば、”ロシアの外貨準備を勝手に凍結してるんだから、リース品の接収なんて小さなこと。”となるのでしょう。
これを機会に、ロシア、韓国、中共のカントリーリスクを正しく認識し、世界の企業が上手く足抜けしてくれることを祈るばかりです。
最近のロシアのやることを見ていると、旧ソ連時代の「共産主義的なもの」は、実は共産主義でも何でもなくて、ロシアの原型だったと思い始めました。
「プラハの春」などを潰した制限主権論も、今のウクライナに対する侵攻と全く同じ考え方です。ロシアが持つ、病的なまでの防衛意識の反映でしょう。また、帝政ロシアの独裁から、スターリン独裁、今はプーチン独裁と、ロシアの政治形態は、民主主義ではなく独裁を指向しています。西側からするとマトモに意見を交わせたゴルバチョフは、ロシア人には軟弱と受け取られているようです。そして、独裁制は秘密警察とセットであり、プーチンはKGB出身です。プーチンは、独裁のやり方、西側に対する心理戦を理解しています。とても同意はできませんが、何度革命が起ころうとも、ロシアはロシアの理屈で動いているということでしょう。
わずか30年前の旧ソ連時代でも、ほぼ独立経済圏で生活していました。ロシアにとっては、経済制裁を受けても、「少し昔に戻るだけ」なのでしょう。航空機も、当面はカニバリズム整備でしのぎ、やがてはツポレフが飛びそうです。
小豆島の女教師が共産主義の本を「良い本だから生徒全員に読ませよう」とする小説があったね
小豆島限定なら、共産主義はまた別の形態になってたかもね(笑)
すっかり借りパク国家に
>ロシア当局が西側諸国から貸与されている航空機を接収したとして、整備をどうするつもりなのかは気になるところです。
ロシアの航空産業の実力からすれば,本来は開けてはならないブラックボックスを開けてリバースエンジニアリングしてしまえば,旅客機の運行に必要となる交換部品ならば十分に作れるでしょう.少なくとも電子部品以外は.
その電子部品にしても,戦闘機や爆撃機などの軍用機で使用する電子部品をロシアが西側諸国に頼って内製化していないとは考え難いので,内製している軍用機用電子部品を流用すれば,西側旅客機の電子部品を使用する装置も代替装置を作って置き換えることは可能でしょう.
このあたりの航空機に関して臨機応変に対処する対応能力では,残念ながらロシアと日本それぞれの航空産業の間には天と地ほどの差があります.
部品供給を断たれるのがロシアでなく日本ならば一発で白旗だったと思います.日本の航空産業は(敗戦後のGHQによる完全解体&約十年の禁止が解除された後も,日本政府が戦略的な視点から熟慮して長期的に育成して来なかった為に)裾野が小さ過ぎて,軍用機でも旅客機でも,1機が必要とする全ての部品を国内生産しようと思えば可能なだけの様々な部品メーカが揃っていません.アメリカやEUの場合,経済的な=コストが安いという理由で,三菱重工や川崎重工やIHIなどの日本メーカに旅客機の機体やエンジンの生産の一部を委託していますが,必要とあらば日本に頼らず全て内製化できるだけのメーカが各々の航空産業界には揃っています.それは恐らくロシアも同様でしょう.
いずれにしても,EUやアメリカなど西側主要諸国ではロシアの航空会社の旅客機は飛行禁止になってしまっており,ロシア企業が運用する旅客機の飛べる範囲は,ロシアおよびCIS諸国内部と共産チャイナぐらいしかないので,耐空証明に関してもそれらの国々だけでローカルにOKだと認められれば良い訳です.
そして,取り敢えずは(ロシア基準で)安全に飛べるようにする=ロシア基準で耐空証明を出せるレベルにするのは,ロシアの航空産業界の実力からして十分に可能だと思われます.まあリバースエンジニアリングに多少の時間は要するので,当面は整備作業遅れによる運休などでロシアの国内航空運行に混乱が生じるでしょうが.(出来れば,その混乱が解消する前にロシア人によってプーチンを失脚させて欲しいものです)
経済制裁が長引くと、ロシアもイランのような状況になると思います。
イラン・メフラバード国際空港ですが、共食い整備の成れの果てです。
https://www.google.com/maps/@35.6950975,51.3125413,748m/data=!3m1!1e3?fbclid=IwAR2uJwONSimkht5BqaO7vSBWVZZfkBF1OBjdzxw-Ko-gdwT7IR9hfJsFkb4
今朝の総領事館からのメールで知ったのですが、
日本からフランス向けの航空便が送れなくなりました。
一部の国際郵便物の引受停止について
今般のウクライナの情勢不安を受け、下表に掲げる国・地域への送達手段が確保できなくなったことから、引き受けを停止いたします。
https://www.post.japanpost.jp/int/information/2022/0308_01.html
La Posteは、今の所日本向けの航空便をまだ受け付けていますが、
戦況次第ではこれも停止になるのかしら。
何だかきな臭いことになってきました。