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国連総会、ロシアにウクライナからの無条件撤退を要求

南アフリカメディア「アジアでは日本とニュージーランドが議論をリードした」

国連総会でロシアのウクライナからの無条件撤退を求める決議が採択され、2014年3月のクリミア半島を巡る決議のときと比べ、賛同国が100ヵ国から141ヵ国に増える一方、反対国は11ヵ国から5ヵ国へ、棄権国も58ヵ国から35ヵ国へ、それぞれ減少しました。

国連総会、ウクライナからの無条件撤退などを要求

国連総会は現地時間2日、ロシアに対しウクライナからの無条件撤退などを求める決議を、賛成多数で採択しました。

General Assembly resolution demands end to Russian offensive in Ukraine

―――2022/03/02付 国際連合HPより

決議では、ロシアが「国際的に認められた国境内のウクライナの領土からすべての軍事力を即座に、完全にそして無条件に撤退させる」ことを要求。国連加盟193ヵ国中、賛成したのは141ヵ国で可決要件の「3分の2以上」(つまり129ヵ国以上)をクリアしました。

反対した国はロシア自身を含む5ヵ国であり、35ヵ国が棄権したそうです。この点、同じく国連総会が2014年3月、ロシアによるクリミア半島併合に反対する決議を採択した際には、賛成が100ヵ国、反対が11ヵ国、棄権が58ヵ国だったことと比べると、より多くの国が賛同したといえます。

General Assembly Adopts Resolution Calling upon States Not to Recognize Changes in Status of Crimea Region

―――2014/03/27付 国際連合HPより

今回の決議自体は法的拘束力があるものではありませんが、賛同国が増え、反対国・棄権国が減ったことは、ロシアに対し批判的な目を向ける国がより増えたという意味でもあります。

賛成した国より反対国・棄権国に注目したい

ここで、2014年と2022年の決議の賛成・反対・棄権状況をまとめておきましょう(図表)。

図表 国連総会決議の賛成・反対・棄権状況(2014年vs2022年)
区分 2014年 2022年
賛成 100ヵ国 141ヵ国
反対 11ヵ国 5ヵ国
棄権 58ヵ国 35ヵ国
合計 169ヵ国 181ヵ国

(【出所】国連HPより著者作成)

この点、国連によると、今回決議に反対した(つまりロシアの立場を支持した)5ヵ国はベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5ヵ国でしたが、ロシア自身を除くとたった4ヵ国しかロシアを支持していなかった、という意味です。

一方で、棄権した35ヵ国に関しては、国連ウェブサイトにその具体的な国名が記載されておらず、メディアにも断片的にしか報じられていませんが、著者自身が調べた限りだと、棄権した国の一部は、中国、インド、パキスタン、南アフリカ、キューバ、ニカラグアなどです。

この点、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)にコミットし、「日米豪印クアッド」を構成しているインドが対ロシア決議に賛同しなかったという点は気になりますが、その一方で中国に加え、長年ロシアの「同盟国」だったはずのキューバやニカラグアが棄権に回ったというのも興味深い点です。

南アフリカメディア「アジアでは日本がウクライナ決議を主導」

ただ、それよりもさらに興味深いのは、南アフリカ共和国の『eNews Channnel Africa』というウェブサイトに掲載された記事のなかの記載です。

UN General Assembly votes to condemn Russian invasion, SA among nations that abstain

―――2022/03/02 19:45付 eNCAより

これによると、棄権した国には南アフリカのほか、アジアでは中国、インド、パキスタン、南アフリカなどが含まれていたものの、アジアでは「日本やニュージーランドなど」が「議論をリードした」、などとも記載されています。原文は以下のとおりです。

“Japan and New Zealand led condemnation from Asia, but the continent’s giants — China, India and Pakistan — all abstained. During the debate, Beijing had stressed the world had “nothing to gain” from a new Cold War.”

すなわち、「日本やニュージーランドはアジアにおける賛同国を増やそうと対露批判議論を先導したが、それでもアジアにおける大国である中国が『新冷戦から得られるものはない』として棄権に回った」、という記述です。

これに関し、中国の歯切れの悪さが滑稽でもありますが、それ以上に印象的なのは、日本は南アフリカのメディアの目から見て、「アジアにおける自由・民主主義をリードする国」と認識されているようである、という点でもあります。

個人的には『日本政府、対ロシア追加制裁への参加を半日遅れで表明』などでも述べたとおり、岸田文雄首相のアクションの遅さ、鈴木俊一財務相の「ポンコツ」ぶりには強い不安と不満を抱いていますが、少なくとも国連総会の現場の外交官が議論を主導したことについては、高く評価して良いと考えています。

西側諸国によるロシアのSWIFT遮断・外貨準備凍結などを巡って日本が半日遅れで参加を発表しました。そして、これに対しホワイトハウスのサキ報道官は日本の対応を「歓迎する」との声明を出しているようです。その一方で、ウクライナ危機を巡っては米韓同盟という「意外なところ」に微妙な波紋も投げかけているようです。ウクライナ情勢を巡るさまざまな進展ウクライナ情勢を巡っては、次から次へとさまざまな進展が続いています。欧米主要国は日本時間の昨日、ロシアの一部の銀行をSWIFTから遮断したうえで、外貨準備を凍結...
日本政府、対ロシア追加制裁への参加を半日遅れで表明 - 新宿会計士の政治経済評論

いずれにせよ、今回の決議をきっかけに、「自由・民主主義・法の支配・人権」に強くコミットしているとする日本の立場が、ひそかに国際社会に対し示されたことは大変に良い話だったと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (8)

  • 色々心配になる点はありますが、南アフリカにまで日本が決議を先導したと評価されるのは、日本が目指す「価値観外交」・新しい世界を実現する上では良い事だと思います。

    加えて、”ウクライナ難民受け入れ”を表明したことも、もっと評価されてよいと思います。

    人道援助・対露制裁と併せて「日本はウクライナと共にある」の1/3くらいに近づいたのではないでしょうか。(本来は、兵を出すつもりが無いのにこの言葉は使ってはいけない)

    当然、それに伴う問題は先手を打って対策してほしいと思います。
    住居・日本語教育・仕事確保・子弟教育等々。

    また、”日本に身寄りがあることが前提”などと言わず、受け入れて欲しいと思いますが、現実問題として無制限には受け入れられないので1万人~5万人程度の人数制限はありでしょう。

    これらが、”今まで国連機関に金を出して終わりだった”ものを、自ら汗をかくことにより、より実効性のあるモノにし、日本外交のノウハウとして蓄積していくことが出来れば、大きな一歩だと思います。

    • ですよね。それと、もし日本が今後、大量の移民を受け入れるなら、日本国家に忠誠を誓わすことなど踏み絵をしっかりさせること。それと、中国人、朝鮮人の比率を上げないよう人種構成をしっかり考えることが肝要かと。

      • ウクライナも告げ口外交していたらしいね
        ウクライナ人の性質は韓国人と変わらん可能性あるぞ

        • え、「告げ口外交していた"らしい"」という出典も無い情報だけで、そもそも告げ口するだけじゃなくさまざまな嫌がらせを行う国の人間と同レベルの性質を持つ可能性を考えるんですか?

          在日ウクライナ人の方にこのコメント教えておきましょうかね。

          • 日本のテレビ番組(ひるおびだったと思う)でやっていたけど
            日本人のマスコミがウクライナの高官に会ったら「ソ連時代のウクライナ飢饉について書いた本」を渡されたと言ってたぞ

  • インドが棄権したのは、軍の兵器・装備にロシアからの輸入品が多いからという辺りの理由かと。

  • プーチン大統領だけでなく、バイデン大統領やマクロン大統領、ショルツ首相、ジョンソン首相などNATO諸国の首脳、ウクライナのゼレンスキー大統領などには言いたいことが沢山ありますが、戦が始まってしまった今、日本が先頭に立って世界秩序の回復と難民支援を主導する意気込みが必要だと思います。
    その行為が、大国の横暴を恐れている数多くの国々に対して勇気と日本に対する期待を高める事に繋がるのでは無いでしょうか?
    この発言が国連総会の現場の外交官に留まらず、岸田首相の具体的な行動に繋がる事を期待します。
    分かっていますよね、岸田さん。
    何?期待されると困る?
    しっかりしてくださいよ岸田さん。
    よろしくお願いします。

  • >この点、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)にコミットし、「日米豪印クアッド」を構成しているインドが対ロシア決議に賛同しなかったという点は気になりますが、

    NATOvsロシアと見て、かつて第三世界を掲げて東西冷戦から距離を取った価値観の延長線上なのかな?と思ってました。

    でも、上にある軍の装備のお話しもありそうですね。