もしもNHKが本格的にネットに番組を配信するようになれば、「ネット環境があればNHKに受信料を払え」、などとNHKが要求してくるのでしょうか。そんなこと、社会正義に照らして許されるものではありません。現在のNHKの受信料制度もたいがい理不尽で非合理的なものですが、「ネット受信料」というロジックに関しては、さらに不可解です。NHKの存在自体、インターネット環境の発展には1ミリも寄与していないからです。
チューナーレスTV
先日の『NHKとの契約不要「ドンキテレビ」好調につき再販へ』では、ディスカウントストアのドン・キホーテが発売した「チューナーレステレビ」の売れ行きが堅調だ、という話題を取り上げました。
NHKと受信契約の締結義務が生じないとされる「チューナーレステレビ」の売れ行きが好調なようです。ディスカウントストアのドン・キホーテが2月中旬から、チューナーレステレビの再販を始めるとの報道に加え、一部のメーカーは同様のチューナーレステレビの発売に踏み切っているのだとか。これなど、NHKの強欲が、結果的にはテレビ業界自体を道連れにしているようなものでしょう。ドンキのチューナーレステレビ『社会はチューナーレスTVによりNHK排除に動くのか』を含め、以前からしばしば当ウェブサイトで紹介してきた話... NHKとの契約不要「ドンキテレビ」好調につき再販へ - 新宿会計士の政治経済評論 |
その前提にあるのは、チューナーレステレビは放送法でいうところの「NHKとの受信契約締結義務」が発生しない、という解釈です。放送法第64条第1項本文には、こんな規定が設けられています。
放送法第64条第1項本文
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
この規定は、「テレビを設置したらNHKに受信料を払わないといけない」という意味だと解釈されていたのですが、逆に言えば、そもそもチューナーが内蔵されていないテレビは、ここでいう「NHKの放送を受信することができる受信設備」にはあたらないと考えられます。
NHKのネット配信事業
ただ、この「受信契約不要のチューナーレスTV」という話題が大きいためでしょうか、最近では受信料そのものについて、「とにかく視聴可能な状態であれば、受信料を徴収する」、という、かなりおかしな議論が出てきているようです。
『J-CASTニュース』に一昨日、こんな記事が掲載されていましh太。
ドンキ「NHK映らないTV」大ヒット 続く他メーカー、受信料徴収の行方は
―――2022年02月16日12時10分付 J-CASTニュースより
J-CASTニュースは、例の「ドンキTV」が好調であるとする話題や、STAYERホールディングスが今年5月に4K対応チューナーレスTVを発売すると発表した、といった話題を取り上げたうえで、こんなことを述べます。
「NHKは4月以降、ネットを活用した業務の社会的役割を検証するため、テレビ非所有者を含め、主に日常的にテレビを利用していない人や利用が少ない人に向けた『社会実証』を行う」。
これについては、ネット上では一部で「ネット課金への布石か」などと警戒されている向きもありますが、J-CASTニュースも次のように述べます。
「NHKプラスの提供対象が広がることで、ツイッターの一部では、将来的にチューナーを内蔵していないAndroid TV搭載テレビも受信料の対象になるのではないかと推測するユーザーがみられる」。
どうにも正当化できない「ネット受信料」
このあたりは、本当に警戒しなければならない論点でしょう。
正直、ネット配信で受信料を強制徴収するというのは、社会正義の観点からはどうにも正当化できない話ではあります。
現在の「テレビを設置した人から受信料を徴収する」という仕組みには、「NHKが公共放送として、公共の電波を維持する必要があるから」、という理屈が設けられています(著者自身としては、その理屈自体もかなり怪しいとは思いますが…)。
しかし、インターネット空間に勝手に番組を配信しておいて、「ネット環境があればNHKが視聴可能だ」、「だからネット環境を持っているならばNHKに受信料を払え」、というのは、どう考えても、NHK自身が主張する「公共放送」という理屈にすら合致していません。
NHK自身がネット環境の維持・発展に、たった1ミリも貢献していないことはあきらかでしょう。
あるいは、どこかの企業が街中で勝手に大きなスクリーンビジョンを設置し、道行く人々から「このスクリーンビジョンで視聴できるから受信料を払え」などと要求したとしても、そんな要求が通るわけがないことは明らかでしょう。
「NHKのネット課金」には、それと似たようなナンセンスさがあることは間違いないでしょう。
それよりもむしろ、現在、私たち日本国民が議論しなければならないのは、次のような論点ではないでしょうか。
NHKを巡る諸論点の例
- ①現代の日本社会に公共放送というものは必要なのか
- ②公共放送が必要だったとしても、現在のNHKにそれを担う資格があるのか
- ③「見ない人からも徴収する」などの受信料制度は妥当なのか
- ④1兆円超の金融資産、莫大な不動産などは、NHKの経営に必要なのか
- ⑤少なく見積もって職員1人あたり1550万円超という人件費水準は妥当なのか
(【出所】著者作成)
正直、議論の流れの①の部分で「公共放送は必要ない」という結論が下ってしまえば、以降の議論はすべて意味がなくなるのですが、百歩譲って「公共放送が必要だった」という結論が出たとしても、「現在のNHKに公共放送を名乗る資格があるのか」は、まったく別の論点でしょう。
いずれにせよ、利権は勝手に肥大化すると昔から指摘されていますが、NHKも「利権組織」だと考えるならば、すんなりと説明がつくように思えてならない次第です。
View Comments (18)
ワンセグ内蔵携帯でも受信料を徴収するのですから、ネット視聴でも受信料と言い出すのは当然予措されます。でもそれを審議する国会が頼りにならなさそう。
マスコミに弱い政治家。それにせっかく議席を得たなんとかNHK党も、どうしようもない。
早くスクランブル化して欲しい。
>ワンセグ内蔵携帯でも受信料を徴収するのですから、
どうやら最近のスマホやタブレット端末からワンセグ及びフルセグTV受信機能が削除されつつあるのは、そういうこと(NHKの受信料支払いを忌避するユーザが意外に多い)のようですね。
NHKの問題のみならず、電波界隈の一斉粛正が必要な時期に来ているのではないかと思います。
なんちゃって公営放送も民法も一旦電波使用権をリセットさせ、電波オークションを行うべきです。
菅前総理はそこに踏み込もうとしてメディアからの総攻撃を受けた形になり、頓挫しましたがこれはいつか誰かがやらねばならぬこと。
NHK党はどこに行きそうですかね?
ネット受信料だと、受信者は国内だけじゃなくて海外にもいるから、ひとりあたりの受信料はすごく安くできるんじゃないかな?
(´・∀・`) エヘヘ すごいね~
私も、ネット受信料の布石だと思いました。
でも、さすがの総務省も、現行法の解釈の変更だけで、許可できないとも思います。
(と思いたい!)
そもそもテレビでは、垂れ流す電波を「タダ」で受信し、視聴が可能なのに対して、インターネットは、回線を引き込み、プロバイダ契約しないと使えないサービスです。携帯電話にしても、パケットと言う、有料の通信費が必要になります。ここに、NHK受信料を上乗せするのは、さすがに無いと思いたいです。
100歩譲って、通信費をNHKが払ってくれるならば考えなくもないですが。
でも、昔山奥では自分たちで共同アンテナを建てケーブル配信しても、ちゃんと受信料を集金してましたから、NHKがそんな事、気にしないと思います。
(個人的な願望ですが)NHKが強制的に受信料を要求できるのは、テレビ放送局がNHKしかなかった時代につくられた既得権益によるものなので、後発のネット配信では、ネット受信料を要求できないのではないでしょうか。(もっとも、既得権益を作り出すために、一度、全てのネット配信を禁止するという荒技もありますが)
すみません。追加です。
NHKが受信料を正当化するために、国民にNHK視聴を義務化した、という悪夢をみました。(もし、そうなれば、国民は、そのためにテレビを購入することが義務化されるのでしょうか。家電量販店と家電メーカーが喜びそうです)
法律の条文だけみての感想なのです♪
放送法の定義で「放送」は電波によるものだけに限られていないみたいだから、業務に「インターネット放送」を追加すれば、インターネット使っている人全部に契約義務があることになるのかな?
(定義)
第二条 この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
一 「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。
(業務)
第二十条 協会は、第十五条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 次に掲げる放送による国内基幹放送(特定地上基幹放送局を用いて行われるものに限る。)を行うこと。
イ 中波放送
ロ 超短波放送
ハ テレビジョン放送
二 テレビジョン放送による国内基幹放送(電波法の規定により協会以外の者が受けた免許に係る基幹放送局を用いて行われる衛星基幹放送に限る。)を行うこと。
三 放送及びその受信の進歩発達に必要な調査研究を行うこと。
四 邦人向け国際放送及び外国人向け国際放送を行うこと。
五 邦人向け協会国際衛星放送及び外国人向け協会国際衛星放送を行うこと。
(受信契約及び受信料)
第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
インターネット利用者に対して、NHKの理屈で受信料を徴収できるということは、
全てのサイト、すべてのいわゆる配信者が同様に
利用者から徴収できるということになりませんか?
プロバイダに対してなどネットの使用環境に対して、
契約はした覚えはあるが、ネットで見れるNHKと契約したつもりはないです。
余談ですが、米軍基地の存在する(特に沖縄)地域では、
アパートなど基地の敷地外に住む米軍関係者からも徴収をしようとして、
問題になったと聞いております。
もしチューナレステレビが普及して、ほとんどの人がテレビはネットで見るものが常識になれば 地上波はNHKを訴えるんじゃないですか。
また、ネットでも徴収するとなると 地上波は大打撃を受けてるのにNHKだけ助かろうとするのかと 文句が出ると思うのです。
俺達の収益システム壊しやがって。
NHK許すまじ。となるのではないでしょうか。
お疲れさまです。
そうなったら、NHKのありかた自体国民の論議で決定した方が良いのではとおもいます。
NHK好きだったんですが、ネットにつながっているだけで課金となるとやり過ぎだなとおもいます。
NHKの今までの行いを見れば、ネット環境があれば、受信料を徴収するつもりだと思います。
ただ、そうなると徴収対象は、通常であれば日本国民のみならず全世界の人間となってしまいます。
そのようになった場合、私の予想では「日本国民に対してネット配信しているので、日本に住所を持つ人間が配信の対象であり、他国に住んでいる場合は対象としていない。よって外国は関係ない。しかしながら対象となっている日本国民は全員受信料を支払え!」
論理に矛盾があろうがなかろうが、今まで自分たちに都合の良い屁理屈をごり押ししてきたNHKですから、当然このような論理?を展開すると思えます。
現在携帯料金にはユニバーサルサービス料とういうものが付加されています。(内容はググってくださいw)
月に数円程度なんで誰も気にも留めてませんが、頭のいい利権集団はこれに組み入れるか、新たに似たような名目で付加出来ないか考えてると思います。
2020年度末の携帯電話契約数は1億9433万件・・・はたして一件いくら取るつもりなんでしょうか?w