蔡英文(さい・えいぶん)政権が、台湾のCPTPP加入に向けて「最善の努力を尽くす」と決意表明したようです。台湾メディア『中央通訊』によると、蔡英文総統は与党の中央常任委員会で、CPTPPの高い要求水準を達成するよう、法改正を含めた現行制度の洗い出しを進めると述べたのだそうです。ちなみにヘリテージ財団の調査では、台湾の経済自由度は日韓を上回っているのだとか。
台湾メディアが面白い!
最近のインターネット環境の急激な発達により、大きなメリットがあるとすれば、外国メディアの報道を気軽に読むことができる、という点でしょう。実際、著者自身も仕事がら、英米メディアには頻繁に目を通していますし、それ以外にもいくつかのメディアをときどきチェックしています。
こうしたなか、最近では外国メディアのなかには英語版や日本語版のウェブサイトを開設しているケースも増えているのですが、当ウェブサイトでときどき紹介する台湾メディア『中央通訊』もそのひとつです(※ウェブサイト名称は、それぞれ英語版が『FOCUS TAIWAN』、日本語版が『フォーカス台湾』です)。
中央通訊は台湾の国営メディアだそうですが、あくまでも個人的主観に基づけば、日本のメディアと比べて記事執筆者による主観的な表現が抑制される傾向にあり、また、客観的な事実関係が簡潔に記されていることも多いため、大変に好感が持てるメディアのひとつです。
蔡英文総統がCPTPP加盟に「最善の努力」
また、中央通訊の英語版も、ちょっとした英語力があれば、翻訳エンジンの助けを借りなくても、スッと読めてしまいますが、その典型例でしょうか、『FOCUS TAIWAN』には昨日、こんな記事が掲載されていました。
Taiwan pledges ‘best efforts’ to gain CPTPP membership
―――2022/02/16 19:35付 FOCUS TAIWANより
中央通訊によると、蔡英文(さい・えいぶん)総統は水曜日、自身が議長を務める与党・民進党の中央常任委員会で、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の加盟に向けて「最善の努力をする」とする方針を示したのだそうです。
具体的には、台湾政府はCPTPP加入に向け、財・サービスの貿易、投資、さらには労働市場の開放などのハイレベルの要求水準を満たすための法改正や現行制度の洗い出しなどを進める、などと述べたのだとか。
そのうえで、中央通訊はCPTPPについて、次のように述べます。
“Taiwan applied in September 2021 to join the Japan-led CPTPP, about a week after China submitted its application.”
外国メディアが「日本が主導するCPTPP」とハッキリ記載するというのも、なかなか興味深い点ですね。
台湾の経済自由度は日韓を上回る
ところで、日本政府は昨年、『令和3年版外交青書』のなかで、台湾を「基本的価値を共有する友人・パートナー」と位置付けました。該当する記述は、55ページ目にあります。
「台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(『令和3年版外交青書』P55)。
中国との関係もあるためでしょうか、日本政府は台湾を公式には「国」と認めていませんが、この外交青書の書き方だと、事実上、日本政府は台湾を最上位の友好「国」として扱っているようなものでしょう。
その一方、同じく中央通訊には一昨日付で、こんな記事も出ていました。
台湾の経済自由度、過去最高の6位を維持 日韓上回る
―――2022/02/15 13:25付 フォーカス台湾より
中央通訊によると、米国のシンクタンクであるヘリテージ財団が14日に発表した2022年版の「経済自由度指数」で、「台湾は過去最高位となった前年と同じ6位を維持し、日本や韓国を上回った」、としています。
今回の調査では、184ヵ国・地域を対象に、「法制度」、「政府の規模」、「規制の効率」、「市場の開放」という4つのカテゴリーから計12項目を100点満点で評価するもので、台湾は80.1点と前年比1.5ポイント上昇したのだとか。
ちなみにアジア太平洋地域ではシンガポールが84.4点で世界1位であり、これに続き▼台湾は6位、▼韓国は19位(74.6点)、▼日本は35位(69.9点)、▼中国は158位(48.0点)――、などとなっていたそうです(憶測するに、日本の評点が低いのは、規制効率が悪すぎるためでしょうか?)。
強く響く蔡英文氏の言葉
もちろん、このヘリテージ財団の調査結果を鵜呑みに信じて良いのか、という問題点はありますが、少なくとも台湾はシンガポールに続き、アジアでも最も経済自由度が高い国と認定された格好です(韓国が日本よりも上位だという点は意外ですが)。
また、「経済の自由度が高いとヘリテージ財団に認定されたこと」と「CPTPPに参加できるかどうか」はまったく別の論点ではありますが、日本と基本的な価値を共有している国がCPTPPに参加することは、CPTPP自体の存在を強化することにつながります。
中国の存在もあるためでしょうか、台湾のCPTPP加入は一筋縄ではいかないとは思いますが、それでも蔡英文総統の「最善を尽くす」との言葉が、じつに強く響いていると感じるのは、決して気のせいではないと思う次第です。
View Comments (5)
ロシアのウクライナ進行と中国の台湾進攻が同時に行われたら
どちらかが手薄になり 片方は最大の被害を受けます
イヤラシイ言い方になりますが
台湾は 開戦直前、国家存亡の危機ですから
安全保障上 対日外交は、日本側の事情を最大限にくみ取っている状況だと思います
海外メディア報道と国内報道を常に読み比べるよう努めていますが、中央通訊の英字サイトは事実報道に徹してしていると当方は感じます。日本の報道機関より機敏に反応しています。アメリカメディアの顔色をうかがいながら回送記事を脚色しているようにしか思えない「内弁慶な」国内報道機関よりは好感が持てます。
中国が、台湾のCPTPP加盟を邪魔しようとするはずですので、中国色の強いCPTPP加盟国が、炙り出される事になります。
先ずは、それをどうするかでしょうね。
蔡英文総統は台湾の指導者としては非常に有能ですね.特に第二期は.
台湾にとっての最大の問題は,総統は3選不可なため総統としての蔡英文氏の任期は残り2年しかなく,次の台湾総統がどちらの陣営(現総統と同じで本省人主体の民進党か大陸から来た外省人主体で一つの中国を重視する国民党か)から出るか,そして仮に次の総統が民進党から出ても新総統が蔡英文氏並みの外交手腕を持つか,という点です.
仮にですが,北京政府との協調を重視する国民党から次期総統が出て国民党政権らしい外交政策を執れば,日本人の台湾熱は一気に醒めて台湾防衛への関心も薄れてしまう惧れが強い.
更に言えば,台湾をCPTPPに加盟させることは大陸の共産チャイナにCPTPPへのバックドアを提供するに等しい危険性も生じます.
ですから,私は日本国民の一人として蔡英文総統の外交を高く評価し信頼していますが,国民党政権に戻る可能性が台湾にある限り,台湾には全幅の信頼を置くのは日本にとって非常に危険だと考えるのです.
>アジア太平洋地域ではシンガポールが84.4点で世界1位であり、これに続き▼台湾は6位、▼韓国は19位(74.6点)、▼日本は35位(69.9点)、・・・などとなっていたそうです(憶測するに、日本の評点が低いのは、規制効率が悪すぎるためでしょうか?)。
日本の評点が低いのは、日本の公的債務が取り上げられているためのようです。財政健全性の日本の評点が19.7と異常に低いのです。ちなみに日本と同様に財政健全性の評点が低いのは 米国=0.0、英国=22.6、イスラエル=22.6、スペイン=29.7などです。
以下は、その詳細です。
ヘリテージ財団の調査結果の、日本の頁 ↓
https://www.heritage.org/index/country/japan
総合スコアは69.9の説明の中で、財政の健全性が19.7点となっています。非常に低いです。
〇政府規模の項目の説明の中にこうあります、『政府支出は過去3年間で総生産(GDP)の39.8%に相当し、財政赤字はGDPの平均6.1%を占めています。公的債務はGDPの256.2%に相当する。』
問題はこの辺りでしょう。 日本が30年連続で世界最大の債権国であることは、全く無視されています。
ちなみに韓国の頁↓
https://www.heritage.org/index/country/southkorea
クイックファクトの項目の一部 ⇒ 一人当たりGDP44,621ドル そして 失業:4.1% となっています。
このどちらも虚飾。GDPはサムスンなどの海外生産分を取り込んでいますし、実際の失業率は10%を超えています。
ヘリテージ財団の調査員は、「韓国の失業率は4.1%である」と信じるしかないのでしょうね。
ちなみに総合スコア74.6の説明では
〇法の支配の項目では、『知的財産権は国際基準と一致している。司法は独立しており、透明性があります。』などとあり、本当?
韓国に知的財産権を遵守する意識はありますか?
〇政府規模政府に項目では、『支出は過去3年間で総生産(GDP)の22.7%に相当し、財政黒字はGDPの平均0.0%を占めています。』とあり、2019年〜2021年の韓国財政は赤字ではない?
あちこちの各シンクタンクの発表内容を見ると、その手法は過去例外なく(私の知る限り)、その国の政府が発表した数値を集めてきて、集計してコメントを付けているだけのように見えます。シンクタンクが集計したデータは100%信頼できるものとしていますが、GDPが下がると政権が危うくなる国がGDPの下がる数値を出すはずがありません。GDPはその国の都合で簡単に粉飾できる数値です。シンクタンクの限界はこういう部分にあると思います。その結果を100%そのまま受け取る訳にはいきません。