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日本大使館前の水曜集会巡る韓国国内の対立深まるが…

韓国の日本大使館前で自称元慰安婦らの支援団体が開いて来た「水曜集会」を巡り、韓国国内で対立が生じているようです。「保守系」とされる政治団体が慰安婦像前の場所を占領し、「水曜集会」の開催を妨害しているのだとか。ただ、本件を巡っては、基本的に私たち日本人としては「静観」が正解でしょう。なぜなら、この手の違法な集会をどう考えるかについては、すべては韓国自身の問題だからです。

2022/02/09 09:45追記

本文に技術的な修正を加えています。

歴史問題の2つの本質

最近の「日韓歴史問題」といえば、自称元徴用工、自称元慰安婦の両問題がその双璧をなしています。

この点、後講釈かもしれませんが、そもそも韓国が主張する「歴史問題」については、本来、日本としては韓国に対し、謝罪・賠償してはならないものでした。その理由は、大きく2つあります。

ひとつめは、法的には韓国が謝罪や賠償を受ける権利を持っていない、という点です。日韓間の請求権に関するあらゆる問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、本来、韓国側は何らの請求をなす権利も持っていません。

ついでにいえば、日本は併合時代に朝鮮半島に建設した莫大なインフラの請求権を放棄していますし、日韓請求権協定で有償・無償あわせて8億ドルという、当時の日本にとっては莫大な支援を韓国に提供していますし、それ以外にも、韓国のインフラ、教育などを含め、日本は官民挙げて韓国に支援を行っています。

どう考えても、韓国は「もらい過ぎ」なのです。

ただ、日本が韓国に謝罪や賠償をしてはならない理由は、それだけではありません。

非常に重要な点ですが、そもそも韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じようなものだからです。

もちろん、こうしたウソの歴史問題については、日本国内でもでっち上げに加担した者がかなりいたこともまた事実です(※捏造報道を担った新聞社、慰安婦を巡り「性的奴隷」なるウソを国連で喧伝した弁護士などは、その典型例でしょう)。

日本がやらねばならないのは「冤罪の否定」「罰を与えること」

ただ、自称元徴用工・慰安婦の両問題については、韓国政府自身が現在、これを対日プロパガンダに悪用しているフシがありますし、韓国国内でも市民団体や大学教授などが、全世界で日本の名誉と尊厳を貶めるような宣伝活動を行っています。

このように考えていくならば、私たちの国・日本としては、韓国が要求する「正しい歴史認識」とやらを認めてはならないだけではありません。

韓国が主張してくる歴史問題に対しては、ファクトをベースに毅然と反論しなければなりませんし、むしろ、韓国が歴史問題で日本を貶めようとしているならば、これに対しては韓国に不法行為のコストを利息付きでキッチリと負担させなければならないのです。

ただし、ここで勘違いしてはならないことが一点あるとしたら、「韓国で正しい歴史認識が広まることを、わざわざ日本として支援する必要はない」、という点です。

日本がやらねばならないのは、「冤罪を否定すること」、「ウソの罪をなすりつけて来た相手にコストを負担させること」ですが、「相手を改心させること」ではありませんし、そもそも外交を通じて相手を変えることなどできません。

水曜集会巡る混乱

こうしたなか、少し興味深い動きがあるとしたら、韓国の日本大使館前に設置された慰安婦像の周辺で行われてきた「水曜集会」を巡り、韓国国内で「内紛」が生じている、という話題でしょう。

日韓諸懸案「解決の糸口」を見つけるのは韓国の役割だ』などでも紹介しましたが、自称元慰安婦問題を巡っては現在、日本大使館前で毎週水曜日に行われている「水曜集会」を巡って、韓国の左派と保守派が対立しているようなのです。

岸田首相が昨日の国会演説で日韓関係を巡り韓国の適切な対応を求めた点に関連し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)が「解決の糸口が見つからず、日本の首相の演説から日韓関係への具体的な言及が徐々に減っている」と述べています。解決の糸口が「見つからない」もなにも、それを見つけるのは韓国の側なのですが…。日本政府は落としどころの②を放棄している当ウェブサイトでもこれまでさんざん議論してきたとおり、日韓関係を巡っては、正直、関係が破綻しかねない状況にあります。いうまでもなく、2018年10月の自称元徴用工判決...
日韓諸懸案「解決の糸口」を見つけるのは韓国の役割だ - 新宿会計士の政治経済評論

具体的には、保守系の「自由連帯」なる団体が、慰安婦像の目の前の場所の占有許可を警察に申請し続けており、自称元慰安婦の支援団体である「正義連」側が慰安婦像前で集会を開けなくなっているのだそうです。

そのうえで、韓国の国家人権委員会は先月17日、ソウルの日本大使館付近で毎週水曜日に開かれている「水曜集会」について、「妨害できず進行できるよう警察が積極的に保護を行う必要がある」、などと述べた、という話題もありました。

韓国人権委「慰安婦集会の積極的な保護必要」 警察に対応を勧告

―――2022.01.17 17:00付 聯合ニュース日本語版より

基本的には「どっちもどっち」

この点、一部の日本人のなかには、「自由連帯」に対して「がんばれ」、などと声援を送っているケースもあるのかもしれませんが、個人的には「どっちもどっち」だと考えています。

そもそも論ですが、外国公館前で大騒ぎすること自体が国際法違反(外交関係に関するウィーン条約第22条第2項違反)です。

外交関係に関するウィーン条約第22条
  1. 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
  2. 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
  3. 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。

(【出所】外務省ウェブサイト『外交関係に関するウィーン条約』【※PDF】)

いや、もちろん「自由連帯」側には「正義連」が集会を開催するのを妨害しているという「大義名分」はあるのですが、正直、国際法違反という意味では右派も左派もやっていることはまったく同じです。

日本は静観が原則

この話題に関し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には本日、こんな記事が掲載されていました。

少女像前から追いやられる水曜集会、深まる反対集会との対立…解決策はあるのか=韓国

―――2022.02.03 10:05付 中央日報日本語版より

「少女像」、あるいは「平和の少女像」とは、日本大使館(跡地)前に国際法に違反して設置された慰安婦像のことです。

中央日報によると、国家人権委が水曜集会についての「救済勧告」を出して以降も「自由連帯」側の集会が続いており、勧告以来3回目となる2日正午の集会では、双方の団体で小競り合いが生じるなどの騒ぎが生じ、最終的には現場の警察が彼らを引き離した、などとしています。

また、「正義連」側の理事長は、「歴史的真実を知らせてきた30年余りの歳月が極右歴史否定論者らによっておとしめられ攻撃を受ける現実は残念だ」、「水曜集会の精神と価値、歴史的真実を守ろうと思う」などと話した、としています。

ウソをウソで塗り固めた慰安婦問題を「歴史的真実」とは、なかなか恐れ入る発言です。

ただ、正直なところを申し上げるならば、「日本大使館前での集会が国際法違反であるという点を、韓国政府、韓国社会、韓国国民がどう考えているか」、という点が大きな論点ではないかと思います。

「外国大使館前で大騒ぎしている状況を韓国政府自身が許している」という点ひとつとってみても、すべては韓国の問題――、すなわち、韓国国内の有識者、韓国国民、韓国メディアなどの問題だからです。この点については私たち日本人がどうのこうの議論すべき問題ではありません。

いずれにせよ、この「水曜集会」を巡っても、「韓国の日本大使館前で毎週、違法な集会が行われている」、「日本は被害者である」という事実を世界に知らしめ続けることなどを除けば、私たち日本人にできることといえば、ほとんどありません。

本件についても静観が正解ではないかと思う次第です。

新宿会計士: