内閣支持率の最新版が出て来ました。いろいろと理解に苦しむ部分もあるのですが、それよりも個人的に注目したいのは、一部のメディアの調査で日本維新の会が支持率で立憲民主党を上回り始めていること、そして岸田内閣が打ち出した給付金構想には世論の反応は芳しくないことです。給付金騒動の顛末次第では、来年の参院選で自民党も安泰とはいかないでしょう。
内閣支持率はおおむね不支持率の倍前後
当ウェブサイトでは以前から、6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社が実施するものと、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)に基づく内閣支持率、政党支持率などの調査結果を「定点観測」しています。
今月は第二次岸田政権が発足したためか、これらのメディアはだいたい世論調査を実施しているらしく、現時点において各メディアの報道を調べたところ、6つの調査のすべてが出そろっていたようです(図表1)。
図表1 内閣支持率(2021年11月)
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
---|---|---|
読売新聞(11/1~2) | 56.0%(+4.0) | 29.0%(▲1.0) |
朝日新聞(11/6~7) | 45.0%(+4.0) | 27.0%(+1.0) |
日経・テレ東(11/10~11) | 61.0%(+2.0) | 27.0%(+2.0) |
産経・FNN(11/13~14) | 63.2%(±0) | 30.7%(+3.3) |
時事通信(11/5~8) | 47.1%(+6.8) | 21.3%(+2.5) |
共同通信(調査日不明) | 60.5%(+2.4) | 23.0% |
(【出所】各社報道より著者作成)
このうち共同通信の記事は、調査実施日、不支持率の増減が明記されていないなど、記事としての体裁をなしていませんが、図表ではあえてそのままで掲載しています(※共同通信の場合はこの手のずさんな記事が大変に多い気がします)。
いずれにせよ、内閣支持率は、時事通信と朝日新聞の調査結果では40%台、それ以外の調査結果では50%台後半から50%台であり、不支持率については時事通信と共同通信が20%台前半、それ以外は20%台後半から30%程度です。
これを高いと見るか、低いと見るかは微妙でしょう。
平常時であれば、支持率が不支持率の倍前後に達しているという状況は決して低いものではありませんが、今回が政権発足直後であり、かつ、衆院選直後であるという事情を踏まえるならば、このあたりをどう見るかは微妙でしょう。
政党支持率で維新が立憲民主を「逆転」するケースが出て来た
こうしたなか、今回の各社の調査で興味深いのは、政党支持率です(図表2)。
図表2 政党支持率(2021年11月)
メディアと調査日 | 自由民主党 | 立憲民主党 | 日本維新の会 |
---|---|---|---|
読売新聞(11/1~2) | 39.0%(▲1.0) | 11.0%(+5.0) | 10.0%(+7.0) |
朝日新聞(11/6~7) | 36.0%(+2.0) | 9.0%(+2.0) | 9.0%(+6.0) |
日経・テレ東(11/10~11) | 44.0% | 9.0% | 13.0% |
産経・FNN(11/13~14) | 40.2%(▲5.1) | 9.0%(+2.6) | 11.7%(+9.1) |
時事通信(11/5~8) | 27.2%(▲0.2) | 5.4%(+1.6) | 4.7%(+3.2) |
(【出所】各社報道より著者作成)
これはなかなか興味深い調査結果です。
前回の調査結果が明示されていない日経・テレ東のものを除けば、どの調査でも日本維新の会の支持率が大幅に増えていることが確認でき、また、政党支持率が入手できた5つの調査に関しては、産経・FNN、日経・テレ東の2つの調査で立憲民主党と日本維新の会の支持率の逆転が生じています。
もしかして世論調査を「操作」していません?
立憲民主党は公示前に109議席だった勢力を13議席減らしたとはいえ、依然として100議席近い96議席という勢力を保持しており、これに対し、日本維新の会は公示前勢力の11議席を一挙に4倍近い41議席に増やしたにせよ、議席数自体は立憲民主党の半分以下です。
それなのに、どの調査でも支持率が急増していて、いくつかの調査では立憲民主党のそれを上回っているというのも、なんだか理解に苦しみます。「選挙を経て突然、日本維新の会の支持率が急上昇した」というのも不自然過ぎるからです。
どちらかといえば、既存メディアの世論調査だと、今回の選挙で自民党が思いのほか健闘したこと、日本維新の会などが躍進したこと、立憲民主党が「敗北」したことなどを予見することができなかったことで、既存メディアがあわてて世論調査結果の「修正」をしているようにも見受けられます。
ごく一部では、新聞、テレビなどのオールドメディアは、支持率調査をそのまま公表するのではなく、何らかの「補正」を加えているとの情報もあります(※ただし、この点については真偽不詳です)。
やはり、オールドメディアの世論調査は「話半分」くらいに眺めておくのが正しい付き合い方なのかもしれません。
岸田政権はやはり短命?
こうしたなか、今回の衆院選では、自民党は多少議席を減らしつつも、まずまずの勝利を収めたと考えて良いでしょう。
ただ、その自民党政権の先行きにも、さっそくケチがつき始めているように思えてなりません。
産経ニュースの本日付の記事によれば、「年収960万円の所得制限を設けて18歳以下の子供に10万円相当額を給付する」という与党の方針については「異論が強い傾向が浮かび上が」るなどとしています。
第2次岸田内閣支持率63% 維新、立民上回る11%
―――2021/11/15 11:41付 産経ニュースより
正直、現在の「18歳以下」「年収960万円以下」などの要件を設ければ、それらの要件に合致しているかどうかを検討するのに時間もかかりますし、クーポンの使用要件の確定、配布するクーポンの印刷などにも、かなりの時間や費用、手間がかかるでしょう。
というのも、報道された内容には若干不明な部分もあるのですが、可能なかぎり整理すると次の図表3のような、非常に複雑怪奇な代物だからです。
図表3 今回の給付金案
区分 | 現金 | クーポン |
---|---|---|
住民税非課税・子供あり | 10万円+5万円×子供の人数? | 5万円×子供の人数? |
住民税非課税・子供なし | 10万円 | なし |
所得960万以下・生活困窮でなく子供あり | 5万円×子供の人数? | 5万円×子供の人数? |
所得960万以下・生活困窮でなく子供なし | なし | なし |
所得960万円超・子供あり | なし | なし |
所得960万円超・子供なし | なし | なし |
(【出所】報道等をベースに著者作成)
この図表もなるべく整理して作成しているつもりですが、やはり自分自身で書いていて、わけがわかりません。
とりあえず所得制限や年齢制限を設けず、一律で1人あたり10万円以上の(クーポンではなく)「現金」を支給しておき、一定以上の所得がある人からは、確定申告で所得税の形で回収する、といった簡便な方法は考えられないものなのか、大変疑問に感じざるを得ません。
いずれにせよ、来年の参院選で自民党が議席を減らし、その反面、(立憲民主党ではなく)日本維新の会や国民民主党がさらに勢力を伸ばすなどすれば、自民党内から「岸田おろし」の流れが生じる形で、案外、岸田政権も2024年の自民党総裁選まで(あるいはその手前)で短命に終わる可能性もあるでしょう。
国益について考えるのであれば、首相が短期間でコロコロ変わるのは良い話ではないという懸念もあるのですが、たとえば岸田首相の後任に、財務省と距離を置く政治家(たとえば安倍晋三総理など)が登板すれば、結果的には日本経済にとって悪いことではないのかもしれません。
ついでに、立憲民主党が「スキャンダル追及専門政党」から脱皮できなければ、参院選でさらに議席を減らすかもしれません。
その意味では、まずは「給付金騒動」、次いで来年の参院選あたりは、非常に興味深くウォッチする価値がありそうです。
View Comments (22)
一番不可解なのは、住民税非課税だと生活保護家庭が対象であること。
武漢肺炎の影響を一番受けていない層です。
しかも、国籍条項なし。
給付金の目的を明確にすべきです。
公明党はどこに税金を流したいのでしょう。
イーシャ様
そりゃ、某宗教団体の信者へ、ですね。
そして信者の皆さんからのお布施という名の上納金で、還流~?
維新は、選挙に勝ってマスコミへの露出が増えて、支持率が上がったんじゃないかな。
素朴な感想ですけど、(枝野党首も言っていたように)立憲にとって重要なのは選挙結果であり、いくら政党支持率で維新に抜かれても、議席数で抜かれない限り(少なくても立憲内部では)問題ないのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
全く同意です。
最大野党の地位を守るのが全てであり、そう言う意味では今回の選挙も彼らには勝利でしょう。これからも好き勝手仕事もせずに文句言ってれば給料もらえるんですから。
ただし他勢が影響力を増してることに不安ができたのではないでしょうか?
維新国民が影響力を持ち出したら立憲協賛は困るでしょうね。
バカ丸出しでざまあとしか思いませんが、今後は少しばかり楽しみです。
>一旦与えて所得税で回収
すごく良いアイデアだと思いました。まぁ「国民総背番号制」を完備出来なかった日本においての次善の策ではあるのですが。
原案のクーポンとかポイントとかは出す方も貰って使う方も煩雑に過ぎる。日本共産党や公明党などの手慣れたボランティア部隊が全国に動員出来る組織では、クーポンや申請に戸惑う法律やネットにリテラシーの無い層に働きかけて食い込むための良いチャンスとなると思います。
一律配布・税金で回収案は自分の記憶が確かなら、国民民主党の玉木代表が衆院選前から訴えています。新宿会計士様が言ってるように、実務上の手間が省けることも。
無論自分もその案の方がいいと思っていますが、恐らく公明党と財務省が絡んだ政治的な要素が多いのでしょう。
立憲共産党のおはなしも、産経新聞から
立・共共闘 共産支持層8割「続けた方がよい」
https://www.sankei.com/article/20211115-5OJEODKLBBNZPGUGZGONTMRITI/
>立憲共産党について
立民支持層で「続けた方がよい」との答えが48・6%、「続けない方がよい」が48・3%と拮抗(きっこう)し、賛否が分かれた。
一方、共産支持層では84・7%が「続けた方がよい」と回答し、「今後もさらに発展させたい」(志位氏)という党方針と一致した。
秀逸なコメントとしては、「ずっ共だよ」でした。
共産党は議席を減らしたのに
党員は我慢強いな
個人的に気になる話。
>取り組んでほしい政策に関して複数回答で聞いたところ、「景気や雇用」(42・3%)が最多となり、前回調査でトップだった「新型コロナウイルス対策」(35・3%)と入れ替わった。
yahooみんなの意見で一番人気だった「もりかけ」は、影も形も無し。
yahooは、ヤフコメだけで無く、みんなの意見もら左派系の世論操作に利用されてる事が、確認できました。
長らくdocomoレストランとSoftBankレストランしかない状態でしたからauや EMOBILE、UQレストランが選択肢に出てくるなら歓迎です。
第3極が出てくるまで何年待ったことか。
ところで支持率が不支持の概ね2倍とは初めて知りました。マスコミはしばらく給付金で岸田政権を叩けるので涎を出しまくってますね。岸田さんは国民から信任を受けたので天衣無縫にそして良心に従って自由にやればいいと思います。
捏造OK状態に見える
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
wikipedia『世論調査』より引用
『調査元やその子会社からコールセンターなどに丸投げされ、労働力を派遣労働で賄ったり、調査に厳しいノルマがあるなどの過酷さから調査の精度が落ちるという指摘もある。2020年6月にフジサンケイグループのフジテレビ(FNN)と産経新聞が合同で2019年5月から2020年5月の間に行った世論調査で調査業務委託先・アダムスコミュニケーションが計14回に渡り、架空の回答を1回につき、百数十件不正入力していたことが発覚し、フジテレビと産経新聞の両社と又委託先の日本テレネットが謝罪したが、前述の委託先における労働環境の悪さや調査元のチェック体制精度の低下からこの捏造が発生する一因を作ったとの意見もある』
『もし世論調査を受注するリサーチ事業者が未加盟だった場合、「日本世論調査協会倫理綱領」や「実践綱領」などの規定遵守義務がなく』
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
捏造OK状態に見える
知的好奇心レベルの高い皆様
今、解散総選挙したら、どうなるニカ?
党首のいない政党は、大変でしょうね。
立憲は、油断していて、こんな政党に政権を任せることは出来ません。
その隙に、維新、国民は、改憲についての考えを表明して、健全な野党として認知されつつ有ります。
貧すれば鈍するとは、良く言った物だと思います。
まあ、自民党もそこまでエゲツない事は、しないでしょうけどね。
>一律で1人あたり10万円以上の(クーポンではなく)「現金」を支給しておき、一定以上の所得がある人からは、確定申告で所得税の形で回収する、
これやると普段年調だけで済ませている人が確定申告するようになる。
税務署、結構な負担になるんじゃないかな?
そこでデジタル化ですよww
sqsq様
はるか昔から個人の税務申告はPC・スマホでもできるようになっております。
スマホは解りませんが、PCの場合認証する際のカードリーダー代金の一部が
申告する税金から控除できます。
認証する際、マイナンバーがあると便利です。
非常に込む申告会場に行かなくても済みます。 以前は順番が来るまで2時間かかった。
申告する際、不明な箇所は12月中に税務署又は税理士に確認した方が良いです。
12月過ぎると税務署の窓口・電話が混み大変です。