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役所の闇に触れるエクセル方眼紙

金融評論家兼ハンバーガー評論家兼エクセル評論家でもある「新宿会計士」にとっては、業務効率を著しく引き下げる不毛なエクセル方眼紙の数々が、会社組織などから追放され、消滅することを願っている人間のひとりでもあります。こうしたなか、以前の『エクセル方眼紙追放運動と日本年金機構解体運動の関係』でも日本年金機構の「強烈なフォーマット」を紹介しましたが、似たような方眼紙はほかにも存在するようです。

2021/09/21 19:55追記

個人情報が含まれた疑いのある画像がないか確認していたため、一時閲覧停止にしていました。確認がとれたので公開します。

社会保険庁の後継組織・日本年金機構の闇

以前の『エクセル方眼紙追放運動と日本年金機構解体運動の関係』のなかで、日本年金機構という組織が運営するウェブサイトに掲載された、「あんなエクセルファイル」(図表1)について紹介したことがあります。

図表1 「あんなエクセルファイル」

(【出所】日本年金機構『主な届出様式の一覧』のページに掲載されているエクセルファイル

「エクセルを方眼紙として使用する」という、ある意味では斬新すぎて常人が取り残されそうになるフォーマットですね。ちなみに個人的には「~届」の最後の部分がバーコードで隠れているという点についても「ツボ」に嵌っていて、大変強烈で面黒いと思う次第です(図表2)。

図表2 バーコードに隠れた「届」の文字

(【出所】日本年金機構『主な届出様式の一覧』のページに掲載されているエクセルファイル

さすが、何年に1回かは個人情報を漏洩するなどの信じられない不祥事を発生させ、しかも、絶対に国民に対して謝罪しない組織はレベルが違います。あるいは、「業が深い」、とでも言うべきでしょうか。

あくまでも個人的体験に基づく私見ですが、もともと、社会保険庁は数ある役所の中でも際立って無能な者が揃っており、社会保険事務所の窓口の職員らは頻繁にウソもつくし、事務の生産性は著しく低いという、本当にどうしようもない組織のひとつだったと思います。

そして、日本年金機構自体、その社会保険庁が解体された際に発足した独立行政法人であり、基本的に職員や腐った組織風土をそのまま引き継いでいると思われます(※このあたりは、実際に起業し、法務局や税務署、都税事務所、区役所などの役所を巡ってみれば、どなたでもすれば実感していただけると思います)。

エクセル方眼紙がほかにも存在した!

ただ、世の中には社会保険庁・日本年金機構と同じような「エクセル方眼紙」を恥じらいもなく公表している役所というものがあったようです。

今回発見したのは、経産省の『「クリーンエネルギー自動車の導入補助金」について』というページの先にある、「一般社団法人次世代自動車振興センター」という組織のウェブサイトの『令和3年度 CEV補助金(車両)のご案内』というページに掲載されていた、「こんなエクセルファイル」です(図表3)。

図表3 「こんなエクセルファイル」

(【出所】一般社団法人次世代自動車振興センター『令和3年度 CEV補助金(車両)のご案内』のページに掲載されているエクセルファイル

このセルをギュッと圧縮した感じ、エクセルの「エ」の字も知らない人が一生懸命に作った感じがして、見ていて大変に痛々しいですね。しかも「申請日」はエクセルのTODAY関数などで自動出力されるわけでもなさそうです。

さきほどの日本年金機構のフォーマットも顔負け、というわけです。

いや、本当に参りました。

「一般社団法人次世代自動車振興センター」、何者?

さて、この「一般社団法人次世代自動車振興センター」という組織、なぜ経産省からこの事務を請け負っているのでしょうか。この組織、経産省の外郭団体か何かなのでしょうか?

疑問に思って、この組織についていろいろと調べてみたのですが、『次世代自動車振興センターについて』などのページで社員構成などを確認してみたところ、社員は次の3者であり、このほかに公的機関らしきものの存在は確認できませんでした。

「一般社団法人次世代自動車振興センター」の社員一覧
  • 一般財団法人日本自動車研究所(特別会員)
  • 一般財団法人省エネルギーセンター(普通会員)
  • 一般財団法人新エネルギー財団(普通会員)

(【出所】『次世代自動車振興センターについて』)

また、上記以外にも「  燃料電池実用化推進協議会」という組織が「賛助会員」だそうであり、また、代表理事や理事についても可能な限りで略歴を調べたものの、経産省出身者というわけではなさそうです。

ただ、そのように考えていくと、なぜこんな「公的組織」なのか「民間組織」なのか、よくわからない組織が、経産省という組織の公的な申請手続を代行しているのでしょうか?

本稿で紹介したエクセルフォーマットのような代物を見る限り、この組織の事務処理能力が決して高いとも思えないのですが、なにか「裏の事情」でもあるのでしょうか。

本当に不思議ですね。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • 「触れるほどにどんどん壊れていくWORD申請様式の闇」も日本社会から放逐するべきと思います。

    • はにわファクトリー様
      国の例示様式がほとんどwardなんですよね、なので、システムに組み込む際にはエクセルで似せるのですが、職人技ですよ

  • 勤務先の医療機関では、事務の人がExcel方眼紙でスタンプラリーの表紙を作成するだけでなく、事務連絡まで書いてます。最初見た時は驚き、ちょびっとだけ助言もしましたが、もう諦めました。

  • 国や公的機関である場合、高確率でこのようなフォーマットが存在します。しかも多数。

    指定の枠の中に確実に記入(入力)させる的な発想で手がけられた、初代職人?のフォーマットを後任者がリバイスし続ける…というありがちなアホロジックかと思います。

    次世代自動車振興センターの様式(Excel、Word)を点検してみたら、どちらも97-2003という古のバージョンでした…。

  • でもって、これで入力したデータを、スキャンなりして、DB化する仕事を外注するのに税金を使うわけですね。

  • 自分はEXCEL方眼紙で入力フォーマットを作って、それをAccessやFilemakerの入力画面に貼り付けてました。

  • SEなのでエクセルはもう日常的に使ってます。
    方眼紙的な使い方はメンテナンスが大変で嫌いなんですが、
    設計資料のフォーマットで少なくないんですよね;

    まぁワードよりは1024倍いいけど。

    • 職業病ですね。
      128,256,512,1024 などの数字を見かけると
      「キリがいいな!」
      と思っちゃいますwww

  • 来月特別支給の老齢厚生年金を受取る歳になり年金請求届を出すのに(出すだけなのに)予約が必要でTELしたらしきりに「郵送でも受け付けてますよ」って・・・
    「いや心配だから出しに行きます」って言ったら「何がご心配ですか?」って・・・
    ちょっとカチンときて「おまいらの仕事ぶりが心配なんだよ!」って言ってしまいました・・・
    まだまだ修行がたりませんね。

  • この書式の生い立ちと思えることを書きます。

    書式が97-2003のxlsの形式ということは、20年ほど前にトランジスタ技術系の書籍で当時、どこかの大学か技術系の会社の方が設計図面を書き込むために方眼目にして記入することを推奨していました。

    当時、電子系の設計図面を電子化するソフトは存在していなかったので数年間はやったことがあります。

    セルを結合することでメーカーのカタログを張り付けることもできて、オートシェープを利用して記号や図を入れることができたので社内図面としての資料作成で重宝した使い方でしたね。記事内のバーコードはこの形式で張り付けてあるのではと思います。

    10数年前に電子設計を離れたのでその後どうなったのかはわかりません。

    十年ほど前の介護や障害の実績記録にも採用されっていました。
    その後、官庁から配布される無料ソフトでデータを入力するとcsvフォーマットで保存されて方眼目ではなくなりました。

    お役所関連の書類は、P明朝やPゴシックのようなものが嫌われています。
    明朝やゴシックで、上下の行の文字間が崩れることを嫌ったために起きている状態のようです。

    最近では、最初から入力保護などを絡めて作りこまれた書式に変わっています。外部委託等で更新できない業界がそのまま維持していると思えます。

    予算を付けて利用頻度の多いものから作りなおせばよいのですが、PCを頻繁に使わない職場ほど、放置されているのと思います。
    メールも個人分を用意する必要のない業種もありますので厳しいかもしれません。小さな会社では、エクセルの使い方に詳しい人が作り直せばいいんですけどね。

    ITのリテラシーの違いが顕著になってきているようですね。悩ましい限りです。

    •  トラ技…懐かしいですね~。あと、Excel方眼紙の由来については一太郎説もあります。

       私の知人である自治体職員氏にExcel方眼紙について聞いたところ、かつて自治体書式の大御所だった3太郎と4太郎、そのフォント配置を忠実に再現できたのが唯一Excel方眼紙だったとか。まだLotus123とかMultiplanとか頑張っていた時代のお話です。今も一部の地方自治体は未だに一太郎使ってますよね。流石に社内文書だけのようですが。
       Wordは今もへっぽこですが、Windows3.x時代のWordは本当に酷かった・・・因みに当時の小生はAmiproユーザーでした(爆)。

  • 元EXCEL方眼紙作成担当より、一言。
    EXCEL方眼紙問題の諸悪の根源は、上司様にあるのです。
    下の身分である者にとり、上司様のご機嫌を損なう事は、サラリーマンとして
    やっていけない事なのです。
    ひたすら上司様のご意見通りにしないといけないのです。
    ただ、EXCELの方がWORDより使いやすいので、その形式となるのです。
    形式ではなく、印刷時の見た目が重視なのです。
    下の身分の者に文句を言っても意味がありません。
    (WORDは左端がEXCELよりぶれる事が多く、印刷時ミニクイと言われるのです)
    注:意味が無い事が解っている事と実行する事とは別問題です。

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