当ウェブサイトですでに何百回となく取り上げて来た自称元徴用工問題に関連し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、珍しく「やや踏み込んだ記事」が掲載されていました。「米中対立局面が続く東アジア情勢で日本との協力は必要だから、次期政権は韓日関係を改善せよ」というものですが、冷静に眺めるとやはりおかしな部分がいくつかあるみたいですよ。
自称元徴用工問題の「キモ」
当ウェブサイトですでに何百回と繰り返してきたとおり、自称元徴用工問題、すなわち「朝鮮半島で戦時中に強制徴用されたと自称する者たちやその遺族らが日本企業を訴え、日韓請求権協定に違反した判決が出ている問題」は、日韓間の最大の懸案のひとつとされているようです。
そのポイントは、①日韓間のあらゆる請求権の問題は日韓請求権協定などですべて解決済みであることに加え、②そもそも自称元徴用工問題自体、いずれも韓国側がでっち上げたウソである可能性が極めて高い、という点にあります(これについては自称元慰安婦問題などの歴史問題にも同じことがいえます)。
このあたり、①の部分については日本政府、日本企業がメインで主張している論点ですが、当ウェブサイトとしては、やはり②の部分こそ重要だと考えていますし、いずれ、韓国が日本に対し、あることないこと主張して日本の名誉と尊厳を傷つけたことに対しては、きちんとした制裁を加えていかなければならないと考えています。
落としどころはたった3つ
しかし、それより手前の時点で、自称元徴用工問題をこのまま放置していれば、いずれ日韓関係が活力を失っていくことは間違いありません(それが日本にとって悪いことかどうかは別として)。というのも、落としどころは究極的に、次の3つしかありえないからです。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- (1)韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
- (2)日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- (3)韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する
(【出所】著者作成)
この点、普段から申し上げているとおり、(2)については日経新聞や外務省(あるいは元外交官)などからしばしば出てくる選択肢ではありますが、それと同時に、日本にとっては「絶対に選んではならない選択肢」のひとつです。
ただし、「日本が(2)の選択を避けなければならない」という点にだけ留意すれば、極端な話、私たちの国・日本にとっては(1)でも(3)でもどちらでも良いでしょう。(1)にしても(3)にしても、すべては韓国の選択です。
もちろん、(3)の状況が出現すれば、条件次第では、日本経済にも大きな打撃が生じかねません。
ただ、今年2月に刊行した拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』でも主張したとおり、そもそも「国際法を守らない国」「基本的価値を共有しない国」と、無理に関係を深めること自体、日本という国にとっては大変な負担でもあります。
それに、日本にとって、連携すべき国は、ほかにもいくらでもあります。
実際、経済活動には「ヒト、モノ、カネ、情報」の流れがあるといわれますが、このうち「モノの流れ」については、すでに台湾が韓国を抜き、日本にとっての「第3番目の貿易相手国」に浮上しつつあります(『台湾が韓国を抜き「3番目の貿易相手」に浮上した意味』等参照)。
また、「カネの流れ」については、そもそも日本の金融機関にとって、国際与信全体に占める韓国のシェアは非常に低いのですが、それがさらに低下して来ていることが確認できます(『「カネから見た国際関係」と世界最大の債権国ニッポン』等参照)。
これから日本経済は、まさに「韓国がなくてもまったく心配ない」という状態を目指すべきだ、というのが、個人的な持論というわけです。
希望的観測に基づく主張
さて、このような視点に立つのならば、現在の状態を、「日韓関係の悪化」と呼んでよいのかどうかは微妙です。
いや、もちろん、「日韓関係がギクシャクしている」という意味からは「悪化」と呼ぶのが自然な発想ですが、「日韓関係が(日本にとって)望ましい/望ましくない状態」という意味だと考えるならば、正直、「望ましくない」と断言できるものではないでしょう。
ただ、これを韓国の側から見ると、死活問題です。
というのも、韓国経済は日本からの「モノを作るためのモノ」の輸入で成り立っている、という側面があるからであり、また、韓国が半導体、スマートフォン、ディスプレイなど最先端の技術を結集した製品を製造して外国に販売するためには、日本からの技術協力が欠かせないからです。
案の定と言うべきでしょうか、そうした「韓国側の一方的な希望」に基づく記事が、このところ、非常に増えています。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載された次の記事が、その典型例でしょう。
【中央時評】韓国次期政権が必ず解決すべき徴用問題(1)
―――2021.09.17 11:00付 中央日報日本語版より
【中央時評】韓国次期政権が必ず解決すべき徴用問題(2)
―――2021.09.17 11:02付 中央日報日本語版より
冒頭、いきなり「悪化した韓日関係に変化の兆しが見えない」、「カギは徴用問題だが、韓国政府は現金化の秒針が進むのを眺めているだけだ」という文章で始まりますが、現在の日韓関係、韓国から見れば「悪化」で間違いないのでしょう。
踏み込んだようでいて、微妙に事実誤認もある
いちおう、この論者は2018年10月の、新日鐵住金(現在の日本製鉄)に対する大法院(最高裁に相当)の判決を巡っては、「政府は直ちに三権分立と被害者中心主義の原則を前に出しながら明確に大法院の判決側に立った」と述べ、韓国政府の姿勢を批判しています。
「政府は国内的には司法府の最終決定に従うべきだが、国際的には国を代表して他国と結んだ協定を履行しなければいけない。<中略>政府としては<中略>両者間の衝突を解消するために苦心すべきだった」。
「大法院の判決が出ると、日本は韓日協定上の紛争解決手続きに基づき2国間協議を要請した。韓国は拒否した。<中略>しかし国際的に見れば、問題は韓国内の判決で始まったにもかかわらず、韓国政府が協定に規定された2国間協議までも拒否したのは極めて異例だ」。
ようするに、判決の国際法違反状態を解消しようとしなかった韓国政府の不作為に問題がある、という指摘です。このあたり、個人的な記憶に基づけば、中央日報がここまで踏み込んだ議論を掲載するケースは、皆無ではないにせよ、稀(まれ)です。
もっとも、この人物の議論には、事実を正確に認識していないという問題点もあります。たとえば、自称元徴用工判決に関連し、日本企業の資産が差し押さえられている問題を巡って、こんな記述があるのです。
「解決策が出てこなければ現金化の時限爆弾がいつ爆発するか分からない状況だ」。
このあたり、残念ながら(?)、その「時限爆弾」とやらは、おそらくは不発弾です。
韓国側で差し押さえられている資産は金銭債権や不動産、上場株式などの「換金可能な資産」ではなく、非上場株式だ、知的財産権だといった「換金が事実上不可能な資産」ばかりだからです(『三菱重工差押で逆ギレの韓国政府と日韓テーパリング論』等参照)。
このあたり、ツッコミどころだらけではあります。
さらに、この人物が唱える「解決策」のなかに、「代位弁済案」とやらが出て来るのですが、これがまた大変に噴飯物です。
「韓国政府が代わりに賠償した後、日本側に求償権を行使する案。韓国としては大法院の判決を履行することになり、日本には韓日協定を理由に求償権を否認する余地がある」。
こんなものを平然と出してくるあたり、なかなか面黒い議論ですね。
いずれにせよ、この人物は、「激化する米中対立と激動の東アジア勢力構図を解決すべき韓国にとって日本との関係改善は必須」などと協調するのですが、日本にとっては逆に、日韓関係をこのままテーパリングさせるというのも、決して悪くないのではないか、などと思う次第です。
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>日本にとっては逆に、日韓関係をこのままテーパリングさせるというのも、決して悪くないのではないか、などと思う次第です。
石破次期政権などその可能性すら霧消し、立民ほかの野党共同政策なるものにも韓国のかの字もない現状では、こうなることはもう必然的流れと言えそうですね。
とち狂って、差し押さえ資産の「現金化」などやろうものなら、キツいお仕置きは不可避。ゴニョゴニョ理屈にもならない理屈をこね回して、大法院判決など実質無かったことにしてみたところで、日本から好意的反応など最早期待できないところまで、突っ走っちまった。心底それに気が付いたら、ご紹介の記事の筆者なら、今度はどんな記事を書くのでしょう。
よもや、
>「韓国政府が代わりに賠償した後、日本側に求償権を行使する案」
なんて、寝ぼけたことは言わえないでしょうが、といって、読者を納得させたり、説得したりできるだけの材料など、まず見つけられそうにない。
でもって、「岸田が~」か、「河野が~」か、`高市が~」か、「野田が~」のどれになるかはしりませんが、「安倍が~」の時代に逆戻りするという可能性に100ウォン(笑)。
2国間協議と仲裁委員会を拒否した理由を「大法院の判決を履行する以外の方法は考慮できないと判断したのだろう。」で片付けられては、日韓協定の存在価値が有りません。
明確な国際法違反ですが、この点を書いてある記事はまだマシな方。
日本側の記事でも、この点を指摘する物は稀。
韓国は協定の内容の理解が両国で異なる事を言い訳にする意見が出て来ますが、その際は2国間協議と仲裁委員会を以って解決する約束になっていて、韓国はそれを守らなかったという事実が、重要なんだと思います。
これを飛ばしての解決法は、協定を守らなかった事になりますので、韓国政府が支払っても日本政府が納得するかどうかは、分かりません。
だんな様
>2国間協議と仲裁委員会を拒否
韓国は、意見や見解の相違を超えて、約束していたことを守るという「最低レベル」のことができません。
韓国が、代わりの案とか代償をするとかそういうことは関係がなく、前提は「約束を破った」です。
故に、韓国は「最低のレベル」で信頼できない、ということは揺ぎませんね。
本日午後、総裁選候補者の共同記者会見があるそうです。各候補が本件についてどういう考えなのか誰か質問してくれるといいですね。書く候補とも選挙に向けて少しづつ意見を変えているようなので。
予想は、
安倍元総理、菅総理路線を継承;高市氏、河野氏
本文(2)の日本が譲歩し日韓関係の破綻を回避する;岸田氏
野田氏;わかんね
更新ありがとうございます。
日韓関係のキモは、やはり会計士さんの言われる②の部分こそ重要だと考えます。日本政府もあまり突っ込んで来なかった。何十回も書いてますが、「悪辣な日本が作り上げた、慰安婦や徴用工などと言う具体的な証拠が、何処にあるのか?」無いです。
奴隷状態で働かせた写真一枚、身体を無理矢理売る事を強要した指示書、戸籍書、承諾書、人名一覧の一枚も出てこない。但し徴用者のリスト、支払いの書類は現存しますよ。要は「カネになるから日本のもとで働いた」のが事実です。斡旋者は朝鮮人が大半です。もちろんピンハネしてた。
戦争中とはいえ写真ぐらい仲間内で撮るでしょう。それも無い。また生きた証人(嘘つき婆ら)の風貌があまりにも若い。70歳代で通用します。大負けにまけても、80歳代。6〜8歳で大人の相手をしていた(笑)?
日本国と日本人の名誉と尊厳を傷つけたことに対しては、きちんとした制裁を加えていかなければならない。その中で「
代位弁済案」なんて言う、日本を苛立たせる話が出て来る。
韓国政府が慰謝料払うならどうぞ、ご勝手に。日本企業や政府には関係ない。もうウンザリ越えて、な◯なっ◯欲しいとさえ思います。
文韓国はアメリカに行くがバイデン大統領には会えないらしい
バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 様
帰り?には、ハワイにも立ち寄るそうですねー。
思い出作りー?
ちかの様
エッ帰りにハワイ?。壁に囲まれた生活が待っているから、一生のおもひで作り(笑)。
>「韓国政府が代わりに賠償した後、日本側に求償権を行使する案。韓国としては大法院の判決を履行することになり、日本には韓日協定を理由に求償権を否認する余地がある」。
「大法院の判決を履行」という意思で韓国政府が原告側等に賠償するのなら、日本政府が主張する「国際法違反が是正」されたことにはならないですね。
歴代の韓国政権同様に「日韓請求権協定で解決済」という認識を示したうえ、「大法院の判決は国際法違反」であると政府として公式発表し、それを前提としたうえで、日本企業が実害を被った損害を韓国政府が日本政府に補填する、あるいは韓国政府が日本企業に替わって原告等に賠償する、といったことが必要なのです。
要は、韓国政府が、「大法院の判決は国際法違反」で「日韓請求権協定で解決済」という発表をしないかぎり、いかなる小手先の解決法を持ってきても日本政府は一顧だにしないということです。
ワカリマシタカ、ブンチャン?
それ
にこんな案は日本政府としては絶対飲めないですね。
問題は、国際法違反の判決自体を
すいません、以下変な文が残っていました、無視してください。
>それ
>にこんな案は日本政府としては絶対飲めないですね。
問題は、国際法違反の判決自体を
PONPON様
>いかなる小手先の解決法を持ってきても日本政府は一顧だにしないということです。
まさにそれが大切ですね。
もはや日本は、中途半端な解決なんて求めていないでしょう。
国民感情のデッドラインは超えてます。
しかし、ここまでやり放題やったくせ「芋を引く」そぶりを見せる韓国ですが、相変わらず情けないですね。
本当に、韓国がつまらないことをいったら「ちゃぶ台返し」すべきですね。
韓国とのやり取りは、相応のリスクを与えないと砂上の楼閣になりますから、やり取りは一回一回しっかりと傷をつけておかないといけません。
頓珍韓様
ご賛同、有難うございます。
私としては、日本政府もあることながら、それ以上に日本政府が韓国の小手先の対応に騙されないようにすることが重要と考えています。
日本企業や日本政府が経済的に損害を被らないならば問題無し、というわけではありません。
韓国政府が日韓請求権協定違反&国際法違反であることを自ら認め、世界に向けて公式発表することが何よりも重要なのです。
「日本統治の不法性」を前提とした判決を韓国政府自らが否定しないかぎり、何ら解決にはなっていないということを、日本政府のみならず日本国民もしっかりと理解する必要があります。
すいません、また訂正です。
(誤)
私としては、日本政府もあることながら、それ以上に日本政府が韓国の小手先の対応に騙されないようにすることが重要と考えています。
(正)
私としては、日本政府もさることながら、それ以上に日本国民が韓国の小手先の対応に騙されないようにすることが重要と考えています。
いろいろな意見があるようですが、韓国の行政府なりリーダー的政治家の中では「日本による韓国併合は大罪であり、それによりもたらされた半島人の感じる被害は全て日本が賠償しなければならない」という屁理屈への暗黙の了解が有り、文大統領の強い影響下にある大法院もそれをベースにして、2国間合意では日本の大罪への補償が足りないと言っているんだと解釈してます。
つまり、韓国側が日本による併合を「国際的に、歴史的に合法である」と認めない限り、ないしは日本側の政治的・歴史認識に大きな地殻変動が起きて「韓国併合が(例えて適法であっても)半島に対する大罪だった」と認めない限り、永久に解決しない問題と考えます。
従って、日本側で自称慰安婦、自称徴用工問題の解決策を考えること自体が無意味だと思っています。日本は国際法解釈と2国間条約に従って粛々と、韓国側の異常な大法院判決に基づく行動を拒否し韓国側の変革を求める対応を堅持すべきと考えます。
30年ほど前までは、韓国の訴え人は日本の裁判所に補償を請求する訴えをしていました。当然、1965年の日韓基本条約と請求権協定があるので門前払いがつづきました。そこで、自国の裁判所に訴えるようになった。そんな流れですね。
このころは協定の内容を知らされていなかったようです。韓国政府の不作為で、責任は韓国政府にあります。協定の内容がわかると、協定に含まれていなかったとか言いだして請求を続ける。もはや韓国の国内問題ですから、国内でもめてください、としか言いようがありません。解決策を考えるにあたり、日本とともに、というのはそろそろやめてほしいですね。
中央日報が何を言おうと、大統領が交代しても韓国政府は、この問題を解決しようとしないでしょう。理由は、解決する必要が無いからです。現在の状態が何年続いても、韓国政府は困らない。
一方の日本政府も、現在の状態が続く限り、この問題を理由にして韓国政府との関係を少しずつ疎遠にしていけるから、その方が都合が良い。
結局、韓国政府が「問題を解決しないと困る」事態にならない限り、問題は解決しないでしょう。
例えば、➀何かの間違いで差押財産が現金化され、これを受けた日本政府の対抗措置によって、韓国政府が二進も三進も行かなくなった場合、➁韓国政府がデフォルト危機に陥り、アメリカなどに助けを求めるものの拒否され、日本以外に助けを求める国が無くなった場合です。
日本政府は、それまで、高みの見物をしていれば良いと思います。
「何とか日韓関係を(韓国産業界が安心できるように)改善したい」と言う事ですね。本来的には韓国産業界から韓国経済全体に個人商店のおっちゃんおばちゃん、段ボール拾いのホームレスから地主やIT長者まで波及する問題でもあるはずなのですが「韓国経済全体を担い、また死活的にその経済に頼って生きている」はずの圧倒的多数の韓国国民が割と心の底から寧ろ「日韓断絶で構わない」と思っている。
日本製材料を輸入し、労働者に加工させ、世界に向けて土砂降り輸出をする事で大きな利益を得ていて、その構造が自分の利益に直結している事がわかっている層だけが危機感を持っている。例えその土砂降り輸出企業の従業員であったとしても「自分の利益は労組と結託して経営側から絞り取りさえすれば良い」と思っていてそれ以上のパースペクティブは持ち合わせていない(ここに気付けば右派労組運動も芽生えるのでしょうが日本では1960年代には早くも存在した右派労組運動が韓国には存在しない)。
圧倒的多数のやや古い植民地解放闘争史観と毛沢東式反帝国主義が、妙な中原の覇者への屈従のお行儀の良さと同居して居る。中共が覇権主義であり、そのアリ地獄から自ら這い上がるのだと言う意思が感じられない。「右派」は上記Samsungはじめ加工貿易土砂降り輸出独占資本。それ以外は南北手を取り合って中共に飲み込まれようと言う勢力。