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希望者全員へのワクチン接種は「9月末で1回目完了」

1日100万回目標を「荒唐無稽」とか批判していたメディアもありましたね

菅総理の突然の引退表明により、コロナやワクチンの進展などに関する報道が急減した印象がありますが、忘れてはならないのはワクチン接種が「直線的に」順調に進んでいる、という事実です。結論からいえば、ワクチン不足は生じていませんでしたし、このままでいけば、自治体による差もありますが、計算上は9月にも希望する全国民が1回目接種を終えることができるでしょう。ということは、10月に希望する全国民が2回接種を終える、という意味でもあります。

東京都の状況は好転

メディアがあまり積極的に報じようとしないのが、ワクチン接種の状況です。

先週は菅義偉総理大臣が9月の自民党総裁選への不出馬を表明したことを受け、コロナ関連の報道が急減した印象がありますが、じつは週末、東京都のケースでいえば、新規陽性者数が急減しています。

東京都・9月5日(日)の状況
  • 新規陽性者数…1853人(前日比▲509人、前週比▲1228人)
  • 7日間平均値…2549人(前日比▲175人、前週比▲1235人)
  • 重症者数…264人(前日比▲3人、前週比▲32人)
  • 新規死亡者数…10人(前日比▲5人、前週比▲4人)

(【出所】東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』、『新型コロナウイルス感染症重症患者数』より著者作成)

東京都の状況は相変わらず「一進一退」ですが、ここにきて新規陽性者数は前週比で1000人以上も減り、重症者や新規死亡者数も徐々に落ち着きを取り戻しつつあります。

もちろん、「落ち着きつつある」とはいっても、新規陽性者数が4ケタを超えているわけですから、予断を許す状況ではありません。ただ、「明けない夜はない」といわれるとおり、光が見え始めているようにも思えるのです。

こうしたなか、希望の光があるとすれば、ワクチン接種の進展でしょう。著者の手元計算に基づけば、おそらく現時点でワクチン接種を1回でも終えた人は全人口の60%、2回接種を終えた人に関しては50%を超えたと考えられることがわかりました。

ワクチン接種の「見方」

VRSなどによれば接種率は60%近くに

まずは、「ワクチン接種記録システム(VRS)」の生データと首相官邸ウェブサイトに公表されている職域接種データ、医療従事者等に関する接種データなどの状況を著者自身が集計したものを、そのまま掲載しておきましょう(図表1)。

図表1 総接種回数と接種率
区分 総接種回数 接種率
全体合計 136,224,372
うち1回目 75,351,613 59.27%
うち2回目 60,872,759 47.88%
65歳以上合計 63,135,449
うち1回目 31,914,705 89.94%
うち2回目 31,220,744 87.98%
高齢者以外合計 73,088,923
うち1回目 43,436,908 47.40%
うち2回目 29,652,015 32.36%

(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。9月6日時点で取得したVRSデータ、9月2日時点で取得した職域接種データ・重複計上データなどを使用。「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。高齢者接種率は累計接種回数を3548万6339人で、「高齢者以外」の接種率は、接種回数合計から65歳以上接種回数を引いた数値を、9164万2566人で割って求めたもの)

※VRS生データのダウンロード方法

次の文字列をウェブブラウザのURL欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能

https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson

上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」(※)に変えると過去データの入手が可能(※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年8月5日時点のデータ」なら、{dt}の部分を「2021-08-05」に変換)

現時点において、ワクチン接種実績は累計1億3600万回を超え、接種率は全体で1回目が59.27%、2回目が47.88%であり、「高齢者以外」、つまり64歳以下に限定しても1回目が47.4%、2回目が32.36%です。

「ワクチン不足」?まったく生じていませんでしたよ?

7月から8月にかけ、「ワクチン不足」だ、「接種が遅れている」だといった、新聞・テレビなどのマスメディア(あるいはオールドメディア)の報道を真に受けていた人たちからすれば、正直、「意外だ」と思われるケースも多いのではないでしょうか。

当ウェブサイトでは6月初旬からVRS生データをダウンロードのうえ分析し続けていますが、現実には、ワクチン不足が生じた形跡はなく、それどころか、接種率をグラフ化してみると、驚くほど「直線的」に増え続けていることがわかります(図表2)。

図表2 ワクチン接種率

(【出所】VRSデータより著者作成。なお、集計の技術的な問題から、接種率については図表1のものと微妙に異なっている)

8月上旬に接種率が急上昇しているのは、職域接種のデータが8月4日時点で一気に加算されたからですが、高齢者に関してはだいたい7月末から8月初旬までで頭打ちとなっていることから、8月以降は高齢者以外に対する接種が急ピッチで進んでいる格好です。

また、この線形からは、35日間(=5週間)で接種率が約20%ポイント増えていることが示唆されますが、9月末には累計接種回数が1.7~2億回前後、接種率も1回目で70~75%、2回目で60~65%に達するであろうことを意味しています。

VRS未入力問題がワクチン接種を「見え辛くする」

こうしたなか、先ほど「現時点で日本全体での接種率は1回目が6割、2回目が5割を超えている」と申し上げたのは、いったいどういうことでしょうか。

その大きな理由は、なんといっても「VRS未入力問題」にあります。

じつは、VRSの最新データで確認できる直近の接種実績は、1日100万回を大きく割り込んでいて、どんどんと回数が減っている状況にあります(図表3)。

図表3 ワクチン接種回数(医療従事者等以外、職域接種分除く)

(【出所】本日時点のVRSデータより著者作成)

明らかに、最近になってワクチン接種回数が激減しているように見えてしまいますが、このグラフは「接種率が直線的に上昇している」とする、先ほどの図表2で示したものと大きく矛盾します。

これはいったいどういうことか。

結論的には、先日の『VRS未入力800万回も「気にせずに良くなる」理由』でも報告したとおり、VRSの「未入力」、つまり「すでに接種を終えているけれどもVRSに入力していない回数」が、日本全体でおよそ600~800万回分は常時存在している、という問題にあります。

この「未入力実績」の計算ロジックについては『ワクチン接種「未入力」の実態は600~800万回?』でも示したとおり、現実には「過去何十日分ものデータを遡って取得し、加工する」など、かなり面倒な計算が必要になるのですが、当ウェブサイトではすでにこの「過去何十日分」というデータを保持しています。

夜明け8回!

未入力が最大800万回を超えたことも!

これに基づいて実際に試算してみると、たとえば8月初旬においては「事後的に」未入力が800万回を超えていた日もあったことが判明します(図表4)。

図表4 VRS未入力実績

(【出所】過去約90日分のVRSデータに基づき著者作成)

このグラフは、「本来ならばその日までに入力されていなかったにもかかわらず、事後的にバックデートで入力された接種実績」を後日のデータから集計したもので、最も多い8月4日の未入力実績は840万回を超えていることがわかります。

言い換えれば、現在、VRSのデータは1ヵ月後に集計すれば事後的に600~800万回(あるいはもっと)上振れする、という意味であり、また、VRSのデータの「増分」(図表5)の形はここ2~3ヵ月で顕著に変わっていないことから、おそらく現時点においても600~800万回の未入力があると考えて良いでしょう。

図表5 公表日ごとのVRS上の「合計接種回数」の増分

(【出所】過去約90日分のVRSデータに基づき著者作成)

さきほどの図表1については、本日首相官邸のウェブサイトに公表される最新の数値と比べると、職域接種の重複分を考慮していない分、若干の過大計上となっていますが、VRS未入力分を考慮すれば、600~800万回(あるいはそれ以上)の過少計上であると考えられます。

したがって、かりに昨日時点の接種回数について、1回目、2回目ともに図表1のものを300万回上回っていたとすれば、現時点の接種率は1回目が61.63%、2回目が50.24%と計算できます。

おそらくこちらの方が実態に近いのでしょう。

待機者は1500~2000万人?

さて、ワクチン接種の「ゴール」について、政府はいったいどこを目指しているのでしょうか。

あくまでも個人的見解に基づけば、おそらく、ワクチン接種率が人口の100%に達することはないでしょう。体調など、何らかの事情によりワクチンを接種することができない人もいらっしゃいますし、また、ワクチン接種は任意であるため、わざと拒否する人もいると思われるからです。

なにより、図表1で示した「接種率」自体は、そもそも接種できない12歳未満(2020年4月1日時点で約1200万人)も含めた全人口を分母にしているため、この「接種率」は少し低めに出て来ます。

つまり、ワクチンは日本の全人口1億2712万8905人のうち、1.1億人に対して2回接種すれば(つまり2.2億回に達すれば)接種率は事実上100%を達成するということであり、9900万人に対する2回接種(つまり1.98億回)でも事実上、90%に到達します。

政策的な観点から現実的な目標は、だいたい9000~9500万人に2回接種を終えること、すなわち接種回数1.8~1.9億を達成することでしょう。

この点、1回目接種を終えている人が7500万人ですので、現在、たった1回も接種をしていない人は、その差分の1500~2000万人前後が「待機者」です。

河野太郎ワクチン担当相「待機者は1800万人」

ところで、こうした見方がさほどピント外れではないという証拠が出て来ました。

河野氏、接種待機は1800万人

―――2021/9/4 21:49付 共同通信より

共同通信などの報道によると、河野太郎行革・ワクチン担当相は土曜日、「希望する国民への1回目接種が完了する時期は9月末」との見方を示すとともに、1回目接種を待っている人たちが現時点で1800万人だと明らかにしたのだそうです。

当ウェブサイトの「最も少なくて1500万人」という試算値と比べれば、少し多いのですが、その差分の300万人分はVRSの未入力などでも十分に説明がつくとおり、正直、誤差の問題でしょう。

いずれにせよ、菅義偉総理大臣が5月7日時点で「1日100万回接種する」などとブチ上げたときには、『日刊ゲンダイ』さんというメディアなどから「荒唐無稽」だ、「無理筋な精神論」だ、「口から出まかせ」だ、などと舌鋒鋭く批判されました。

菅首相がシャカリキ「ワクチン1日100万回」計画の荒唐無稽

―――2021/05/11 13:25付 日刊ゲンダイDIGITALより

驚くことに、この記事は依然として取り消されていないようです(※『日刊ゲンダイ』さんは、今からでも良いので、この「荒唐無稽」で「口から出まかせ」のデマ記事を撤回し、今すぐに日本国民と菅総理に謝罪なさった方が良いと思う次第です)。

菅総理に感謝!

現実には、7月末で医療従事者等と高齢者向けの接種をほぼ終わらせ、その後は「後回し」にされたそれ以外の一般向け接種が急ピッチで進んだのです。人口密集地帯である東京、大阪に設置された大規模接種センターなど、菅総理のイニシアティブの典型例でしょう。

これを菅義偉総理、河野ワクチン担当相らの功績と言わずして、いったい何と言えば良いのでしょうか。『日刊ゲンダイ』さんのように、思いつきで「シャカリキ」だ、「荒唐無稽」だ、「口から出まかせだ」などと政府を批判していれば済む商売は、本当に楽で良いですね。

もちろん、自治体によっては9月末までに1回目接種を終えることができないケースもあるでしょう(東京都23区の事例でいえば、若年層接種率が極端に低い某S区あたりでしょうか)が、それはあくまでも各自治体の問題です。

(※もしお住まいの自治体におけるワクチン接種の進展に不満をお持ちなら、菅総理や政府に恨みを向けるより前に、ご自身がお住まいの市区町村で4年ごとに訪れる首長選挙で、その首長にお辞めいただくよう投票なされば良いと思うのですが、いかがでしょうか。)

いずれにせよ、菅総理には心の底から感謝申し上げたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • おそらくワクチンの進捗については焦りはあっても不満を持ってる人は少数派だったと思います。
    何故ならスローペースでも順番が回っているのは周囲の高齢者を見ればわかるからです。

    なによりも菅総理に足りなかったのは、この人に任せておけば大丈夫!と安心させるわかりやすいリーダーシップでしょう。

    五輪が無観客開催で確定するまでの数ヶ月は、国民の不安を無意味に煽る悪手でした。

    「観光客の入国は制限する」(無観客でやれ)
    「選手団には配慮する」(開催はする)
    とでも、早期に日本政府の方針を固めてアピールしておけば…

    • >>五輪が無観客開催で確定するまでの数ヶ月は、国民の不安を無意味に煽る悪手でした。

       国民が不安に思うとしたら、大きな要因は、マスコミ報道の多くが菅コロナ政策を全否定してきたからだと思ってしまいます。菅総理が口下手とかプレゼン下手というのも事実だと思いますが、それよりも恣意的に印象悪く報道されることの方が大きいと思います。
       うちの奥さん見てるとそう思います。

      • 菅さんは、オリンピック、パラリンピックを開催して世界への約束を守り、ワクチン接種を成功させた首相として記憶されるだろう。

        おつかれさまと言いたい。

  • メディアは若い世代がワクチン接種に消極的だというニュースを流していたはずだが、東京都が渋谷でやった若者向け接種会場に行列ができると一転、真逆の趣旨のニュースを流している。

    騒ぎに駆けつける野次馬みたいな人たち。
    メディアは感染者、陽性者は多いほどいいと思っているはず。その方がニュースになるから。
    ここ1ー2週間ほど陽性者数が減少傾向だが、メディアの「ちっ」という声が聞こえるようだ。

    • >騒ぎに駆けつける野次馬みたいな人たち。
      →火種がありそうなところには燃料を投下し、酸素を吹き掛け、火種を大きくさせ大騒ぎする愉快犯のような人たち。

  • ワクチン接種を希望しているものの期待することを諦めた小生ナンゾは「待機者数」からも除かれとるんでしょうなーはははははははは
    選挙も皆勤なんですがねーはははははははは
    まあ票を投じた候補者が必ず当選しているわけでもありませんしねーあははははははは
    もーわらうしかありませんわなーはははははははは

  • 今後、ワクチン接種が進むと、今までとは逆に高齢者の占める割合(新規、重症者、死者)が増加すると思います。

    高齢者のワクチン接種割合は、ここのところずっと90%目前で足ふみ状態が続いています。

    医学的に見てワクチンを打たないほうが良いと思われる人が65歳以上の人口の10%もいるとは思えないので、ほとんどが「マスコミの恐怖をあおった情報で怖くなって躊躇している人口」ではないかと思います。

    実際私の周りにいるワクチンを打たない高齢者のほとんどが、似非科学の情報をもとにワクチンを拒否しています。

    そのような人たちは、正しく情報を得てない(理解できない)ので、感染予防対策もまともにできていません。

    そのため、今後65歳以下にワクチンの接種が進めば、無症状のキャリアも増えてきますので、キャリアからの感染の増大によって新規感染する事例が増えてくるのではないかと思っております。

    感染者の割合の増加はもちろんですが、絶対数の増加もあるかもしれません。

    • 65歳以上といえば団塊さんが中軸にいるので、反菅・反自民比率が相当高いのではないかと思います。立憲共産党とか社民とかは、似非科学の情報も含めて信念をもってワクチン打たないはずです。(。。こういうのは誹謗中傷になってしまうかなぁ。)
      仮に、65歳以上の10%のうちの半分5%は信念で打たないのだと仮定すると、約180万人弱がそういう人達ということになりますが、これは団塊っちの2割強くらいなので、有り得ると思います。

      • その政治性向説はちょっと偏見では。
        トランプ支持者が反ワクチン主義者である場合も多々あったように、反ワクチン派は右派左派問わないように見えます。本質的に反ワクチンとは信仰(=科学的論理の否定)なので、信仰によって生きる人たちが接種する方向にはそう向かない。
        接種率は米欧だと70%過ぎぐらいで頭打ちになっています。日本でも頑張っても80%は届かないんじゃないですかね…
        あと統計的に若年層は如実にワクチン忌避が強いので、都市部の若年層の間で蔓延し続けたのが高年齢層・地方にばらまかれる図式はずっと続くと予想します。後は日本国民がどこまでのコンセンサスを作れるかにかかっていそうです。次の政権の最初の大任でしょうか。

    • しおんさま
      近隣にある公団住宅団地の住民が、正にその中心となる集団になるのではないか?と危惧しています。

  • 只今、テレ朝の報道番組で感染者大幅減少と報じています。菅さん、ありがとうございます。そして同じくテレ朝の朝の番組で(多くの保守が嫌うであろう)玉川氏が菅首相そして河野氏が既得受益者(一部の政治家と官僚、医師会?)と「暗闘」していたと。
    菅さんが語っていない、あるいは語れない(本当に存在するのなら)その闇との戦いを白日の下にさらしてほしい(無理ですよね)。菅総理が実は強く改革を推し進めていたとの報道がわずかながらも為されています。菅総理の志を河野氏そして小泉氏が継承してくれたらと願っています。