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ワクチン接種1億回はほぼ達成へ

首相官邸の公式発表ベースでは、ワクチン接種回数は9965万回に達し、1億回まであとわずかとなりました。ただ、当ウェブサイトでは先日の『ワクチン接種「1億回」が達成済みだった可能性が浮上』でも述べたとおり、「VRS未入力問題」や「職域接種回数」などをカウントすれば、現時点ですでに1億回を大きく上回っていることは確実と考えている次第です。

VRS問題の総括

数ヵ月前から、当ウェブサイトでは政府が運営する「ワクチン接種記録システム(VRS)」の生データをもとに、わが国におけるワクチンの最新接種状況について、しばしば報告して来ました。

VRS生データのダウンロード方法
  • 次の文字列をウェブブラウザのURL欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能
  • https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson
  • 上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」(※)に変えると過去データの入手が可能(※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年8月5日時点のデータ」なら、{dt}の部分を「2021-08-05」に変換)

これまでのところ、これらのデータの分析を通じ、当ウェブサイトでは暫定的に、次のような結論を出しています。

  • 全国での1日当たりの接種回数は、平日で1日150万回以上、休日でも100万回前後
  • ただし、一部自治体などではVRS入力が極端に遅いため、直近データについては1日当たり接種回数が60~70万回に留まっているかに見えてしまう
  • 現時点での未入力回数は、1日前のものが100万回前後、2日前のものが80万回前後、3日前のものが70万回前後、という具合に、未入力がどんどんと溜まっており、少なく見積もっても200~300万回、下手すると500万回分以上は未入力が積み上がっている
  • 2月17日に始まった医療従事者等向け接種、4月12日に始まった一般高齢者向け接種については、7月末でほぼ完了した
  • 今後の焦点は64歳以下の一般向け接種であり、現在のペースでいけば9月末から10月初旬には一巡するはず

菅政権の「高齢者・医療従事者優先」は大成功だった

あくまでも著者自身の理解に基づけば、菅義偉総理大臣が医療従事者等と高齢者へのワクチン接種を優先した理由は、「医療崩壊を防ぐこと」にあったと考えています。

というのも、ワクチン接種が行われていない状態だと、武漢肺炎を発症した場合の重症化率が、高齢者層で極めて高いことで知られているからです。

年代別の重症化倍率:30歳代を1とすると…
  • 若年層:10歳未満…0.5倍/10歳代…0.2倍/20歳代…0.3倍
  • 中年層:30歳代…1倍/40歳代…4倍/50歳代…10倍
  • 高年層:60歳代…25倍/70歳代…47倍/80歳代…71倍/90歳代…78倍

(【出所】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識』P4)

この点、ワクチンを接種すれば、発症・重症化の可能性が低減することでは知られているものの、ワクチンそのものは「万能薬」ではありません。

ただ、武漢肺炎の治療薬そのものがまだ存在しない(とされる)なかで、重症化率が高い高齢者層へのワクチン接種が完了すれば、極端な話、社会全体でウィルスが蔓延したとしても、社会全体での重症化症例や死亡者数を抑制することが期待できます。

だからこそ、まずは高齢者の重症化を抑えるという意味で、この高齢者向けのワクチン接種が優先されたのでしょう。

「感染」増に関わらず、重症者と死亡者は…

では、その効果はいかほどなのでしょうか。

東京都の事例で申し上げるならば、日々、「新規『感染』者」(※正確には「新規『陽性』者」)が増加していると報告されており、昨日は5000人を超える新規陽性者が出ましたが、重症者は135人に留まっていおり(図表1)、新規死亡者に至っては1人です(図表2)。

図表1 東京都・新規陽性者数と重症者数の推移

(【出所】東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』、『新型コロナウイルス感染症重症患者数』より著者作成)

図表2 東京都・新規陽性者数と新規死亡数の推移

(【出所】東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』、『新型コロナウイルス感染症重症患者数』より著者作成)

この点、最近になって新規陽性者が激増している影響でしょうか、重症者数自体は増えているのですが、それでもかつての「感染爆発」局面と比較すると、重症者数の伸び自体は緩やかです。死亡者に至っては「激減」と述べて良いでしょう。

もちろん、今般の「感染」拡大局面において、今後、重症者数や死亡者数が急増して来る可能性は十分にありますし、また、一般に感染リスクが高いとされる飲酒を伴った大人数の会食、路上飲酒などの事例は相次いでいるようですので、十分な警戒が必要であることは言うまでもありません。

ワクチンは公式で9965万回

ただ、それと同時に、ワクチン接種が相変わらず順調です。

首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』によると、現時点の総接種回数は9965万回で、計算上は65歳以上の高齢者については9割弱が1回目を、8割が2回目を接種し終え、若年層でも1回目が3割弱、2回目が15%弱に達しています(図表3)。

図表3 総接種回数
区分 総接種回数 接種率
全体合計 99,651,092
うち1回目 58,095,553 41.99%
うち2回目 41,555,539 31.72%
65歳以上合計 59,360,315
うち1回目 30,964,771 87.26%
うち2回目 28,395,544 80.02%
高齢者以外合計 40,290,777
うち1回目 27,130,782 29.61%
うち2回目 13,159,995 14.36%
職域接種 7,723,380
うち1回目 6,269,246
うち2回目 1,454,134
重複計上 1,774,733
うち1回目 1,551,425
うち2回目 223,308

(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。ただし、VRSデータは8月6日時点で取得した8月5日までの接種実績、職域接種・重複計上データは8月6日時点で取得した数値。「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。高齢者接種率は累計接種回数を3548万6339人で、「高齢者以外」の接種率は、接種回数合計から65歳以上接種回数を引いた数値を、9164万2566人で割って求めたもの)

職域接種の計上ロジックは不明だが、ワクチンは順調

ただし、数日前に突如として出現した「職域接種」のデータに関しては、しばらく更新されておらず、また、「重複計上」の数値が増えるという、なんだかよくわからないことになってしまっていますが、このあたりのロジックの解読は、残念ながらまだできていません。

ただし、以前から指摘してきたとおり、図表3に示した「99,651,092回」というデータを、そのまま信頼するわけにはいきません。

その理由は簡単で、「接種済みだけれどもVRSに未入力」、という接種実績が、かなり積み上がっていると考えられるためです。著者自身の試算では、どんなに少なく見積もっても200万回分、下手をすると500~600万回分は未入力が積み上がっていると見ています。

この点、河野太郎ワクチン担当相なども、口を酸っぱくして「入力して欲しい」などと述べていたため、少しは未入力問題が解決するのかど期待していたのですが、残念ながらVRSへの入力遅延問題は依然として解消していないのです。

だからこそ、最新データを鵜呑みに信じて過去の日別接種実績をグラフ化すると、こんなヘンテコな代物が出来上がります(図表4)。

図表4 日別接種実績(医療従事者等以外)

(【出所】本日時点で取得したVRSデータをもとに著者作成)

「8月以降、ワクチンの接種回数が1日100万回を割り込み、どんどんと落ち込んでいる」かのように見えますが、悪意のある人からは、「ほら見ろ、ワクチン不足のためだ」、などと喧伝するのに悪用されてしまうかもしれません。

もちろん、現実にはVRSデータ「増分」から見るのが正しいというのが著者の私見であり、「増分」ベースで見ると、図表5のとおり、平日に関しては、ほぼ安定して1日130~150万回ほどのペースで増えています。

図表5 VRS上の接種実績の増分

(【出所】過去にさかのぼって取得したVRSデータをもとに著者作成)

しかも、これに、まだ判明していない「職域接種分」が加わると考えられるため、先日の『ワクチン接種「1億回」が達成済みだった可能性が浮上』でも述べたとおり、現実にはすでに現時点で1億回を大きく超過していることは間違いないでしょう。

下手をすると1.1億回は達成しているのかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

このように考えると、ワクチンの接種があと2ヵ月早く始まっていれば、という気持ちでいっぱいになります。

あるいは、東京都などの自治体が「路上飲酒禁止条例」などを制定し、取り締まりを強化していれば、若年層の感染爆発をかなりの度合いで抑止することができていたのかもしれません。

いずれにせよ、ワクチン接種がまだの人は、ご自身の順番が回ってくるまで、もうしばらく辛抱していただきたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • >ただし、数日前に突如として出現した「職域接種」のデータに関しては、しばらく更新されておらず、

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html
    では、毎週水曜日に日曜日までのデータが更新されているようです。
    職域接種のデータはV-SYSに即時(?)登録されるようですが(医療従事者と同じ)VRSに登録は遅いようですね(接種券が入手できてない場合が多い?)。
    VRSのデータから、接種会場が”職域接種”のデータを抽出して重複データとしているのではないでしょうか?

  • ヤフーをみると8/6で接種回数93.6百万回。これには8/1現在の職域接種7.6百万回が入っていないので明らかに1億回は超えました。

    ばんざーい

      • 検査陽性率の従来の常識から考えると、東京の感染者は余裕で数倍はいそうですね…
        最も報道からいくと神奈川の方が危険そうです。医師もそうですが多分保健所の入院調整が困難になってます。自力救済しか術はなくなってるでしょう。
        皆々様もお気を付けください。

  • 恐らく、医療関係者を手始めとしたブースター接種が開始される方向になると思いますので、9月以降、まだまだひと山もふた山もあると思いますが、マクロでみれば、医師会へのバラマキが過ぎるとはいえ、マクロでみればうまく行ってるという見方には同意します。
    しかし、確かに死者は減ってますが、比率は兎も角、入院が必要な中/重症者の絶対数は感染者数に比例して増加しますので、ワクチンが本格的に普及するまでに、一時的には医療逼迫は避けられない雲行きだと思います。その点に関しては、医療体制の整備や再構築を怠った菅政権の不作為は責められるべきかと。
    ただ、感染者数が増えたのは、菅さんの所為とも五輪の所為とも思いませんが。

    • >医療体制の整備や再構築を怠った菅政権

      怠ったのは菅政権というより備えを怠ったそれ以前の政権でしょう。
      パンデミック後では迷走は避けられません。

      豚インフルエンザの時に開業医が発熱外来の診察を拒否して問題になった時点で
      日本医療が感染症に対して脆弱なことが判明していましたし、再構築のきっかけは前からあったと思います。

      どちらにしろ今後できるのは次の新型感染症に備え、医療リソースを感染症に割り振れる体制づくりですね。

      • 非常事態に即応できるような法整備を事前にしておくのを怠った、という点では、SERSが2003年とすれば、民主党を含めた過去20年の政権は全員同罪ですね。
        ただ、今回の件で言えば、第一波以降の数か月の無策は痛かったと思いますが。

  • 今回の第5波を収束させるのはワクチン接種となるでしょう。つまりはしばらくは続くということです。行動制限は以前のようには効かないと考えます。これは、一部の不届き者のせいとかいう話ではなく、単純にウイルスの感染力とのパワーバランスの問題です。デルタ含め変異株の感染力が上回ったということです。

    その中でオリンピックは在宅率をあげて感染を抑える方向に作用しています。関係者の尽力でオリンピッククラスターがほぼないことからも伺えます。

    65歳未満のワクチン接種ですが、活動的な層は何らか手段を自分で探して既に接種の目処がつけてる印象です。そういう層が先行することで、見た目の接種率以上に効果は目に見えてあらわれてきます。しばらくかかるとは言いましたが、そこまで収束に時間はかからないでしょう。65歳以上には集団免疫がありますから、多くの国民の生命が救われるでしょう。

  • 相当にうまくいってますね。
    最初どうなるかと思いましたが、はじまってしまえばこの通りなんでしょう。
    私は月末に接種なので今月と来月は家でおとなしくしてようと思います。

  • 1億回とはめでたい!と言わせてください。新規陽性者の数ばかり声高く言いながら、死亡者は凄く少ないのに言わない。危険、無能ばかり煽る。

    さて、3回目のブースターショットはあるのでしょうか?出来れば避けたいのですが(笑)。当方、2回目で熱出してダウンした為。今日、菅義偉総理は広島市に行かれてたんですね。
    お忙しいのに、わざわざ、、。それにアソコの空港は山ん中で不便だし。え?ハッキリ言えって?

    「総理大臣がわざわざ現地に向かい、原爆投下の日に弔意(かな)を述べる必要はありません」。今ならリモートで十分です。もう76年ですよ。いつまでやるんですか?半万年?(爆笑)

    東京大空襲の日、名古屋市大空襲の日、大阪市大空襲の日、神戸市大空襲の日、沖縄戦、その他中小県庁所在都市にそれぞれメッセージ出して慰霊してたら、収拾がつかないです。

    放射能を浴びるという異常な殺戮ですが、もう現場に赴く必要は無い。原水禁とか原水協とか日共が騒ぐんだろうなぁ。

  • ワクチン接種事業についてつくづく思ったことは、
    1.日本の人口はでかい ということ。
    接種回数世界5位でも 接種率は40%台なのです。
    欧州諸国は日本の半分くらいの人口だったんですね。改めて認識しました。
    2.日本人は こよみに忠実 と いうこと。
    土曜、日曜は こういう事態なので せっせと接種に励んでくれています。
    でも 旗日は がくんと 接種回数減少。
    そういえば 近所の病院 「土、日も診察します。ただし、祝日と年末年始は休診」 となっていますから。

    しかし
    マスコミは 接種回数1億になることとか ファイザー600万回分 前倒しで入荷約束 とか 菅政権の功績には まったくスルーですね。

  • 先日二回目の接種を無事終えました。
    基礎疾患あり、ということでの優先接種、有難いです。
    一回目と同様筋肉痛のような痛みが2日ほど続きましたが、一回目とほとんど変わりは無かったです。
    気のせいか、気分が晴れなくてちょっとやる気がおきない、感じになりましたが、おそらくワクチン接種とは関係ないでしょう。

    見聞きするかぎり、職域接種も想像以上に広がっていますので、肌感覚的にも1億回は超えてるように思います。
    酷い副反応が出たという話は一切なし、私なんか漆等植物にかぶれるほうがよっぽど酷いアレルギー症状が出ます。

    ワクチン接種、本当に順調です。
    医療機関でのケアも充分、世界トップレベルの質の高さでしょう。
    マスコミのフェイクニュース、接種した人は誰も信じていません。

    • 匿名様

      自衛隊に出動要請?
      自衛隊に出動要請し、何をさせるのですか?
      他を優先する為、自衛隊隊員の大半は武漢コロナウィルスのワクチン接種
      していないんですよ?
      あらゆる災害に出動要請に対処していますが、もし大雨等(台風シーズンですね)の
      被害が出て要救助者を救助する隊員はワクチンを接種していません。
      ここで濃密な「密」空間ができると思いませんか?
      気力・体力・根性だけでは、武漢コロナウィルスの罹患は防げません。
      災害出動時、隊員が食事する事自体にさえ共産党が文句言ってくる状況です。

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