X

「保守政権」成立阻止のための資産売却はあるか=韓国

自称元徴用工、自称元慰安婦の問題で、韓国側で再び「資産差押え」「現金化」などへの動きが報じられています。こうしたなか、個人的に「用日派」メディアの最たるものだと考える『中央日報』(日本語版)に今朝、「韓日関係改善のためには韓日政府が外交的交渉を通じて被害者も受け入れられるような正義実現方案を用意することが最善だ」とする記事が掲載されていたようです。むしろ個人的には、韓国で「保守政権」が成立することを阻止するために、現在の左派政権がいっそのこと、「越えてはならない一線」を越えたりしないかを楽しみ心配期待しているという次第です。

なぜ日本は要求に応じてはならないのか

自称元徴用工問題、すなわち「戦時中、強制徴用された」などと主張する韓国人らが日本企業を相手取って続々と損害賠償訴訟を起こしている問題は、2018年10月の韓国大法院(※最高裁)による判決以降、新たな局面を迎えました。

いうまでもなく、自称元徴用工問題を含めた「歴史問題」の多くは、法的には1965年の日韓請求権協定で決着がついており、もし日本企業がこの韓国の判決を受け入れた場合、日韓請求権協定自体が実質的に反故にされたのと同じになりかねません。

したがって、自称元徴用工問題は、たんに「自称元徴用工対日本企業」という図式ではなく、「国際法を破ろうとする韓国」と「国際法秩序」との対決、と言い換えても良いでしょう。

非常に大きな言い方をすれば、韓国はこの歴史問題を巡って、国際法秩序を人質に取っている、というわけです。

その一方、当ウェブサイトでかねてより報告し、かつ、2月に刊行した拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』にも転載したとおり、日本が韓国の要求に応じてはならない理由は、大きく3つあります。

  • ①韓国に自主更生が期待できないこと。
  • ②日本に対する二次被害、三次被害を防がねばならないこと。
  • ③日本自身が国際法の守護者たらねばならないこと。

1つ目の理由。そもそも、韓国は半世紀以上前の条約で決着がついていることがらを蒸し返してくる国であり、もしもこれに日本が「今回だけだよ」と応じたとしても、「今回だけ」になることは絶対にありません。たった一度でも韓国の理不尽な要求に応じてはならないのです。

2つ目の理由。今回の要求に応じたら、それを足掛かりに、むしろ韓国はさらに歴史問題の捏造を加速させるでしょう。慰安婦問題で政府間交渉に応じたら、全世界で慰安婦像が増えてしまったことを思い出すだけでも、それは説明として十分です。

そして、3つ目の理由が最も大切です。

もしも日本が韓国の不法な要求に応じたら、韓国はおそらく全世界で、同じようなことをやり始めるでしょう。また、韓国のマネをして、国際法違反の行為を平気で行い、それで相手国を強請るという事例が出てくるのではないでしょうか(たとえばイタリアがドイツを訴える、など)。

したがって、日本政府、日本企業は、韓国の理不尽な要求に対し、1ミリでも譲ってはなりませんし、それどころか、韓国が日本に対して行って来た不法行為の数々のコストを、将来、利息を付けて必ず韓国に負担させなければならない、というわけです。

韓国の狙いは瀬戸際戦術

すこ~~~~~しずつ手続を進める「売却スルスル詐欺」

ただし、韓国の側も巧妙で、「それをやったら日韓関係は終わる」という「決定打」には、なかなか踏み込みません。

たとえば、日本製鉄(旧新日鐵住金)が2018年10月に大法院で敗訴してから、すでに2年半が経過しましたが、依然として原告側は日本製鉄の在韓資産の現金化に踏み切ろうとしません。

「資産を差し押さえた」、「公示送達をした」、「鑑定評価をした」、という具合に、少しずつ、本当にすこ~~~~~~~~しずつ、現金化プロセスを進めているのですが、待てど暮らせど「競売が開始された」という報道が出てこないのです。

そもそも論として、日本製鉄や不二越の事例では、差し押さえられている「在韓資産」は、非上場の、しかも合弁会社の株式であり、売却が著しく困難です(詳しくは『非上場株式の売却、「法治国家では」とても難しい』でも詳しく論じたとおりです)。

【参考】『非上場株式の売却、「法治国家では」とても難しい

待てど暮らせど売却が実現しないこと、わざわざ換金が非常に困難な資産を差し押さえたことなどを踏まえると、やはり韓国の原告側の狙いは、「売却するぞ、売却するぞ、今度こそ本当に売却するぞ~~~」と日本企業を脅し、交渉のテーブルに着かせることだと思わざるを得ません。

この手の「▲▲してくれないと、XXするぞ、XXするぞ、今度こそ本当にXXするぞ~~~」という脅しは、もともとは北朝鮮が好む手口でもあります。「XX」に「ミサイル発射」、「▲▲する」に「米国が交渉に応じる」を入れると、文章としてはスッキリと成立することがご確認いただけるでしょう。

もういい加減、制裁したら?

いずれにせよ、当ウェブサイトの見立てに基づけば、韓国の原告側が日本製鉄、不二越の非上場株式、三菱重工の知的財産権を差し押さえた目的は、「それらを売却すること」ではなく、「差し押さえたことを手掛かりにして日本企業を脅すこと」です。

最終的には、強制売却という面倒なことをせずに、日本企業が原告団との交渉に応じ、まとまったカネを財団か何かに拠出して、それで自称元徴用工らにカネを払う、というスキームを作り上げることでしょう。

まさに慰安婦問題を捏造(つく)りあげて利権化した「成功体験」を、自称元徴用工問題でも繰り返そうとしているに過ぎません。

だからこそ、日本企業としては、短期的には、「売却できるものならやってみろ」というスタンスで良いと思いますが、中・長期的にはそれでは足りません。

たとえば、「株式を差押えられている」という状態だけだと、日本企業にとって短期的には特段の不都合は生じませんが、中・長期的には「合弁契約を解消することができない」などの「不利益」を蒙ります。

したがって、現在の状態に対しても、放置するのではなく、むしろ、そろそろ何らかの制裁が必要ではないかと思う次第ですが、現実の制裁については外為法などの法令に基づいて実施しなければなりません。

この点については今後もまた別途、随時議論したいと思います。

主権免除違反判決が付け加わった

こうしたなか、状況をさらに複雑にしたのが、自称元慰安婦問題を巡って今年1月8日に下された、いわゆる「主権免除違反判決」です。

【総論】韓国主権免除違反判決の現時点におけるまとめ』でも説明したとおり、主権免除とは、国家は他国の裁判所の管轄に服さないとする国際法の大原則です。

【参考】『【総論】韓国主権免除違反判決の現時点におけるまとめ

この点、主権免除の「例外」が認められる例もないではないのですが、国際司法裁判所(ICJ)の2012年の判決などに照らし、今回の事案に関しては、本来ならば主権免除が認められるものであると考えて良いでしょう。

このため、韓国の裁判所は、自称元徴用工判決に続き、再び国際法秩序に真っ向から挑戦する判決を下した、という評価ができます。

しかも、自称元徴用工問題のときと異なり、今回は「差押え」すら難しいでしょう。なぜなら、原告が日本企業ではなく日本政府だからであり、日本政府の在韓資産のうち、大使館・領事館などの資産を差し押さえてしまえば、その瞬間、国際法違反が成立するからです。

Item 3 of Article22 of Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961

The premises of the mission, their furnishings and other property thereon and the means of transport of the mission shall be immune from search, requisition, attachment or execution.

外交関係に関するウィーン条約 第22条第3項

使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。

つまり、現在の韓国の司法は、自分で下した判決で自分の首を絞めているようなものでもあるのです。

自分で自分を追い込む韓国

自分で自分を追い込んだ「目録提出命令」

こうしたなか、昨日の『韓国の裁判所の「変節」に一喜一憂すべきではない理由』でも報告したとおり、韓国の裁判所は先日、日本政府に対し、在韓資産の目録を提出するように命じましたが、これについてはさらに自分で自分を追い込んだ格好です。

日本政府が命令を無視すれば、韓国の裁判所としては、さらなる強硬措置を講じるしかなくなりますし、万が一、日本政府が「在韓資産目録」を提出でもしようものなら、韓国の裁判所としては、その差押えを認めざるを得なくなります。

その瞬間、韓国による国際法違反が確定、というわけですね。

いずれにせよ、日本には助け舟を出す義理もありませんし、助け舟を出すべきでもありません。この主権免除違反判決問題に関しても、日本政府としては、「とりあえずは抗議だけしてあとは放置する」という対応で、短期的には十分でしょう。

(あるいは「できるものならやってみな」とばかりに、在韓資産リストを日本政府が韓国の裁判所に提出してみても面白いかもしれませんね。)

資産現金化「爆弾」に言及した、噴飯物の記事

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には今朝、こんな記事が出ていました。

文大統領「望ましくない」と言った日本企業資産の現金化“時計”再始動…次期政府の「爆弾」にも

―――2021.06.17 06:58付 中央日報日本語版より

これがまた、全文、噴飯物です。

旧日本軍慰安婦被害者賠償のために韓国内の日本政府資産を公開するよう命じる裁判所の判決に日本が強く反発した。強制徴用判決に続き慰安婦判決に関連しても強制執行手順に突入し、韓日の関係改善への道は一層険しくなった」。

そもそも「関係改善」、とありますが、現在の日韓関係が日本にとって悪いものかどうかは別問題でしょう。

韓国の司法が違法判決を出したのも、その違法判決を国として是正しようとしないのも、どれも韓国の自業自得ですし、日本企業、日本政府に対してファイティングポーズを取ってくれている以上、日本としては「国として、韓国との関係をこれ以上深める」という判断は働きづらくなります。

少し意地悪を申し上げるなら、「日本にとっての日韓関係『改善』」を「日韓が疎遠になること」と定義すれば、現在の状態はまさに日韓関係が「日本にとっては好ましい状態に近づきつつある」、と評することも可能かもしれません。

また、「強制徴用判決に続き強制執行手順に突入」、とありますが、これについても噴飯物です。「おたくの国がそれをやるだけの度胸を持っているのですか?」と聞き返したいところですね。どうせ自称元徴用工資産差押えと同じく「売却スルスル詐欺」に陥るのが関の山でしょう。

ちなみにこの中央日報の記事では、日本製鉄の「売却スルスル詐欺」にも言及しています。

今年1月、大邱(テグ)地方裁判所浦項(ポハン)支院は、被告である日本製鉄(旧新日鉄住金)の韓国内株式を現金化するために該当株式に対する鑑定書を提出させた。資産の鑑定が終われば次の手続きは売却命令だ」。

もういいから、売却命令、さっさと出してくださいよ(笑)。

用日派の悲痛な叫び

さて、普段から当ウェブサイトでは、韓国国内には純粋に反日を唱えている人たちと、日本に依存しながら政治的に反日と用日を使い分けている人たちがいる、と申し上げてきたつもりです。

仮に名づけるなら、前者を「純粋反日派」、後者を「用日派」とでも呼ぶべきでしょうか。

中央日報は朝鮮日報などと並び、「保守派」(?)のメディアとされているのですが、これらのメディアの記事を読んでいると、しばしば「用日派」的な思考に出くわすことがあります。

実際、今回の中央日報の記事でも、こんな記述が出て来ます。

結局、両国政府が外交的交渉を通じて原告である慰安婦被害者も受け入れられるような正義実現方案を用意することが最善だと専門家は助言する」。

この期に及んで「外交交渉」という発想が出て来ることにも驚きますが、その「専門家」とやらのひとりが、中央日報にはよく登場する、国民大学日本学科の李元徳(り・げんとく)教授です。

国民大学日本学科の李元徳(イ・ウォンドク)教授は『政府の代位弁済や日本政府予算を基に造成された和解・癒やし財団の残金活用などさまざまな可能性を開けておき、国内的には被害者の意志を取りまとめ、対外的には日本と協議する方案を悩んでみることができる』とし(以下略)」

李元徳さんにお伺いしたいのですが、2015年12月の日韓慰安婦合意で発足した「和解・癒し財団」、あれ、韓国ではいったいどうなりました?あれこそ、日本政府予算、すなわち日本国民の貴重な血税から10億円という決して少なくない資金が拠出されたのですが…。

そもそも論ですが、2015年12月の日韓慰安婦合意を破った状態のままで、あるいは、自国の裁判所が国際法に違反した判決を下している問題を放置して、「新たな外交交渉に入ろう」と提言すること自体、大きな間違いです。

次期政権というリスク

さて、中央日報のこの記事のなかで、唯一、部分的に同意できるのが、次の記述です。

2018年10月の大法院判決の事例からも分かるように、現金化など強制執行ための法的手続きには数年かかる場合もある。文在寅政府が司法府の判断を尊重するとしてこれを放置する場合、現金化という大型の爆弾を抱え込むのは次期政府になる可能性が高い」。

現金化などの強制執行手続に時間を要しているのは、わざと換金し辛い資産を差し押さえた原告側の選択によるもの、という側面が強いです。

ただ、それと同時に文在寅(ぶん・ざいいん)政権がこれらの判決を放置していることは明らかです(※といっても、わざと放置しているのか、それとも解決・調整などの政治家としての実務能力がそもそも不足しているのかは存じ上げませんが…)。

いずれにせよ、自称元徴用工問題、主権免除違反判決問題はともに、遅くとも来年5月に次期政権が発足するまで、未解決のままで放置されると見るのが正解でしょうし、次期政権も問題のあまりの大きさに、早々に匙を投げるかもしれません。

ひとつだけリスク要因があるとしたら、韓国で「保守派」(を騙る、実質的には「用日派」)の政権が誕生し、日本政府がこれらの問題でその「保守」政権との交渉に応じてしまうことです。

しかし、李明博(り・めいはく)元大統領、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領の例を見るまでもなく、韓国の保守政権が「親日」であるとは限りませんし、むしろ親日を装い、実質的には用日/反日的な政策を推進することへの強い警戒が必要です。

その意味で、個人的には次期大統領様には李在明(り・ざいめい)氏ら「左派政治家」に就任していただきたいと強く期待しているのはここだけの話なのです。

あるいはいっそのこと、保守派政権の誕生を阻止するために、現政権下で来年3月の大統領選の直前に、日本政府の在韓資産差押えや日本企業の資産売却が実現してしまうのかどうかについては、本当に心の底から楽し心配な今日このごろ、というわけです。

You、いっそのこともう売却しちゃいなYo!

新宿会計士:

View Comments (35)

  • 今回の判決はその効果からして『えっらい薄いサラミやな〜』と言いたくなるレベルですね。
    まあ、独りよがりとはいえ、日本政府に命令出来る陶酔感に浸ってる感じがします。

    (以下自称表記は省略)徴用工については差し押さえた債権の現金化に線を引きましたが、慰安婦についてはまだ線を引いていません。このまま傍観したうえで、突然制裁をするのがよいでしょう。

    サラミスライスについてはいちいち反応しないことです。まあ、煽ってどんどんサラミのおかわりを要求するくらいですかね。そのうち手許がくるうのを期待して。

  • 文大統領は北への思いだけは一貫しているので
    資産売却しても瀬取りできないなら北への貢ぎ物にはならないので優先順位は低いかもしれません

    反日煽動は次期大統領候補たちの持ち分として
    俺が大統領になったら資産売却するとか公約に
    掲げるのが、楽し心配です

    心配で食欲がなく、今日のランチはお好み焼き、
    やきそば、ライスの関西人鉄板メニューぐらいに
    しとこう

  • もっと燃料を投下しましょうよ。
    ・赤い靴とワンピースにホルホルして韓国人業者について行った韓国国家元老院売春婦が、日本軍による被害者だという物的証拠を出せ
    ・被害者の証言こそが最大の証拠だと言うなら、韓国は何故ライダイハン問題を否定し続けるのか
    と韓国側に突きつけるなど、あちらの発狂レベルを上げる努力が必要です。

    • 国家間では解決済みの案件でもありますから、誰が主体となって何処に燃料くべるかが課題でしょうか?

      しかし消し炭にフーフーしている最中のタチノワルイ○じきにワザワザ燃料持って近付きたがる御仁がどの程度居られましょうや?

    • しかしそうすると当面わが国としては「もう完全に消火しましたよ~」とフーフーで灰飛び散らかされている国々に触れ回る以上はできないのかしら?

  • 残念ながら売却することはないと思います。
    サラミは更に薄くなり、チャーハンは決して完成しません。

    手首に刃物を当てて、「切るぞ!切るぞ!」と、こちらをチラチラ見ても、決して手首を切ることは無いのです。

    問題は、手首に刃物を当てた人を見て、日本国内の自称人権派が「本当に切ったらどうするんだ!責任とれるのか!」とか言い出すことですかね。
    「どうぞ、ご自由に」と言うしかないですが。。。

  • >「結局、両国政府が外交的交渉を通じて原告である慰安婦被害者も受け入れられるような正義実現方案を用意することが最善だと専門家は助言する」。

    もうこんなこと言ってることがおかしいと思うのです♪
    まずは韓国政府が、原告を説得するなりなんなりして、韓国国民が日本に対してああだこうだと要求することをやめさせる。そうやってはじめて、国どおしの関係構築に進めるんだと思うのです♪

    韓国政府が国民相手にやるのは、正義実現でも、名誉回復でも、現金提供でも、友愛でも、それこそ何でも良いのです♪
    まずは国内を統制しなさい、そしてその責は韓国政府自身が負いなさいってことだと思うのです♪

  • 韓国が国際法違反状態を解消しない限り相手にしない。
    この立場を堅持すれば、次期政権が反日派であろうと用日派であろうと、何も変わらないような気もします。

      • だんな 様
        文さんが、対日関係も対米関係も、後戻りできないところまで進めてくれることを期待するニダ。

  • 後頭部に山のように矢が刺さっていても、重さを感じないんですから、放っておくのが一番だと思います。重さで真っ直ぐ立てていないのも気付いていないので、いつかバランス崩して倒れます

  • You、いっそのこともう断交しちゃいなYo!
    とは、過激な発言ですね。

    >「保守政権」成立阻止のための資産売却はあるか=韓国
    この二つを結びつけて考えた事は、ありませんでした。
    別々の結論は
    「左派政権を継続するためには、手段を選ばない」
    と「現金化は、しないんじゃないかな」です。
    秋になれば、分かってくるんじゃないかな。

1 2