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1回目接種を完了した対象高齢者は「6人に1人」に!

マスメディアがあまり報じない不都合な事実というものがあるとすれば、現在、対象となる65歳以上の高齢者に関しては、6人に1人が1回目の接種を終えていること、そして1日当たりの接種回数が60万回をうかがう勢いであること、というものでしょう。本稿は昨日の『ワクチン1回目接種完了は65歳以上で「7人に1人」』の続きとして、医療従事者等に対する接種状況についても勘案したワクチン最新状況を紹介したいと思います。

医療従事者等を含めればワクチン接種はさらに進捗

昨日の『ワクチン1回目接種完了は65歳以上で「7人に1人」』では、『政府CIOポータル』というサイトで公表されている、『ワクチン接種記録システム(VRS)』のオープンデータをもとに、ワクチンの接種状況の最新情報をグラフ化したものを紹介しました。

ただ、昨日の議論で使用したデータでは、なぜか医療従事者等に対する接種状況が含まれていませんでした。このため、「現状、VRSから判明する1日当たりの接種数は30~40万件程度」と書いたこと自体に誤りはないのですが、この「1日30~40万件」には医療従事者等分が含まれていません。

ワクチン接種状況については、4月9日以前のものは厚生労働省『新型コロナワクチンの接種実績』のページに、4月12日以降のものについては、医療従事者等に関しては首相官邸『新型コロナワクチンについて』のページに、それぞれ公表されています。

そして、医療従事者等以外に対する接種状況については、昨日も詳しく述べたとおり、『政府CIOポータル』というサイトにある『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』というポータルサイトでグラフなどを閲覧することが可能です。

つまり、現在のワクチン接種状況については、次のとおり、バラバラに所在している、というわけです。

  • 4月9日以前のもの…厚生労働省ウェブサイト
  • 4月10日、11日のデータ…不明
  • 4月12日以後のもの…医療従事者等については首相官邸のエクセルファイル、それ以外の一般国民に対する接種状況については政府CIOポータルサイト

これについては政府の情報発信の仕方も非常に悪いと言わざるを得ないのですが、ただ、医療従事者等に対するワクチン接種が先行したことに加え、VRS自体が稼働し始めたのがかなり遅れたなどの事情もあったため、このあたりのデータの不備は仕方がないのかもしれません。

医療従事者等を含めたグラフ

そこで、昨日の議論の続きとして、もう少し正確に、医療従事者等に対するデータを加えたものをベースに、ワクチン接種の最新状況についてまとめておきたいと思います。もっといえば、「医療従事者等と医療従事者等以外の一般人に対する接種」をまとめて、ちゃんとデータ化しておこう、という試みです。

(なお、一般国民に対する接種状況の詳しい生データについては、ウェブブラウザのURL欄に「https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson」と入力していただければ取得可能です。ただし、自身でデータ処理をする必要があります。)

というわけで、現時点で一般国民に対する接種状況は6月2日分まで、医療従事者等に対する接種状況は6月1日分まで公表されているのですが、これについて加工したものが、最初のグラフです(図表1図表2)。

図表1 1日当たり接種数(医療従事者等+それ以外の合計)

(【出所】『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』公表データより著者作成)

図表2 1日当たり接種数(1回目+2回目)

(【出所】『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』公表データより著者作成)

「1日60万回数」をうかがう勢い

図表1は医療従事者等とそれ以外に分けたグラフ、図表2は1回目と2回目に分けたグラフです。

ただし、医療従事者等のデータは、休日・祝日明けに数がボンと増えてしまっていますが、これは土日祝分が翌営業日にまとめてカウントされるためだそうです。また、VRSについても実際の接種データが反映されるまで多少のタイムラグがあるため、とくに直近データは少なめに計上されている可能性があります。

以上を踏まえたうえで改めて眺めてみると、1日当たりの接種数は、着実に増えていることは間違いありません。参考までに、図表1、図表2で使用したデータの単純合算値について、月曜日からの7日間の接種数を7で割ったものをグラフ化したものについても、掲載しておきましょう(図表3)。

図表2 毎週の1日当たり平均接種数(医療従事者等+それ以外の合計)

(【出所】『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』公表データより著者作成)

これによると、5月31日(月)から6月2日(水)までの3日間の接種数は1,645,897回で、単純に3で割ると1日当たり548,632回ですが、「6月2日分の医療従事者等のデータが含まれていない」、「データの反映にタイムラグがある」などの理由で、実際にはこれより増えるかもしれません。

ということは、菅総理のいう「1日100万回」には届かないものの、6月前半には1日60万回をうかがう勢いであり、このペースで伸びていけば、1日70~80万回も現実の目標となり得ます。昨日報告した「職域接種拡大」などの動きが広がれば、さらに拡大することが期待されるからです。

累計1500万人近くに!

一方で、累計の接種数、接種率についても、医療従事者分をカウントすれば、話は変わって来ます。

昨日紹介したデータだと、65歳以上の高齢者に対する1回目の接種率は15.43%でしたが、国民全体の1回目接種率は4.51%に過ぎない、というものでした。

ところが、これに医療従事者等に対する接種状況のデータをあわせて全体の接種率を再計算してみると、図表4のとおり、昨日時点で接種数は1500万回前後、単純な接種率では8.59%に跳ね上がります(ただし、データが不完全であるため、この8.59%は少なめに出てしまっています)。

図表4 累計接種数・接種率

(『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』公表データより著者作成。なお、「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の日本の人口1億2712万8905人で割った数値)

また、65歳以上の接種率は、昨日時点で1回目が16.89%、すなわち「6人に1人」にまで拡大しています(図表5)。

図表5 累計接種数・接種率(65歳以上)

(『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』公表データより著者作成。なお、「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の日本の人口1億2712万8905人で割った数値)

いずれにせよ、医療従事者等、65歳以上の高齢者への接種が一巡すれば、1日当たり60~70万回という接種能力が生かされ、64歳以下の一般国民にもワクチン接種の機会が広まって来ることが期待されます。

新型コロナウィルス感染症については、ワクチンが効かないとされる変異株の状況にも注意が必要ですが、それでも現在のワクチンの接種状況については客観的事実として冷静に受け止めるべきではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (24)

  • VRSによる高齢者接種数は信頼性に劣ります。数え落としがたくさんあるからです
    厚労省V-SYS が数えている真実を「素直に公表」できないのは、内閣府のやせ我慢に過ぎません。

  • 更新ありがとうございます。

    在韓米軍周辺の韓国軍向けに施したワクチンを 米軍との関係が希薄な軍関係者に 接種するようです。
    韓国は徴兵制なので 国民の多数が予備役、軍関係とその家族と言い張るつもりでしょう。
    驚いたのは 100万人分のワクチンを確保した途端 接種予約を開始、 そしてすぐに 満員になったことです。

    よっぽど ワクチンが枯渇しているのでしょう。
    鉄砲があっても弾はない。
    裏から物乞い。
    韓国らしいです。

  • 更新ありがとうございます。

    一日の接種者がおよそ60万人、70〜80万人が射程内とは素晴らしい速さです。昨日時点での接種数は1500万回前後、単純接種率では8.59%に。さーすがです!日本の底力出したらこんなもんでしょう(立憲民主党なら無理)。

    台湾にAZワクチンを送る話は進んでいるのでしょうか。消費期限があるので、早い方がいいです。韓国は米国から軍人用に貰った110万回分を、予備役、退役に接種するみたいですね。米韓演習をさせない狙いか?「現役兵は接種してない」と、言い逃れる。ホント小狡いな〜!ワル‼︎

    • 一応、J&Jのワクチンは接種推奨年齢が30歳以上となっており、現役兵の多くは30歳未満だから、打ちたくても打てないのだという言い訳は用意しているようですよ。
      まあ、アメリカさんのご配慮を踏みにじることであることには変わりありませんが。

  • ※私は医療従事者、データ解析の専門家でないことを先にお断りします。

    日本の人口126百万人
    集団免疫が人口6割として 126百万人 × 0.6 = 75.6百万人
    ワクチン2回接種として 75.6百万人 × 2発 = 所要151.2百万発
    接種実績14百万発として 151.2百万発 - 14百万発 = 残137.2百万発
    MAX60万発/日として 137.2百万発 ÷ 0.6百万発/日 = イスカンダ…集団免疫まで228日
    6月3日 + 228日 = 2022年1月16日

    上だと他国捲りそうなペースなので希望的過ぎるかもしれません。
    ともあれ、接種の進行とともに感染者が漸減すると思われること、ファイザーワクチンの場合、一発で85%、二発で95%の効果との説が正しいとすれば、国民6割にワクチン接種完了より終息は早いのではないかと期待しています。

    五輪まで残51日 51日×0.6百万発/日 = 30.6百万発
    五輪開催日の接種率 (14百万発+30.6百万発)÷137.2百万発 = 32.5%
    ※集団免疫獲得が人口6割に2回接種と仮定した場合の接種率

    もったいないのでオリンピックやったほうがいいと思いますし、医療関係者は接種済みなので観覧無料、むしろ観光業振興兼ねて医療関係者も無料リゾートに浸っていただきながら打っていただくとか、お土産にカニとか、そろそろお楽しみも考えていいのじゃないでしょうか。

    • へちまはたわしのみに非ず 様
      集団免疫の効果が出るのには6割というのが定説の様ですが、英などでは4割を超えたあたりから目に見えて(見えませんっ)感染が収まって来たと言う報告もあります。
      日本では先週くらいから繁華街に年寄りが増えて来たと言う報道もありました。恐らく接種済の人でしょう。
      五輪の頃にはかなりワクチン効果が出てくるんじゃありませんかね?景気も上向いてくるでしょう。知らんけど。

    • 門外漢 様

      誰がブツクサ言おうと終わりに向かってると思えばヨイトマケ。
      コロナが終わったら、とか死亡フラグだけは立てないようにしましょう。しらんけど。

  • 一回目までは普通に増加するだろう。2回目接種が始まれば それまでのペースを維持するには2倍の打ち手が必要。

  •  速度の実感もですが、とにかく「日本国民全員分のメドがある」のが安心材料ではないでしょうか。余剰にできたAZ製を台湾へ供与、という話も、単純に日台友好演出になるとともに、日本はもう余裕があるんだ、という印象付けにも寄与しているのかと思います。
     一部報道で「年内に終わらないじゃないか!」などと批判がありますが、確保ができてしまったのであとは根拠の無い時限設定でなんとかあがいてる感がヒシヒシ。年をまたいだ瞬間にワクチンがチクワに変化でもするというのなら焦らないといけませんが。

  • 分母を接種対象者数にすれば、もう少し接種率が上がりますね。ワクチン頼みで頑張りながら、次のパンデミックに備えて仕組みを作る段階ですね。

  • 高齢者枠は65才以上ですが、我が町は年齢の高い順に申し込みとなっています。
    私はまだ申し込めません。若いと認定されてるんです。
    まあ有難いことです。

  • 母は接種しました。
    もともと市の会場で予約していましたがかかりつけ医から”あさっての診察時に希望があればワクチン接種出来ますよ。”とわざわざ電話をもらいました。
    こうした感じで進んでいくのではないでしょうか。
    1000人以上の企業に。との報道もありますが1000人以上の企業は専任産業医の任命が義務づけられていますから、この方式でもスピードアップ。 私も会社指定の人間ドックを受けていますからそこで接種できるとありがたい。
    希望は、女性自衛官からの注射なんですけど。

  • 重傷&死亡者率の高い高齢者のワクチン接種が完了すれば、新規患者数は漸減でも重症者数や死亡者数は激減すると思います。

    高齢者のワクチン接種がほぼ完了予定の7月終わりには、一日の死亡者数が今の1/10以下になると思います。

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