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日欧首脳が共同文書で「台湾海峡」言及の可能性=産経

王毅さん、あなたは喋らない方が良いと思いますが…

産経ニュースに昨夜、興味深い記事が掲載されていました。それは、本日開催される予定の日・EU定期首脳協議の共同文書で、「台湾海峡」に言及がなされる、という情報です。ただ、最近の中国の動きを見ていると、やはり中国の動きには危険性を感じざるを得ません。こうしたなか、王毅(おう・き)外相の発言を読んでいると、なかなか興味深いことに気付きます。

2021/05/27 12:45追記

誤字を修正しました。匿名のコメント主様、ご指摘大変ありがとうございました。

台湾海峡の安全

先月、米ワシントンで行われた日米首脳会談、今月上旬に英ロンドンで開催されたG7外相・開発相会合で、共通点がひとつあるとすれば、台湾海峡への言及がなされた、という点にあります。

ちなみに『台湾防衛にコミットした日本:日米同盟は経済同盟に!』でも取り上げましたが、日米首脳会談で「台湾」の文言が出て来たのはじつに52年ぶりの話です。

ただ、じつは、この「台湾海峡」という表現が出て来るのは、日米首脳会談が初めてではありません。

たとえば日米間の場合、3月の「2+2」会合で、すでに「台湾海峡の平和と安定の重要性」という表現が盛り込まれているのを確認することができます(『「日米2+2」で中国を名指しも「日韓」には言及なし』等参照)。

「日米首脳会談で台湾海峡に言及」報道、事態は緊迫か』でも取り上げたとおり、前回、つまり2019年4月の「日米2+2」では「中国」「台湾」などの具体的な国名・地名に言及されていなかったことを考えるならば、この2年少々で大きな変化だともいえます。

台湾危機と中国の軍事的暴発リスク

そして、「台湾海峡の安全」という文言が出て来ることは、裏を返せば、それに言及せざるを得ない状況が出現している、ということでもあります。

具体的には、中国人民解放軍の台湾への軍事侵攻です。

実際、今年3月24日、当時のジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官(※4月30日にインド太平洋司令官に就任)は上院の指名承認公聴会で、「中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、多くの人が理解しているよりも差し迫っている」との認識を示しています。

中国の台湾侵攻「多くの人が理解しているより切迫」 米軍司令官

―――2021年3月24日 10:43付 AFPBBニュースより

もちろん、もしも中国が賢明な国であれば、台湾侵攻という愚を犯すことはないだろうと信じたいところです。

しかし、非常に残念ながら、現実はときとして残酷であり、国レベルで「賢明ではない選択」をする事例など、人類の歴史ではいくらでも事例があります。

ことに、中国は最近、東シナ海で日本と、南シナ海でフィリピン、ベトナム、インドネシア、ブルネイなどと摩擦を起こしているほか、香港、ウイグルなどに対する人権侵害は日米欧主要国などが共通して懸念する事項となりつつあります。

「常識的に考えて、中国の台湾侵攻などあり得ない」、などと決めつけて思考停止するのは、少々危険でもあります。

日・EU首脳会談でも「台湾海峡」に言及か?

こうしたなか、産経ニュースに昨日、こんな記事が掲載されていました。

日EU首脳、共同文書で「台湾」言及 27日に定期協議

―――2021/5/26 22:45付 産経ニュースより

これは、日本と欧州連合(EU)が27日にテレビ会議方式で行う首脳協議に関連し、共同文書に「台湾海峡における平和と安定の重要性」を確認する文言を入れる方向で調整が進んでいる、とする話題です。

産経によると、27日の首脳協議では、菅義偉総理大臣とEUのシャルル・ミシェル大統領、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が参加する予定であり、協議では共同声明をまとめる方向で調整している、としています。

もしも産経の報道のとおり、日欧の共同文書でも「台湾海峡の安定」などに言及されれば、日米欧が首脳レベルでも歩調を合わせることになる、というわけです。

西側諸国の市民苛立たせる王毅氏の発言

その一方、欧州と中国の関係を読むうえで、少し気になる情報もありました。

同じく産経ニュースに昨日掲載された、次の記事です。

中国外相、投資協定凍結のEUに反発

―――2021/5/26 21:17付 産経ニュースより

これは、EUと中国が昨年12月に合意した投資協定の批准手続を欧州議会が凍結すると決定したことに関し、王毅(おう・き)外相が「経済・貿易問題を政治化することは受け入れられず、絶対に通用しない」と反発した、とするものです。

【参考】中国の王毅外相(左)と日本の茂木敏充外相

(【出所】外務省)

王毅氏の発言自体は25日、ミュンヘン安全保障会議が主催したオンライン会合における講演でなされたもので、その内容は中国外務省が26日に発表したものだとしています。

産経はまた、EUが3月に新疆ウイグル自治区での人権侵害で対中制裁を発動したことを念頭に、王毅氏が欧州を批判する発言もしたのだそうですが、その発言は次のとおりです。

  • 欧州のわずかな人が、異なる性質の問題を関連付けた
  • 政治対立や経済のデカップリング(切り離し)を図ることは、EU側の利益に合致しない

これについて、当ウェブサイトでこれまでも述べてきたとおり、中国共産党や中国政府の高官らの発言は、しばしば、私たち西側諸国の一般市民を地味に苛立たせます。

もしも王毅氏が、この発言をすることで、西側諸国を脅したつもりなのだとしたら、それは大きな間違いです。

なぜなら、西側諸国は民主主義国であり、政治家は国民・市民の感情を無視することはできないからです。

いずれにせよ、王毅氏ら中国政府幹部が過激な発言をすればするほど、西側諸国は中国を警戒するようになるのだとしたら、それはそれで皮肉な話だと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (28)

  • 王毅さん、腹が立ったら、半島の属国を殴って気分転換してください。
    属国だったら、棒で殴ろうと、半殺しにしようと、全殺しにしようと、誰も気にしませんから。

    • んー。さすがにそういうのはやめませんか?

      ↑せめてこう言う意見も出ないと、議論の場としては不健全になるのでポジショントーク。

    • 匿名のコメント主様

      誤字のご指摘大変ありがとうございます。
      引き続き当ウェブサイトのご愛読とお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

  • >「経済・貿易問題を政治化することは受け入れられず、絶対に通用しない」
    大朝鮮とは良く言ったもので、政経のツートラック宣言でしょうかね。

    • >「経済・貿易問題を政治化することは受け入れられず、絶対に通用しない」

      これいつもC国がやっていることなのにね。
      分かり易い国ですね。

    • だんな様
      閑居小人様

      >大朝鮮とは良く言ったもので、政経のツートラック宣言でしょうかね。

      朝鮮半島に「冊封制度に伴う小中華思想」が現代まで脈々と息づいていることを考慮すると、大朝鮮というよりは「虎の威を借りる小朝鮮」が下手くそな物真似を演じているうちに、いつしかDNAに染みついてしまったと考える方が、寧ろ実情に合っているような気がします。

    • 異口同音で恐縮です。

      >「経済・貿易問題を政治化することは受け入れられず、絶対に通用しない」

      尖閣諸島を巡る日中の緊迫の中、中国人船長の逮捕を機にレアアースの環境保護を名目とした「輸出規制」を行った中国は、今もまたレアアースで世界を恫喝しようとしています。

      【社説】中国のレアアースに関するレアな現実
      https://jp.wsj.com/articles/rare-truths-about-chinas-rare-earths-11614833769

      自ロ他不(ネロナムブル)は大朝鮮様も御同様。

    •  どなたかが書いておられた「中国=大朝鮮」説に一票。
       「朝鮮=小中華」でないとこが味わいの要点です。

  • 産経ニュースの情報源と考えられる、中国外交部に掲載されている王毅外相の発言はこちらです。

    王毅:中国は協力こそ中国とEUの関係における大きな方向性であり、双方はパートナーであり、ライバルではない
    王毅:中方认为合作是中欧关系的大方向,双方是伙伴而非对手
    https://www.fmprc.gov.cn/web/wjbzhd/t1878563.shtml(原文中国語)

    一行目にある「慕尼黑安全会议」がミュンヘン安全保障会議です。

    原文の抄訳はこちらです。
    EUとの「投資協定凍結」が中国にとって如何に都合の悪いことであるかについて、滔々と説明していただいています。新宿会計士様が仰る通り、本当にわかりやすい国ですね。

    王毅说,当前,围绕中欧关系的定位有各种议论,双方是竞争、对抗还是合作,彼此是对手、威胁还是伙伴?中方的立场是一贯和明确的,那就是始终从战略高度看待中欧关系,始终认为合作是中欧关系的大方向和主基调,始终将欧方视为伙伴而非对手。

    王毅外相は、「目下のところ、中国-EU関係の立ち位置をめぐって様々な議論がある。中国とEUは果たして競争・敵対関係にあるのか、それとも協力関係にあるのか。双方はライバルであり、威嚇する関係にあるのか、それともパートナーであるのか。中国の立場は一貫して明確である。即ち、戦略的な高みから対EU関係を対処しており、終始一貫してEUをパートナーと見做し、敵対的な関係とは見ていない。」と述べた。

    王毅表示,中欧投资协定高度互利,不是单方面的照顾和恩赐,而涉疆问题事关中国主权安全。欧方一些人将不同性质的问题任意挂钩,把经贸问题政治化,这不可接受,也绝对行不通。中欧合作是大势所趋,在中欧之间搞政治对抗和经济脱钩,不符合欧方利益,也不可能长久。

    王毅外相はまた、「中国とEUの投資協定は高度な相互互恵関係があり、決して一方的に他方を優遇し、恩恵を与えるものではない。また、新疆ウイグル自治区問題は中国の主権の安全にかかわる問題である。EUの一部関係者は、性質の異なる問題を一方的にリンクさせ、経済・貿易関係を政治問題化させている。これは決して受け入れることができず、絶対に通用しない。中国とEUの協力関係は大勢を占める趨勢であり、中国とEUの間で政治的な対抗措置や経済のデカップリングを行うことは、EUの利益に合致せず、また長期的に続けられるものではない」という考えを示した。

    • まあ、Kaiserin Angelaの御威光がすっかり翳ったということなのでしょう。
      中国がただの「巨大市場」としてあり続けてくれたのであれば、EUもガタガタ言いだすことはなかったでしょうが、ハイテク企業の買収を図ったり、港湾管理権を獲得したり、通信ネットワークを支配しようとしたりなど、あたかもEUを丸ごと呑み込もうとするような動きを強めれば、EUが座視するようなことはないでしょう。EUとしては、アメリカ一極支配すら内心不愉快に思っていたところに、中国がそれにとって代わろうとするならば、そんなことはさらに受け入れがたいとするのは不思議ではありません。

      よもやEU首脳部が「モンゴルの残光」を読んでいるとも思えませんが、ワールシュタットの戦いくらいは思い出したかもしれませんね。

  • EUも一枚岩じゃないから、期待できないですけどね。
    もっと中国で商売がしたい、という国がひとつや2つじゃないですし。

    • こういった共同文書の重要なところは、公式見解となると言うことです。
      EU構成国が今回の共同宣言に整合していない態度を取れば、表だって抗議も出来ますし、何なら制裁も可能となります。
      共同宣言そのものが効果を持つと言うよりは、これを盾に要求が出来るというところが重要かと思います。

    • ドイツの場合、少なくともメルケルが首相の座から退いてからでなければ、対チャイナ問題に関して貢献し得る可能性は全くありませんしね。

      今年迎える任期終了でメルケルが退いた後のドイツが「アジアの黄色いサル共がどうなろうと知ったことではない」とばかりに相変わらず共産チャイナべったりで行くのか、自由主義や民主制といった西側共通の価値観を少しは重んじて北京共産党政権の時代遅れのネオ帝国主義・覇権主義に厳しい態度で臨むのか?

      ヒトラー&ナチス独裁を国民自らの意志によって生み出した愚かな連中ですからね、最初から余り期待はしていませんが。

    • チベット問題はパンドラの箱で開けたら最後
      人権や平等を重視する先進国は容認が難しい。
      そんなことしたらEU内の差別や虐殺を止められなくなる
      (だからこそ今まで封印してきたわけで。)

      まあ、天安門事件の時の日本みたいに大国が関係改善に動けば別かもしれない。

  • 更新ありがとうございます。

    有り余る経済力、軍事力を背景に中国は我が物顔で暴れてます。ジョン・アキリーノ・インド太平洋司令官の発言「中国による台湾侵攻の脅威は深刻、一般の理解より差し迫っている」というのが本筋でしょう。

    日本も尖閣諸島や大和堆等好漁地を荒らされてます。先手必勝(え?)、日本海と東シナ海に海保、海自を更に貼り付ける必要があります。つまり、今の装備、人員では足りません。大幅な予算アップを!中国とは上手く行きません。価値観違うし共産国と自由民主主義国とは相容れない。

    欧州はだいたいは賛同するだろうが、ドイツとか大丈夫かな?日本に上らせておいて、梯子外すとか。中国とは付き合い深いからなぁ。

    • >ドイツとか大丈夫かな?

      今のドイツ海軍はヨワヨワです。 整備とかの不徹底が問題になっていました(潜水艦)。 先月、日本と2+2会談とかやってましたし、今週 独防衛大臣が南朝鮮を訪問していますが、3周遅れで、今までのインチキ挽回でナンチャッテ外交を繰り返しているようです。

      >梯子外すとか。
      ご安心下さい。 ドイツの梯子など存在しません。

      • 福岡在住者様

        私のとるに足らない論に、コメントいただきありがとうございます。ドイツはメルケル氏が退陣したら、更に離中離韓が進むと思いますが、いかんせん、東洋人を黄色いサルと蔑視している気がします。いや、価値観さえ合えばそれでも良いと思います。

        あと、潜水艦を韓国他にセールスしてますね。最新鋭ではない汎用タイプかも知れませんが、重要機密事項の塊の「鉄の鯨」をよく売るなぁと思います。

  •  王毅外相、趙立堅外務省報道官、楊潔篪政治局員など、習近平「戦狼外交」の忠実な先兵といったところでしょうか。習近平政権では、こういった人達が出世するのでしょう。
     ただ、個人的には、習近平は「非常に用心深く憶病で小心な人物」と見ています。南シナ海、東シナ海や台湾近海で軍事演習などのパフォーマンスを盛んに繰り広げていますが、実際に尖閣侵略や台湾侵攻を実行するかどうかは疑問だと思っています。何故なら、失敗した場合は、即、自身の失脚(=政治生命を絶たれ、下手をすれば牢獄行き)に直結するからです。

    • 確かに習近平は小心者かもしれません。
      私はヒトラーも小心者だったと思っています。
      ただ勇ましい発言で思いがけない権力を手にしてしまい引っ込みがつかなくなっているうちに路線変更が不可能になりつつあるのでは無いかと思います。
      現在の中国は戦前の日本と同じ状態では無いかと感じます。
      韓国も今更親日国家に戻れないように。

      中国はこのまま台湾進攻に突き進むか習近平が失脚するかどちらかでは無いでしょうか?
      習近平の失脚は主戦派と穏健派の内戦に繋がるような気がします。

  • EUは日本にとっては味方なのですが、防衛面で考えると「お客様」なのです。 皆様御存じの様に、実益があるのは英仏です。 

    英国はケイマン諸島という「オイシイ島」がありますが、仏はどうなんでしょうか?

    • ムルロア環礁というフランスの核戦略上重要な島があります(最近は核実験してないそうですが)。その他、タヒチとかいう人格破綻者の画家を収容するための島もありますし、ニューカレドニアとかいう「天国に一番近い島」もあるので、フランス中の不信者どもを放り込むのに都合が良いのではないでしょうか。

      • >人格破綻者の画家

        私、この人の作品結構好きなんですよ(笑)

  •  王毅氏は肩書きこそ外務大臣クラスのような誤解を与えていますが、その上にいる楊潔篪が実質的な責任者で全権限を持っていると言われています(この辺は調べましたが確実な文献は見つかりませんでしたが)。従って王氏は使い走りと広報官の役目しかしていないわけであり、彼の発言は自分の権限で行われているわけではなく上司の意向を自分の判断でくみ取ってオームのように反芻しているだけと思われます。

     従って王氏がなんと恫喝しようとそれは正しい支那の意向ではないわけで、チンピラのタワゴト承っておけば良いことで有り、気にする必要はないように思います。