本稿は、昨日の『文在寅氏、慰安婦・徴用工に「韓日両国の協議が必要」』の補足です。昨日は日韓メディアの報道をベースに、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の年頭記者会見の内容を「速報」的に取り上げましたが、本稿ではメモ書きとして、韓国大統領府にアップロードされた原文を、できるだけそのままの形で翻訳しておきたいと思います。
文在寅氏の年頭記者会見
昨日の『文在寅氏、慰安婦・徴用工に「韓日両国の協議が必要」』では、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の発言を「速報」的に取り上げました。
本当は韓国大統領府が原文を公表するのを待ってから紹介しようとも思ったのですが、昨日夕方時点では、記者会見の内容は韓国大統領府ウェブサイトにアップロードされていませんでした。このため、昨日は文在寅氏の発言について、産経ニュースや韓国メディアなどの記事をもとに紹介した次第です。
ただ、昨日夜の時点で、韓国大統領府のウェブサイトに記者会見の内容が掲載されたようです。
2021新年の記者会見
―――2021/01/18付 韓国大統領府ウェブサイトより【韓国語】
そこで、文在寅氏の発言を、できるだけそのままの形で紹介したいと思います。
ただし、訳文については複数の翻訳サイトのものを見比べながら、著者自身の手作業で、明らかな誤訳の修正(たとえば「ドア大統領」を「文大統領」に変換する、など)に加え、日本語として部分的に意訳している箇所もありますのでご了承ください。
毎日新聞の堀山記者の質問
まずは、毎日新聞の堀山明子氏の質問です。
毎日新聞・堀山明子記者
毎日新聞の堀山です。
私は過去の問題解決に対してお聞きします。1月8日に日本政府に対して賠償を命じる判決がありました。慰安婦問題は徴用工問題とちょっと異なり、韓日政府間で65年協定にある法的な限界を解決するための数多くの外交努力を尽くしてきた分野だと思います。
たとえば河野談話や村山談話、さらには首相のお詫びもありましたし、首相の手紙が一部ながらも慰安婦のお婆さんに伝達されました。そして2015年に韓日合意もありました、判決ではそれは否定されていますが。
そんな過去の韓日政府間でなされた外交合意努力について、大統領はまだ有効とお考えでしょうか。外交努力があっても、判決に基づき日本政府の資産の差し押えや売却がなされなければならないとお考えでしょうか。
日本政府が謝罪や何らかの措置、人道主義的な措置を講じても、被害者の方のなかに受け入れる人もいる一方で、反対する人もいると認識しています。そこで被害者中心主義という原則は誰も反対しないにせよ、現実には多様な意見をどのように韓国国内でコンセンサスにするかが課題でしょう。
そんなコンセンサスがあってこその外交合意、外交努力が可能であると思いますが、大統領が韓国国内被害者のコンセンサスをどう作って行くのか気になります。
文在寅氏の回答内容
これに対する文在寅氏の回答です。
文大統領 :韓日間には解決されなければならない懸案があります。まず輸出規制問題があり、強制徴用判決問題があります。これらの問題を外交的に解決するために、両国は多くの次元で対話を行っています。
こうした努力をしているなかで、慰安婦判決問題がまた加わったことに、率直に少し当惑しているのが事実です。しかし、ここで強調して申し上げたいのは、過去のことは過去のこととして、韓日は未来志向的に発展して行かなければなりません。
私は過去の問題について、事案別に分離したうえで、お互いに解決法を探す必要があると思います。すべての問題をお互いに連携させ、これらの問題が解決されるまでは他の分野の協力も止める、といった態度は、決して賢明ではありません。
最近の慰安婦判決の場合も、2015年度に両国政府間での慰安婦問題に対する合意がありました。
韓国政府はその合意が両国政府間の公式的な合意だったという事実を認めます。そんな土台の上で、今回の判決を受けた被害者のおばあさんも同意することができるような解決法を探して行くことができるよう、韓日間で協議をして行きます。
強制徴用問題も同じです。強制執行の結果、現金化されるというかたちで判決が実現するのは、韓日両国間の関係において、好ましくはありません。その前に、両国間で外交的な解決法を探すのが優先ですが、ただ、その解決方法は原告が同意しなければなりません。
原告が同意することができる方法を、両国政府が協議し、また、韓国政府がその法案を持って原告を最大限説得することで、問題を少しずつ解決していくことができると私は信じます。
目新しい情報はとくにないが…
以上、いちおう一通り読んでみましたが、文在寅氏の発言は昨日の『文在寅氏、慰安婦・徴用工に「韓日両国の協議が必要」』で述べたとおりであり、特段の目新しいものはありませんでした。
あらためて申し上げると、「過去は過去として、韓日は未来志向的に発展して行かねばならない」の部分に対しては、彼自身が4年弱の在任期間中、徹底的に日韓関係を踏みにじってきたという事実を振り返る限り、シャレにしても笑えません。
また、日韓間にはさまざまな懸案が山積していることは事実ですが、それらの圧倒的多数は韓国が一方的に作り出したものであり、解決する義務があるのは「日韓両国」ではなく「韓国」です。また、すべての問題を勝手に関連付けているのが韓国の側であるという点も見逃せません。
そのうえ、慰安婦合意に関しては、少なくとも日韓両国政府間では2015年12月の合意を持ち、最終的かつ不可逆的に解決済みです。しかも、そのことを確認した2015年12月の日韓合意を、韓国は一方的に破ってしまいました。
そのうえで、自称元徴用工問題については、日本はすでに2019年の時点で、日韓請求権協定に従った外交協議、仲裁手続を韓国に申し入れていて、それらの手続を韓国が一方的に無視したという事実があります。日本はもはや、協議に応じる必要はありません。
菅総理の施政方針演説
さて、昨日は菅義偉総理が国会で施政方針演説を行いましたが(首相官邸HP等参照)、韓国については「重要な隣国」としつつも、「両国関係は非常に厳しい」、「健全な関係に戻すためにも韓国側に適切な対応を強く求める」と述べています。
「韓国は重要な隣国です。現在、両国の関係は非常に厳しい状況にあります。健全な関係に戻すためにも、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。」
「重要な隣国」という表現に、現在の日本政府における韓国の扱いが凝縮されているように思えます。第二次安倍政権発足直後の「基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国」という表現からは、ずいぶんと後退したものですね。
いずれにせよ、現在の日本にとって韓国は、少なくとも基本的価値を共有する相手国ではありませんし、戦略的利益についてももはや共有しているとは言えないのではないかと思います(日本政府が公式にその現実を認めているかどうかは別として)。
その意味では、文在寅氏と菅総理の発言の齟齬は、なかなか興味深いと思う次第です。
View Comments (27)
おはようございますm(_ _)m
菅首相の発言とその背後にある認識で良いと思います。
K国(C鮮民族を含む)対応は、やはり非韓三原則で行くのが良いかと思います。
そして、「何を言っている」は無視し、「どのように行動し、どのような状態を作り出したのか」を徹底監視し、「言」と「動」を全て時系列で可視化した上で矛盾を公開の場(できれば国連総会とかWHO、WTO総会(笑)悪くとも、日本国内でのぶら下がり会見)で指摘、論破する感じにして欲しいですね。
C鮮民族は「メンツ」を潰されると激怒するようですが、激怒して日本に手を出そうものなら、自分の国が破滅(経済的にも国際的にも。物理的にはどうなるかは知らないですが。)することを身を以て知って貰うように仕向けるのも手かな?(笑)
追加です。
ニセ徴用工や慰安婦判決は、北からの資金が途絶え(どこかのネット記事に、中国から発表された貿易統計を基に、外貨が枯渇し掛かっている可能性がある点を指摘)たので、活動資金を調達するためにやっているように思います。
なので、会計士様の過去記事にあった「エサを与えない」ことが大事かと思います。
この期に及んで”互いに”とか”両国が”が散見されるあたり、わかってないんでしょうね。それでも多分に譲歩したような姿勢からすれば、これだけ譲歩したのだから日本も歩み寄るべきだ。つまりは更に譲歩せよ、と。これじゃまんまゼロ百に引きずり込まれるだけです。
ここらでキッチリとツケは精算し、与信管理上、今後は政治的にも現金取引としていくべきでしょう。
北のことしか考えてない人ですから、どうせ解決もできないし「被害者が納得するまで」と言って時間稼ぎしておけば何もしなくていいと思っているんでしょう。放置で次に丸投げでいいわけですし。慰安婦合意は生きていると言っておけば、日本側もそれに基づいて韓国がなんとかすると考える他なく、とりあえず静観することになりますしね。米国とも特になにか北関係以外で進展させてたいものがあるわけでもなし。いや、むしろ後退させたい。
文在寅大統領の発言を翻訳してみました。
【自称元性奴隷判決について】
(日米両政府へ)韓国政府は、日韓慰安婦合意が両国政府間の公式的合意だったという事実を認める。
(自称元性奴隷へ)被害者も同意できる解決法を探せるように、韓日政府で協議して行く。
(自分自身へ)日本政府の財産を差押えれば、強力な対抗措置により、韓国経済が深刻な打撃を受け、大統領選挙で与党が負ける恐れが強く、この問題は、次期大統領に丸投げする以外に方法が無い。
【自称元徴用工判決について】
(日本政府へ)差押財産を現金化して判決を実現するのは、韓日両国間の関係上、好ましくない。
(自称元徴用工へ)日韓協議による外交的解決法を優先するが、原告が同意しなければならない。
(自分自身へ)差押財産を現金化すれば、強力な対抗措置により、韓国経済が深刻な打撃を受け、大統領選挙で与党が負ける恐れが強く、この問題は、次期大統領に丸投げする以外に方法が無い。
【大統領発言を聞いた感想】日韓慰安婦合意と日本政府の輸出管理適正化措置が、極めて大きな効果を発揮していますね。さすがは安倍総理、GOOD JOB!
実にわかりやすい!日韓の公式合意よりも、原告の意思の方が優先される事がクッキリと浮かび上がってます。
だだっ子が「ヤダ!」といってるうちは永遠にお菓子をよこせと⋅⋅⋅
永遠に解決させる気はないのですね。ヤレヤレ⋅⋅⋅
“泣く子は余分に貰える”でしたかしらん?
連中には遺伝子レベルで刻み込まれた考・動様式なんでしょうねぇ…
つくづく呆れてしまいますなぁ…
>・・・・韓国経済が深刻な打撃を受け、大統領選挙で与党が負ける恐れが強く、・・・
次回大統領選挙もそうなんですが、その前に、本年4月だったかなぁ・・・、ソウル市長とプサン市長の選挙が予定されてるって、鈴置さんが言ってました(プライムニュース)。
更新ありがとうございます。
日韓間で協議とか両国政府が協議とか、韓国の国内問題であり韓国政府と韓国民との間の問題でしかないって事を全く理解出来ていない文在寅大統領の発言ですね。
朴正煕大統領が朝鮮半島を代表する政府として北朝鮮の分も含めてお金を受け取っておきながら、ポッケナイナイしてる韓国政府が態度を改め、韓国民に対して向き合えば良いだけ。
此処までこじれてもまだ日本から譲歩を引き出そうとする韓国はホントマジキチメンヘラリスカブスコウモリです。
更新ありがとうございます。
菅総理の言う「重要な隣国」という表現には、いろいろな国に対して尊敬を込めて使われます。しかし韓国に対しては、もっといろんな修飾語も盛り込んで使われてましたが、安倍総理が徐々に削り、まったく本音からは遠い、響かない言葉で使われています。
何も重要な国はアジアだけじゃない。中東も西欧も北米も豪州も南米も日本にとってはかけがえのない国はたくさんある。「基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な国」という言葉を挟んだら、その中で韓国の名前が無いだけです。
文大統領は「私は過去の問題について、事案別に分離したうえで、お互いに解決法を探す必要があると思う」と。それがすべての間違いだ。国民にズタボロにされるから言えないんだろうが、「お互いではなく韓国が解決せよ」です。
「(地政学的に)重要な隣国」つうこっちゃないですかねぇ?
「動向を注視すべき隣国」とかでも良かった様にもオモワレマスタ
売春婦合意を公式に認める、と言うことは、日本の義務は終わってますので、自称慰安婦の説得や金撒き、そして売春婦増の撤去など、全て韓国がやることだと思いますが、更に協議って言っている時点で自己矛盾が発生しているのにね。さすが文氏。
まったく同じ意見です。
ツートラック戦略って、矛盾戦略のことだと思います。
韓国からしたら、騙されるほうが悪いということになるんでしょうが。
めたぼーん 様
>売春婦合意を公式に認める、と言うことは、・・自称慰安婦の説得や金撒き、そして売春婦増の撤去など、全て韓国がやること・・
上記のポイントをもっと、繰り返し・明確に指摘した発言・記事を政治家・外務省・メディアにやってもらいたい。”行動を見る”など、朝鮮人と似非左翼には通じません。
逆にNHKなどは、文発言が何か譲歩しているかのような誤解をばらまいています。
表音記号だけで思考してるとああなるんスかねぇ?
>そして売春婦増の撤去など⋅⋅⋅
もしかして誤字ですか?意識しての「増」ならば、現状をたった一文字で言い当てた、なかなかの表現だと思います。
これまでの実績から考えて、文在寅大統領の「お言葉」など一切信用なりません。それに伴う行動があって、初めて耳をちょっと傾けても良いかな程度です。手始めに、ソウルと釜山の公館前に建つ少女像とやらを撤去してもらいましょう。それなくして、2015年合意履行の意志ありなどと判定できません。その程度のことすら実行できないようでは、やはり「口先だけ」と言い切っても良いでしょう。
文在寅大統領が追い詰められていると感じていることは、多分事実でしょう。バイデン新政権の出方を伺いつつも、このままではアメリカに対して「日韓関係の悪化は日本のせいだ」といういつもの言い訳ができない、少なくとも難しいと考えているものと推測されます。
もちろん、日本としてはそんな文大統領の「苦衷」に同情してやる必要はありませんし、手助けしてやる義理などありません。然るべき行動があるまで放置で良いと思います。
さしあたり、23日に迫るソウル中央地裁判決確定までに、何らかの具体的な行動があるかどうかを生暖かく見守っていましょう。
慰安婦合意を公式に認めたのは、このまま反故にしてなかったことにすると、日本政府が慰安婦を公式に認めた事実もまた消えてしまうため、日本にとっても都合がよいことに気づいたので、その事実だけは残す必要があると考えたからでしょう。
従って、合意した事実が残ればよいだけであり、合意をK国政府が履行するつもりは全くないと予想されます。
日本政府が口先だけでなく行動で示せというのは正解です。
「元慰安婦への判決で問題がまた浮上し、率直に言って少し困惑しているのが事実だ」
文政権の発言です。
敵対するやくざに、嫌がらせや襲撃を繰り返すやくざの親分が「近頃の若いもんは困ったものだ、わしも困惑している、その話は置いておいて、ここはひとつ未来志向でお互い盃をかわそうではないか」と言っているようなものです。
徴用工(募集工)判決や慰安婦(戦時売春婦)判決についても日韓請求権協定違反ガーとか主権免責ガ-とか手続き論でしか批判していません。
判決の前提が間違っていることを一部のネット情報以外で言及していません、これでは第三者から見れば韓国の言い分は正しいと思われてしまいます、判決が出た時点でゼロ対100ではなく-50対100となっているのです。
文政権の発言には余裕があるように見えます、日本判決を認めなくてもすでに目的の半分は達成した、日本が謝罪なり金を払えば万々歳、てな感じでしょう。
困ってもいないのに、いや~困った困った、と言っているようなものです。