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同情する気になれない朴槿恵氏の哀愁

本日3本目の配信記事は、ちょっとした「時事ネタ雑感」です。

朴槿恵政権、反日・親中政策の破綻

「前」大統領、大統領官邸から私邸へ移る

金曜日の憲法裁から罷免判決を言い渡されて失職した、韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)「前」大統領は、明日を目途に大統領官邸を退去し、私邸に引っ越すのだそうです。

<朴大統領罷免>朴前大統領、13日ごろの私邸移動が有力(2017年03月12日11時01分付 中央日報日本語版より)

韓国国民の8割が賛成したともされる今回の朴槿恵氏に対する罷免判決を巡っては、韓国メディア内でも「保守系メディア」(朝鮮日報や中央日報、東亜日報など)と、「ハンギョレ新聞」などに代表される「左派メディア」とでは、トーンがやや異なりますが、それでも概ね、「韓国の民主主義の勝利だ」といった報道が多いようです。

韓国のメディアや国民から総攻撃を受けながら、虚しく大統領官邸を去っていく朴槿恵氏。しかし、朴氏が4年間の在任期間中になしたことを考えるならば、私には、どうしても朴氏に対して「同情」する気にはなれません。

反日尽くしの4年間

朴槿恵氏は2013年2月に韓国大統領に就任しました。外交慣例上、韓国の大統領は就任後、最初に米国を、次に日本を訪問することになっていたそうですが、朴氏はさっそく、こうした外交慣例を破りました。具体的には、2013年5月に米国を訪問したのちに、翌6月には、日本ではなく中国を訪問したからです。

私はこの時の韓国メディアの大騒ぎぶりを、いまでもよく覚えています。

朴氏は米国で上下両院合同演説を行い、「歴史を忘れた民族に未来はない」と言い放ち、さらに北京では習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と会談。これにより、韓国メディアは

「米中両国を味方につけて、過去の歴史を反省もしなければ、謝罪もしないけしからん日本」

を叱りつける、という構図を褒め称えました。余談ですが、朴槿恵氏に対する弾劾が成立したいま、韓国メディアが手のひらを返したように朴氏を叩いていることが、私にはどうしても理解できないのです。

朴氏の「反日」はその後も徹底しており、2014年3月にオランダ・ハーグでバラク・オバマ米大統領(当時)の仲介で行われた「日米韓3ヵ国首脳会談」でも、韓国語で語りかけた安倍晋三総理大臣に対し、朴槿恵氏はうつむいたままで返礼をしないという無礼を働きました。

朴槿恵・韓国大統領は非礼ではないか、の声 安倍首相の韓国語あいさつに下を向いたままで返礼なし(2014/3/26 19:23付 J-CASTニュースより)

日韓関係を悪化させる動きは、日本側でも生じました。2014年8月に、朝日新聞社が植村隆などの執筆した「慰安婦関連報道」を「誤報」であるとして取り消しました(※ただし同社はいまだに「捏造」であるという事実を認めていません)。これにより、日本国内では「慰安婦問題」を巡り、朝日新聞社と並んで韓国に対する反感も強くなりました。

戦時中に日本軍が少女20万人を組織的に強制徴発し、戦場に連行して性的奴隷とした

とされる荒唐無稽な捏造を世界中でばら撒こうとする韓国政府や韓国国民に対する嫌悪感のためでしょうか、内閣府が実施する「外交に関する世論調査」でも、韓国に「親しみを感じない」とする回答が、ここ数年は60%前後で推移している状況にあります。

図表1 韓国に対する親近感

(【出所】「外交に関する世論調査」より著者作成)

二股外交の盛大な破綻

一方、朴槿恵政権のもう一つの特徴は、「猛烈な対中接近」です。

朴氏は大統領就任後、初の外訪先として、韓国の外交慣例に従い米国を選びましたが、2番目の外訪先には日本ではなく中国を選択。その後も、習近平国家主席をはじめとする中国要人との会談は続き、米中は「蜜月時代」を迎えます。

そして、中韓関係強化の最たるものは、2015年6月の「アジアインフラ開発銀行(AIIB)」への署名と、同年9月3日に中国・北京の天安門で開催された「抗日戦争勝利70周年記念パレード」への参加だったのではないでしょうか?

ただ、これに激怒したのが米国です。同年10月に訪米した朴氏は、ワシントンで米国の要人に全く面会すらできず、ホワイトハウスではオバマ氏が徹底的に朴氏を「冷遇」。結局朴氏は、米国からの歓心を買うために、中国から反対されていた高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を決定せざるを得なくなりましたが、そのことを表明した2016年7月8日以降、中国は逆に韓国に対して激怒。韓国に対する経済制裁が開始されるなどの混乱状態のまま、現在に至っています(図表2)。

図表2 2015年6月以降の朴槿恵政権の迷走
時期 出来事 備考
2015年6月29日 韓国、中国が主導する国際開発銀行である「AIIB」に、米国の制止を振り切って参加を表明する 韓国は2015年12月に国内手続(批准)を終了させ、第5位の出資額・議決権を確保
2015年9月3日 中国政府が主催した北京・天安門の「抗日戦争70周年記念軍事パレード」に、西側諸国首脳として唯一参加 ロシアのプーチン大統領、中央アジアの独裁者らに加え、スーダンのバシル大統領とも同席した
2015年10月16日 訪米した朴槿恵大統領をホワイトハウスが徹底的に冷遇した オバマ大統領が朴大統領と会談した時間は僅か35分間だった
2015年12月28日 日韓外相による「日韓慰安婦合意」 日本側が10億円を拠出することなどを条件に慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」
2016年7月8日 米韓両国、在韓米軍へのTHAAD配備を電撃的に合意、報道発表 当初の予定では2017年12月末までに配備を完了させるとしていた
2016年11月23日 日韓両国、包括軍事保護協定(GSOMIA)に署名 2012年6月に韓国側が「ドタキャン」した協定への署名を完了させた
2016年12月9日 朴大統領に対する弾劾訴追案が韓国国会を通過 賛成234票に対し反対56票という圧倒的な差で可決
2017年1月20日 米国でドナルド・トランプ政権が成立
2017年2月3日 ジェームズ・マティス米国防長官が日韓両国を訪問 THAAD配備を前倒しにすることで合意
2017年3月10日 韓国の憲法裁判所が朴槿恵大統領に対し罷免判決を言い渡す 判決は定員9名の憲法裁で在任する判事(8名)全員の賛同で可決された

これを見る限り、朴槿恵外交の破綻も、彼女自身の見識のなさがもたらした「自業自得」だったのではないかと思わざるを得ないのです。

日米と離れ、中朝と接近へ

朴槿恵氏は北朝鮮系の市民団体らの暗躍により左傾化した韓国社会により罷免されたようなものですが、彼女の事績から考えて、韓国社会の急速な左傾化・反日化の原因は、彼女自身が過度に反日・親中政策を取ったことにもあります。

『反日国が自壊する、またとないチャンスが到来した!』『自壊する韓国への対応』で申し上げたとおり、5月9日までに実施される韓国の大統領選に出馬が予定されている有力候補者は、現職首相を除けば、程度の差こそあれ、おおむね「反日・反米」「親中・親北」で一致しているようです。

いずれにせよ、朴槿恵氏の弾劾が成立してしまったことで、韓国はもはや、「日米陣営から離れ、中国や北朝鮮と接近する」という流れを止めることができなくなったと言っても差し支えないでしょう。日本もそのことを前提として、「日韓友好」という幻想をさっさと捨て、現実に即して対韓政策を「練り直す」ことが必要であることはいうまでもありません。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • リンク先から当ページが見つかり、むさぼるように過去のページを含めて拝見しております
    具体的な数値で掲載しているので納得することしきりです

    機会があればでいいので、いつかご紹介いただければいいのですが
    日韓スワップのいきさつの紹介は多数あるのですが、過去に結ばれた、
    米韓スワップがどのように結ばれ、米国が怒って、むすばなくなったという話をどっか~聞いたことがありますが原典が分かりません

    多忙な業務のなかだとおもいますので、若し機会があればとおもい、上記のいきさつ等がわかれば案内いただければ大変にうれしいです

    よろしくお願いします