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    Categories: 外交

悔し紛れの「環球時報」記事

本日も予定外に2本目を更新します。中国共産党の機関紙である「環球時報」に興味深い記事を見つけたからです。

環球時報「トランプは安倍と会ってやったが日本は失敗」

Trump meets Abe, but fails Japan(2016/11/19 0:08:39付 環球時報英語版より)

タイトルに用いられている表現は倒置法でしょうか?そうだとすれば、

「トランプは安倍と会ってやったが、日本にとっては失敗だ」

とでも言いたいのでしょう。全文が440単語の短い記事ですが、無駄に装飾的な英語に中国共産党の悔しさが滲み出ているようにも見えます。

冒頭の文章は

This time, Japanese Prime Minister Shinzo Abe is No.1 in the world. He met with US President-elect Donald Trump in New York on Thursday for 90 minutes, and became the first foreign leader to meet with Trump after the US election.

(仮訳)今回に関しては、日本の安倍晋三総理大臣は世界でナンバーワンとなった。彼はニューヨークで木曜日、ドナルド・トランプ次期米国大統領と90分会話したことで、米国の選挙後初めてトランプと会った外国首脳となった。

というもので始まりますが、非常に中身のない文章です。私自身の文責で要約しておきますと(カッコ内は仮訳)、

“Trust” is particularly important for Japan, as the US-Japan alliance is built on trust.(『信頼』は日本の指導者にとって重要な単語で、「日米同盟は信頼に基づく」などの用法がある。)

However, Abe’s haste to meet Trump to confirm that trust highlights his lack of confidence in their relationship.(しかし、安倍が急いでトランプと会ったことで、却って彼らの関係に「信頼」が欠如していることが浮き彫りになった。)

Abe chose to seek US support to contain China and reform Japan’s pacifist constitution out of its fear of a rising China.(安倍は中国を抑止することや、中国の脅威の高まりに対処するために日本の平和主義憲法を改正することを巡り、米国の支持を探っている。)

China is also watching how Trump will deal with the Asia-Pacific.(中国もまた、トランプがアジア太平洋とどのように向きあうかを注視している。)

It’s still to be seen whether the US, with Trump in office, will join the China-started Asian Infrastructure Investment Bank or give a more positive response to the One Belt and One Road initiative.(米国を巡っては、トランプが就任後、中国が開始したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するかどうか、あるいは「一帯一路」構想により前向きになるかどうかが見物だ。)

Abe went to New York to trumpet for the continuation of the US’ “Pivot to Asia.”(安倍は米国の『アジア機軸』をほめたたえるためにニューヨークに出掛けた。)

He failed to get the soothing pill he wanted from Trump or to make the US’ other Asian allies believe Trump won’t change the US’ Asian policies.(彼はトランプから鎮痛薬を受け取るのに失敗したし、米国と他のアジアの同盟国に対しても、米国のアジア政策が変わらないとの確約を得ることにも失敗した。)

つまり、中国共産党は、安倍晋三総理大臣が主要国の首脳の中で最初にトランプ氏に会ったという「フットワークの軽さ」に対し、脅威を抱いている、という証拠です。

また、記事の中で「中国が始めたAIIBに米国が出資するかどうか」という下りが出てきますが、こんなところにも中国共産党の「ホンネ」が滲み出ていますね。国際開発銀行でありながら異例の無格付で資金調達に苦しむAIIBが成功できるかどうかは、日米両国が加盟するかどうかに係っています。

なお、現在、「AIIB」についても小稿を準備中です。順調に行けば、明日、このウェブサイトに掲載できると思いますので、どうかご期待ください。

新宿会計士: