韓国メディアが「5兆円規模」だと報じた日韓通貨スワップ協定については、その後、「続報」はありません。私はおそらく、この報道自体が韓国メディアによる「いつもの飛ばし記事」だと見ていますが、ただ、冷静に考えていくと、日韓通貨スワップ協定は日本が「外交的な脱皮」を図る重要なチャンスでもあります。一方、日露関係については、先週、日本が「6000億ドル規模の経済協力を行う」といった報道が出るなど、進展がみられます。しかし、重要なことは、日韓関係にしろ、日露関係にしろ、「外交関係そのもの」を目的にするのではなく、「外交的手段を使って国益を最大化する」という視点に違いありません。
目次
どうして外交ができないのか?
私自身の外交に関する考え方は、極めてシンプルです。
- 外交の目的は「国益の最大化」にある
- 国益とは「軍事的安全」と「経済的繁栄」である
ところが、私がこのウェブサイトを立ち上げてからずっと主張している通り、どうも日本の外務省には「外交のイロハ」がわかっていないようにしか見えません。一例として、対韓外交を挙げてみましょう。
外務省の稚拙な対韓外交の理由
日本の外務省は、韓国との「友好」を進めようとしていますが、その韓国は日本に対し、不法行為を働いていることを忘れてはなりません(図表1)。
図表1 韓国の日本に対する不法行為
問題 | 概要 |
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従軍慰安婦問題 | 戦時中に日本軍が朝鮮半島で少女20万人を強制連行し、「性的奴隷」にしたとされる問題。事実なら人道上の問題だが、実際には朝日新聞社と植村隆が捏造し、韓国国民と歴代韓国政府が積極的に捏造に加担し、問題を拡大してきた |
竹島不法占拠問題 | 日本固有の領土である島根県・竹島を韓国が一方的に侵略し、不法に軍事占領している問題。韓国が一方的に宣言した「李承晩(り・しょうばん)ライン」に基づく一方的行為であり、日本は多数の漁民が拉致されるなどの被害を受けている |
日本海呼称問題 | 国際的に「日本海」と呼ばれる海域を、韓国政府が一方的に、朝鮮語の「東海」と呼び換えようとしている問題。ただし、韓国以外にこの海域を「東海」と呼称している国は存在しない(北朝鮮ですら「朝鮮東海」と称している) |
海洋不法投棄問題 | 韓国が大量のゴミ・廃棄物を海洋に不法投棄している問題。これらの廃棄物は日本の沿岸にも漂着し、深刻な環境問題を引き起こしている |
慰安婦像設置問題 | 韓国の日本大使館前の公道上に違法に設置された、日本大使館を侮辱する目的の構築物。北朝鮮との強いつながりで知られる挺隊協が設置を主導したもの。また、類似する銅像は韓国人の手により、米国・グレンデール市を含めた世界中に広がり続けている |
韓国人による窃盗問題 | 韓国人が日本の文化財や知的財産権などを多数窃盗して朝鮮半島に持ち帰っている問題。対馬の寺から窃盗された仏像については不当に韓国内に留置されており、日本に返還が実現していない。また、イチゴをはじめとする、日本の様々ななどの農作物を、知的財産権使用料の支払いもなしに勝手に栽培し続けている |
私は、外務省が「外交下手」な最大の理由のとして、「これまでだとマス・メディアが情報を独占していたからだ」、という仮説を持っています。つまり、マス・メディアが、このような韓国の不法行為の数々を一切報道しなかったため、そもそも国民が日韓外交を問題視しなかった(つまり有権者・国民の監視が行き届かなかった)、ということです。確かに一昔前であれば、多くのメディアは韓国の不法行為をほとんど報道しませんでしたし、中には朝日新聞社のように、むしろ日本を破壊する行動に加担しているテロ組織まがいの新聞社もいましたから、情報を積極的に歪曲・捏造して報道するなどしていて、日本人がこれらの問題を知る機会など、そもそもなかったのです。
しかし、東日本大震災の前後あたりからでしょうか、スマートフォンが急速に普及するなどした結果、インターネットがさらに我々の身近な存在となりました。その結果、「テレビを見ない」、「新聞を読まない」、「普段の情報はインターネットから得る」という具合に、既存のマス・メディアを信頼する人が急減する半面、インターネット人口が急増。韓国による日本に対する許されざる所業の数々についても、我々一般人の知るところとなりました。
それだけではありません。いままでだと「絶対に批判されなかった」はずのマス・メディアに対しても、容赦なく一般人からの反論が寄せられるようになったのです。「韓流偏向」のテレビ局・フジテレビは2011年8月に、前代未聞の「6千人デモ行進」のターゲットとされ、それ以降、視聴率の凋落が止まりません。また、インターネットを中心に慰安婦捏造問題の真相究明努力が続いた結果、2014年8月に、朝日新聞社は慰安婦問題が「誤報」であると認めました(※ただし「捏造」であるという事実からは頑なに逃げ続けていますが…)。
そのように考えていくならば、マス・メディアが「報道しない自由」で守ってきた相手である外務省も、もはや「旧態依然とした外交」にアグラをかいていてはなりません。下手な外交を続けていると、有権者の間で「外務省不要論」、「外務省解体論」、さらには「外務省廃止論」が強まってくるからです。
日韓外交は「目的」ではなくて「手段」
外務省に一番言いたいことがあります。それは、韓国との「友好関係」自体を「目的」にしてはならない、という点です。最初のテーマに戻ると、外交の目的は「国益の最大化」であり、国益とは「軍事的安全」と「経済的繁栄」の二つの柱から成っています。
韓国は、一見すると日本と同じ「自由民主主義国家」であり、大統領も国民の直接投票により民主的に選出され、任期も「一期限りの5年」とされています。1988年に民選大統領に交代して以来、実に6代連続して、民主的・平和的な政権移譲が行われています(図表2)。
図表2 韓国の民選大統領【敬称略】
氏名・よみがな | 在任 |
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盧泰愚(ろ・たいぐ) | 1988-1993 |
金泳三(きん・えいさん) | 1993-1998 |
金大中(きん・だいちゅう) | 1998-2003 |
盧武鉉(ろ・ぶげん) | 2003-2008 |
李明博(り・めいはく) | 2008-2013 |
朴槿恵(ぼく・きんけい) | 2013- |
もっとも、韓国では退任した大統領が在任中の汚職等を巡って訴追・逮捕されるケースも多く、自殺した盧武鉉氏を含め、いずれの大統領も何らかの事件に巻き込まれています。ただ、重要な事実は、「平和裏に政権交代が行われている」という点であり、これだけを見ると、韓国は独裁国家でも何でもなく、きちんと民主主義が機能している国だ、ということです。
韓国との友好関係は大事なのか?
しかし、同じ民主主義国であるというだけが、「仲良くする理由」にはなりません。韓国の場合、法律が歪められることが多く、また、韓国の歴代政権は、しばしば過去に自国が締結した国際条約を平気で破ってきた実例もあるからです。もちろん、隣国同士ですから、仲良くできるなら仲良くするに越したことなどありません。しかし、たとえ隣国であったとしても、外交の鉄則(=国益の最大化)から逸脱したおつきあいなど、長続きしません。
ちなみに対韓関係を巡る私の持論は、「現在のところは」、韓国と仲良くするのも「やむを得ない」、というものです。なぜなら、中国が日本に対する軍事的侵略の野心を隠そうともしなくなっており、かつ、北朝鮮が核兵器の実装を公言しているからです。中国、北朝鮮という「東アジアの軍事的無法国家」が軍事的野心を高める一方で、日本は「日本国憲法第9条第2項」により、憲法上、交戦権が認められていません。このような状況で、仮想敵国の数は少なければ少ないほど良いのは当然のことです。これに加えて、韓国は米国の同盟国という地位にあります。こういう状況にあって、日本側から韓国との「断交」を持ち出すなど、極めて非現実的です。
ただし、だからといって「日韓友好を最大の目的として」、盲目的な韓国との関係改善を追求すべきではありません。冒頭に列挙したとおり、韓国は日本に対する不法行為の数々を働いており、潜在的には、「いずれ処理しなければならない国」だからです。その最初の試金石は「日韓通貨スワップ協定」だと思います。
「5兆円スワップ」の顛末と活用
先月、私は「日韓スワップ「500億ドル」の怪」と題する記事を公表しました。内容は
「韓国の『企画財政部』関係者によれば、『韓日通貨スワップ』の規模は500億ドル規模になる模様だと『ソウル経済』という韓国のメディアが報じたが、おそらくこれは韓国側のメディアによる願望に基づく『飛ばし記事』の類であろう」
とするものです。「飛ばし記事」であるとの私の予想通り、今のところ、これに関連する続報はありません(※韓国語メディアの報道であるため『日韓』ではなく『韓日』となっている点に注意)。500億ドルといえば、1ドル=100円換算で5兆円規模です。こんな金額を外為特会から支出するなど、異例です。韓国との間では野田佳彦政権が2011年に「700億ドル」という桁外れに巨額なスワップを締結した実績がありますが、リーマン・ショック直後の2008年に1年間限定で230億ドルに増額したのを除けば、せいぜい130億ドルが限界です。
いずれにせよ、私はこの「5兆円スワップ」については韓国側の「希望的観測」に過ぎないと見ています。韓国人は状況を自分にとって都合よく解釈する傾向が強く、THAAD配備で中国を敵に回したという状況の恐ろしさを痛感しているからこそ、企画財政部の担当官が都合よく「日本が中国に対抗して500億ドル規模のスワップ締結に応じるに違いない」とでも妄想しているというのが実情に近いでしょう。
この点、私は、「5兆円スワップ」ではなく、その10分の1程度(50億ドル程度)のスワップを締結するくらいであれば、日韓通貨スワップ協定に応じてやっても良いと思います。この程度であれば、韓国がスワップを踏み倒そうとしたとしても、在日の韓国政府の資産を差し押さえるなどすれば回収可能です。一方、通貨スワップの規模を韓国の望む「5兆円規模」とするのであれば、少なくとも、ごく短期(例:3か月)でロールするような形にしてほしいと思います。たとえば、「韓国が慰安婦像を世界で新たに建立すれば、スワップのロールを停止する」などと韓国を脅すことができるようにしておいてほしいのです。そして、実際に韓国に通貨危機が到来するタイミングで、是非、スワップラインを停止して欲しいと思います。
このように日韓スワップを外交上、狡猾に利用することができるかどうかは、日韓外交が誤った「日韓友好」ではなく、「新の国益外交」に脱皮できるかどうかの試金石の一つであることは間違いないでしょう。
日露外交でも全く同じ
外務省の外交下手さは、日韓外交だけでなく、日露外交にも全く同じことが言えます。ところで、報道等によれば、ロシアのウラジミル・プーチン大統領の訪日に先立ち、日本政府や日本の経済団体らは、早速、6000億円相当の協力事業のパッケージを準備したようです。この「6000億円」という金額と比べても、韓国ごときに「5兆円」ものスワップラインを提供することがいかに異常か、わかると思います。
実は、ロシアは旧ソ連時代の核兵器をそのまま引き継ぐ「軍事大国」である一方、民生品に関しては、ほぼ全くと言って良いほど「使い物になる技術」を持たない国です。当然、外貨の獲得手段と言えば原油・天然ガスなどの資源に偏っていますし、技術力の乏しさから、極東シベリアには手つかずの資源が大量に眠っています。当然、日本の多額の経済協力は、ロシアから見ると、それこそ「喉から手が出るほど欲しい」ものです。
ただし、日韓外交でも「日韓友好ではなく国益を優先しろ」と申し上げたのと全く同じ話が、日露外交でもそのまま該当します。つまり、ロシアに対しても、「タダで経済協力を与える」ような愚を犯してはならない、ということです。
様々な報道によると、安倍総理は「対露経済協力」をちらつかせるとともに、まず「色丹、歯舞」の「2島返還」を優先させるつもりのようです(※歯舞は「群島」であって「島」ではありませんが…)。実は、「2島返還」は旧ソ連時代に「平和条約締結」の見返りとして実施することを約束しているため、プーチン政権にとっても、ロシア国民に対する説明は容易です。仮に、外交交渉だけで「2島返還」を実現したら、人類史上も「かつてないほど」の快挙でしょう。
私は、「北方領土問題」とは「択捉、国後、色丹、歯舞」の「4島」ではなく、「千島列島全てと南樺太」をソ連に不法占拠された問題だと考えています。そこから考えると、色丹と歯舞という、「千島列島と南樺太」と比べると極めて少ない面積の島の返還で妥結するのは極めて不本意です。ただ、少なくとも「択捉、国後」の2島については、「当面棚上げ」で構わないと思います。
「日露関係は経済協力で深化させ、2島先行返還により日露平和条約を締結する―」。もちろん、その最大の目的は、中国に対する牽制です。ロシアは韓国と比べるとさらに距離があるため、私自身、外務省が「ロシアとの友好関係そのもの」を外交目的にする愚を犯す可能性はそれほど高くないと見ているものの、あくまでもロシアとの関係改善は中国に対する牽制にある、という点を忘れてはなりません。
最終的には「殺人憲法」の問題に集約される
戦後の日本外交が様々な苦労に直面している最大の理由は、なんといっても、日本国憲法第9条第2項が「交戦権の禁止」を謳っているからです。いわば、「日本が外国から攻め込まれても、外国に拉致されても、日本はその外国に反撃してはならない」と宣言しているようなものです。したがって、私は日本国憲法を「殺人憲法」と呼びたいと思います。
戦後の日本は、日本国憲法の規定にもかかわらず、自衛隊は「合憲だ」と言い張ってきました。しかし、自衛隊の存在は、やはり紛れもなく違憲です。というよりも、むしろ「国防を禁じた規定」である「憲法第9条第2項」こそが、人類の自然法に反している、とんでもない規定なのです。
憲法に関して「真面目に」突き詰めて考えてみると、次のフローチャートが正しいです。
- 日本が法治国家である限り、憲法を守らねばならない。
- そもそも自衛隊は違憲(憲法第9条第2項違反)である。
- 中国人民解放軍が攻めてきたときに、自衛戦争をするのも違憲である。
- 日米同盟も武力の行使を前提としたものであり、違憲である。
- したがって、憲法を守って国滅ぶ、というのが正しい。
どうですか?護憲派の皆さん、これに反論できますか?あるいは、「憲法第9条第2項が存在したから日本は戦争に巻き込まれなかった」というのなら、日本国憲法施行後だけで見ても、
- 韓国が竹島を不法占拠した
- 北朝鮮が大勢の日本人を拉致・殺害した
- 中国が尖閣諸島周辺海域を侵犯している
- ソ連・ロシアが北海道の領空侵犯を繰り返している
と、外国による不法行為・準戦闘行為が繰り返されていることの説明がつきません。なにより、憲法第9条第2項を排除し、中国の軍事的膨張リスクも落ち着けば、日本がようやく、自力で国を守ることができるようになります。そうなれば、尖閣諸島問題は勝手に消滅しますし、韓国軍は竹島から自主的に撤退せざるを得なくなり、さらに拉致問題にしても、北朝鮮に軍事侵攻し、拉致被害者を救助することだってできるかもしれません。
また、ロシアは北方領土のうち、残りの部分(千島列島と南樺太)についても領土交渉に応じるかもしれません。というよりも、ロシア自体、あと数十年も経過すれば、社会の高齢化やインフラの劣化により、極東地域の維持すら困難になります。今のうちに「その日」に備えて、憲法第9条第2項の撤廃に動くのは賢明でしょう。
「東アジア新秩序」。豊かさと繁栄を維持する日本が軍事力を備え、周辺国の侵略を許さない―。私は、そんな国を、私たちの子供に、孫に、伝えて行ってあげたいと思うのです。