日本は雇用環境が好転しています。私自身も一人で小規模な事業を営んでいるのですが、誰か事務員を雇いたいと思い、職安で「相場」を調べてみると、東京都内ではずいぶんと賃金水準が上昇しているようです。こうした中、日経に「非正規雇用が増えているため、見かけ上は失業率が下がっているが消費は弱い」などとする記事が掲載されたのですが、個人的にはこの記事に大いなる違和感を抱いているのが実情です。
日本は雇用環境の好転が続く
昨日から9月です。
私自身が起業したのが昨年10月のことですから、あと1か月で「脱サラ」から丸1年が経過する計算です(※税法上の都合により、会社設立は10月2日付けですが)。「サラリーマン」時代と比べると、「日々のルーチンワーク」があるわけでもなく、もちろん安定収入などありません。それどころか、「今の顧問先から切られたらどうしよう」「仕事が取れなければどうしよう」などと不安な毎日でもありますが、それでも「いつでも使えるように知識を日々アップデートしておく」「新たな資料を作成し続ける」といった具合に、準備を続けていれば、いずれ顧客も増えるはずだと信じて事業に取り組んでいます。
ところで、先日、「職安」に行ってきました。目的は、自分自身の会社に事務と電話番をやってくれる人を雇い入れるための「相場」を知るためなのですが、少しずつ「人を雇うコスト」が上昇しているような気がします。こうした中で、気になるニュースを発見しました。
雇用過熱、さえぬ消費 7月失業率3.0%に改善、消費支出0.5%減/非正規中心、波及薄く(2016/8/30付 日本経済新聞夕刊より)
わが国の7月の失業率が3.0%と、実に「完全雇用水準」といえるほど低くなりました。しかし、こんなに良いニュースなのに、日本経済新聞の手に係れば、「失業率は確かに低いが消費支出は低調だ」となってしまいます。日経は「雇用増がパートなど非正規や低賃金の仕事で目立つことも消費停滞の一因だ」としていますが、非正規であれパートタイムであれ、雇用が増えていることは良いことに違いありません。というのも、世界的に見ると、むしろ失業率(とくに若年失業率)が上昇している国が増えているからです。同じ日経電子版が次の報道を出しています。
若者の失業率、3年ぶり悪化へ ILO16年見通し 13.1%(2016/8/25 5:00付 日本経済新聞電子版より)
これは、国際労働機関(ILO)が8月24日、世界の若年層(15~24歳)の失業率が前年比+0.2%ポイントとなる13.1%に上昇するとの見通しを示した、とするものです。地域別にみると「中南米が同1.1ポイント悪化して16.8%になるほか、東南アジア・太平洋も13.0%と同0.6ポイント上昇」するとみられており、いわば、世界経済が「強い国」と「弱い国」にはっきり別れてしまうという証拠の一つです。
たとえば、現代の各国の中で、米国は日本と並び、雇用が強い国の一つです。WSJによれば、2016年7月の若年層失業率が「直近のリセッション(景気後退)が始まる前の2007年以降で最低」となる11.5%に低下したということです。
米労働市場、夏場に若年層の参入増える(2016 年 8 月 18 日 14:43 JST付 WSJ日本版より)
11%台とは、日本の水準から見るとずいぶんと高い数値ですが、米国の場合、若年層失業率が全体の倍近くに達しています。おそらく、日本と異なり「新卒即採用」という雇用慣行がないなどの事情があるのでしょう。
一方で、若年失業率がむしろ上昇している国もあります。たとえば、次の記事に見るように、韓国は中国に対する経済依存度が高すぎるためでしょうか、失業率は上昇に転じているようです。
若年層の失業率11.8%、3月基準で17年ぶり最悪=韓国(2016年04月16日09時15分付 中央日報日本語版より)
いずれにせよ、国により事情は様々ですが、現在の日本は雇用環境が好転していることは間違いありません。これを経営者の側から見れば、「良い人材を安い値段で採用すること」が難しい、という話ですが、逆に言えば、不況期から我慢して人を雇い続けている会社は、ここに来て「一息」ついているのではないでしょうか?
ビジネスマンは働き続けることが必要
私には一つの持論があります。それは「ビジネスマンであれば働き続けることが必要だ」、ということです。これは私自身の実感とも合致するのですが、やはり仕事を辞めてしまうと、感覚が鈍ってきます。幸い、私は昔から同じ仕事を続けているのですが、途中でそれまでのキャリアを全否定するほどの大きな転職をしてしまうのもリスクの一つです。
ビジネス誌などを読むと、よく、「転職のデッドラインは35歳までである」と記載されていますが、これは、「全く異なる仕事のスタッフレベル」で転職する場合の話ではないかと思います。しかし、たとえばある業界の「部長職」として勤務した人が、同業他社の「部長級」として転職するのであれば、別に40代、あるいは50代であっても遅くありませんし、経営者として転職するのであれば、それこそ60代であっても不思議ではありません。
しかし、20代で就職に失敗してしまい、そのまま手に職をつけることなく漫然と過ごしてしまうと、それこそ年をとっても「非熟練労働」にしかありつけず、生涯賃金は低いままで終わってしまいます。それであれば、非正規だろうが何だろうが、とりあえず仕事に就いてしまうべきでしょう。
例えば、簿記検定2級などを取得し、非常勤でも何でも良いから、どこかの会社の「経理事務」として就職してしまえば、そこからキャリアを積むことができます。働きながらPCのスキルを磨いたり、資格を取ったりして、少しずつ自分の知識を深めていけば、仕事のレベルを高めることにも役立ちます。
一方、南欧のように「若年層失業率が50%を超えている」などの国の場合、若いころから無職の状態が常態化すれば、社会全体の勤労の質が低下することにもつながりかねません。その意味で、現在の日本のように、とにかく失業率が低下している状態は、「失業率が高い状態」と比べれば遥かにマシでしょう。
ちなみに当社は、まだ人様を雇っても給料を払って行けるほどの売上がないのが残念なのですが…(笑)