集合住宅(マンション)に暮らしていると、さまざまなことが発生します。私自身もつい先日、水漏れ事故という、なかなか興味深い「椿事」に直面しました。といっても、厳密に言うとまだ「現在進行中」なのですが、いろいろ興味深い点が多々ありますので、記録として皆様に公表したいと思います。
階下の住人から「水漏れ」の連絡が!
事の発端は、ある平日の夜のことです。いつものように食事をして、寝る準備をしていた時間に、突然、呼び出しベルが鳴りました。新聞の勧誘とかなら追い返そうと思ったのですが、やってきたのは階下に暮らす女性です。彼女の住む部屋の天井から、水が滴り落ちているとのこと。彼女としては、我が家が原因だと思ってやって来たそうです。
しかし、どうも話を聞くと、水漏れしている場所は、明らかに我が家の水道管の設置個所とずいぶんずれています。かな~りフェイクを入れて、位置関係を図示すると、図表1の通りです。
図表1 水周りと漏水箇所の位置関係(上から見た図)
私自身にあまり絵心がなくて恐縮なのですが(笑)、青く塗った部分が水周り(フロ、トイレ、洗面所、台所など。給排水管はこの区画に固まっている)、バツ印(×)を付けた部分が漏水箇所です。厳密には上下階で間取りも全く異なるのですが、我が家の水周りの場所と、階下で水漏れをしている箇所が大きくずれていることがわかると思います。
また、リフォームの施工業者が我が家に残している給排水管の位置を示した図面も確認してみたのですが、やはり彼女の部屋の天井に相当する部分には、水道管らしきものは一切存在していません。それでも、彼女は天井から漏水していて、とても困っている様子。夜間ということもありましたが、とりあえずマンションの管理人室の前に貼ってある管理会社の「夜間通報窓口」に一報を入れたうえで、その日は我が家の水道の元栓を閉めて寝ました。
管理規約「床下水道管も各戸の責任」
ただ、漏水箇所から判断すると、漏水の原因は明らかに私の自宅ではありません。なぜなら、図面上、階下で漏水している箇所には水道管らしきものが全く存在しないからです。そこで翌日になり、私はマンションのリフォーム会社にも電話を掛けてみました。
リフォーム会社の人に改めて構造を聞いたところ、マンションの水道は一般的に、上水道が「給水管」、下水道が「排水管」で、それぞれ、
- 共同縦管
- 専有部枝管
に繋がっているのだそうです。そして、私の自宅も同様に、共同縦管の(水道メーター)から屋内の専有部に枝管が引かれており、かつ、全面リフォーム物件だったということもあり、階下の水漏れ箇所には水道管らしきものは存在しない、との確答を得ました。
それと並行して、昨日通報した管理会社から折り返しの電話があり、マンション全体の図面を確認したところ、どうやら私の隣の家に、壁に接する形で流し台があることが判明したのです(図表2)。
図表2 隣家の流し台(上から見た図)
図中、赤く塗った部分が、私の隣家の流し台です。そして、私の家の図面・設計書を持っているリフォーム会社からの情報、マンション全体の構造図を持っている管理会社からの情報を統合すれば、一番可能性が高いのは、私の家ではなく、私の隣家の水道管が水漏れの原因だ、ということだそうです(図表3)。
図表3 隣家が階下に被害を与えた?(正面から見た図)
図表中、階数と部屋番号はフェイクです。「★」で記したのが我が家(502号室)であり、青い矢印で示した通り、どうやら隣家(501号室)から私の真下の部屋(402号室)に水が漏れた可能性が高いそうです。ただ、「水漏れ箇所は隣家だ」という説明が正しければ、水漏れ事故は隣家の真下の物件(401号室)にも被害を与えているのではないかという気がしますが…。
水漏れの原因と責任
つまり、今回の「事故」を巡っては、結果的に私には責任がない、ということで落ち着きそうです。ただ、これを機に、マンションの漏水事故について調べてみたところ、いろいろ気になる話が分かってきました。
まず、一般的な「水漏れ事故の原因」です。マンション内の水漏れ(ほとんどのケースは上階から下階への浸水)の原因は、大別して「不注意」と「水道管破裂」に分かれるとのこと。
このうち「不注意」とは、洗濯機の排水ホースが排水管から外れたり、トイレが詰まったりした結果、床中が水浸しになり、そこから階下に水漏れが発生する、というケースです。外出中に洗濯機を回していて、何らかの拍子で排水ホースが排水管から外れてしまったとか、本来ならトイレに流してはならない個体物を流してしまい、トイレが詰まってしまったとか、そういう経験をした方もいらっしゃると思います。この場合、水漏れの責任は上階の部屋の居住者にあります。
一方、今回の事例もそうですが、経年劣化等の理由で専有部内の床下にある給水管・排水管が壊れ、そこから水漏れしてしまう、という場合も、比較的多く発生しているケースだそうです。この場合、水漏れの責任はだれにあるのでしょうか?ウェブサイト等で調べてみると、管理組合が対応してくれる場合も(稀には)あるそうですが、一般的には「専有部の床下の水道管」が破裂するなどして階下の部屋に漏水した場合も、責任は「上階の部屋の居住者(または所有者)にある」と考えるのだそうです。実際、私はマンションの管理規約に目を通してみたのですが、管理規約の注記には、
「給水管については、共同縦管に至るまでの住戸内の枝菅(※)を専有施設とする。」
と明記されています(※「管」を「菅」と記載した誤植は原文のまま)。したがって、少々古いマンションを購入する場合、水漏れ事故への備えとして、通常は火災保険などとセットで「個人賠償責任保険」に加入していることが望ましいと言えるでしょう。
なお、水漏れ事故の原因としては、ほかにも、台風・豪雨等により、「壁から漏水」、「排気ダクトから浸水」、といった「変わり種」もあるようです。ただ、管理会社等の専門家によると、これらは例外的なものだそうです。
大都市全体で漏水事故は「激増」する!
日本は「マンション大国」だと思います。日本では、東京をはじめとする大都市に人口が集中しているため、どうしても集合住宅に居住する人口が増えてしまうのです。
私自身が居住するマンションは築年数が30年少々ですが、やはり、話を聞くと、各戸で漏水事故などが発生しているようであり、注意が必要です。私自身も、今回の事故を機会に火災保険の内容を見直し、漏水事故に対応する保険に改めて入るなどの対応をしているのですが、それでもなかなか不安は解消できません。
マンションの経年劣化が日本全体の課題であるということを踏まえるならば、マンションに居住する方々は、改めて管理規約を読み直し、足りない部分を個人保険に入るなどの対策を取ることをお勧めする次第です。