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いい加減な占いに騙されない

血液型占い、占星術…。先行き不透明な世の中、多くの占いが存在します。中には論者自身が「この占いは根拠薄弱だ」と言いながらも血液型による性格診断など、いい加減な言説を垂れ流しているケースもあります。ただ、日本も言論が自由な国ですから、いい加減な占いに対して判断力を養っていきたいものです。

経営者よ、迷っても「占い」に頼るな!

占いが盛んです。日本でメジャーな「占い」といえば、私は第一に「血液型占い」を挙げたいと思います。ニューズサイトを調べてみても、血液型占いに関するウェブサイトは大量に見つかります。血液型占いのウェブサイトでは、恋愛などの相性が記述されているケースも多いようですが、中には「血液型別ダイエット」なる奇妙な記事も存在します。それだけではありません。姓名判断、四柱推命、星座占い、風水など、占いには様々な種類があります。

世の中の占いを、私自身の独断により分類すると、図表1の通りです。

図表1 占いの分類
分類 具体例 備考
その人本来の属性により占うもの 血液型占い、四柱推命、六星占術、西洋占星術 生年月日や血液型を変更することはできない
名前や住所などにより占うもの 風水、姓名判断、手相、人相 例えば姓名判断に従い改名することも不可能ではない
偶然性で占うもの おみくじ、トランプ占い、タロットカード 偶然性に依存するものでありコントロール不能

このうち、「生年月日」「血液型」などのように、「生まれた時から決まっているもの」については、自分の努力ではどうにも変えることはできません。しかし、「姓名判断」「風水」の場合、「自分でその気になれば変えられる」ことがあります。ときどき、私の知り合いの中にも、「姓名判断の結果に従って名前を変えた」「風水に従って引っ越しをした」という人がいますが、本末転倒であり、全く愚かなことです。

ところで、少し古い記事で恐縮ですが、日経ビジネスオンラインに次のような記事が掲載されたことがあります。

経営判断、迷ったら「占い」に頼るのも吉(2016年5月12日付 日経ビジネスオンラインより)

記事の内容を一言でいえば、「経営判断に迷ったら占いに頼ってしまえ」というものです。記事によると、台湾では重要な意思決定を行う際に、(風水だか何だか知りませんが)何らかの「占いに頼ることが多い」のだそうですが、私はこの記事に、全面的に反論したいと思います。

確かに現実の社会には「不確実性」がありますから、占いに頼りたい気持ちもわかります。しかし、特に「大企業の経営者」であれば、実質的に多くの従業員の生活を預かっているわけであり、企業の舵取りを失敗すれば巨額の損失を発生させかねません。経営者という立場にあれば、「占いで経営を決めました」、「失敗しました」、「以上」、では済まされません。

そうであるならば、そうした「企業経営リスク」は「占いで決める」のではなく、自分自身の「経営責任」において取るべき筋合いのものです。そして、現実社会にリスクが存在する以上、「リスク管理」の概念が重要です。経営者が自らの知見と判断に基づいて経営判断を行い、また、経営状態は常にリスク管理の枠組みで管理し続けることがじゅうようです。

占いは統計学なのか?

さて、私自身は頭から「占い」だとか、「死後の世界」だとかを否定するつもりはないのですが、その一方で、少なくとも図表1に列挙した占いについては、いずれも全く役に立たないと考えています。たとえば、某占い師(実名を出すのは控えます)が執筆した書籍によると、世の中の人はすべて「6つの星」に所属しているのだそうですが、それぞれの「星」の人たちの「性格」とは、次のようなものです(図表2)。

図表2 星ごとの性格
性格
A星人 A星人は「心の世界」に住んでいます。理想が高く、したがって現実世界にはなじみにくい、という宿命を負っています。A星人は、まず、何ごとにもつけても、白黒のけじめをはっきりさせないと、なっとくできない面があります。清潔な性格で、正義感にもあふれ、実利よりも名誉を重んます。よく言えば「理想主義者」、悪く言えば「唯我独尊(ゆいがどくそん)」タイプです。
B星人 B星人は、一言で言うと、行動の星で、「せっかちな自由主義者」です。こよなく自由を求め、何ごとにつけ、合理主義にのっとって行動します。理屈に合わないことは絶対にしようとしないし、古き伝統とか、迷信などというものもあまり信用しないのがB星人です。ですから、現代的なセンスにあふれています。流行にもとても敏感で個性的なお洒落をします。
C星人 C星人は「知恵の世界」に住み、マイペースでプライドが高く、反骨精神が旺盛です。しかし、その行動において「奇人・変人」が多く、まわりが理解されない傾向があります。C星人は、初対面の人に対して、とても『人見知り』をします。これは多分にC星人の中にあるプライドの高さや、警戒心の強さが影響しています。つまり、プライドが高いために、人に腹をさぐられたり、自分の考えていることを先回りして指摘されるのが何よりも嫌いですし、人から干渉されるのも大嫌いなのです。
D星人 D星人は、物事にけじめをつけたり、きちんと筋をとおしたりすることが大の苦手です。とにかく、なあなあの『事なかれ主義』で、物事を収めてしまおうとするのが特徴で、理性や知性より感情や人情を優先するタイプといえるでしょう。
E星人 E星人は、何ごとに対してもコツコツと着実に成し遂げていく努力家です。几帳面で忍耐強く、一度目標を決めるとそれに向かって邁進し、どんな困難な事態におちいっても、目的を達成するまで努力しつづけます。
F星人 F星人は、非常に利己的でクールな性格の持ち主です。ある意味で、人生をつねに醒めた目で見ているところがあります。それでいて、生まれつき華やかでソフトなムードをそなえていますから、男女ともに、とても強烈な個性の持ち主が多いと言えましょう。

いかがでしょうか?この占星術、記述を読んでいると「流行に敏感」「現代的なセンス」「プライドが高い」「ソフトなムード」など、「定量化できない形容詞」が非常に多いことがわかります。

人間であれば、誰しも理想を追い求めがちですが、それとともに現実に直面するとそれに適用しようと努力します。また、誰しもプライドはありますから、人に腹を探られるのは嫌いでしょうし、自分の考えていることを先回りして指摘されるのを嫌うはずです。つまり、何のことはありません。この占い師は、人間であれば誰しも当てはまる内容のことを、それぞれの星に割り振って記述しているだけなのです。

ちなみに、この占い師が自ら提唱する「占星術」については、「統計学的な根拠がある」と主張していますし、前出の日経ビジネスオンラインの記事でも「占いは統計学だ」という言説が出てきます。しかし、果たしてこの主張は正しいのでしょうか?

実際、統計学の一種だと主張するのであれば、標本数、標準偏差、検定誤差といった統計学の概念が出てくるはずですが、彼らの主張をどれだけ読み返しても、それらの専門的な用語は全く出てきません。

したがって、私自身は占いについて、「もしかしたらよく当たる占いが存在するのかもしれないけれども、少なくともこれらの占い師らが主張する内容については信憑性など皆無だ」と考えています。

血液型占いの「違法性」

一方で、日本社会に根強いのが「血液型占い」です。これはA型、B型、AB型、O型という4つの血液型で性格が決まるとされている代物ですが、学術論文を読んでいると、「4つの血液型と性格には有意な関連性があると立証できない」というものしか存在しません。しかし、「4つの血液型が性格と関係ある」とする言説には、いまだに根強い支持が存在するようです。

ただ、血液型占いが「当たる」理由はいくつかあります。その一つは、これだけ世の中に血液型占いが普及してしまった以上、たとえば「B型は変人だ」といった言説が独り歩きした結果、B型の人が「自分は変人だ」と「思い込んでしまう」ことで、血液型占いが「自己実現する」ようなケースです。

また、血液型占いには、少なくとも一つ、深刻な問題点があります。それは、職場で血液型占いをベースに人事考課が行われる、というものです。「あの人はA型だから冷静沈着に違いない」、「この人はB型で奇人だから要職を任せることはできない」、といった具合に、血液型占いが人事考課に影響を与える可能性です。こうした行為は、明らかに裁量権を逸脱しており、違法でしょう。

血液型占いをはじめとした非科学的な代物が、現代社会に跋扈(ばっこ)しているのは大きな問題です。また、テレビ局は毎朝のように、「星座占い」をテレビで垂れ流していると聞きます。

ただ、「血液型で人事を決める」などは、明らかな違法行為だとわかりますが、日本は言論が自由な国ですから、国などが「占いそのものを禁止する」などの措置をとることなどできません。しかし、それだからこそ、一人一人の国民が賢くなり、いい加減な占いに騙されないだけの知識を身に着けなければならないのです。少なくとも私自身は一人の社会人ブロガーとして、この手のいい加減な「占い」に惑わされず、しっかりと科学的な根拠に基づいた合理的な言論を担っていきたいと考えています。

新宿会計士: