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台湾が3位に再浮上:日中貿易は日本上位の垂直統合型

財務省税関が29日までに公表した、2025年における『普通貿易統計』のデータを整理していくと、いくつかの事実に気づきます。貿易相手国の3位に台湾が再浮上したこと、資源国が貿易相手国の上位から脱落したこと、あるいは日中貿易は「日本が上位、中国が下位」の垂直統合型となっていること―――などです。日本経済の脱中国は難しい課題ですが、不可能ではありません。ただし、減税などを通じた政府の支援が必要です。

「3位」はどうなっているのか

台湾が3番目の貿易相手国に再浮上!

財務省税関が昨日までに、2025年12月分までの『普通貿易統計』のデータを公表していました。

さっそく、これを入手してデータを整理していて気付いたのですが、日本の貿易相手国は2024年に続き、トップは中国、2位は米国といずれも変わらなかったのですが、第3位に台湾が再浮上し、韓国は4位に転落しました(図表1)。

図表1 相手国別・累計輸出金額(2025年1月~12月)
相手国・地域 金額 構成比
合計 223兆5380億円 100.00%
1位:中国 45兆4733億円 20.34%
2位:米国 33兆3006億円 14.90%
3位:台湾 12兆8979億円 5.77%
4位:韓国 11兆4621億円 5.13%
5位:豪州 9兆0204億円 4.04%
6位:タイ 8兆0277億円 3.59%
7位:ベトナム 7兆3696億円 3.30%
8位:UAE 7兆0247億円 3.14%
9位:香港 6兆6871億円 2.99%
10位:ドイツ 6兆1972億円 2.77%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

これによると2025年を通じた貿易額は223兆5380億円で、最大の貿易相手国は中国(45兆4733億円)であり、これに米国(33兆3006億円)が続き、3番目が12兆8979億円の台湾で、4番手の韓国は11兆4621億円だったことが判明しました。

台湾が日本にとって3番目の貿易相手国となるのは、2021年以来4年ぶりのことです。

かつて「第3位」常連国は韓国だった

ちなみに「第3位」だけピックアップしてみると、2020年ごろまでは、韓国がこの「日本にとっての3番目の貿易相手国」の常連国だったのですが、2021年以降は韓国が「3番手」となったのは2024年のみです。

日本にとっての3番目の貿易相手国の推移
  • 2015年…韓国(8兆5704億円)
  • 2016年…韓国(7兆7425億円)
  • 2017年…韓国(9兆1280億円)
  • 2018年…韓国(9兆3430億円)
  • 2019年…韓国(8兆2709億円)
  • 2020年…韓国(7兆6082億円)
  • 2021年…台湾(9兆6663億円)
  • 2022年…豪州(13兆7951億円)
  • 2023年…豪州(11兆4531億円)
  • 2024年…韓国(11兆7868億円)
  • 2025年…台湾(12兆8979億円)

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

2022年と23年にオーストラリアが3番手に入っているのは、おそらくはロシアのウクライナ侵攻を受けた世界的な資源高の影響もあるのでしょう(当時から日本では原発再稼働が重要な政策課題となっていました)。

資源高は一服:貿易赤字は縮小傾向

ただ、今回、2024年に韓国が、ついで25年に台湾が、再び3位に浮上したということは、日本経済にとっては資源高が一服した、という意味でもあります。

じっさい、資源高の落ち着きとともに、原発再稼働なども少しずつ進み始めているためでしょうか、貿易赤字は少しずつ減少していることが確認できます(図表2)。

図表2 貿易額と収支(合計、暦年基準)

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

品目別分解から見える産業構造

最大の輸出相手国は米国:2位が中国だが…

続いて、貿易高を輸出と輸入に分解しておきましょう。

まずは輸出に関しては、最大の相手国が米国でありこれに中国、台湾、韓国などが続いています(図表3)。

図表3 相手国別・累計輸出金額(2025年1月~12月)
相手国・地域 金額 構成比
合計 110兆4448億円 100.00%
1位:米国 20兆4138億円 18.48%
2位:中国 18兆7781億円 17.00%
3位:台湾 7兆9070億円 7.16%
4位:韓国 6兆9592億円 6.30%
5位:香港 6兆4113億円 5.81%
6位:タイ 4兆2155億円 3.82%
7位:シンガポール 3兆1891億円 2.89%
8位:インド 2兆8627億円 2.59%
9位:ベトナム 2兆8216億円 2.55%
10位:ドイツ 2兆7300億円 2.47%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

米国が最大の相手国というのは、自動車などの輸出が牽引している格好であり、いわゆる「トランプ関税」が日本経済に与える影響が警戒されるゆえんでもあります。

垂直統合モデル

ただ、2番目の相手国である中国、3番目の相手国である台湾、4番目の相手国である韓国などに関しては、基本的には「モノを作るためのモノ」、つまり生産財などの輸出が中心です。

ここでは中国を例に挙げて、輸出の品目別分解を行っておきましょう(図表4、ただし、図表が少し長いので注意して下さい)。

図表4 日本の対中輸出品目(2025年通期、主要品目のみ)
品目 金額 割合
合計 18兆7781億円 100.00%
機械類及び輸送用機器 9兆5410億円 50.81%
うち半導体等製造装置 1兆9108億円 10.18%
うち半導体等電子部品 1兆3236億円 7.05%
うち自動車 8917億円 4.75%
うち電気回路等の機器 6222億円 3.31%
うち電気計測機器 4207億円 2.24%
うち原動機 3826億円 2.04%
うち自動車の部分品 3533億円 1.88%
うち重電機器 3205億円 1.71%
うちポンプ及び遠心分離機 3158億円 1.68%
うち金属加工機械 3051億円 1.62%
うちコンデンサー 2618億円 1.39%
うち事務用機器 2199億円 1.17%
うち映像機器 1973億円 1.05%
化学製品 3兆4774億円 18.52%
うち有機化合物 6083億円 3.24%
うち化粧品 2926億円 1.56%
原料別製品 2兆0218億円 10.77%
うち銅及び同合金 4573億円 2.44%
うち鉄鋼のフラットロール製品 2518億円 1.34%
雑製品 1兆3888億円 7.40%
うち科学光学機器 6598億円 3.51%
うち写真用・映画用材料 2708億円 1.44%
特殊取扱品 1兆2787億円 6.81%
原材料 7199億円 3.83%
鉱物性燃料 2213億円 1.18%
うち石油製品 2164億円 1.15%
食料品及び動物 790億円 0.42%
飲料及びたばこ 480億円 0.26%
動植物性油脂 23億円 0.01%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

いかがでしょうか。

典型的な「垂直統合モデル」、すなわち日本を工程の上流、中国を工程の下流とする、いわば上下型の構造が、この統計からは浮かび上がります。

ここでわかるとおり、日本の対中輸出品のトップは「半導体等製造装置」で、これだけで1兆9108億円、対中輸出額の10.18%を占めており、これに「半導体等電子部品」1兆3236億円(全体の7.05%)が続く格好です。

また、「写真用・映画用材料」が2708億円となにげに大きな額を占めていますが、想像するに、これは半導体素材のひとつとされるフォトレジストがこのカテゴリーに入っているからではないでしょうか。

これに対し、昨年は中国による日本の水産物の輸入制限なども話題になりましたが、「食料品及び動物」の対中輸出は790億円に過ぎません(加工品が工業製品に入っている可能性はありますが、あったとしても微々たるものでしょう)。

いずれにせよ、日本が中国に対する輸出を制限したとして、「モノを作るためのモノ」の輸出が滞れば、経済的打撃(しかも下手をすると致命傷となりかねないレベル)が生じるのは中国の側である、ということが、この統計からは浮かび上がってくるのです。

中国だけで輸入額の4分の1弱を占めるが…

さて、相手国別貿易額の論点に戻りましょう。

一方の輸入側については、今度はトップが中国で、なんと約26.7兆円、日本の輸入総額の約4分の1近くを占めていることがわかります(図表5)。

図表5 相手国別・累計輸出金額(2025年1月~12月)
相手国・地域 金額 構成比
合計 113兆0932億円 100.00%
1位:中国 26兆6952億円 23.60%
2位:米国 12兆8868億円 11.39%
3位:豪州 6兆7837億円 6.00%
4位:台湾 4兆9909億円 4.41%
5位:UAE 4兆9055億円 4.34%
6位:ベトナム 4兆5480億円 4.02%
7位:韓国 4兆5029億円 3.98%
8位:サウジアラビア 3兆9340億円 3.48%
9位:タイ 3兆8122億円 3.37%
10位:ドイツ 3兆4672億円 3.07%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

これが、当ウェブサイトで常々、「日本経済がただちに脱中国を遂げるのは難しい」と報告している理由です。

最終加工品などが輸入の中心

ただし、先ほどの図表4の説明で、日本は中国に対し、「モノを作るためのモノ」を輸出している、という話題が出ましたが、これに対し、輸入品目は逆に、最終消費財が中心であることがわかります(図表6)。

図表6 日本の対中輸入品目(2025年通期、主要品目のみ)
品目 金額 割合
合計 26兆6952億円 100.00%
機械類及び輸送用機器 14兆0890億円 52.78%
うち通信機 3兆3397億円 12.51%
うち事務用機器 2兆8249億円 10.58%
うち音響・映像機器(含部品) 1兆0964億円 4.11%
うち家庭用電気機器 6598億円 2.47%
うち重電機器 6003億円 2.25%
うち自動車の部分品 5891億円 2.21%
うち半導体等電子部品 4741億円 1.78%
うち加熱用・冷却用機器 4478億円 1.68%
うちポンプ及び遠心分離機 3652億円 1.37%
うち電気回路等の機器 3529億円 1.32%
うち絶縁電線及び絶縁ケーブル 3159億円 1.18%
うち電気計測機器 2464億円 0.92%
雑製品 5兆6309億円 21.09%
うちメリヤス編み及びクロセ編み衣類 9908億円 3.71%
うちがん具及び遊戯用具 8192億円 3.07%
うち衣類 6291億円 2.36%
うちプラスチック製品 5414億円 2.03%
うち科学光学機器 4463億円 1.67%
原料別製品 2兆9889億円 11.20%
化学製品 1兆8727億円 7.02%
うち有機化合物 5478億円 2.05%
うち無機化合物 3365億円 1.26%
食料品及び動物 1兆2840億円 4.81%
うち野菜 3968億円 1.49%
特殊取扱品 3228億円 1.21%
鉱物性燃料 2512億円 0.94%
原材料 2365億円 0.89%
飲料及びたばこ 112億円 0.04%
動植物性油脂 81億円 0.03%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データを加工)

トップ品目のうち、「通信機」(3兆3397億円、全体の12.51%)は、おそらくスマートフォンのことでしょう。中華製スマホはもちろんのこと、中国に組み立て工場があるスマートフォンであれば、いちおうは「中国から輸入している」ことになるからです。

また、「事務用機器」(2兆8249億円、全体の10.58%)はPC(ノート、デスクトップなど)であろうと考えられますし、「音響・映像機器(含部品)」(1兆0964億円、全体の4.11%)はテレビやモニター、サイネージなどであろうと考えられます。

さらに「家庭用電気機器」(6598億円、全体の2.47%)はいわゆる家電類であり、大カテゴリーの「雑製品」(5兆6309億円、全体の21.09%)は衣類、玩具、雑貨などの雑製品がその中心である、といった実態が見えてきます。

脱中国には減税による政府支援が必要

これらの製品、私たちの日常生活を支えており、地味に重要ですが、ただ、単純な組み立て加工品などが多いことを踏まえると、「コストさえ負担すれば」、中国に依存する必要がないものばかりである、という言い方もできます。

考えてみれば、『中国脱却は「できるかどうか」ではなく「必要がある」』でも指摘したとおり、日本は国を挙げて中国リスクをコントロールしていかなければならない局面を迎えているわけですから、やはりコスト負担を呑んでも製造拠点の分散(あるいは国内回帰)を断行していくべきでもあります。

サプライチェーン「中国依存」は前提が大きく変わった冷静に考えてみると、サプライチェーンにおける中国依存の重要な前提条件とは、「コストを度外視した物量、価格、納期」という前提で、物資が安定して供給されることにありました。また、これは著者の私見ですが、日本経済を停滞させてきたことと、中国発のデフレ圧力には、密接な関係があります。ただ、中国の対日輸出管理厳格化により、こうした前提条件が崩れたことを、私たち日本国民はしっかりと認識しなければなりません。国産レアアースは切り札にならない?片山さん、あり...
中国脱却は「できるかどうか」ではなく「必要がある」 - 新宿会計士の政治経済評論

政府にはぜひ、働き手を確保するための優遇措置としての減税・税社保軽減、原発再稼働・新増設、あるいはリパトリエーション税制の整備などに取り組んでいただきたいと思いますし、無駄な社会保障支出についても大胆に削減していくことを期待したいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • 日本の貿易相手国として、韓国が3位から4位に落ちたということは、相対的に韓国の経済的重要度(?)が落ちたということではないでしょうか。