共同通信世論調査で若年層の9割超が「給付より減税」

おそらくは財務省あたりが出どころと思われる「減税よりも給付」を否定するかのような世論調査結果が出てきました。「官僚機構が自分たちにとって都合の良い情報をオールドメディアに流し、オールドメディアがそれを報じることで世論を形成する」という従来の手法が通用しなくなっている証拠ではないでしょうか。そして、この仮説が正しいかどうかは2週間後の投票で判明するかもしれません。

人気投票の禁止

連日お伝えしていますが、当ウェブサイトでは現在進行中の参議院議員通常選挙に関連し、個別政党の具体的な得票見込みなどを話題に出すことは控えたいと考えています。

ただ、メディア報道では「どこの政党が何パーセントの票を得る見込みだ」、といった調査が連日のように報じられています。くどいようですが、こうした調査自体は公選法が禁止する「人気投票」に該当する可能性が極めて濃厚です。

公職選挙法第138条の3(人気投票の禁止)

何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

つまり、各社が「序盤の情勢分析」、「中盤の情勢分析」、「終盤の情勢分析」などと称し、各政党の獲得議席予想を公表すること自体が、この公選法第138条の3が禁止している「人気投票」に該当する可能性が非常に高いのです。

しかも、こうした選挙情勢の公表を理由として、メディアが摘発された、といった実例はほとんど存じ上げません。警察、検察、総務省などの官僚組織がマスコミによる選挙違反行為をほとんど取り締まらないことは、この国の腐敗の一端を示しているといえます。

なんだかおかしなコメント

これに関し、『マスコミにSNSをフェイクと批判する資格はあるのか』についたコメントの中に、こんなものがありました。

公職選挙法第138条の3では条文にもある通り、人気投票の経過又は結果を『公表してはならない』と禁止事項が規定してあります。/人気投票そのものは禁止してないので『調査自体は公選法が禁止する人気投票に該当する可能性が濃厚』との主張は誤りです」。

この主張は、明らかな誤謬を含んでいます。

マスメディアは「人気投票に限りなく近いもの」を実施したうえで「公表」しているわけですから、このコメント自体、当ウェブサイトで重ねて指摘している「公選法第138条の3違反」という指摘に対する反論にまったくなっていません。

ちなみにこのコメント主は、こう続けます。

『選挙情勢の公表を理由として、メディアが摘発され』ないことを『この国の腐敗の一端を示している』とも主張されてますが、情勢調査の生データを扱ってはいません。情勢調査で得たデータに各社独自の分析を交えて報道とすることにより、公職選挙法との折り合いをつけてます。/国が腐敗してるから摘発されないとの主張は、ずれていると言わざるをえません」。

…。

「生データを加工したらOK」。

凄い屁理屈です(笑)。

「ズレているといわざるを得ない」のはこのコメント主の側でしょう。

もちろん、当ウェブサイトは公序良俗等に反しない限り、基本的にどんなコメントを入力しても構わないという方針で運営しているわけですし、批判的なコメントであっても鋭い指摘であれば、当ウェブサイトの議論の穴を埋めることにもつながるため、実際には本当にありがたいと思っている次第です。

しかし、ごくまれに当ウェブサイトに書き込まれる、この手の極めて読解力の低い(あるいは文章のごく一部を切り取った)コメントの場合は、正直、議論の穴を指摘しているわけでもなく、ただ単にイチャモンをつけているだけです。

いずれにせよ、複数のコメント主様がこのコメントについていくつかのツッコミを入れていることからもわかるとおり、この手のコメントには、残念ながら当ウェブサイトの読者層に訴えかけるだけの説得力はありません。

いずれにせよ、今後、メディアや官僚業界におけるきちんとした「大掃除」がなされることを強く期待したいと思う次第です。

共同通信調査で30代以下の9割超が「給付より減税」

さて、支離滅裂なコメントの件はこのくらいにして、本題です。

当ウェブサイトではその一方で、人気投票に該当しない話題、あるいは政治活動・選挙活動と直接にかかわらない分野の話題であれば、これからもバシバシと取り上げていこうと思っているのですが、そのひとつがこれかもしれません。

給付か減税か 30代以下の9割超が「消費減税を」 自民支持層さえ6割超 共同世論調査

―――2025/07/06 19:45付 産経ニュースより

産経ニュースの6日付の報道によると、共同通信社が5日から6日にかけて実施した「第2回トレンド調査」で、「(略)現金給付と(略)消費税減税のどちらが望ましいか」を尋ねたところ、「消費税減税」が76.7%、「現金給付」が17.9%だったのだそうです。

これだけでも圧倒的な差をつけていますが、印象的なのはそれだけではありません。若年層になるほど減税が望ましいとする回答の割合が上がり、30代以下ではこれが92.1%に達したというのです(ちなみに「減税」と答えた割合は、40~50代で77.6%、60代以上でも66.2%だったそうです)。

このあたりは、手前味噌で恐縮ですが、なんだか当ウェブサイトで過去に『【総論】腐敗トライアングル崩壊はメディアから始まる』や『【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」』で予言した内容が、ここに来て一気に成就し始めた気がしてなりません。

(おそらくは)財務省あたりが出どころと思われる「減税よりも給付」とする主張を、一部政治家やメディアが必死になって喧伝したものの、世論を動かすことに失敗している格好だといえます。とりわけ若年層ほど、官僚機構の意向に沿わない内容を答えているからです。

大きな構造変化

ちなみに「腐敗トライアングル」ないし「腐敗利権」は、官僚機構、オールドメディア(とくに新聞、テレビ等)、特定野党が結託し、結果的にわが国の足を引っ張っている「構造」を差す当ウェブサイトの造語です。

ここでいう「構造」とは、「官庁が記者クラブを通じてオールドメディアを支配し、オールドメディアが官庁の意向に沿った報道を続け、これにより世論が官庁の思うとおりに動き、与党政治家にも官庁が思う政策を押し付ける」、といった流れです。

ただ、昨年は自民党自身が「党内野党」に乗っ取られ(?)たこともあってか、特定野党の存在感が急低下していますし、これに加えてオールドメディアの社会的影響力が急落していることを踏まえると、従来の「構造」が大きく変化していることに気づかざるを得ません。

おそらく、「官庁が自分たちに都合の良い情報を作ってオールドメディアに流し、これをオールドメディアが繰り返し報道することで世論を形成する」―――といった従来的な手法が通用しなくなっているのです。

これが今回の選挙における大きな特徴といえるかもしれません。

要するに、官僚機構やオールドメディアといった「従来の構造」の枠外であるSNSで世論が形成され、それにより人々がどこに投票するかを決定する時代が到来し始めた可能性があるのです。

いずれにせよ、こうした仮説が正しいかどうかについては、2週間後の投票により明らかになるのではないかと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. CRUSH より:

    そりゃ~退職した年金生活者なら納税してませんから、減税より給付!と言いますわな。

    若い人たちの間では、源泉徴収で取るものバッチリ取られた上で、いろいろと社会勉強するなかで
    「納税せずのうのうと泳いでる人たち」
    についての知見も積み上がってきてるのではないでしょうか。

    とにもかくにも、
    ①103万円の壁に物価スライド適用。
    ②累進税率の区切りにも同上。

    個別アイテムや税制全体の議論は、それらを済ませてからの話ですわ。

    1. トトちん より:

      年金もらっても納税は毎年してます。

    2. はにわファクトリー より:

      >年金もらっても納税は毎年

      年金は所得に勘定されて税は天引きです。

  2. 匿名 より:

    事実だとしたら素晴らしい若者達だ。
    日本の未来は明るい。

  3. はるちゃん より:

    「この世に生まれて社会から便益を得ている者はすべからく相応の負担をしなければならない。」
    英国のサッチャー政権が人頭税の導入を模索しましたが、国民からの評判は最悪で、導入断念という結果になりました。
    現在の消費税は、人頭税という大変印象が悪い税を「消費税」と名前を変えて実施されたものだと私は認識しています。
    ただサッチャーの人頭税は確か18歳以上の人に課税するという税でしたが、現在導入されている消費税は生まれたての赤ん坊や死んだ人の葬式にも課税するという人頭税以上に厳しい取り立てが行われています。
    財務省は社会保障を盾に頑なに減税を拒んでいますが、財務省こそが諸悪の根源であり病巣なのではないでしょうか?
    マスコミや政治家は財務省の使い走りに過ぎないのではないかと思いますが、国民としてはまずは外堀から埋めていく努力が必要ではないか思います。

    1. 匿名 より:

      イギリスにも消費税あるよ。20%だって。

      1. はるちゃん より:

        人頭税導入に失敗して付加価値税と名を変えて導入に至りました。
        英国低迷の原因であると私は認識しています。

        1. 匿名 より:

          イギリスの付加価値税導入は1973、サッチャーの首相就任は1979

          1. はるちゃん より:

            そうでしたか。
            50年以上も続く消費税によって英国の産業と社会は行き詰りつつあるように思えます。

  4. 名前 より:

    >>_官庁が自分たちに都合の良い情報を作ってオールドメディアに流し、これをオールドメディアが繰り返し報道することで世論を形成する

    同意見ですわ!

    1. はにわファクトリー より:

      新聞 TV 操縦法
      ・取材源秘匿ルールを逆手にとり
      ・決して情報提供者を記者は悪く書けないという片務的利益関係を十分に承知したうえで
      ・タイミングよく記事材料を印刷済み文章の形(あるいは口頭オルグ)でくべてやる
      されば、新聞 TV は紙喰い山羊のごとくヨロコビ、情報提供者に都合のいい言説を社会に拡散し続けるであろう。これをして飼いならされた犬とも呼ぶ。

  5. Masuo より:

    この手の分析って、自民党はどのくらい理解しているのだろうか。
    絶望的なくらい、今の自民党は現状認識能力が無いように思う。
    「まーたネトウヨが何か騒いでるわwww」
    くらい、本気で思ってそうで怖い。それか、わかっててやっているなら、選挙に勝つ気が無いという事でしょうね。(議席より税金が大事)

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