都議会選挙で見えた組織票の限界

東京都議選では都民ファーストが第1会派の地位を回復する一方、自民党が過去最低水準の獲得議席数となり、また、国民民主党、参政党がゼロ議席からそれぞれ9議席・3議席を獲得するなど躍進。一方、「全員当選」を至上命題にしていたはずの公明党は3人落選し、公示前勢力を4議席減らしたほか、日本共産党も5議席減らしています。また、国政の最大野党であるはずの立憲民主党は4議席増やしたものの、あれだけ自民に逆風が吹いていてもたった4議席しか増えなかった、という言い方もできるかもしれません。

東京都議選・会派別議席数

昨日は東京都内で都議選が行われました。

報道等をもとに、各会派の公示前勢力と獲得議席数をまとめておくと、こんな具合です(図表1)。

図表1 2025年6月22日東京都議会選・各会派議席状況
 公示前⇒当選者増減
都民25⇒31+6
自民24⇒21▲3
公明23⇒19▲4
立民13⇒17+4
共産19⇒14▲5
国民0⇒9+9
参政0⇒3+3
東ネ1⇒1±0
維新1⇒0▲1
無所属17⇒12▲5
合計123⇒127+4

(【出所】東京都議会ウェブサイトおよび報道等を参考に作成)

自民は候補者を絞った

この点、自民党は「大敗を喫した」、などと報じられていますが、第1党から第2党に転落したとはいえ、依然、20議席を超えています。

ただし、自民党は政治資金収支報告書不記載などの問題で公示前勢力30人のうち6人が非公認となった(うち3人が当選、3人が落選)影響を考慮に入れれば、公示前の30人が24人へと6議席減った、という言い方もできそうです。

また、東京都選管データによると、自民党は前回(2021年)に59人を擁立(うち32人当選)していましたが、報道等によると今回の擁立候補者数は42人と前回から17人減らした格好であり、実際、いくつかの選挙区では、自民党が候補者を絞った結果、自民候補がトップ当選したりしています(例:新宿区)。

そして、「自民党公認候補がトップ当選した」わりに、前回都議選と比べて自民党系候補が獲得した総票数が減っている、といったケースもあるのですが、これは「見た目は前回よりも得票を増やしたものの、実態は自民党のジリ貧」、という状況を示唆しているのかもしれません。

このあたり、今回の選挙結果に関する詳細なデータが東京都選管から現時点でまだ公表されていないのですが、公表され次第、党派別の得票数などと比べてみても面白いのではないか、などと思っている次第です。

公明、共産の退潮と国民民主の躍進

ただ、それ以上に興味深いのが、自民党以外の会派です。

小池百合子都知事体制の実質的な「与党」とされる都民ファーストが31議席を獲得して最大会派に返り咲いたこともさることながら、「立候補者全員当選」を至上命題としていた公明党が前回よりも候補を1人減らしたにも関わらず、3議席を落としたことは印象的です。

うち1議席は公明党本部がある新宿区、2議席は創価学会の成長に大きくかかわった故・池田大作氏の出身地でもあるため、ネット上などでは「公明党の退潮の象徴」といった指摘も散見されます。

また、公示前勢力が19議席だった日本共産党は5議席減らして14議席となりましたし、国政の最大野党である立憲民主党は公示前勢力の13議席を17議席へと増やしたものの、あれだけ自民に逆風が吹いているにもかかわらず4議席しか増やせなかったという点は印象的です。

(※なお、立憲民主党の場合、そもそも候補を20人しか立てていなかったのですが…。)

いずれにせよ、これらは投票率がほんの少し変動するだけで、組織票には強くマイナスに働くということを示唆しているのかもしれません。

その一方で、東京維新の会は1議席を失い、れいわ新選組も議席獲得に失敗しましたが、国民民主党が一気に9議席、参政党も3議席を獲得するなど、各政党は悲喜こもごも、といったところでしょう。

とりわけ国民民主党に関しては、国政で反ワクチン活動家などを擁立し、保守層から強い反発を受けていたにもかかわらず、擁立した11人のうち9人が当選するという快挙を成し遂げた格好です。

自民党が国政で「減税潰し」、「2万円給付」(あるいは「鈴木宗男氏擁立」?)などにより、日本維新の会も同様に「減税潰し」でそれぞれ失速が懸念されるなか、国民民主党の「反ワクチン活動家擁立」効果も霞んでいる格好といえるかもしれません。

前回の詳細データ

なお、くどいようですが、今回の都議選については、現時点で東京都選管から選挙の詳細データが公表されていないため、本稿ではとりあえず、これ以上の踏み込んだ論評は控えておきたいと思います。

ただ、東京都選管からデータが公表され次第、政党別の総得票数などについて前回(図表2)と比較し、てみても良い、などと個人的に考えている次第です。

図表2 【参考】2021年東京都議会選の政党別得票状況
政党得票数当選者数候補者数
自由民主党1,192,7973259
都民ファーストの会1,034,7783147
公明党630,8102323
日本共産党630,1591831
立憲民主党573,0871327
合計388,79622
無所属235,889430
日本維新の会165,851113
東京・生活者ネットワーク61,07113
その他119,21636
合計5,032,453125271

(【出所】東京都選挙管理委員会『都議会議員選挙(令和3年7月4日執行) 投開票結果』データをもとに作成。なお、当選者数が125人と定数(127人)に2人足りない理由は、2021年都議選では小金井市で無投票当選者が2名いたため。実際の当選者数は自民が33人、立憲民主党が14人)

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. Sky より:

    今回の選挙結果。自分の所感は以下。
    投票日当日の出口調査と投票結果の乖離がある。
    多くの組織票有権者は期日前投票をしている事を示唆している。
    具体的には公明党や共産党。立憲民主党も。
    予め票が読める政党と言える。
    今回はR4氏のような好敵手?が居なかったのが原因なのか、石丸新党への投票は少なかった。
    イシバ自民党にはもうウンザリだ。
    オリンピックでの公費散財は過去の話しでもう忘れちゃった。
    で、消極的選択で都民ファーストが選ばれた。
    菅直人を生んだ多摩東部はやっぱり立憲民主党や共産党といった左派の牙城。団塊世代の「ベッドタウン」だからねぇ。

    私的には依然として組織票を持つ政党は強い。やっぱり。う〜む。
    という感じでした。。。

  2. 匿名 より:

    今朝の日経FTでの都議選の分析:

    都民は候補者のことをあまり知らず、政党で選ぶ傾向がある。したがって都議選の結果は国政選挙の比例区にそのまま当てはまる。国政に都民ファーストはないが自民にいくのではないか。

  3. Masuo より:

    ラジオ聞いてて驚いた。
    自民党惨敗の原因を「政治と金」が原因(の一つ)だと言っていた。
    どんだけ引っ張るんだ、と思わず苦笑・・・

    石破陣営の分析も概ねそんなところだと思う。
    彼らは異次元の世界にいるのかもしれない。

    1. Masuo より:

      > 自民党惨敗の原因を「政治と金」

      これ言ったの、自民党の幹部だってね。
      やっぱり、この程度の分析しかできないのが今の自民党。
      参議院選が楽しみです。

  4. 元雑用係 より:

    まだ情報が少ないようですね。
    待ちの間の読み物(になるか)、菅原琢氏の選挙前のレポートです。
    各社都議選の情勢報道がなされていたものの、世論調査の数値を経験値から票読みに変換していない生の数値を報じていたため、アテにならないと述べていました。

    菅原琢:東京都議選の情勢報道(結果予測)はいかに杜撰なのか
    https://sugawarataku.theletter.jp/posts/32bdb8a0-4d37-11f0-9764-4faba78c0aa3

    選挙結果は情勢報道とはかなりかけ離れていましたね。
    こちらも分析はこれからということのようですが、都民ファーストに集まった票が参院選でどこに向かうかは「データが無いのでわからない」と述べていましたね。
    各陣営必死になる要素となりそうです。

    都民ファは本来の自民支持層だけでなく「東京」とか小池で投票した層が多いととりあえず想定するけど、これが参院選でどうなるかはデータがないのでわからない。自民党忌避から来ている票は国民に行ったりするのかどうか。— 菅原 琢 ニュースレター配信開始! (@sugawarataku) June 23, 2025

  5. DEEPBLUE より:

    国民民主党惨敗という票読みが外れて一定議席を獲得しましたし、参院選でも一定の石破自民忌避票が国民民主党に流れると予想しています。

  6. masa より:

    参政党は4人しか擁立してなかったのをどう見るか?
    参院選では台風の目になるかもしれない

  7. カズ より:

    石破執行部体制の問題点を考えてみた。
    何が問題なのかが解かっていないこと。

    1. nanashi より:

      東京都議会議員選挙敗北の原因を「政治とカネ」だと分析をしている時点で、「何が問題なのか」を理解していないと思います。
      政権成立から兎にも角にも「安倍なるもの」を否定して、改革から逆行する官僚主体の政策や、売国や壞国に向かうような政策に手を出そうとして有権者から大顰蹙を買った結果なのですから、本来なら自ら腹を切る事、即ち自由民主党総裁と内閣総理大臣の辞任をするくらいしないといけないのです。

    2. 裏縦貫線 より:

      わっかるかなぁ〜、わっかんねぇだろうなぁ〜

  8. CRUSH より:

       票数 票率 候補 当選 前差 知事選
    自民 88万 17% 45人 21人 ▲3
    立憲 47万 09% 20人 17人 +4 140万
    維新 08万 02% 06人 00人 ▲1
    国民 36万 07% 11人 09人 +9
    公明 52万 10% 22人 19人 ▲4
    共産 49万 09% 24人 14人 ▲5
    参政 11万 02% 04人 03人 +3
    都民 103万 20% 37人 31人 +6 290万
    再生 40万 08% 42人 00人 ー 160万

    勝った!負けた!と外野席の野次馬たちは大騒ぎですが、
    まずは客観的な事実をおさえた上で、考察分析し批評しましょう。

    1. CRUSH より:

      試しに、前々回に予想全滅だった主要メディアの中でも他より
      「当たってた」
      という事後評価のあった朝日新聞社の予想は、コレ。

      https://www.asahi.com/articles/AST6M3DF8T6MUZPS001M.html

      相対的に当たって、こんなもんなの?
      (全然ハズレてるじゃん)
      他社はどうなのかな。
      「再生の道の支持率は2%」という見出しは数多く見かけましたが。

    2. Sky より:

      ありがとうございます。
      東京都に関しては投票行動がとれるだけの身体能力のある共産党立憲民主党支持者は合わせて100万人いると。100万人が岩盤左派。有権者数の10%程度か。ほぼ全数が高齢者と推察するが、全高齢者数を300万人と仮定すると左派率は1/3にもなる。これがTV新聞を長年見続けた効果なのだろう。
      公明党も合わせると150万人。これらが岩盤層。
      有権者数を明るく1000万人とすると、得票率が低調で30%とかだと岩盤層シェアが50%にもなってしまう。今回はそこそこ投票率が高かったので3つ合わせて30%弱で済んだ。
      参院選はわざわざ連休中日を投票日に設定した。
      岩盤層はいつものように期日前投票をキッチリ済ませるだろう。
      浮遊層はそもそも期日前投票は仕事で地元に居ないので出来ない人が多いだろうし、連休中日は面倒でサボる人も多かろう。
      ということで、保守有権者層にとっては嬉しくない選挙になる予感。。。

  9. のぶくん より:

    7月20日の3連休の中の日に投票日を決めたのはやはり投票率を下げたいから
    ですので、投票率を上げる為に、もしかすると石破さんが継続するかもしれないと世の中に広める事が1番大事です
    事前調査では自民党に入れますと言いましょう
    後は2万配って票を入れてもらえると国民をバカにしているという事は回りで共有しましょう
    意外と小泉進次郎がお米を安くしたと応援する主婦などが多い感じです
    それはその前の自民党の大臣が色々忖度して政策をなかなか進めなかった方が問題だと言いましょう

    1. はにわファクトリー より:

      レジ袋からコメ袋へ。劇場型小泉パフォーマンスは繰り返される。
      「進次郎米」は当方の住んでいるあたりではまだ出回っていません。

      価格を明記して備蓄米予告の張り紙を出したドラッグストアがありました。最寄りの中規模スーパーにも予告(価格不明)は出ていました。実物は目にできていません。入荷は結局まだなのか、あったが一瞬で売り切れて次の店頭販売時期は見通せない状況だと判断しています。
      減税要求ぶち壊し、ばら撒き2万円給付決定、ガソリン暫定税率廃止決議は議論もせずに封殺。こんな目めくらましが通用するとでも思っているのでしょうか。自民公明、立民、維新は有権者にまるごと憎まれている。社会の声をポピュリズムと嘲り続ける政党党首と国会議員に最大の呪いあれ。

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