「小泉氏地元の市長選で自民系候補敗北」をどう見るか
小泉進次郎農相の地元である神奈川県11区を構成する自治体のひとつ・三浦市で、5期20年務めた現職市長が敗北しました。これについて、一部では「自民党・石破茂体制への不満の表れだ」、といった主張もみられるのですが、ただ、事実関係をよく調べてみると、事態はそこまで単純なものではありません。その一方、投開票が来月に迫った今夏の参院選は、私たち有権者が意思表示できる貴重な機会でもあります。
ちょっと気になる話題…三浦市で現職市長が敗北
当ウェブサイトは「政治経済評論」を標榜しつつも、地方選について、あまり積極的に取り上げてきていませんでした(例外といえば、例の昨年の東京都知事選や兵庫県知事選くらいなものでしょうか)。
その理由は簡単で、地方選はどちらかといえば地域特性が強く、局地的な側面が強く、一般に地方選の結果だけをもって、「現在の日本では、こういう現象が進行している!」、などと決めつけるのが難しいからです。
昨年の兵庫県知事選を当ウェブサイトで取り上げた理由も、「SNSが選挙結果に大きな影響を与えている」、という観点から当ウェブサイトにて取り上げる価値が高いと判断したからであり、そのような事情がなければ、普段は地方選の話題もスルーすることが多いです。
ところが、少しだけ気になる話題が出てきました。
小泉農相地盤で自公系市長が敗北 20年ぶり交代、神奈川・三浦市
―――2025/06/15 22:52付 共同通信より
共同通信を始め、いくつかの報道等によると、任期満了に伴い神奈川県三浦市で実施された市長選で、43歳の無所属新人の出口嘉一氏が自民が推薦する現職の吉田英男氏を破り初当選したのだそうです。
選挙自体が8年ぶりだった
三浦市長選の結果(敬称略)
- 出口 嘉一 7,782(当)
- 吉田 英男 6,562
- 秋葉 俊二 **768
(【出所】報道等)
当選した出口氏は政治団体『新しい三浦市政を考える会』の代表で、▼多選(5期20年)による組織の硬直化、▼不十分な情報公開、▼将来への対策が見えないこと―――などを訴えた格好です。
これも自民党に対する逆風の証拠でしょうか。
とりわけ共同通信の記事によると、「三浦市を含む衆院神奈川11区は自民党の小泉進次郎農相の地盤」とあり、小泉進次郎氏に対する批判票が吉田市政を終わらせた、とする印象を持つ人もいるかもしれません。
もっとも、気になって三浦市の過去の市長選について調べてみたのですが、事態はそこまで単純でもないようです。
じつは、三浦市では吉田氏が初当選した2005年の市長選を別とすれば、市長選が実施されたのは今から8年前の2017年の1回分のみで、それ以外の2009年、13年、21年の3回については無投票で再選されていたのです。
また、2017年6月18日に実施された市長選挙では当選していますが、対立候補である飯田俊行氏も6,000票を超える票を得ており、「圧勝」という状況にはありません。
2017年6月18日の三浦市長選の結果(敬称略)
- 𠮷田 英男 8,571(当)
- 飯田 俊行 6,262
(【出所】三浦市ウェブサイト)
これを「自民への批判」と見るにはやや早計
三浦市自体が衆院の選挙区でいうところの小泉進次郎氏の「地盤」である神奈川11区に含まれているため、「最近の自民党政権の体たらく」と結び付けて「自民党政権の終焉だ」と叫びやすい状況にあることはたしかですが、やはり三浦市の事例も個別性が強すぎるのかもしれません。
もちろん、小泉進次郎氏の「農相としての実績(?)」であるコメ価格引き下げなどを巡っても、三浦市の有権者には響かなかっただけでなく、石破茂政権が打ち出した「1人2~4万円のバラマキ給付」に対する批判票が、三浦市長選にも影響を与えた、といったストーリーは、説明としてはわかりやすいものです。
しかし、今回の市長選は「2万円給付」が発表される前である6月9日に告示され、1週間ほど期日前投票も受け付けられていたわけですから、「三浦市の有権者が石破政権のバラマキを嫌気して現職にNOを突き付けた」、といった主張も、やや決めつけが過ぎるのではないでしょうか。
都議選の世論調査、人気投票では?
さて、その一方で、当ウェブサイトの選挙をめぐるポリシーについてもお伝えしておきます。
当ウェブサイトでは、基本的に公示された選挙については、投票時間が締め切られるまでの間、できる限り、話題として取り上げることはしません。昨年の東京都知事選挙でも、一部陣営による選挙違反(疑惑)について積極的に取り上げましたが、個別候補者の当落についてはできるだけ話題に出さなかったつもりです。
その意味で、先週金曜日に公示された東京都議選についても同様に、当ウェブサイトでは「どこの陣営が有利/不利だ」といった論評や、「有権者はXX党に投票すべきだ/XX党に投票すべきではない」などとする投票の呼びかけは控えたいと思っています。
ところが、その東京都議選をめぐって、とある大手新聞が世論調査を実施したようです。
該当する新聞記事のリンクはあえて掲載しませんが、これについては公選法第138条の3にいう「人気投票」には当たらないのでしょうか?
公職選挙法第138条の3(人気投票の禁止)
何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。
これについて、一部では「新聞社等が行う世論調査であって、投票の方法によらず調査員が面接調査するもの等は、ここにいう人気投票には当たらない」とする解釈もあるようです(たとえば鳥取県選挙管理委員会『選挙に関する人気投票は?』等参照)が、少なくともウェブ主自身はこの見解に同意しません。
公選法が人気投票を禁止している理由は、選挙の公正性を歪める可能性があるからだと思われ(私見)、その効果は、人気投票を実施・公表する主体が個人であろうが新聞社であろうが、まったく同一であるはずです。
もちろん、このインターネットの時代に人気投票を禁止しても法規制として意味があるのか、という問題はありますし、著者自身も将来的にはこの規定は削除すべきだと考えている人間のひとりではあります。
しかし、少なくとも現在の法規制上は人気投票の実施と公表が禁止されているわけですから、新聞社だけが特権的に公選法の規制を免除されているという状況は、きわめて不公正だと思います。
選挙では必ず投票を!
もっとも、こうした点に疑問はあるのですが、ひとつだけ間違いないことを申し上げるならば、私たち有権者は選挙で必ず投票しなければならない、ということです。
私たちが暮らすこの現代日本は、自由・民主主義社会です。
自由主義ということは、この国をより良くするための情報発信をしても良い、ということであり、民主主義ということは、最高権力者を票の力ですげ替えることができる、ということです。
これが普段から当ウェブサイトにて力説する「言論と選挙で日本を良くする」の本筋です。
インターネットの発達のおかげでしょうか、この国の言論空間を歪めてきた張本人であるオールドメディアは日に日にその社会的影響力を低下させていますし、こうしたなかでより多くの人が投票に行くようになれば、まともな主張を掲げる政治家や政党が必ず出現します。
民主主義社会では、それこそ庭の池の水をバケツで少しずつ入れ替えるかのごとく、少しずつしか世の中を良くしていくことができませんが、それでもいちど変わり始めたら、案外、あっという間に世の中は良くなるのではないでしょうか。
今夏の参院選についても公示日を迎えたら当ウェブサイトでの論評はできなくなりますが、今のうちに申し上げておきます。
「選挙には必ず行き、ご自身の判断において、最適と思われる候補者と政党に投票してください」、と。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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民主主義自体私は非効率で利権の温床と思う者ですが、それは別として中国や北朝鮮の様な独裁国家にとって敵対国が民主制である事は世論操作の効果が大きく、ネット上には基本的な文法の誤りや義務教育で習う内容を知らない者が多数おかしな書き込みをしています。敢えて工作員(コイツら奈良府とか発言します)と呼びますが、我が国にスパイ防止法がない事に付け込んで好き放題嘘を流しています。腹が立つ事この上無いのですが、情け無い事に現日本政治家にはまさにスパイになり下がった輩が多く、一向にスパイ防止法が制定されません。そんな異常な国は日本だけです。この国の政治は自浄作用が無いのでしょうか?欠かさず選挙には行きました。でも安倍さん暗殺以降、選挙は無く、日本は悪くなるばかりです。次の選挙までに宏池会の様な売国奴が何か破壊的な売国行為をやりそうで不安でなりません。
>民主主義自体私は非効率で利権の温床と思う
>中国や北朝鮮の様な独裁国家にとって敵対国が民主制である事は世論操作の効果が大きく
これ本当にそう思います。全世界が民主主義ならなりたつのでしょうが、一部の独裁国家にとって世界のルールが都合よすぎる。
それだけにFOIPには期待していたのですが、石破ですからね、骨抜きでしょう(あわてて選挙前の保守仕草にはいそしんでいますがねw)
おや、ちょうど今朝はこのニュースに注目していたところでした。
ポイントは三つかな。
①日産の追浜工場撤退など、このままではイカン!という危機感に揺れてる横須賀の隣が三浦。
②小泉進次郎が大人気!というメディアの報道は実態が無いのかもしれない可能性。
③国政と地方自治とは違う!
と石丸伸二が都議選の応援演説で語っていますが、そういう視点が浸透してきた可能性。
国政政党の代理戦争という報道や選挙活動は、住民からすれば完全にピントが外れてる。
潮溜まりが干上がっていよいよ全員が死ぬぞ、となってからようやく保守のポンコツが淘汰された、みたいな?
何期もやってる高齢者のクビ長は、僕には逆走に気付いてない高齢者運転手みたいに見えますね。
一人で運転してるならまだしも、バスの運転手なんだから、とにかく交代させないと乗客全員が道連れだ。
昼のニュースで芦屋市長のコメントとして「給付金の事務負担がたいへんだ」というのが取り上げられてたね。
平常業務の上に給付金業務やるのは無理だろうからBPO雇うんだろうね。
住民票にアクセスするからパート、アルバイトというわけにはいかないだろう。
地元だと頭の程度がバレている可能性。期待できない。
パンピー「“新聞社”ったって私企業ですよね?」
新聞社「我々は社会のボクタクですから」
パンピー「でも営利企業ですよね?」
新聞社「いやいや消費税も軽減税率が適用される社会のコウキですから」
…東京都民なら刑事告発してみてもエエんちゃうかナ??
知らんけど
平成29年の市長選挙に比べて投票率が5.1ポイント高くなってますね。
現職候補は△23.4%の△2,009票と票数を大きく減らしています。
SNSで政治が国民に丸見えとなった今、自民党への怒りと不信が有権者の投票行動につながったのかもしれません。
みんな、投票に行こう。
小泉ネタで。
・「次の首相」小泉進次郎氏がトップに 備蓄米効果? 高市氏を逆転
https://www.sankei.com/article/20250616-7YFXVKTJMZLR3G34JWT4FWKYQI/
次の首相に誰が一番ふさわしいかを尋ねたところ、小泉進次郎農林水産相が20・7%で最も高く、高市早苗前経済安全保障担当相が16・4%で続いた。
予想通り、「首相にしたい」石破が首相になったので、次の「首相にしたい」は小泉になりましたね。マスコミのプロパガンダ恐るべしです。
こういうのって、どのくらいの人が信用するんだろう。アイドルの人気投票じゃあるまいし。ホントバカバカしいと思う。