新税導入で4億超のコスト投じる自治体の「本末転倒」
減税が良いか、補助金が良いか―――。これについては理論的には両者は等価である、とする考え方もあるのですが、それでも著者自身はやはり補助金ではなく減税を支持します。そもそも国民から選挙で選ばれた存在ではない官僚に権限を持たせて良いのか、という議論にも直結するからです。こうしたなか、「宮城県で宿泊税を導入するために4億円を超える新たな費用が必要になるらしい」、という話を目にしましたが、なんとも強烈です。
目次
「減税より補助金」という支離滅裂系のコメント
以前、当ウェブサイトに匿名のコメント主からこんな趣旨のコメントが投稿されたことがあります。
現在の日本はコストプッシュインフレ状態にあり、こんな状況で減税をしたらますますインフレが加速する
政府がやるべきは減税ではなく補助金を使って供給側のコストを下げることだ
本気で物価高に対して減税をやれと言っているのであれば今すぐ金融評論家という浅はかな名乗りはやめていただきたい
…。
なかなかに、良い感じで支離滅裂です。
世の中には文章が読めない人がいると見るべきなのか、あるいはどこかの省庁の官僚あたりが使い古された論法で官庁のプロパガンダを広めようとしているのかは知りませんが、この手の頭の悪いコメントを見ていると、世の中がインターネット化して良かったとつくづく思います。
ブラケット・クリープ対策
「現在の日本は減税を必要としている」、「現在の資金循環構造に照らし、日本は減税が可能である」、とする点については、以前から当ウェブサイトにてしばしば指摘してきた通りですが、「インフレを抑制するために減税をせよ」と主張したことはないつもりです。その時点で、このコメント主のコメントは誤読の塊でしょう。
減税だろうが補助金だろうが経済的に見たらインフレに対する影響は中立であるツッコミどころもさることながら、この者が完全に無視している論点として、「日本が減税を必要としている」理由のひとつは、ブラケット・クリープ(俗にいう「インフレ増税」)対策にある、というものがあります(もちろん、それだけではありませんが)。
インフレ期には世の中のモノの値段が上がるだけでなく、労働者の賃金水準も押し上げられますが、ただ、労働者の賃金が上がっても世の中のモノの値段も同時に上がるため、労働者が豊かな暮らしを送れるわけではありません。
このとき、累進課税の税率をそのまま放置しておくと、適用される税率・負担率だけが上がってしまい、結果的にインフレが生じる前と比べて、人々の生活が苦しくなります。だからこそ、こうしたブラケット・クリープ対策として基礎控除の引き上げや累進税率の適正化が必要なのです。
減税と補助金は経済的に見て同じ?
ただ、同じ1兆円規模の経済対策を行うにしても、減税が良いのか、それとも補助金が良いのかについては、いくつかの学説があることは事実でしょう。
じつは、マクロ経済学の理論に基づけば、減税も補助金も経済学的に全体で見たら同じだ、といった考え方があります。
GDP(Y)は消費(C)、投資(I)、政府支出(G)の合計額だったとし(つまり輸出入を考えない)、限界消費性向(MPC)が仮に0.6だったとして、減税(ΔT)、補助金(ΔG)の経済波及効果を求めると、どちらも同じ値が出てきます。
MPCが0.6だったときの減税(ΔT)の経済効果
- Y1=C1+I+G
- Y2=C2+I+G+ΔT
- ΔY=ΔC+ΔT
- ΔC=0.6ΔY
∴ΔY=2.5ΔT
MPCが0.6だったときの補助金(ΔG)の経済効果
- Y1=C1+I+G
- Y3=C3+I+G+ΔG
- ΔY=ΔC+ΔG
- ΔC=0.6ΔY
∴ΔY=2.5ΔG
MPCが同じなら、ΔTであれΔGであれ、経済波及効果はどちらも2.5倍です。減税1兆円であろうが、補助金1兆円であろうが、2.5兆円分のGDP押し上げ効果が生じます(※ただし、減税の方が補助金より効率的だという点について説明する理論はきちんと存在するのですが、本稿では割愛します)。
なぜ官僚は補助金を好むのか~ふるさと融資の事例~
しかし、それと同時に我々が知っておかねばならないのは、官僚機構は減税よりも補助金を好む、という傾向です。そして、これにもやはり、きちんとした理由があります。
そのひとつが、自分たちの「裁量権」の確保にあります。
わかりやすい事例でいえば、総務省の外郭団体である「一般財団法人地域総合整備財団」という組織があります。「ふるさと財団」の名称で知られていますが、この組織は「ふるさと融資」なる制度の運用を担っており、その「ふるさと融資」からは何らかの乱脈融資がなされている可能性があります。
これについては以前の『ふるさと融資から垣間見える新聞業界と官僚の癒着構造』などでも指摘したとおり、どうやらこの融資の仕組みが一部の新聞社に対する低利融資の枠組みとして使用されているフシがあります。本来ならば支払うべき借入金利息が、地方交付税などから捻出されているのです。
どうりで新聞社が官僚を批判しないわけです。
ただ、これも考えようによってはおかしな話で、印刷設備の更新も含め、本来ならば新聞社が負担すべき金利を、我々国民が納めた税金で肩代わりしているわけですので、経済的に見たら採算性のない事業を税金で温存しているようなものです。
Fラン大学を温存する理由は?マスコミが批判しない理由は?
もうひとつ事例を挙げておきます。
『Fラン大-留学ビザ-不法滞在…一本の線でつながる?』なども含め、当ウェブサイトではこれまでしばしば取り上げてきたのが私学利権ですが、これは「Fラン大学」と俗称される教育レベルの低い大学が、官僚やオールドメディア関係者の教授としての天下り先になっている、という問題です。
そもそも日本の私立大学は「私学振興助成法」によって教育経費の最大半額が国費等により補助される、という仕組みがあるのですが、この「教育経費の半額補助」を目当てに、「Fラン大」などと呼ばれる大学などが留学生なども使いながら学生数をなんとか維持している、という構図が見えてきます。
新聞やテレビなどのオールドメディアがFラン大学や文部科学省を滅多なことで批判しない理由も、もしかしたら自分たちの天下り先のひとつがこれらの大学だからだ、といった事情でもあるのかもしれません。
そして、大学の許認可権を通じて、文科省は他省庁の官僚らにも天下り先を提供しているようなものでしょう。
こうした腐敗利権の構造は、日本中のそこここにあります。
批判されるべきは自民党というよりも、むしろ官僚とオールドメディアの腐敗と癒着ではないでしょうか?
宮城県で新税導入…なぜか4億超の予算が!
こうしたなかで、本稿でもうひとつ取り上げておきたいのが、とある新税導入にかかる費用です。
宮城県が今年2月に作成した『令和7年度当初予算主要事業概要』と題したPDFファイルの15ページ目と132ページ目に掲載されている『主要事業概要』のなかの『宿泊税導入推進事業』というページがそれです(図表)。
図表 宮城県・令和7年度当初予算『宿泊税導入推進事業』
(【出所】宮城県ウェブサイト『令和7年度当初予算主要事業概要』P15またはP132)
これによると当初予算額は4億3270万円で、その導入目的は次の通りです。
「令和7年度内に課税開始を予定している宿泊税の導入にあたり、制度の円滑な導入・運用のための宿泊事業者の事務負担の軽減や周知・広報等を行うもの」。
具体的には次のような項目が含まれるようです。
- 申告書や申請書の印刷、説明会開催費用(1420万円)
- 宿泊税を徴収する業者への事務経費の一部補填(850万円)
- 政令市である仙台市内の業者への事業経費補填(660万円)
- AIチャットボット導入費用(1100万円)
- 刊行戦略課の周知・広報費用(2417万円)
- 宿泊税レジシステム整備費補助金(2億6293万円)
- カスタマーセンター設置事業(4590万円)
…。
減税のときの批判は増税のときにはしないという不思議
なかなかに、驚きます。
新税導入のために3億円もかけてレジシステムを整備しなければならないというのも強烈です。
そういえば、減税反対派がよく使うロジックの中に、「減税したら税率変更などで事業者に設備負担を強いることになる」、といったものがありますが、本来、こうした批判は増税するときにも同じように出てくるべき筋合いのものではないでしょうか?
それなのに、どうして減税するとき「だけ」、「システム投資が~」、といった批判が出てくるのかについては、やはり理解に苦しむところがあります。
じうれにせよ、当ウェブサイトとしては、基本的には税も社保も下げるべきだと考えているのですが、これは人々の可処分所得を増やして経済を活性化させるというだけでなく、肥大化する官僚機構から権限を取り上げるという意味でも有効な政策だと考えています。
そもそも官僚などの役人は、私たち日本国民から直接選挙された者たちではありません。
それなのに、たとえば財務省は国のサイフの入口(国税庁)、出口(主計局)、財源(外貨準備、財政投融資など)を抱え込み、並みの国会議員を遥かに上回る権力を有していますし、自民党の宮沢洋一税調会長を筆頭に、頭の悪い政治家を支配・コントロールしています。
(※もっとも、「宮沢洋一氏は頭が悪い」、は、少し語弊があるかもしれません。「頭が悪い」という意味では、「本体」である財務官僚も、じつは似たり寄ったりだからです。その意味では宮沢洋一氏「だけ」が「頭が悪い」かのように見える文章は、やや不適切でもありますので、あらかじめおわび申し上げます。)
こうした状況を踏まえると、やはり「社会保険料を下げるか、消費税を下げるか」、といった議論ではなく、「そもそも税金と社会保険料を下げること」が何よりも大事だという点については、改めて指摘しておく必要があると思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
素朴なことを言ってお叱りを受けるかもしれませんが。
お金を配るにはその配るためのお金が必要ですが、減税はお金って不要ですよね。予算を組む時も「減税費用」って出費項目はありませんよね。
財源を論点にするなら、この時点で減税の方が優れているように思えます。
>基本的には税も社保も下げるべきだと考えているのですが、これは人々の可処分所得を増やして経済を活性化させる
経済学で「合理的期待形成仮説」というのがあるが、今は仮説ではなく学説の主流になっているようだ。この説は要するに減税をしたって、社保を下げても政府は借金まみれ、いずれ増税するのは「お見通し」、貯金しておこうということだろう。
一人10万円のコロナ給付金、総額12.7兆円の事業だが、ある研究によると消費に回ったのは22%だそうだ。えっ、たった22%と考えるか、えっ、22%もと考えるか。
知り合いもそうだったと話していましたが、税金納付したら即座にちゃらになりました。で、そのときだけ減らずに済んだ預金は大切にしておきました。
コロナ給付金のときは銀行業界が手数料で大儲けをした。振込トラブルのやり直しで追加の手数料支払いが続出、自治体からは高過ぎる振込手数料に怨嗟の声が上がっていました。記事にもなっていました。懲りた自治体は次回給付発生時のための送金指定口座情報を住民から集めようと対策を打っている。
つまりあなたは減税反対ということですかね?
デフレ期とインフレ期では人々の行動は変わると思う。インフレ期には、お金の価値は時間とともに目減りしていく。つまり使わないと損する。
「新商品が出ても、待っていれば安くなる」 が成り立ったのは、デフレだったのが大きい。インフレ期の今、そんな商品がどれだけあるか。
話は簡単で、基礎控除額を上げろと言っているだけなのに。
減税ヒステリーが与党自民党だけでなく野党からも続々と湧いて出て来る。これは面妖な事態だと考えます。パンドラの箱を開けた効果があった。これから「そもそも論の空中戦」「あたりまえ戦術のぶち壊し」の大波乱が国政選挙だけでなく、地方選挙にも波及して行きそうです。
減税か補助金か
「自由主義経済か統制経済か」ぐらいの差はあるのでは?
一次的には、消費に回る額は同じと仮定して、経済効果は同じといえる。しかし、次の経済成長につながる消費となるかどうかは別ではないか?。
補助金は、受給する人にとって、上から降ってきた所詮「あぶく銭」。
減税は、所得がある人の自分で稼いだ「手取り」。
これは、実際に消費するときの様相、すなわち、消費する人の層と消費する意識の差は次の(2次的)経済成長にとって意外と大きいのでは?
103万円で働くのやめる人というのは;
103万円を超えて働いて税金取られるのイヤだ。
扶養控除が減って(なくなって)旦那の税金が増えるのはイヤだ。
旦那の会社の配偶者手当の条件を満たさなくなり手当がなくなるのはイヤだ。
それ以上働いて健康保険料が発生したら、旦那の保険でカバーされてたのにプラスで保険料はらうなんて損だ。
さらに働いて厚生年金保険料が発生するなんて、微々たる年金増より専業主婦の3号被保険者でいい。
日本人ってリテラシー高いと思う。
サラリーマン時代に、補助金事業に何度も携わったことがあります。
NEDO、New Energy and Industrial Technology Development Organization、の頭文字をとった、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構という組織を窓口とする事業でした。
1物件あたり数百万円から数千万円、あるいは億の単位までカバーできる事業でしたから、民間企業からすればかなり「美味しい」補助金事業でしたね。
日本全国各地で毎年説明会を行なったり、それに伴う文書印刷及び会場設営費など相当の経費が掛かっていたと思いますし、何よりも全体の事業経費はおそらくは数千億単位ではなかったかと思われます。むろん事業そのものは、高効率エネルギーシステムの普及という崇高な目的を実現するためのものであったとは思いますが、やはり役人の跳梁跋扈を助長する制度ではなかったかと考えます。何よりもNEDOそのものが経産省の外郭団体でしたし、経産省のOB受け入れ組織そのものだでしたから。
サラリーマン現役時代に恩恵を受けていた身としては些か良心の疼く部分もありますが、この際こういう告白もしておこうかと思うところです。
NEDO 助成公募ポスターは大学にも貼ってありました。NEDO は今も絶賛活動中です。
昨年 11 月 5 日付けで発表された採択結果が電子産業業界・ソフトウェア業界にざわめきを生んでいます。
『ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成(委託)』
https://www.nedo.go.jp/koubo/IT3_100324.html
『技術研究組合最先端半導体技術センター&Tenstorrent USA, Inc.』
https://www.nedo.go.jp/content/800015783.pdf
シリコンバレーの最先端企業での実践的なトレーニング(上級コース)も含む画期的な人材育成プログラム
① 上級コース:シングルナノ半導体の設計人材育成コース
② 中級コース:28 ナノ以細のロジック半導体の設計人材育成コース
③ 初級コース:基礎的な設計人材育成
上記の各講座を連携させ、下図のように一貫した育成体制を整備する(略)
次世代半導体企業ラピダスのカスタマーとなると名乗り出ているテンストレント社がただで勉強させてくれるならお得だ、俺も俺も、というわけです。
はにわファクトリー 様
一部には経産省(旧通産省)主導の産業育成政策は、案外効果を生んでいなかったのでは?というような説もあります。
古くは昭和時代の自動車業界再編(本田技研の四輪事業参入を阻もうとした政策)等がその代表ともいわれております。世間的には城山三郎の『官僚達の夏』の主人公らが、ヒーロー扱いされたこともあって、どうも経産省が必要以上に持ち上げられている、そんな雰囲気すらも感じる今日この頃です。
ラピダスはどうなるのでしょうか?ホントに気になります。
私自身にはそれらの事情を詳しく精査する能力と時間及び情熱が些か、というよりも決定的にに欠けているのでは?と自覚しておりますので、どなたかが、その辺りを明らかにしてくれたらと、心より切に願うばかりです。
兵庫県の騒ぎで自●した県民局長も高校の理事に決まってたって報道がありましたので、
天下り先として学校はかなり美味しいんでしょうね。
法人相手なら補助金の一部は税金で戻って来るね。
コロナの時の持続化給付金、個人の1人10万円と違って「有税」
インドの社会は貧困対策として基礎商品に対して強烈な補助金を出して価格統制しています。その結果何が起きているかというと、一度生まれた劣悪品質商品が進化していかない。なぜなら法外に安く提供するため、補助金を受け取りつつ利益を出せる範囲の悪い商品を企業が作り続けるからです。あれはすごく心配なのですが、よその国民でないので口が出せない。今の日本とは事情はことなりますが、わが国だって戦時体制下・敗戦復興統制経済下の日本産業界を立ち直らせ、補助金を切って自由価格形成に持ち込み健全な品質競争を誕生させるため先人たちはどれだけ苦労したか。
価格統制対象商品の代表は衣料や食料ですが、問題は工業製品のほうです。
現地の文具や電球がひどい。当方は海外でしばらく生活するときには、さらのノートや筆記具を日本で買って持ち出します。字が綺麗に掛けないとイラつくタイプなので。
池田勇人著書「均衡財政・附占領下三年の思い出(中公文書)」の巻末解説にこんな一節があります。
p320付近より
(池田が蔵相就任後に掲げた「ディスインフレ」論に言及して)
「… 池田はケインズ的な経済思想に親近感を持っていたが、その前提として自由主義的な経済システムの復活が不可欠と見ていた(中略)
「本書で池田は1949年当初予算で、歳出の30%を占めた価格調整補助金を1951年度には10分の1に削減したことを誇っている(どっと省略)
「他方、国民の租税負担を軽減する点では、行政整理、官業の独立採算化による一般会計の補填の削減、価格調整補給金の整理縮減などは急速に進められた(ちょっと略)
(租税負担が高すぎるため、脱税や反税抗議運動が起ったことに対して)
「池田は正直に守れる税法にする必要があると確信して、減税を積極的に進め自然増収を減税に、企業の蓄積促進に使う方針を取った(さくっと略)
(補助金カット路線の最後に残った米価統制撤廃を池田が実現できなかったことに言及して、それが朝鮮戦争勃発という外乱のせいであったと池田は舞台裏暴露していると記して解説は終わります)
「食糧不足が解消し、農村でもヤミ市場が消え、農民が価格統制撤廃を望まなくなったことを冷静に見抜いていた(中略)池田の証言は、食糧管理制度が制度としては戦時以来継続していながら、その1950年代初めに180度転換したことを見事に描いているのである」
どうして令和米騒動が起きているのか。敗戦直後とはまるで異なる時代背景にありながら、考え直すべきことは多そうです。
面白かったです。ありがとうございます。
「集めて配る方式」
減税反対の人たちは簡単に言ってますが、それに携わる公務員のマンパワー(人日)を考慮しないと。
直接に費用発生しないから、気にしない人が多いのですが、
「そんなことしてる時間があるなら、本来なら他のことに投入することができたリソース」
ですわ。
減税方式なら、そんな業務は発生しません。
ヒイヒイと残業でブラック体質を嘆いてる公務員は、同じ乗数効果を達成しながら早く帰宅することができます。
あるいは過労で盲印押してた補助金の会計監査を、その時間でじっくり真面目に取り組めるようになる訳です。
民間では「見えないコスト」と呼びます。
間接部門では、とくに自分で気を付けてココロの歯止めが必要な要素です。
忙しそうにしてる事で仕事をした気になってる系の人たちには、わからんかもですがね。
政治家にはそういう「見えないコスト」が本当に見えてない人が多いからすぐ消費税の軽減税率など国民ウケを狙って平気で複雑化しようとする。