自公のそれは「経済対策」ではなく「選挙対策」では?
Xで最近、ちょっと話題になっているのが、とある怪しげな自称会計士がXにポストした、「最近の若者は車も買わない、旅行にもいかない、結婚式もあげない」という趣旨の投稿です。この者が言いたいことは、「税金下げろ、社保下げろ」に尽きるわけですが、こうしたなかで一部メディアが報じた自公の「経済対策」がなかなかに周回遅れで驚きます。いや、「経済対策」ではなく「選挙対策」と述べた方が正確かもしれませんが。
目次
山手線の駅名会計士の怪しいポスト
Xで最近、山手線の駅名を冠した何やら怪しい自称会計士が暴れているようです。
この者は連休中に、こんな趣旨のポストをしたようです。
最近の若者、車も買わない、旅行にもいかない、結婚式も上げないという人が増えているという。
給与やボーナスをいったい何に浪費しているというのだろうか。年収600万円の人の場合、
1位:厚年 549,000円
2位:住民税 305,300円
3位:健保 297,300円
4位:所得税 197,000円— 新宿会計士 (@shinjukuacc) May 5, 2025
このポスト、昨晩時点で表示された回数(インプレッション)が1600万件を超え、リポスト回数も2万回を超えたうえ、いくつかの「まとめサイト」にも転載されるなど、X界隈ではわりと注目を集めているようです。
端折っているポイントを補っておくと…?
この点、このポスト自体は大筋で合っているものの、いくつか「端折っているポイント」があります。当ウェブサイトでいつも取り上げている「人件費」ではなく、「年収」を起点にしているため、社保の会社負担分が含まれていないからです。
(※なお、細かいことをいえば、「若者」という設定でありながら、所得税・住民税所得割計算のところで介護保険料を勘案していたりもします。こちらは大勢にはあまり影響はありませんが…。)
年収600万円ということは、この従業員のために雇い主である会社が負担している人件費は697万円、会社が負担している社保等(厚年、健保、介護、雇用、子供・子育て給付金合計額)は969,600円となるはずです。
したがって、厚年は549,000円ではなく、その倍の1,098,000円を負担させられているという計算であり、健保もまた297,300円ではなく、その倍の594,600円を負担させられていることになります。その意味では、もう少し正確なポストをするなら、こんな具合でしょうか。
- 最近の若者、車も買わない、旅行にもいかない、結婚式も上げないという人が増えているという。
- 給与やボーナスをいったい何に浪費しているというのだろうか。年収600万円の人の場合、
- 1位:厚年 1,098,000円
- 2位:健保 594,600円
- 3位:住民税 305,300円
- 4位:所得税 197,000円
ただ、このようなポストの場合は、「年収600万円」を起点とすべきではなく、あくまでも「会社が従業員のために負担した697万円」を起点とすべきなのでしょう。万民にわかりやすく情報発信するのがいかに難しいかということがよくわかる事例でもあります。
いずれにせよ、当ウェブサイト側でこれまでに指摘してきた内容については、何度も焼き直したうえで、今後もXという空間に投じていきたいと思う次第です。
「若者は払い損」を公式に認めている厚労省
さて、いずれにせよわが国では受けられる行政サービスの質と比べ、税、社会保険料が高すぎることは間違いなく、たとえば高年収の人ほど▼年金保険料が高いのに受け取れる年金はさほど増えない、▼健康保険料が高いのに、いざとなったときの保障が薄い、といった欠陥があることは、これまでも当ウェブサイトで伝えてきました。
結局のところ、明らかに払い損なのですが、これに関する厚労省の強烈な言い分についても、何度でも再掲しておく価値がありそうです。
若い人って公的年金で損するって聞いたけど、本当?
「若い世代は、これから納めていく保険料よりも将来受け取れる年金額の方が少ないから、払うだけ損だ」という意見が聞かれます。
公的年金制度は社会保障の一種で、高齢・障害・死亡など誰にでも起こり得るリスクに社会全体で備え、皆さんに「安心」を提供するものです。そのため、経済的な損得という視点で見ることは、本来適切ではありません。
また、現在の高齢者と若い世代で給付水準に差があるという、いわゆる「世代間格差」についても、今の受給者が若いころと現在では高齢者を養うための環境などが大きく違うため、同じ条件で語るのは難しいのです。
―――厚労省ウェブサイト『20代のみなさんへ』より
要するに、厚労省は(意外なことですが)若年層ほど年金が「払い損」となるという事実を認めてしまっているわけです。そのうえで、(意訳すれば)「いいからつべこべいわずに年金保険料を払え」、「世代間格差問題は解決するつもりはない」、などと言っているようなものでしょう。
勤労者が支払わされている税や社保、現在の日本においては、まさにムダ金そのものにしか見えないのですが…。
税金下げろ、社保下げろ
さて、冒頭で取り上げたXのポストについては、わりと多くのジャーナリストや政治家の皆様からも注目して頂けたようなのですが、こうしたなかで、一部の政治家はこの怪しい自称会計士の主張を「社保の負担が重いから減税よりも社会保障改革が必要だ」と解釈しているようなのです。
ただ、内容については、あまり曲解されたくもありません。この怪しい自称会計士が主張したいのはおそらく、「税社保下げろ」、に尽きるからです。
働けば社会保険料(本人分)と所得税と住民税、雇えば社会保険料(雇用主分)、利益が出れば法人税と事業税、売上が発生すれば消費税。生まれれば消費税、死ねば相続税、生前贈与すれば贈与税、食べれば消費税、クルマに乗れば重量税、ガソリン税。
一説によるとわが国には数十にも及ぶ税目があるそうですが、こうした細かくて複雑な税目、経済活動の重しになるだけでなく、事務負担が大変な手間でもあります。
会社経営をしていると最低でもかかわる税目としては、次のようなものがあります。
- 税務署…法人税・地方法人税、消費税・地方消費税、所得税・復興税源泉徴収税額、印紙税
- 市区町村役場…住民税特別徴収税額
- 社会保険事務所…社会保険料(厚年、健保、介護)
- 都道府県税事務所…法人事業税、法人都道府県民税、固定資産税、償却資産税
厳密にいえば、社保は法的には「保険」であって「税」ではありませんが、経済的実態としては「保険」ではなく「税」と呼んだ方が正確です。個人的にはどこか1箇所で「ワンストップ納税」ができると便利だと思うのですが…。
そして、徴収する役所は別々かもしれませんが、納税する側としては、国税だろうが、地方税だろうが、社会保険料だろうが、同じ「税」です。それぞれの税目がてんでバラバラに存在していて、トータルで設計されていないことは、国民に対し著しい負担と不便を強いているのです。
このように考えたら、税の制度設計をトータルに適正化することが必要ですし、また、国民の代表者である国会議員も、財務省の言いなりに「足りないから徴税する」のではなく、本来ならばまずは減税を財務省に強いたうえで、「この税収の範囲でやっていきなさい」と命令すべき立場なのです。
それができていない時点で、なんとも情けない国会です。
財務官僚は選挙で選ばれていない!
そういえば、昨年秋の衆院選では「手取りを増やす」を旗印に掲げた国民民主党が躍進したのですが、これは言い換えれば、べつに国民民主党でなくても、減税を主張すれば勢力を伸ばすことができる、ということを意味しています。
そもそも財務官僚が国家のサイフの入口(国税庁)と出口(主計局)と財源(外為特会や財政投融資)を一手に支配しているという構造もおかしな話ですが、地方財政を利権として握る総務省、社会保障を利権として握る厚労省、私学振興助成金を利権として握る文科省も「ミニ財務省」のようなものです。
そして、官僚は国民から選ばれた存在ではありません。
あくまでも単純に国家公務員試験を合格しただけの受験秀才に過ぎず、本来ならば権力を持ってはならない者たちでもあります。
このように考えたら、国会議員選挙で良い公約を掲げる政治家が現れ、良い公約を掲げた政治家に1票を託す有権者が増える、といったスパイラルが生じなければなりませんし、それが日本国民ならばできる、というのもまた著者自身の信念でもあります。
このように考えたら、まずは今夏の参院選は、SNS時代が本格化するなかでの初めての大きな政治イベントであり、ここで民意が国政を動かすという事例が出てくることを期待したいところです。いわば、「良い政策を掲げるならば、与野党を問わず大躍進する」という時代が到来しつつあるからです。
自公の対策は「経済対策」ではなく「選挙対策」では?
では、現在の連立与党である自公両党は、その「良い政策」を掲げるのでしょうか。
これに関して在京テレビ局のひとつであるTBSが7日、こんな記事を配信していました。
“減税や現金給付も視野” 自民・公明が参院選前に新たな経済対策を策定する方針で一致 物価高や関税措置への対応策
―――2025/05/07 11:52付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG Powered by JNN配信】
TBSによると自公両党の幹部らは7日朝、都内のホテルで会談し、物価高や米国の関税措置への対応策として「減税や現金給付も視野に新たな経済対策を取りまとめる方針を確認」した、というのです。
具体的には今夏の参院選を前に、「減税や現金給付も視野に協議していく方針」なのだとか。
それ、「経済対策」ではなく、「選挙対策」の間違いではないでしょうか?
このTBSの「減税や現金給付」云々の報道が信頼できるのかはよくわかりませんが、仮に事実だとしたら、議論はなんとも周回遅れです。自民党の宮沢洋一参議院議員が税調会長として「手取りを増やす」を徹底的に叩き潰した直後だけあって、国民の多くはそれらが「選挙対策」と見透かしているのではないでしょうか。
このあたり、故・安倍晋三総理大臣がもし存命であれば、そして「再々登板」を果たしていたならば、国民民主党人気に火がついているのを見て、自民党側も、さも以前から自分たちが主張していたかのごとく、「手取りを増やす」を実現していたのではないかという気がします。
石破茂首相は自民党総裁選に過去5回も挑戦したそうですが、何度も挑戦してきたわりには、安倍総理にはあった「捲土重来を図っている間はじっくり政策について勉強する」という態度がまったくなかったのではないか、という気がしてなりません。
我々有権者も選挙モードに!
というよりも、石破首相も結局、自民党内の「高市早苗総理大臣阻止」という妙な力学の末に、目先のことしか見ていない189人の国会議員らの愚かな行動により誕生しただけの存在に過ぎず、この国難に日本のかじ取りをすることは無理だったのではないでしょうか。
誤りを認めるならばさっさと身を引くというのも一流の政治家には必要な態度ですが、正直、石破首相の場合は今夏の参院選で大敗し、にっちもさっちもいかなくなってから次の総裁にバトンタッチ、といった可能性が高そうな気がします。
そのときになって「高市総理」が実現しても、もう手遅れかもしれませんが…。
いずれにせよ、私たち日本国民がどこまで賢明な判断を下せるかは、今夏の参院選では大いに問われる論点です。我々有権者側もそろそろ選挙モードに突入していかなければならないことだけは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます(コメントに当たって著名人等を呼び捨てにするなどのものは禁止します)。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。また、著名人などを呼び捨てにするなどのコメントも控えてください。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
(党首がよほど優秀、または事態がよほどひっ迫していれば話は別ですが)政党が打ち出すのは、すべて選挙対策ではないでしょうか。
確実に選挙対策です。
SNSやネットで自民、公明、立憲が減税に否定的であったことから批判が殺到し、自民敗退論が盛り上がっきた頃から、やたら減税策を打ち出し始めましたからね。
これだけ日本を衰退させた小泉、岸田、石破、野田はもはや戦犯としか思えませんよね。
そんな奴らに従ってきた自民、公明、立憲が本気で減税するとはとても思えません。
>自民党内の「高市早苗総理大臣阻止」という妙な力学の末に、目先のことしか見ていない189人の国会議員らの愚かな行動
これにつきます。
この連中が今何を感じているのか、その時どうすればよかったのか一人ひとりの胸ぐらを掴んで質したいものです。
この連中は日本の政治を担うビジョンが無いのを自らの行動で示した訳です。新たなボスの元で与えられたきちんと仕事が出来れば最低限の役割として実務者としての利用価値はありますが、兎に角代償が大きすぎた。
議会制民主政治は数の力が必須です。
自民党の力の源泉である数は今度の参院選で削がれ落ちることでしょう。
ビジョンあるリーダーが総裁になったところで、その力量を発揮できるだけの党としての力は最早残っていないものと予想されます。
選挙は年単位。
国内外の難問題に正面から向き合えるマトモな与党が復活するのに何年掛かることか。
「石破君、公約は守らなくてもいいなんて、公言しちゃっていいのかい?」
「安倍君、仕方ないよ、ボクは正直なんだ」
>石破首相の場合は今夏の参院選で大敗し、にっちもさっちもいかなくなってから次の総裁にバトンタッチ、といった可能性が高そうな気がします
参院選で大敗しても居座る可能性が結構あると思ってます。
総裁の任期満了まで。
ゲル「これは神の与えた試練に違いない。がんばらネバ。」
現状のルールはコミュ障やサイコパスが首相になること想定してないんだと思います。
「石破君、資産少し整理したら借金は減るし、必要な予算も確保できると思うんだが」
「安倍君、いやだな、プラモのコレクション売るのは」
「石破君、故田中角栄氏は実業家としての才覚が飛び切り光っていた。
見習うべきところは大きいのではないかね」
>見習うべきところは大きい
恐らくは、
反目の志にも支援は惜しまぬと、「親分気質で度量を見せた」つもりの2000万。
革命を起こすどころか、求心力をカネに求め、内なる角栄を起こした2000万。
師から引き継いだもの:上意下達・口達者・カネ使い
引き継が無かったもの:人脈構築・実務力・先見の明
*何処で学んだではなくて、何を学んだが問われる事例なのかもですね・・。
「財源ガー」「富裕層ガー」という稚拙な抗弁は論破されているのに、思想が統一されているのが気持ち悪い。
予算成立後にショボい経済対策とやらで取り繕っても、有権者の判断にはほとんど影響を与えないだろう。
『足らぬ足らぬは工夫が足らぬ』
官僚「そうか! 徴税技術に工夫が足らないンだ!!」
政治屋「増税誤魔化し機嫌取りマヤカシイリュージョン経済対策に工夫が足らんのだな!」
民意「ちゃうわ! 政策策定実施検証修正全てに工夫が足らんのじゃボケ!!」
…知らんけど
「岸田君、こうなったのは君のせいだ」
「石破君、こうなったのは君のせいだ」
「石破君、
こうすればできますよ、こうももできますよと
あれほど知恵を授けてやったのに、意固地だからこんなことになったんじゃないか
これからこっちは勝手にやるから、もういいよな」
ユダ189人を残して自民党が割れる方がかえって財務省の洗脳から抜け出すには早いかも知れませんね。
石破さん、多分、次の選挙では勝てると思ってます。
一説によるとわが国には数十にも及ぶ税目があるそうですが >
自慢じゃぁありませんが、これまでの人生に於いて、私は酒税と煙草税だけは人一倍支払ってきたような気がします。
で、ついでに云うと、本日固定資産税と、自動車税を近所のコンビニで支払ってきました・・・うぅ。
経済対策が選挙対策であっても良いのですが、昨日まで減税に反対していた政党が今になって減税を言い出すのは、誰の目にも選挙対策としか見えませんね。
今回だけでなく今までも経済対策としての減税という考えは微塵も無いでしょうね。経済対策は、企業と金持ちを喜ばせるだけだと心底本気で思っていると思います。
しかも、その経済対策とやらが、真の経済効果が出ないような、単なる税の付け替えだったり、期間・回数・対象者限定のショボいものだったりします。
譲歩に見せかけた「税社保の付け替え論」「税社保引き下げの二者択一論」などにも注意が必要でしょう。