カネ持ちを貧乏人にしても貧乏人はカネ持ちにならない
「消費税を減税する財源として所得税の累進課税を強化せよ」、「税収の上振れを社会保障に突っ込め」、といった意見が出てきましたが、このような主張をする人たちには取り過ぎた税金を国民に返すという考えはないのでしょうか?不思議です。ただ、理解に苦しむのはそこだけではありません。そもそも一部の与野党の政治家の皆さんは、「カネ持ちを貧しくすることで貧乏人を豊かにすることはできない」という鉄則を理解していないフシがあるからです。
立憲民主党だけでなく自民党からも消費減税
生活苦を受け、主要政党などではいっせいに消費税の減税などへの言及が始まっているようです。
このうち最大野党である立憲民主党における「1~2年間の期間限定、対象品目は食品に限定」の奇抜な減税案については、先日の『立憲民主が突如として消費税減税打ち出した背景を探る』などでも取り上げたとおりですが、それだけではありません。
ほぼ1週間前の日経電子版の記事によれば、自民党の松山政司参院幹事長が24日、森山裕幹事長や小野寺五典政調会長に対し、党本部で参院選に向けた要望を手渡したのだそうです。
参院自民党の8割、消費税減税を要望 森山幹事長に伝達
―――2025年4月24日 21:58付 日本経済新聞電子版より
日経によると松山氏は「消費税率の引き下げを求める意見が8割」、「そのうち7割は食料品の税率引き下げを求める意見だった」、などとしているわけですが、どうにも議論が周回遅れです。夏の選挙を前に、危機意識に火でも着いたのでしょうか?
ちなみに参院自民党といえば、「あの」宮沢洋一税調会長も所属しているはずなのですが(※任期は2028年まで)、その宮沢氏が自民党内で吊し上げに遭ったという話を、メディア報道やXなどで、ついぞ見かけた記憶がありません。
この人たちは、宮沢氏が「手取りを増やす」を叩き潰している間に、いったい何をやっていたのでしょうか?
選挙前になっていきなり「減税を」、などと言われても、有権者としては困惑する限りです。予算はもう成立してしまったわけですが、どうして予算が成立する前に、自民党内の平場で意見を強硬に主張しないのでしょうか?
「税収増を社会保障の財源にせよ」
こうしたなかで、もうひとつ驚くべき話があるとしたら、これかもしれません。
加藤勝信財務大臣に医療政策研究会(木原誠二会長)の要望書を手交しました。税の増収分を社会保障・医療の財源とする仕組みを提案しました。#たけみ敬三 #参議院議員 #参議院 #木原誠二 #加藤勝信 #要望 #社会保障 #財源 pic.twitter.com/bbwjpUJPvC
— 武見 敬三(自民党 参議院議員・東京) (@TakemiKeizo) April 28, 2025
今夏の参院選で東京選挙区から出馬予定の武見敬三参議院議員が28日、自身のXを更新し、「税の増収分を社会保障・医療の財源とする仕組みを提案した」と明らかにしたのです。
「社会保障にこれ以上、公金を突っ込むな」、「現役層からこれ以上搾取するな」、といった意見がネット空間で吹き荒れているこのタイミングで、なかなかに間の悪い話です。
著者自身の理解が正しければ、自民党はもともとは「保守政党」であり、保守政党は伝統的に「小さな政府」を目指す政治思想とも親和性が高いような気がしますが、そうではないのでしょうか?
最高税率をさらに上げる
ちなみに自民党が税制を巡ってネットでバッシングを受け始めているなかで、最大野党である立憲民主党が大躍進したらどうなるのかについても、なんだか気になるところです。
ただ、冒頭に挙げた立憲民主党の消費税減税に関する案については、こんな報道もあります。
減税財源、所得税累進強化も選択肢 立民代表
―――2025/04/28 23:26付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】
非常に短い記事ですので、下手に引用すると著作権法に抵触しかねませんが、端的にいえば立憲民主党の野田佳彦代表がテレビ番組で消費税の「減税の財源」を巡って、所得税の累進課税強化で賄うことも可能だと述べた、というものです。
その際、野田氏は「1億円プレーヤーの所得税率が低い」、などと述べたのだそうですが、なかなかに強烈な認識です。
そもそも論として、所得税の最高税率は45%ですが、これに復興税(所得税の2.1%相当額)と住民税所得割(一律10%)を足すと、課税所得に対する税率は55.945%(!)に達します。稼いだカネの半額以上を奪っていくくせに、「税率が低い」とは、いったい何様のつもりなのでしょうか?
カネ持ちを罰しても貧乏人は豊かにならない
いずれにせよ、与野党の国会議員の皆さんの主張などを眺めていて気付くのは、彼らの多くは「カネ持ちからはいくらでも税金を取って良い」、「年収800万円を超えたらカネ持ち」、などと勘違いしているフシがあることです。
正直、「カネ持ち」などの用語には明確な定義はありませんが、それでも政治家(※与野党問わず)の皆さんの発言を眺めていると、カネ持ちには累進課税をさらに強化するとともに、行政サービスでは応能負担、所得制限、給付制限をさらに強化しても許されると思っているのかもしれません。
しかも、その「カネ持ち」のハードルをさらに下げ、ミドルインカム層からさらに税や社保を奪おうとしているフシすら見受けられます。
「減税に財源が必要だ」などの世迷いごとにも驚きますが、それ以上に税・社保で「カネ持ち」から財産を収奪し、それを「貧乏人」に配ったとして、べつに貧乏人を豊かにすることはできない、ということを、政治家の皆さんにはもう少し勉強していただきたいと思います。
なお、「いつものあの図表」についても掲載しておきましょう。
図表1 人件費と年収と手取りの関係(年収300万円の場合)
図表2 人件費と年収と手取りの関係(年収600万円の場合)
図表3 人件費と年収と手取りの関係(年収1200万円の場合)
図表4 人件費と年収と手取りの関係(年収2400万円の場合)
(【出所】当ウェブサイト作成)
あるいは、勉強しても理解しないのであれば、私たち有権者が賢くなり、選挙のたびに順次、こうした政治家から国会議員としての地位を奪い、引導を渡していくことが大事ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
カネ持ちを貧乏人にしたら、ほんの一握り(一人または一家)の大金持ちの権力者をつくる。
歴史を見るとそんな感じですか?
> 税の増収分を社会保障・医療の財源とする仕組みを提案した
腐れ政治屋共は、社会保障財源と言えば何でも許されると勘違いしてるんじゃないんですかね。知恵も工夫もなく国民から毟り取る事だけを考えてやがる。
上振れた分はまずは国民に返せよ!って思う。マジで怒りが沸く。
こんなこと許したら、「税収上振れよかったね」って財務省の無能を許すことと同じですよ。
そして社会保障が足りないから、とまた増税されますよ。
議員給与からの控除が数千円しかないのに、高所得者への累進課税が少ないとは何事でしょうか。議員給与の所得で本来払うべき所得税&住民税を支払ってから言ってほしいものです。
また、武見敬三「厚労大臣」のパパは日本医師会の会長をしていましたね。
井川意高氏は、泥棒に金庫番をさせている、と比喩していましたね。
>カネ持ちを貧乏人にしても貧乏人はカネ持ちにならない
これマーガレットサッチャー語録だね。
高所得者と低所得者の対立は財務省にとっても好都合ですね。取って配るという非生産的な行為と公務員は大変相性が良い政策です。そう、まさに社会主義ですね。
立憲民主党がとって配るに拘るのはまだ理解できますが、自由民主党までが取って配ることに拘るのは看板と政策の不一致ではないでしょうか?
多くの真っ当な保守から見放されつつある自由民主党の命運も次の選挙でいよいよ尽きそうです。
「共同富裕」という幻覚に罹っているのです。
もちろんこの言葉は地雷もしくはバカ検出器なわけで、参院選が近づくにつれ「不用意な SNS 投稿」を通じて狐狸の正体が暴かれ続けることに。
>武見敬三参議院議員が28日、自身のXを更新し、「税の増収分を社会保障・医療の財源とする仕組みを提案した」
国会で税収増分の取り合いやってる中、政府直要望でインターセプト狙いですな。国会でやってほしいもんです。
社会保障削る話を先にしろっての。
※ところで、お手すきの時にでも雑談板で飲み込まれたコメントの救済をお願いできますでしょうか・・・
税収増を社会保障の財源にしては駄目ですね。
オールドメディアによれば、日本は稼ぎがとても少ない国で国の借金が止まらない国です。
将来にツケを回し続けている国ですから、税収増ならば「国の借金」返済に充てるべきです。
オーバーツーリズムなどという嬉しい悲鳴を上げるほどには貧乏になった日本国ですが、
日本国民がやっとの思いで稼ぎ出したお金は、国の借金返済に充てるべきです。
この先は少しでも、日本人に回せる余裕を作り出すために国の借金返済に充てるべきです。
何をするにしても日本国民が自ら稼いだお金で支える以外に道は無いのですが、自民党、公明党は「重税を課す」ばかりで、稼ぎだすことを良しとしません。
どの道、自民党、公明党の政権からはマクロ経済に対する政策は一切出ては来ないでしょうし、ばら撒く以外に能のない自民党、公明党で精々が「増税の為の賃金上昇」を「喧伝」する政党ですから、鵜呑みにすると後が大変なことになります。
国外に対するばら撒きも票を買う為に過ぎません。内政と外政が一致しているところは面白いところでもあります。国防もガタガタ。アメリカの発言に毎日毎日オドオドする始末です。
また、自民党、公明党は支那人移民の爆抱えに精を出しておりますが、支那人から吸い上げられる税金は微々たるものでしょう。しかも支那人移民を抱え込むにはお金が相当必要でしょうから、この先、支那人移民丸抱えの為の社会保障に赤字国債の発行を余儀なくされます。
支那の余剰品も二束三文で大量に入って来る。
自民党、公明党は本当に馬鹿でありますから、国民が覚悟を固める以外に「生き延びる方法」はありません。
この際でありますから、自民党、公明党は切り捨て御免で宜しいかと思います。
自民、公明、立憲、社民、共産はまとめてゴミ箱に捨ててあげましょう。
どっちも財務省の代弁者でしかないし、自民党も今や政権担当能力喪失してんなあ。
お金持ちが貧乏になれば、誰が給与を払うのだろう?
官僚は、「減給・雇止め・人員整理」に無縁の役人。
*民間の雇用を壊さないで欲しいですね。
習近平国家主席が数年前に打ち出した「共同富裕」政策により、中国の富裕層が続々と中国国外に逃げ出している現実を目の当たりにしても、まだそんなことを言っている政治家は一体何を見ているんでしょう。今でも日本の相続税が高すぎる理由から富裕層の国外逃避が多い中で累進課税をやり過ぎると、日本から富裕層や優良企業が逃げ出すとは全く考えていないところが不思議です。
かつて高額納税者日本一になったナショナル(現パナソニック)創業者の
松下幸之助氏は、「私が常に感ずるのは、わが国の所得税は極めて高いということ。国民が一生懸命働いて稼いだお金だから、それを使う喜び、楽しみがもっとあってよい。
これだけ税金を取れば、徳川時代だったら 一揆が起こっているのではないか。」
という国を憂い警鐘を鳴らした言葉を政治家・官僚はもっと噛みしめてほしいです。
あっ、ところで私は富裕層ではないのでまったく関係ありませんが。
トランプが、
「年収三千万円までは、所得税ゼロを目指す!」
なのだとか。
狙いは、累進税率の緩和なんでしょうね。
働けば働くほど搾り取られる
(負のインセンティブ)
働けば働くほど手取りが増える
(正のインセンティブ)
同じ仕事量を多人数でシェアするなら、累進税率もよいけれど、同じ人数で仕事量をあげていくには、ヤル気を上げていくしかない!
という経営者の視点かもですね。