訪日外国人数は過去最大水準だが…近隣国の割合は低下

日本政府観光局(JNTO)によると、2025年3月の訪日外国人は3,497,600人で、依然として過去最大水準にあることが判明しました。ただ、内訳を冷静に分析すると、日本の近隣の中韓台港4ヵ国・地域からの入国者の割合は60%を割り込む一方、米国人入国者が過去最多を記録するなどしています。こうしたなか、インバウンド振興も良いのですが、不法滞在などによる治安悪化にも目を向ける必要があります。

訪日外国人は依然以前高水準だが…

インバウンド(外国人訪日客)が増加の一途を辿っている、とする話題には事欠きませんが、冷静に内訳を調べてみると、最近、ちょっとした「変調」が生じているようです。

日本政府観光局(JNTO)は毎月、『訪日外客統計』のページで日本を訪れた外国人の人数を国籍別に公表しているのですが、アジア近隣国からの訪日客の伸び率は、むしろ鈍化傾向にあるのです。

まずは、JNTOが今月16日に発表した統計をもとに、当ウェブサイト側にて2024年3月と25年3月の各国別訪日客の変動を示したものが、次の図表1です。

図表1 訪日外国人・国籍別内訳(2025年3月vs2024年3月)
人数と構成割合の変化増減・増減率
1位:韓国663,102(21.52%)→691,700(19.78%)+28,598(+4.31%)
2位:中国452,525(14.68%)→661,700(18.92%)+209,175(+46.22%)
3位:台湾484,454(15.72%)→522,900(14.95%)+38,446(+7.94%)
4位:米国290,075(9.41%)→342,800(9.80%)+52,725(+18.18%)
5位:香港231,373(7.51%)→208,400(5.96%)▲22,973(▲9.93%)
6位:タイ131,749(4.28%)→148,200(4.24%)+16,451(+12.49%)
7位:豪州82,781(2.69%)→84,800(2.42%)+2,019(+2.44%)
8位:フィリピン78,821(2.56%)→72,300(2.07%)▲6,521(▲8.27%)
9位:カナダ57,779(1.87%)→68,100(1.95%)+10,321(+17.86%)
10位:シンガポール61,047(1.98%)→65,300(1.87%)+4,253(+6.97%)
その他548,075(17.78%)→631,400(18.05%)+83,325(+15.20%)
総数3,081,781(100.00%)→3,497,600(100.00%)+415,819(+13.49%)

(【出所】JNTOデータより作成。以下同じ)

近隣4ヵ国・地域からの入国者数は全体の約6割に

これで見ると、2025年3月の訪日外国人総数(※速報値)は349.8万人で、2024年3月の308.2万人から41.6万人増えました。増加率でいえば13.49%です。

その内訳は、上位3ヵ国・地域については韓国、中国、台湾という近隣3ヵ国・地域で占められており、(4位の米国を除外して)5位の香港加えた4ヵ国・地域で見ると、59.6%―――つまり、約6割を占めている計算です。

つまり、相変わらず訪日外国人は近隣国に偏重している、ということではあるものの、その推移をグラフ化すると、また違った姿が見えてきます(図表2)。

図表2 中韓台港からの訪日客の割合

図表2は、JNTOデータに示された訪日外国人全体に占める中韓台港4ヵ国・地域からの入国者の割合を示したものです。

2019年7月以降の韓国の「ノージャパン」運動や2020年3月以降のコロナ禍による入国制限などの時期を除けば、これら4ヵ国・地域からの入国者の割合はだいたい7割から8割で推移していました。

しかし、コロナ明けで中国からの入国者も徐々に増え始めているにも関わらず、最近の4ヵ国・地域からの入国者の割合は、6~7割程度で推移しているのです。

近隣諸国からの入国者数は頭打ちに?

そして、きんりんしょこくからの入国者数が、どうやら頭打ちになりつつある、という可能性も出てきました。図表3は、訪日外国人全体、および入国者上位5ヵ国・地域について、コロナ前の2018年、19年、コロナ後の2023年、24年、25年の5年分の入国者数を月次で示したものです。

図表3-1 訪日外国人総数

図表3-2 韓国

図表3-3 中国

図表3-4 台湾

図表3-5 米国

図表3-6 香港

米国からの訪日客は増えているが…

これで見ると、訪日外国人総数自体は強く伸びているのですが、訪日韓国人は3月としては過去最高水準であるとはいえ、伸び率は明らかに鈍化しており、また、訪日中国人に関しては2019年のピーク時の水準を割り込んでいます。

また、台湾人に関しても3月としては過去最高値ではあるものの、伸び率としては鈍化傾向にありますし、香港も過去最大だった2024年の水準を割り込んでおり、過去最高を記録した米国とは好対照をなしているのです。

つまり、中韓台港4ヵ国・地域に偏重していたわが国のインバウンド需要も、(多少の季節変動を伴っているにせよ)徐々に分散化しつつある、ということです。

ただし、例の「トランプ関税」の影響で、米ドルが日本円を含めた主要通貨に対して下落する可能性があることを踏まえると、今後も順調に米国からの訪日客が増えるという保障はありません。

不法滞在とJESTA…ビザの見直しが必要では?

これに加えてほかにも留意点があります。

平素より当ウェブサイトにて警告している通り、インバウンドにはオーバーツーリズムなどの弊害が目立ってきているのです。

とりわけわが国の経常収支構造を見ると、わが国は製造業(とくに「モノを作るためのモノ」「川上工程」)や金融・保険業(資産運用業)で儲けている国でもありますので、今後、働き手不足が深刻化すると見込まれるなか、典型的な労働集約産業である観光業に労働力を取られることが国益にかなっているのかは微妙です。

さらに、最近だと一部の短期滞在ビザ免除対象国からの入国者を巡ってさまざまなトラブルも報じられています。

これに関して産経ニュースが23日、こんな内容を報じています。

「不法滞在目的での来日防止する」法相、トルコなどビザ免除国の事前審査導入を2年前倒し

―――2025/04/23 17:20付 産経ニュースより

これによると、鈴木馨祐法相は23日の衆院法務委員会で、ビザ免除対象国の国民を対象とした事前入国審査システム(いわゆるJESTA)の導入時期を、2030年度から2028年度に前倒しする考えを示したのだそうです。

ただ、産経によると入国ビザは「トルコなど71ヵ国・地域で観光など短期滞在に限って免除されている」一方、「観光名目で査証免除国から来日して不法滞在する例は後を絶たない」としており、これについては実際、Xなどインターネット上でもさまざまな問題点が指摘されているところです。

正直、JESTA前倒しよりもビザ免除プログラムの見直しを進めた方が良いのではないでしょうか?

いずれにせよ、観光産業を振興させることでオーバーツーリズム問題を発生させ、不法滞在の増大を通じて治安を悪化させるのは本末転倒ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 同業者 より:

    今日の東京をみると、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。もはや東京における犯罪の形は過去と違ってきた。こういう状況を見ると、もし大きな災害が起こった時には、大きな騒擾事件すら想定される。これに対処するには、警察の力をもっても限りがあるので、皆さん(陸上自衛隊)に出動願って、都民の災害の救済だけではなく、治安の維持も大きな目的の一つとして遂行していただきたい。(2000年4月9日 陸上自衛隊第1師団創隊記念式典 石原慎太郎東京都知事挨拶)

    かつて石原慎太郎氏が懸念したことが現実のものとなりつつあるのかもしれません。
    難民申請は1回のみにして、難民でないことが明らかな人はとっとと強制送還して欲しいものです。送還費用はきっちり請求・回収して。さすれば、不法滞在者に労働を認めて共生なんて馬鹿げたことをせずに済みます。

  2. どみそ より:

    外国人旅行者への免税制度を見直し、税収を確保すべきです。
    旅行中 国内で消費するものや国内転売のものまで 消費税免税はおかしい。
    免税店は空港管理区域のみにしてほしい。
    旅行者も日本のインフラ使ってるのだから 正しく税負担させろよ。
    オーバーツーリズムで 日本人は嫌気がさしているのだから すこしは 税収に貢献していただきたい。

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