利上げにもかかわらず東京都心部で中古マンション上昇

日銀の利上げにも関わらず、首都圏の中古マンション市況、意外と堅調です。一部では中国人などによる投機資金の流入もうわさされているようですが、日銀の利上げにも関わらず、とくに東京都心3区や城西地区(新宿区、渋谷区など)ではマンション価格は意外と堅調で、むしろ過去最高水準を更新する勢いです。

レインズデータで見る首都圏不動産市況

最近、当ウェブサイトで密かに注目している話題のひとつが、不動産市況、とりわけ首都圏の中古マンションの売買動向です。

株式、債券、外為といった金融商品と異なり、多くの場合、不動産は流動性が低く、また、物件ごとの個別性も強いとされますので、金融商品専門家などに言わせれば「不動産取引価格の個別事例を調べたとしても、それを経済の尺度として一般化できるのか」、といった批判が生じることが多いのが実情です。

ただ、首都圏の場合だと、やはり単身者が多く、投資用マンションであったり、単身者が自分用に購入したりするという事例が多いようであり、なにより、首都圏(とりわけ東京都内)のワンルームマンションは間取りが似通っていて、「金太郎あめ」的な性格を持っていると思うのです(著者私見)。

これに加えて首都圏では、中古マンションの取引事例は成約だけで毎月、数千件はありますので(うち東京都内に限定しても毎月1,000件超)、やはり、首都圏の不動産市況は経済の状況を把握するうえで、意外と参考になる指標ではないでしょうか。

そして、首都圏の不動産価格を手っ取り早く調べるうえで役に立つのが、公益財団法人東日本不動産流通機構が運営する『レインズ・タワー』というウェブサイトの『レインズデータライブラリー』のページにて毎月公表される詳細レポートです。

著者自身はこのレインズのデータを2008年分から所持しており、毎月、個人的な趣味の範囲で統計を更新し続けているのですが、最近の特徴といえば、やはり不動産価格の高騰でしょう。

首都圏マンション相場は少し下落

レインズが先日、2024年10月分のデータを更新したのですが、これで見ると、首都圏全体で見ると価格は上げ止まった感がある一方で、地域別にみると、まだ価格上昇が続いていることがわかります。

図表1が、首都圏全体の中古マンション成約状況(平米単価、価格)をグラフ化したものです。

図表1 中古マンション成約状況(首都圏)

(【出所】『レインズデータライブラリー』データをもとに作成。以下同じ)

これによると首都圏のマンション価格は、(コロナ禍の一時期を除いて)2024年7月頃まで上昇が続いていたのですが、8月に入って不動産価格の上昇が止まり、横ばいの傾向が続いているように見受けられます。

おそらくその大きな要因は、日銀が7月に利上げに踏み切ったこと(TONAを25ベーシス・ポイントに設定)ではないかと思うのですが、利上げの影響はまだそこまで大きく出ていない、というのが実情かもしれません。

東京都内は意外と堅調

そして、これを東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県という一都三県で確認してみると、神奈川などで中古マンション価格が値崩れしている状況が確認できるものの、東京都内に関してはさほど落ちていないことが判明します(図表2)。

図表2-1 中古マンション成約状況(東京都)

図表2-2 中古マンション成約状況(埼玉県)

図表2-3 中古マンション成約状況(千葉県)

図表2-4 中古マンション成約状況(神奈川県)

想像するに、同じ首都圏でも埼玉、千葉、神奈川の三県は東京都内と比べ、中古マンションに対する需要はそこまで大きくない、ということなのかもしれません。これに対し、東京都内に関しては人口流入が続いていることもあって、価格は堅調なのではないか、といった仮説が出てくるゆえんです。

都心3区や城西地区は過去最高水準に

しかも、東京都心部だと、価格が下落に転じた地区もある一方、地区によっては価格はむしろ再び上昇基調に入っています。たとえば都心3区、城東地区、城南地区、城西地区、城北地区のそれぞれについてグラフ化してみると、図表3のような具合です。

図表3-1 中古マンション成約状況(東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区))

図表3-2 中古マンション成約状況(東京都 城東地区 (台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区))

図表3-3 中古マンション成約状況(東京都 城南地区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区))

図表3-4 中古マンション成約状況(東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区))

図表3-5 中古マンション成約状況(東京都 城北地区 (文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区))

ここでもわかるとおり、城東地区(台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区)についてはマンション価格が下落に転じているという傾向が生じているものの、都心3区や城西地区(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)については価格は下落しておらず、むしろ上昇に転じています。

中国人の投機資金?次の利上げでどうなる?

以上のことから考察するに、不動産価格の下落は(今のところは)一時的な現象であり、むしろ利上げを契機として上昇し続ける地域とそうでない地域が選別された、といった影響が生じた可能性はあるでしょう。

この点、不動産業界では、中国人の投機資金などが流入しているとする噂も流れているようですが、現実問題として、日本の銀行はなかなか中国籍の人に対し、投資用マンションの購入資金を貸さない、という傾向が強いようです(著者私見)。

こうした状況から察するに、日銀が多少の利上げに踏み切ったとしても、中国人などの投資資金が入っている地区では、中国人の投資意欲が萎えない限り、不動産価格の上昇傾向は続く可能性がありそうです。

いずれにせよ、今後、日銀がさらなる利上げに踏み切る可能性も指摘されるなか、こうした不動産市況の動きについては、注目する価値があるといえるのではないでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    価格を論じる時、需要と供給から離れていけないというのは経済学のイロハだ。

    新築マンションは適地が少なくなって供給が限られている。つまり供給はあまり増えない。
    需要はどうか。不動産を現金で買う人はあまりいない。大部分はローンを組んで買う。つまりいくらまで借りられるかが需要の正体で、つまるところ金利だ。中古マンションの価格が上がってきたのは低金利が原因だろう。
    長期金利はじわじわと上がってきている。今後住宅ローンの金利も上がっていくだろう。
    そうなれば借りられる金額は小さくなり、需要は小さくなり中古マンション価格は下がるだろう。
    下がらないとしたら、現在一般的な35年のローンが40年、50年と伸びること。これによって借りられる金額、つまり需要が大きくなることが考えられる。

  2. KY より:

    携帯でコメントしようとしてもうまくいきません。何故でしょう(これはPCで入力しています)?

  3. foo より:

    中国人が日本国内で不動産売買を行う場合は、法人が多いのではないでしょうか。
    それから個人が不動産売買をする場合は、即金での購入が多いと聞いたことがあります。
    中国政府は人民元の持ち出し限度額を決めていますから、個人で不動産売買をするほどの
    お金を一度に持ち出すことはできないでしょう。
    となると、あらかじめ海外の銀行口座を用意しておく、若しくはダミー会社を用意しておく、
    などのからくりを用いて不動産売買を行っているのではないでしょうか。
    中国人の不動産バイヤーもいます。曰く、儲かるとのこと。

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