「国民民主党は野党なのに予算案に賛成した」=TBS

国民民主党が昨日、補正予算案に賛成したことを受け、TBSが「国民民主党は野党であるにもかかわらず、予算案に賛成し続けている」、「他の野党などからは『もはや与党』と批判する声があがっている」などと報じました。「野党は政府提出法案に反対するのが当然だ」とでもいわんばかりの報道姿勢ですが、これなども「腐敗トライアングル」の構図の典型例でしょう。ただ、日本社会からはオールドメディアの影響力が徐々に排除されつつあることも間違いありません。

腐敗トライアイングル

現在の日本ではインターネットの発展にともない、新聞、テレビを中心としたオールドメディアの情報支配力が急低下しており、これにより『官僚・メディア・野党議員』の『腐敗トライアングル』という構造が、音を立てて崩壊し始めている」――。

これは、『【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」』でも取り上げた論点です。

なぜこの三者を「腐敗トライアングル」と呼んでいるのかといえば、官僚、メディア、野党議員の三者には共通した特徴があるからです。それは、彼らの政治的権力や社会的影響力が、「自由・民主主義的手続」を通じて獲得されたものではない、という点です。

たとえば、財務官僚は予算の入口(国税庁)と出口(主計局)を一手に支配し、国のサイフを通じて国政に大きな影響をもたらしており、その権力はときとして並みの国会議員を遥かに上回るほどです。財務省の予算采配ひとつで、議員の当落を左右できてしまうからです。

また、新聞、テレビといったオールドメディアは、さまざまな利権(新聞なら販売価格に関する独禁法の適用除外、消費税の軽減税率など、テレビなら電波割当など)により自由経済競争から守られており、NHKに至っては法律で事実上、売上高を保証されています。

さらに野党議員は、国会の慣例などにおいて、大きな優遇措置を与えられています。たとえば衆参両院で割り当てられている質問時間が与党議員と比べて遥かに長く、また、気に入らない委員会や審査会(たとえば憲法審査会など)を開かせないようにする、といった妨害もできてしまうようです。

自由・民主主義の仕組みに最も反する組織

このあたり、日本は本来、「自由・民主主義国家」であり、自由経済競争で勝ち上がったわけでもない企業(たとえばNHKやオールドメディア各社)が社会的影響力を持っているというのも、官僚組織や野党議員が、国政選挙を制したはずの自民党をも上回る政治権力を持っているというのも、おかしな話です。

しかも、話はそれに留まりません。

自由・民主主義のプロセスに反して権力を握った組織は、たいていの場合、国益に背く行動を始めます。

必要のない増税を繰り返し、日本経済を徹底的に疲弊させてきた財務省を筆頭に、受信料利権で非常識なほど高額な職員人件費を計上しているNHK、許認可権限をもとに「F欄」と呼ばれる大学を乱造してきた文部科学省などは、非常に罪深い組織です。

また、この国難にあって、貴重な国会質疑の場を「もりかけ」「さくら」「統一教会」などの追及に浪費する野党議員、それをたしなめるどころかむしろ煽っているオールドメディアもまた同罪でしょう。

  • 官僚機構が記者クラブ制度などを通じて限られたメディアに対してのみ情報を与える
  • 情報を得たメディアは官僚機構などの意向に沿った報道をする。また、与党議員の不祥事はことさら大きく取り上げる一方、野党議員の不祥事については「報じない自由」を行使するなどして、野党議員を守る
  • 野党議員は国会で政府・与党の足を引っ張るような行動ばかりとり、国民生活を人質に政局を仕掛ける

…。

結局のところ、官僚、メディア、野党議員などが持っている政治的権力、社会的影響力は、どれも国民から民主主義の手続、自由経済競争原理などを経て与えられたものの範囲を逸脱しており、しかも国益を傷つけているわけです。

その意味で、彼らこそが「自由・民主主義の敵」という言い方もできるのではないでしょうか。

財政再建論の間違いと外為特会の問題

ところで、財務省が大好きなレトリックのひとつが、「国の借金」論です。「日本には国の借金がたくさんあるから、増税して財政再建しなければならない」、といったものがその典型例ですが、これについては『「財政破綻論」の間違い:「成長」がすべてを解決する』などでも議論してきたとおり、前提条件からして間違いだらけです。

それに、もし「日本は財政危機だ」、などと言い張るのなら、安易な増税に頼るのではなく、まずは「できること」をやるべきであり、その筆頭格は財務省が保有する外為特会や財政融資資金、さらにはNHKなどの組織の解体でしょう。

日本の外貨準備高は2022年10月末時点で1兆1946億ドルにも達しており、うち有価証券(おそらく大部分は米国債)と預金だけで1兆0783億ドルに達するのですが、外貨準備の購入時平均為替レートは、1ドル=100円前後です(『為替介入で2兆円の利益:安易な増税は「Z」の陰謀か』等参照)。

現在の為替相場が1ドル=140円だとすれば、少なく見積もって40兆円の含み益が生じている計算でしょう。なぜこれを活用しようとしないのか、理解に苦しみますが、「腐敗のトライアングル」の一角を占めるオールドメディアがから、この手の主張が出てくることはほとんどありません。

国民民主党が補正予算案に賛成

ただ、現代の日本では、その「腐敗トライアングル」の一角である、オールドメディアの情報統制力が、音を立てて崩れ始めているのも事実です。実際、テレビの視聴時間、新聞の実売部数は右肩下がりで減っていっているからです(『儲からないけれどTVer注力せざるを得ないTV業界』等参照)。

そうなると、オールドメディアの崩壊により、まず直接的に大きな影響が出始めるのは、なんといっても野党ではないでしょうか。

当ウェブサイトとしては、あまり特定の政党を褒めることは避けたいとは思っているものの、ここで少しだけ動きを取り上げておきたいのが国民民主党です。

国民民主党といえば、旧民主党、旧民進党の「片割れ」のようなものであり、2020年には議員の多くが立憲民主党に移籍してしまい、現在は非常に小規模な政党ではあるのですが、同党の動きはなかなかに興味深いものです。というのも、同党は昨日、政府提出の補正予算案に賛成したからです。

【衆予算委】政府提出の令和4年度補正予算(第2号)に賛成

―――2022.11.29付 国民民主党HPより

国民民主党が補正予算に賛成した理由については、同党が提案してきた電気料金の引き下げ策などが盛り込まれているからだそうです。

このあたり、国民民主党の政策が正しいかどうかは別として、少なくとも予算案や法案について、是々非々で賛成したり、反対したりするのは、政党としては正しい姿ではないでしょうか。

組替動議は否決されたが…主張自体はまっとう

ちなみに国民民主党は29日の補正予算の採決に先立ち、こんな「組替動議」も提出しています。

物価高等が国民生活を直撃していることを受け、消費者負担を速やかに軽減するための所要の予算措置を講じるもので、①『インフレ手当』として10万円の現金給付、②トリガー条項凍結解除によるガソリン減税、③再エネ賦課金の徴収停止による電気代値下げ、④LPガス使用世帯補助を行うこととしている。また、追加歳入として外為特会の一般会計への繰入れについても提案した」(※「物価高等」などの誤植は原文ママ)。

この組替動議、経済専門家としては、どれもまっとうなものではないかと思えてなりません。とくに外為特会の一般会計への繰入については、当ウェブサイトで議論してきた内容を踏まえれば、十分に合理的な発想でもあります。

そして、組替動議自体は否決されてしまいましたが、共同通信には昨日、こんな報道も出てきました。

防衛財源に外為特会剰余金の活用検討

―――2022/11/29 18:22付 Yahoo!ニュースより【※共同通信配信】

本文はほとんどなく、情報の出所もあいまいですが、事実ならばこれも非常に良い動きです。やはり、こうした動きが出てくることも、国民民主党が野党でありながら、(少なくとも経済的には)まともなことを主張しているということの裏返しなのかもしれません。

TBS「国民民主党は野党であるにもかかわらず賛成した」

ただ、ここでうっかり、「野党でありながら」、という表現を使ってしまいましたが、これは暗黙の裡に、「野党は何でも反対するものだ」、という社会的コンセンサスが存在しているという意味でもあります。いや、正確に言えば、オールドメディアがそのような印象を刷り込んできた、というべきでしょうか。

その証拠でしょうか、昨日はTBSのオンライン版に、こんな記事が掲載されていました。

【速報】国民民主がまた予算案賛成へ

―――2022年11月29日 11:13付 TBS NEWS DIGより

記事タイトルを見た瞬間、国民民主党が予算案に賛成することが、まるで異例なことであるかのような言い草です。しかも、TBSの記事本文では、こうも述べます。

国民民主党は野党であるにもかかわらず、予算案に賛成し続けるなど、与党への接近が指摘されていて、他の野党などからは『もはや与党』と批判する声があがっています」(下線は引用者による加工)。

…。

この記述、裏を返せば、「野党は予算案に反対しなければならないものだ」、などとTBSが認識している証拠でしょう。これこそまさに「腐敗トライアングル」の発想のひとつにほかなりません。

苛烈な偏向報道の末に自民党を下野させた2009年8月の総選挙のときから、オールドメディアの報道姿勢はまったく進歩していないのでしょうか?

参院選ですでに結果が出始めている

ただ、人々がオールドメディアの影響を受けなくなり始めていることで、オールドメディアがなにを唱えようが、私たち有権者の間でも「良いものは良い」、「悪い者は悪い」と自然に判断できる人が、急速に増えつつあるのかもしれません。

実際、『過去7回分の参院選比例で振り返る「民主党系の凋落」』でも触れたとおり、今年7月の参院選では、比例代表で自民党が安定した戦いぶりを示しただけでなく、立憲民主党や日本共産党、公明党といった利権政党が議席を減らしています。

これも、日本社会から(徐々にではあるにせよ)オールドメディアの影響力が排除されつつある証拠ではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    素朴な疑問ですけど、国民民主党も日本の議員の集まりである以上、「補正予算が採択されないより、採択された方が日本にとって、まだましだ」と思えば、予算案に賛成するのは当然ではないでしょうか。なにしろ、与党か野党かは、次の選挙結果次第では変化することもあり得ますが、日本のために働く国会議員は、当選すれば変わらないのですから。(もちろん、この国民民主党の判断が間違っていると有権者に思われれば、落選することもあります)

  2. 七味 より:

    >国民民主党は野党であるにもかかわらず

    言われてみるとおかしな表現ですね♪
    政党は自身の政策実現のために結成されるものだし、国会の議論は実施する政策を練り上げて取捨選択のためのものだと思うのです♪

    だとすると、野党だったとしても自らの政策が反映されれば、政府提出案に賛成することもあると思うのです♪

    野党には、反対以外の選択がないというなら、国会での議論なんかせずに、さっさと多数決取って決めたら良いと思うのです♪

  3. ななし より:

    TBS といえばオウム真理教の幹部に動画を見せて坂本堤弁護士襲撃のきっかけを作ったテレビ局ですね
    何でのうのうとこの世に存在し続けているんですかね

    1. 星のおーじ より:

      >>何でのうのうとこの世に存在し続けているんですかね

      韓国勢力の支援じゃないかと邪推します。

      1. 七味 より:

        放送局が独自の見解を持ってても良いんだと思うのです♪
        だから、いっそ放送法の中立義務を外して、電波割当はオークションにしたらスッキリすると思うのです♪

    2. 朝日新聞縮小団 より:

      TBSは過去には統一教会のことも合同結婚式やらテッシーやらいって長い時間おもしろおかしく取り上げ続けてましたね。
      とても霊感商法をする危険なカルトという扱いの取り上げ方では無かったです。
      あれで存在を知って信者になった人も大勢いることでしょう。
      それが今や朝から晩まで統一教会関連で自民党を批判してるのですから凄いですよ。
      まあ無恥なんですよ無恥。

      1. オタク歴40年の会社員です、よろしくお願いいたします より:

        関西の毎日放送は
        在日放送と呼ばれるくらい
        偏向報道が酷いです。

  4. ちょろんぼ より:

    TBSが国民民主党に文句を言うのは当然です。
    「野党は自民党に対し、何でも反対しないといけない」
    という大義がある事になっておりますので、
    野党なら反対しないといけないんだという事でしょう。
    これは現在世間を賑わしている統一教会問題と同じですね。

    統一教会問題といえば、公明党が何一つ言わず
    穴の中に潜り込んで、オラ関係無いだと決め込んで
    おりますが、統一教会関連で作られた法律が
    創価学会にも向かうという事を考えられて
    いないのでしょうか?
    もし、私が創価学会被害者の弁護士だったら
    必ず援用すると思うのですが? さて。

  5. 砂漠の反乱 より:

    昨夜BS-TBSで放送の報道1930。「岸田政権 ”重要局面”の舞台裏 防衛費大幅増の財源めぐり党内暗闘?安倍派は…」とのタイトルで、防衛費増額の財源が主要テーマの一つでした。見逃し配信で再度みてみましたが、放送開始後23分~44分のあたりでのやり取りは正に偏向報道の極みではなかろうかと感じました。ゲストコメンテーターの一人である政治評論家T氏が防衛国債でのfinanceもあり得ると述べたのに対して、MCのM氏、大学教授のK氏、レギュラーコメンテーターのT氏の各氏がそれぞれ財政規律のたががはずれた防衛費増強あり得ない、国債など問題外と口を極めて強調し、国債派を非難しておりました。特にMC自身があれほど率先しての国債派非難というのは、やはり報道番組として守るべき一線を越えていると感じた次第。加えて、財務省主導の緊縮財政がこの20数年の長きにわたり日本のみが殆どGDPを伸ばしておらず、国力低迷の大きな原因となっている事を理解しようとせず、財政規律=国力維持の源泉とまで放送でのたまう事にも驚愕至極致しました。そういえば、しばらく前に、同じ局の定時ラジオを何気なく聞いていたところ、放送の最後の項目として、グラミー賞候補として韓国の某グループがノミネートされた事が報道されていました。受賞ならいざしらず、他局では候補段階であまり報道されておらず、又ノミネートならば日本人もノミネートされているのに、ともかく韓国偏向重視のニュース報道にかなりの唐突感を覚えた次第です。その真偽は知りませんが、1960年代に半島関連の組織とのfrictionでこの局が半島出身者採用特別枠を設けた事、これもこのような唐突感を覚える報道の原因の一つかもしれません。いずれにしても、国防という国家の根幹にかかわる事については、やはり冷静にそして真剣に考えた上での公正なる報道姿勢が強く望まれますが、上記のようなメデイアにとっては最早既に遅きに失した段階とも思われます。

  6. 犬HK より:

    さすがは飛ばし(To Ba Shi)のTBSですね。

    トピックのタイトルをBTSと誤読してしまいました…。

  7. コメント55号 より:

    >(※「物価高等」などの誤植は原文ママ)

    「物価高等」は、「物価高騰」の誤植と解釈できますが、
    「ぶっかだかなど」とも読めるので、誤植とは
    言い切れないと思います。

  8. 匿名 より:

    何故野党は、与党の予算案に反対しなければならないのでしょうか?
    野党といえども、日本国の政党なのですから、是々非々で判断するのが当然でしょう。
    TBSは、野党は、何でも反対するのが当然と思ってらのでしょうね。
    これは、放送法に違反していると思われます。

  9. カズ より:

    >TBS「国民民主党は野党であるにもかかわらず賛成した」

    野党の存在意義は政策改善であり、政権交代ではないのです。
    アンチ自民一辺倒じゃ、政権担当なんてできっこないのかと。

  10. 農民 より:

    立憲「与党案に賛成する野党は三流だ。与党案に反対する野党は二流だ。自党案にすら反対する我々こそが一流だ。」

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

カズ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告