韓国紙社説「懸案解決なき韓米日軍事訓練を懸念する」

韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)には今朝、「韓日間の懸案解決なきなかでの韓米日軍事訓練を懸念する」とする社説が掲載されました。諸懸案を発生させておきながらそれを解決していない韓国を自己批判する記事かと思いきや、そうではなくて、諸懸案の原因を日本に押し付けたうえで、軍事訓練を批判するという本末転倒ぶりです。もっとも、結論だけでいえば、「一周回って同意」といったところでしょうか。

長年、コリア・ウォッチングをやっていると、だんだん感覚がマヒしてくるためでしょうか、たいていのことにはあまり驚かなくなってきてしまいます。常識的な日本人が目にすると思わず驚いて眉を顰めるような話題であっても、コリア・ウォッチャーであれば、「あぁ、こんなのよくある話題だね」、などと受け流してしまうのです。

ただ、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に本日掲載されたこんな「社説」を読むと、さすがに「驚く」という人は多いのではないでしょうか。

[社説]韓日間の懸案解決なき中での韓米日軍事訓練を懸念する

―――2022-09-30 07:09付 ハンギョレ新聞日本語版より

これは、日本の海上自衛隊と米韓海軍が30日、日本海の海上で対潜水艦訓練を実施することに関連するもので、ハンギョレ新聞は次のように述べます。

韓米日の共同軍事訓練は2017年4月以後5年6ヵ月ぶりで、東海で実施されるのは初めて。北朝鮮の軍事的脅威の危険が再び高まったのは事実だが、韓日間の懸案解決の進展がない状況で、韓国政府が日本との軍事協力だけを急ぐのは懸念すべきことだ」。

「東海(とうかい)」というのは聞きなれない単語ですが、これは「日本海」の韓国国内における呼称です。

それはともかく、日本の保守的なメディア(たとえば産経新聞あたり)が「日韓間の懸案解決の進展がない状態で日韓軍事協力が進むのは懸念すべきこと」、と主張したのならばまだ話はわかるのですが、これを韓国の左派メディアであるハンギョレ新聞が主張したというのは、なんとも驚きです。

そもそも、日韓軍事協力は(表向きは)日韓双方にメリットをもたらすものであり、日韓諸懸案とは分けて考えるべきものだ、というのが、(おそらくは)日米韓3ヵ国政府の共通した考え方なのだと思います。

正直、著者自身にも「韓国が解決すべき日韓諸懸案を放置しているなかで、日本が韓国に手を差し伸べるのはおかしいじゃないか」、という感覚はあるのですが、それを韓国メディアが主張して良いものではありません。なぜなら、諸懸案の原因は100%、韓国側のみにあるからです。

ところが、ハンギョレ新聞はこれについて、こう述べます。

だからといって、非常に敏感な事案である日本との軍事協力を世論の同意なしに急いで進めるべき理由はない。強制動員問題、日本の経済報復措置など懸案の解決に全く進展がなく、日本は『韓国が国際法を違反した』と主張しながら、謝罪と賠償の意向も示していない」。

このような状況で、軍事的協力だけを先に強化することを国民が納得できるだろうか。しかも日本が『領土』と主張して紛争地域化を試みている独島(ドクト)から遠くない東海上の公海区域で訓練を行うとなると、警戒感が大きくならざるをえない」。

なかなかに強烈なブーメランです。

そもそも自称元徴用工問題は国際社会から見ても立派な「韓国の純然たる不法行為」であり、日本が韓国に謝罪と賠償をしなければならない筋合いのものではありません。むしろ謝罪しなければならないのは、虚偽の罪をでっち上げて日本の名誉と尊厳を傷つけ続けている韓国の側でしょう。

また、竹島に「独島(どくとう)」などと勝手にウソの名前を付け、「領土」と主張して紛争地域化を試みているのは韓国の側であり、これも強烈な自己投影そのものです。

もっとも、ハンギョレ新聞の主張にある「結論」そのものは、一周回って、日本の保守派にも受け入れられるものであるのかもしれません。

諸懸案解決の責任が日本の側にあるのか、韓国の側にあるのか、という「事実認定」の部分は異なるにせよ、「諸懸案を放置したままでなし崩し的に日韓軍事協力を進めるのはいかがなものか」、という点に関しては、たしかに正論ではあるからです。

というよりも、日韓が軍事協力を進める大前提である、2018年12月の火器管制(FC)レーダー照射事件を巡る韓国側の日本への謝罪もまだですし、韓国が主催した国際観艦式で、旭日旗の意匠をかたどった自衛艦旗を掲揚しないように要求したことの落とし前もつけられていません。

正直、「日韓・日米韓協力」も、そもそもの前提条件として、韓国が日本や米国にとって、軍事的に「信頼できる相手である」という部分において、大いなる疑念が生じる項目のひとつであることは間違いないでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. sey g より:

    韓国の行動というか、半島の行動は李氏朝鮮、いやもっと前 百済の時から同じです。
    問題を起こすのは半島。
    解決するのは日本。

    なら、日本の行動も同じかと言えばそうではありません。
    何故なら、日本は水に流す文化で 半島の様に千年恨むような根性はありません。

    しかし、それではいけません。
    日本も韓国の様に 半島の悪行を永遠に覚え 半島に対する態度は常に同じにしなければなりません。
    ただ、今回の国際法違反は韓国による解決は無理なので、日本さえ変わらなければ今の関係は永遠に続けられます。
    日本さえ変わらなければ。

  2. 元一般市民 より:

    韓米日の対潜水艦戦訓練、共に民主議員が日時と位置を公開…韓国国防部「極めて遺憾」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/42096e9864141c9ebdb45aac7df1023dadee095b

    どうやら勝手に情報を漏らしてしまった様ですが、こんな国と付き合っていて大丈夫なのでしょうか?米軍は怒らないのかな?

  3. 引きこもり中年 より:

    素朴な疑問ですが、日米(韓)の最大の懸案は、「米中が本格的に対立した時、韓国はどうするのか」、「半島有事の際に、韓国は、どこを攻撃するのか」ではないでしょうか。
    蛇足ですが、もし米中本格対立や半島有事が起きたら、「日本は中立を守るべきだ。日本の国論は二分されている。状況が結論を押し付けるまで議論を続けるべきだ」という日本の有識者が、現れるでしょう。もっとも「半島有事が半島内部で収まっている限り、日米中で暖かく見守ろう」というのなら、日本人全員が賛成するかもしれませんが。
    駄文にて失礼しました。

  4. 七味 より:

    どうせ韓国政府は「日本の謝罪と賠償が前提」って結論から逃れられないと思うのです♪

    だったら日本と交渉とかするより、さっさと中国に引っ付いて、東アジアから米国を追い出して、昔の中華圏再構築を目指した方が早そうに思うのです♪

    そんな状況になれば、日本も約束がどうのこうの言ってる余裕は無くなると思うのです♪

    できるかどうか、できたとしてもいつになるのかは、別問題ですけどね♪

    1. 七味 より:

      5時に掲載されてた「官民協議会の次は公開討論会?韓国政府が徴用工で迷走」へのコメントのつもりだったのです♪

      でも、まぁいいっか♪

      1. 農民 より:

        >でも、まぁいいっか♪
         まさに。違和感が無さすぎて、投稿先が違うなど全く気付きませんでした。民事でも、軍事でも、経済でも、一事が万事ってことですよねぇ……

    2. 匿名 より:

      日本は謝罪も賠償も何度も何度もやっています。それでも見えない、聞こえないとか言うならば、全く言葉も何もかも通用しないという事です。
      話の不可能な相手は相手にすらならないので、話の通じる中国に引き取って貰いたいものです。

  5. 価値観が違いすぎる より:

    韓国お得意のツートラック理論はどうしたのでしょうかね。

  6. はるちゃん より:

    日本に向けては、韓国と協力したいなら日本が譲歩しろ。
    アメリカに向けては、日米韓の協力がうまく行かないのは日本が悪いからだ。
    いつもの夜郎自大ですね。

  7. 迷王星 より:

    >「日韓間の懸案解決の進展がない状態で日韓軍事協力が進むのは懸念すべきこと」

    韓国の左派メディアであろうと右派メディアであろうと,韓国側のメディアがこういう主張で韓国内に論陣を張って,米国政府が求め続けている日韓や日米韓の軍事協力に対して韓国民の多くが否定的態度を示し,一応は保守派とされている尹政権も日韓のみならず日米韓についても共同軍事訓練にどんどん否定的になってくれれば,日本としては

    韓国は基本条約も守ろうとせず,バイデン大統領がオバマ政権時に熱心に仲介して下さったお蔭で漸く合意した慰安婦合意の合意内容も実質的に全て破棄してしまった国です.その上,GSOMIAを破棄しようと試みたり,極東の共産化の拡大防止と法の秩序の維持のための日米韓による共同演習すら北京の顔色を窺って拒否し続ける始末です.韓国を自由と民主制の価値観を共有する我々の陣営に留められるという期待は,そろそろ捨てて朝鮮半島が数千年来そうして来たように韓国もまた中華王朝の属国へと戻ろうとしている現実から目を逸らさず粛々と受け止め,我々自由民主主義同盟の極東戦略を韓国抜きの形へと改訂すべきではありませんか

    と米国側に韓国切り捨てを説得することが力を得るのですから.

    米国が韓国を捨てる決断をしない限り,韓国は日本にとって宿痾であり続けるのですから,日本にとっての韓国問題の解決とは,如何に速やかに米国に韓国放棄を納得させるかに尽きます.

    韓国問題の解決を韓国相手にやろうとすれば,解決策は日本の一方的な譲歩以外にありません.何しろ相手である韓国の(少なくとも対日交渉用の)辞書には「譲歩」や「妥協」の文字は無いのですから.

    繰り返しますが,日本人が素朴な感情として納得できる韓国問題の解決は,米国に韓国放棄を受け容れさせて初めて可能になる(韓国と実質的に絶縁する=韓国がどんな不当な判決をしようが徹底的に無視できる,という形の最終解決として可能になる)のだ,韓国を相手に交渉して直接的に解決しようとしても日本側にとっては苦々しい解決以外は不可能だ,と我々日本国民そして日本政府は強く認識し,対韓問題解決の日本側の努力は米国への働きかけへと重心を移すことが不可欠です.

    つまり,日韓問題の解決の現実的に可能な形としては,(今回の記事には一覧表が提示されていませんが)新宿会計士様の一覧(表現は多少違ってしまいますが,趣旨は保てていると思います)と対応付けると

    A.日本人の素朴な感情(つまり正義感など)に沿った解決は
    ・日韓共に妥協・譲歩せず最終的に日韓絶縁となる,という形の解決

    B.日本人にとって苦々しい解決は
    ・日本だけが一方的に譲歩して韓国が利益を得る解決

    にしかなり得ず,

    C.本当の意味での日本人の素朴な感情(つまり正義感など)に沿った解決は
    ・韓国が条約や合意を順守する形の解決

    は,韓国内での初等中等教育における反日教育が世代を超えて拡大再生産される状況となってしまった以上,原理的に不可能だ(韓国人の圧倒的多数を拘束して洗脳し直すなどという非人道的な行為が現実問題として出来ない以上は,ですが)ということです.

    つまり,日本としてはCの道は現実問題として既に不可能になってしまっているのだから,Aを目指さねばならないのです.そして,A=日韓絶縁の実現のためには米国が韓国切り捨てを受け容れアチソン・ラインのアイデアを米国の極東戦略に復活させることが不可欠ということです.

    いつまでもCの解決を求めても時間と労力の無駄です.日本はAを目指した対米外交を具体的に展開する必要があります.

    そのためにも外務省事務次官コースは従来のアジア大洋州局長でなく,昔のように北米局長を最優先候補とせねばなりません.

    日本にとって極東で価値を共有できる唯一の「国」は(皮肉なことに国交が絶えて国家として承認していない)台湾だけということです.価値を共有できない国々とは大きなカントリーリスクが存在する事実を日本国民や日本企業に明確に繰り返し警告して,後は自己責任に任せるということです.そして,そういう価値を共有しない国々との外交を専門とする外交官は日本外交の実務トップには置かない(事務次官には据えない)というのが上の段落の主張の意味です.

  8. taku より:

     韓国ギャラップによれば、日韓関係について、「日本の態度変化がなければ急いで改善する必要はない」が64%、「一部譲歩してでもできるだけ早く改善すべきだ」が26%だそうです。
     ユンソンニョル政権は、韓国世論の説得が出来なかったのでしょう(説得に乗り出す気配もなかったけれど)。
     これで、いわゆる徴用工問題は当面解決しないことが、ほぼ確定です。
     ユンソンニョル政権は、米国に説明出来るのでしょうか。米韓関係も危うくなりそうです。
     我が国としては、これまで通り、「一貫した立場」に基づき、「問題を一方的に起こした」韓国が「日本が検討できる対案」を提示することを待つ、で良いと思います。それまでは首脳会談は開かず、日韓関係は段階的縮小に努めましょう。約束を守らない国と、いかなる新たな関係も築くことはできません。
     

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告