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安倍総理の台湾外交に中国が反発

安倍晋三総理が昨日、台湾のフォーラムにリモート登壇し、「台湾のTPP参加を支持する」、「台湾有事は日本有事だ」などと発言。これに中国が猛反発したようです。安倍総理は首相在任中にはなかったフリーハンドを得たようであり、今後はさらなる活躍も期待できそうですが、それにしても中国というのも、本当にわかりやすい国だと思う次第です。

安倍総理は退任後も存在感

安倍晋三総理といえば、2012年12月26日に再登板して以来、2020年9月16日に辞任するまで、連続してじつに2822日にわたって在任しただけでなく、第一次政権も含めて通算3188日在任したという、「史上最長の総理大臣」でもあります。

ただ、その安倍総理は退任後、形式的には一介の衆議院議員ではありますが、「細田派」を引き継ぎ、自民党内最大の派閥である「安倍派」の会長に就任するなど、政界に存在感を示しているようです。

いや、安倍総理は首相職を辞したことで、むしろフリーハンドを得たようなものといえるでしょうか。

安倍総理が「台湾のTPP参加支持」「台湾有事は日本有事」

こうしたなか、台湾国営メディア『中央通訊社』が運営する日本語版ウェブサイト『フォーカス台湾』によると、安倍総理は台湾との関係で興味深い発言をいくつかしたようです。

安倍元首相、台湾のTPP参加を支持 中国へは自制ある行動呼び掛け

―――2021/12/01 10:09付 フォーカス台湾より

フォーカス台湾によると、安倍総理は1日、台北市内のフォーラムにリモートで登壇し、次のように述べたのだそうです。

  • 台湾のTPP(環太平洋経済連携協定)参加を支持する
  • 習近平(しゅう・きんぺい)主席と中国共産党のリーダーたちに、繰り返し、誤った道に踏み込むなと訴え続ける必要がある
  • 台湾有事は日本の有事でもある

このあたり、外務省が刊行する『令和3年版外交青書』の55ページ目を読むと、日本政府は台湾について、次のように認識しています。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」。

この表現を読むと、最上位の絶賛であることがわかる反面、中国との関係もあるからでしょうか、外務省としては台湾を正式な「国」とは認めていません。

こうした状況で、安倍総理のような影響力のある(しかし現在は公職に就いていない)人物が、ざっくばらんとした発言を続けることは、日本の国益と安全保障にとっては非常に良い影響を与えることが期待できます。

フォーカス台湾によると、安倍総理はまた、次のようにも述べたのだそうです。

日本と台湾がこれから直面する環境は、緊張をはらんだものとなる。自由で開かれた、民主主義の枠組みに、自分たちをしっかりと結び付ける努力を続けることが肝心だ」。

まさに、台湾に対する最大限の応援、というわけです。

わかりやすい!中国が安倍総理発言に猛反発

ところが、この安倍総理の「日本有事」という発言に対し、中国が反応したようです。

中国、安倍氏の「日本有事」発言に「でたらめ」猛反発

―――2021/12/1 20:40付 産経ニュースより

この安倍総理の発言に対し、産経ニュースによると、中国政府外務部の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は1日の記者会見で、「台湾問題で公然とでたらめを言った」と非難し、「強烈な不満と断固とした反対」を表明したうえで、「外交ルートを通じて日本側に厳正な申し入れを行った」とも明らかにしたのだとか。

なんとも、わかりやすい国です。

日本が台湾と関係を深めることが、中国にとっては本当に嫌なことなのでしょう。

「自分たちにとってそれをされたら困ること」を日本がやろうとしたら、直ちに舌鋒鋭く大声で反応してくれるので、ある意味で日本にとって大変にやりやすい国でもあります。

ちなみに産経によると、汪文斌氏は台湾について、「中国の神聖な領土」、「第三者が勝手に手を出すことを絶対に許さない」などと牽制したうえで、「軍国主義の道へ再び向かい、中国人民の譲れない一線に挑む者は誰であれ、必ず頭をぶつけ血を流すだろう」と猛反発した、としています。

動物の世界でも「弱い者ほどよく吠える」というのは有名な話ですが、「軍国主義の道」とは中国が現在歩んでいる道そのものであり、また、「頭をぶつけ血を流す」などとやたらと大袈裟で勇ましい表現は、北朝鮮かどこかの指導部が述べている内容とソックリです。

自民党側の政治家がしっかりしてくれることが重要

いずれにせよ、安倍総理に引っ張られる形であるとはいえ、日本外交が良い方向に変わろうとしていることについては、日本の有権者としては素直に歓迎して良い話であることは間違いありません。

あるいは、「財務省の飼い犬」とも揶揄されることもある岸田文雄・現首相が頼りなさげに見える分、安倍総理を含めた自民党の側に、しっかりとした国家観を持った政治家が必要なのかもしれません。

(※さすがに「財務省の飼い犬」は言い過ぎました。大変失礼しました。岸田首相ごときに例えられて気を悪くしたであろう、全国の飼い犬の皆さまには、深くお詫び申し上げたく存じます。)

新宿会計士:

View Comments (30)

    • だんな様
      はい。効いてますね。
      出典がハフポストですが、以下は事実だと思います。
      中国の文句に対し、駐中国日本大使館が発表した反論の内容は次の3項目。
      1.政府を離れた方の御発言の一つ一つについて政府として説明する立場にない。
      2.台湾をめぐる状況について日本国内にこうした考え方があることは中国として理解する必要がある。
      3.中国側の一方的な主張については受け入れられない。
      いやこれ、ひょっとして、安部さんも外交当局も米国も、「密室での会議ちゃんとやっている」気がしてきました。

  • 独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
    次は岸田総理が、安倍元総理の台湾政策に引っ張られるか、そして中国が、その可能性をどう考えて行動するかになるでしょう。
    蛇足ですが、沖縄の石垣島の隣が台湾なので、台湾政策が次期参院選にも影響すると考えるのは考えすぎでしょうか。
    駄文にて失礼しました。

    • 台湾に最も近いのは与那国島で111kmしか離れていません。与那国島から台湾が見えることもあります。台湾有事の際に両陣営とも与那国島だけを避けて通ることの方が難しいので、必然的に日本の領土も巻き込まれるのです。

      • 匿名29号 様
        憲法9条信者、特に沖縄の信者は、台湾有事でも、(日本が憲法9条を正しく守っていれば)与那国島は巻き込まれないと信じているのでしょう。つまり、与那国島が巻き込まれたら、「自民党政権が、憲法9条を正しく守っていなかったからだ」と言い出すのです。(そうなれば、中国も、日本の憲法9条信者を煽るでしょう)
        蛇足ですが、与那国島程度(?)なら、朝日新聞が「誤射かもしれない」と言い出す可能性があります。
        駄文にて失礼しました。

        • 台湾の西側が中国大陸に面しているのに対して与那国島は反対側の東に位置しており、中国がここを占領すれば台湾の東側の軍事拠点を攻撃するのに大変都合のよい位置です。誤射程度では済まないでしょう。台湾有事は大部分の日本人が思っているような対岸の火事ではありません。

      • 匿名29号様。

        与那国島に一度観光で行きました。
        日本最西端の地から台湾🇹🇼を望みましたが、残念ながら見えませんでした。で、自衛隊の宿営地(工事中)を見学して空港から那覇経由で家に帰りました。与那国島は良いとこだと思いました。

        蛇足です。
        旅行で記憶に残ってるコト、つまらないコトが記憶に残ってます。石垣島から与那国島に(飛行機ではなく)⛴フェリーで渡ったコト、日本最西端から(何も無い)海を見たコト。モ〜チョット記憶に残る事をと、思っています。

        追記
        オミクロン株で旅行が遠くなりました。
        だんな様には旅先の『美しい』をリポートしたいと思っていましたが当分リポートは出来そうにありません。『残念』

        • 111kmというと大阪ー四日市市程度離れているので、余程空気が晴朗でないと見えないと思います。日本平から富士山(約80kmくらい?)が見えるのよりもっと確率は低いでしょう。

    • すみません。追加です。
      台湾有事にからんで、(ブースター接種も含めて)自衛隊員への新型コロナワクチン接種が、問題にならないのでしょうか。

  • パンダをことさらもてはやし中国を礼賛する番組をNHKや民放が流して中国が世界の嫌われものでないことを印象付けようとする動きが強まりそうです。

    • 先週のNHKは大英博物館の陳列物は原産国から不当に持ち出した泥棒コレクションだというのをやってました。仏像を韓国に盗まれた住職が韓国の裁判に出席しようとするタイミングでこのような放送をするNHKは相当汚染されています。

  • 安倍さんがこうやって強くハッキリと物を言うのは、鈍そうな岸田氏対策としてもいいかも知れません。
    黙っているとあらぬ方向に行っちゃいそうです。

  • 清朝の頃は台湾を化外の地、化外の民として国家統治の及ばないところとしていたのに、中共は一度も支配したこともない台湾を「中国の神聖な領土」、「第三者が勝手に手を出すことを絶対に許さない」などと利用価値があるとなると尖閣のように横取りしようと画策する。
    岸田総理、リン外相しっかりしてくださいよ。

    • 私は中国で働いていたことがあるのですが、私も心の中でリン外相と呼んでいました。その場合中国語読みの発音が リン・ファンチョン になるのですね。なんとなく女性名みたいだなあと思いました。関係ない話ですみません。

    • 台湾を化外の地の下りは過去に我が国が台湾で邦人が襲撃を受けた事に対処を求めたさいに清国政府が言った言い訳ですね。我が国が「台湾に清国の施政が及ばないと言うならば、我々日本が直接対処する」旨返答して慌てて取り消したそうです。

  • 元総理の肩書きで活動してる政治家として、先日日韓関係について語った福田元総理を思い出しました。

    既に引退している方ですが、正直なところ韓国への理解が河野談話の頃で止まってる印象でしたね。

    鳩山由紀夫氏は中韓朝の犬として活動している様子。
    菅直人氏は北の犬がメインですかね。
    野田佳彦氏は…余り見えてこないですね。

    • そういう噴飯ものの活動も日本は今まで禁止してこなかったからね

  • 中国政府も所謂戦狼外交を始めてから、言動が一気に野蛮で品性が無くなりましたね。
    あれで国際社会で支持を集められると思っているのでしょうか?

    • haduki様

      12月1日付けの産経新聞の記事に興味深い記事がありました。
      webでは有料会員記事になりますが、ソースは置いておきます。

      「害虫」投稿、背景に出世レースか 中国外交官が強化するSNS発信
      https://www.sankei.com/article/20211129-XFOR4JK5CVJUZJ7PA7CT3H5RBI/

      要するに如何にして為政者(習近平)に媚を売り、その結果、何処まで出世が出来るかがかかっているのです。
      国際世論の支持が得られなくても、為政者や(洗脳済の)人民から支持を得られれば問題ないのです。
      だから彼らは会見で「内政干渉をするな!」と強弁を弄するのです。

  • 「日本ボロカス発言」昨夜は中国駐在大使呼びつけがあったようですね。

    中央通訊記事 2021-12-1 ▼胡言亂語妄議中國內政
    https://www.cna.com.tw/news/acn/202112010262.aspx
    によれば、汪文斌報道官声明は原語では
    (台灣是)「中國的神聖領土,絕不容外人肆意染指」
    (日本曾對台灣殖民統治長達半個世紀)
    「犯下了罄竹難書的罪行,對中國人民負有嚴重的歷史罪責」
    「膽敢重走軍國主義老路,挑戰中國人民的底線,必將碰得頭破血流」

    当方が twitter で見かけた動画(国内TV報道の切り取り)では安倍元首相発言は以下のように明快なものでした。
    「台湾有事それは日本有事です
    「すなわち日米同盟の有事でもあります
    「この点の認識を北京の人々は、とりわけ習近平(言い直して)習近平主席は断じて見誤るべきではありません」

  • 中共に都合の悪い真実を有力な政治家がこの機会に発言して騒ぎを大きくして欲しいですね。
    「サンフランシスコ講和条約で台湾は放棄したのであって、何処かの国に返還したり割譲したものではない」とか「第二次世界大戦の戦勝国は中華民国であって中華人民共和国ではない」とかさ。
    中共の正当性が揺らぐようなことをチクチク責めて欲しいね。

    • 「中華を名乗る国()が二つ存在するのは大陸で始まった内戦がいまだ終結しないためである」とか「台湾島に中華民国が存在しているのは軍隊敗走の結果である」とか。

  • 現首相ではなく、元首相(現役議員)というのがミソですね。しかも安倍は名前も顔も売れている方だし。
    大抵の国は恫喝とマネーで完全に沈黙させられるのに、台湾と日本くらいです面と向かって楯突いてくるのは。中共も「グヌヌ・・・小癪な!」となっていることでしょう。

    この調子で盟友とともに着実に地固めをすすめてもらいたい。防衛費も上手に増やさないとですねー。

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