徴用工弁護士の「交渉提案」を日本政府が拒絶した意味

韓国メディアに本日、自称元徴用工問題を巡って、「日本が被告企業の謝罪を拒絶した」とする話題が出ていました。正直、これは「日韓双方が困っている」という問題ではなく、「韓国が一方的に困っている」という問題であるということが、よりいっそう浮き彫りとなった格好です。こうしたなか、日曜日の総選挙の結果だけで見るならば、自称元徴用工問題については日韓間に懸案として突き刺さったまま、将来的には日韓関係が自然消滅に向かう、というシナリオも決して絵空事ではなさそうです。

「なんで日本が謝罪するんですか?」

先日の『「徴用工解決は日本の謝罪が前提」という議論のおかしさ』では、いわゆる自称元徴用工判決、つまり韓国の裁判所が日本企業に対し、「朝鮮半島で戦時中、強制徴用された」と自称する者たちやその遺族らへの賠償を命じた判決に関する、「奇妙な論調」を取り上げました(未読の方は、よろしければ是非ご一読ください)。

この問題、そもそも論として「ありもしない歴史問題を韓国側が捏造して日本を糾弾している」、そして「1965年の日韓請求権協定に反する判決を下した」という、韓国の国を挙げた日本に対する「二重の意味での不法行為」です。

ところが、その「二重の意味での不法行為である」という点を無視するような論調が、日本のオールドメディアの側からも出て来ているというのが、おかしなところです。

たとえば、共同通信が10月23日付で配信した『韓国政府が肩代わり案を検討/元徴用工への日本企業賠償金』という記事では、「日本の謝罪が条件になる」、「売却されれば日本政府の報復措置は必至」、「対策の検討が急務」などとする記述が出て来ます。

自称元徴用工側が日本企業の資産を売却すれば日本政府が報復するのは当然の話でしょうし、韓国が一方的に作り出した問題で、どうして「日本の謝罪が条件」になるのか、あるいはどうして「対策の検討が急務」なのか、まったく理解できません。

①~③の流れは論理的につながらないですよ!

この点、もちろん、現在の韓国が日本にとって、外交上も、防衛協力上も、経済・産業上も重要な相手国であるという事実は否定できません。

万が一、いますぐ「日韓断交」のような極端なシナリオが実現しようものなら、常時数万人は韓国に滞在しているとされる日本人の身の安全はもちろんのこと、北朝鮮と対峙するうえでの日韓防衛協力、半導体供給など日本の産業への影響などについても懸念しなければなりません。

ただ、先ほど紹介した共同通信の記事も含め、日本の側の論調を眺めていると、どうも暗黙の裡に、次のような流れを想定しているように思えてなりません。

  • ①日本にとって現在の韓国は、経済・産業上も、外交・安全保障上も、大変に重要な国である。
  • ②しかし、韓国が日本との間でさまざまなもめ事を起こしており、これらについて国際法や国際社会の常識に従った解決も期待できない。
  • ③だからこそ、日本が国際法に拘泥するのではなく、多少とも韓国に譲歩し、日韓関係の破綻を防ぐべきだ。

…。

このうち、①と②については多くの人にご賛同いただけると思いますが、③の部分については、違和感を持つ人が多いはずです。というのも、この③については、①、②の流れとはうまく接続していないからです。

この点、当ウェブサイトとしては、上記③のかわりに、次の④の文章を入れたら、この主張の筋がスッと通るのではないかと考えているのです。

  • ④だからこそ、日本は経済、産業、外交、安全保障などにおける韓国の重要性を下げるべきだ(いわゆる日韓テーパリング)。

こうした当ウェブサイトの認識は、日本の新聞、テレビを中心としたオールドメディアではほとんど見かけることがないものですが、それと同時に、この「日韓テーパリング」こそ、むしろ日本の国益にかなっているのではないかとも思います。

オールドメディアの考えが正しいのか、当ウェブサイトの考えが正しいのかについては、どうか当ウェブサイトの読者の皆さまにも一緒に考えていただきたいと思う次第です。

ハンギョレ「日本が被告企業の謝罪を拒否」

こうしたなか、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)には今朝、こんな記事が出ていました。

日本メディア「強制動員被告企業の謝罪、日本がすでに拒否」

―――2021-11-01 07:20付 ハンギョレ新聞日本語版より

これは、日本の読売新聞が10月28日付で日韓消息筋の話を引用し、「被告企業の謝罪などを解決の糸口にする案は、韓国政府がすでに水面下で日本側に打診し、日本側が拒否する意向を伝えている」などと報じたとされることに関連する話題です。

ハンギョレ新聞からの孫引きで恐縮ですが、読売新聞は同日、「日本企業が和解協議に応じれば、その間は現金化手続を止める」という原告側弁護士の提案を、日本政府が拒否したため、「原告側が求める和解協議は実現しそうにない」と述べたのだとか。

当ウェブサイトではこの読売新聞の報道自体については紹介していませんが、じつはこの「日本が和解協議に応じれば現金化手続を止める」とする見解については、以前から韓国側で何度か出て来ている話題です。

実際、これらに関しては当ウェブサイトでも『「資産売却」騙る弁護士のインタビュー=自称元徴用工』や『「具体的現金化迫る」発言に見る、徴用工弁護士の焦り』などを含め、すでに過去に何度か紹介したことがありますので、覚えているという方もいらっしゃるでしょう。

端的に言えば、原告側の、そしてハンギョレ新聞に代表する韓国メディアの「焦り」のあわられと考えるべきです。

今回もハンギョレ新聞の記事では、原告側の弁護士がかつて同紙に「日本製鉄代表取締役、まずは謝ってください」などと題した寄稿文を執筆したとする話題を取り上げつつ、その弁護士の提案を「問題解決のための『最小限のマジノ線』」だと述べます。

正直、これが「マジノ線」というのもなんだかよくわからない考え方ですね。

むしろ困っているのは韓国の側では?

実際のところ、この自称元徴用工問題を巡って、本当の意味で「困っている」のは、日本の側ではなく、韓国の側です。そもそも論ですが、日本側の主張は、自称元徴用工判決そのもの、あるいはその判決に伴うすべての手続が違法だとするもので一貫しており、そこから一歩も動いていません。

一歩も動かない日本に対し、自称元徴用工側は一生懸命、「被害者は高齢だぞ」と情に訴えてみたり、「資産を売却するぞ」と脅してみたりしているのですが、残念なことに、おそらく日本の側では国民の大多数が「韓国のウソツキと約束破り」に対する憤りを感じているのが実情ではないでしょうか。

ハンギョレ新聞はまた、この弁護士が先月、「強制動員被害者と日本企業が直に会って議論する場を設ける」「その場が責任を持って実現されるなら、協議の期間中には日本企業の資産の現金化手続を停止する」などの「新提案」を提示したと述べています。

しかし、とても正直なことをいえば、むしろ日本企業としては差し押さえられている資産(日本製鉄と不二越については非上場の合弁子会社株式、三菱重工については商標権と特許権)を万が一売却されてしまったとして、実害はあまりありません。

というよりも、資産鑑定のプロフェッショナルの世界でも常に論点になる、非上場株式や知的財産権をどうやって売却するのかという「方法論」、「誰が買うのか」という現実的な議論をすっ飛ばして、「売却するぞ、売却するぞ」、などと脅されても、困惑しているというのが実情ではないでしょうか。

あえて三菱重工のケースで考えられるとしたら、強制売却の手続に付された商標権と特許権を「愛国的な金持ち」や政府系機関投資家などが競り落とすというシナリオがないではありませんが、三菱重工としてはその特許や商標が韓国国内で使えなくなるというだけの話であり、あまり実害はありません。

また、日本製鉄や不二越の場合、非上場合弁会社の株式の換価が行われたとしても、取締役会は譲渡制限に基づき名義書換を拒絶することができますので、株式を競り落とした者がそれらの会社の株主になれるわけでもありません。

それよりも、むしろ個人的には、強制売却が実現した場合に日本政府による報復措置のパッケージをこの目で実際に確認してみたいという気持ちの方が強いのですが、これはこれでまた別問題でしょう。

(※もっとも、『徴用工支援者「資産売却を延期する考えは決してない」』でも述べたとおり、三菱重工などが即時抗告を行っているのは制裁の準備に時間を要している日本政府の要請なのかもしれない、という可能性もありますが、この点については別論点なので本稿では割愛します。)

日韓テーパリングが最有力シナリオ

いずれにせよ、この自称元徴用工問題を巡って、現在のところ、理屈のうえではたとえば次の4つのシナリオが考えられます。

  • 自称元徴用工側が資産売却に踏み切ること
  • 韓国で強権的な保守政権が誕生し、すべての違法判決を無効化すること
  • 日本で脇の甘い政権が誕生し、韓国に譲歩することで問題解決を図ること
  • 韓国にまったく別次元の問題が降りかかり、問題自体が強制終了すること

ただ、このうち1については、この3年間の動きでもわかるとおり、自称元徴用工側は待てど暮らせど絶対に資産売却に踏み切りません。実際、換金が容易な三菱重工(の孫会社)の売掛債権の差押については、途中で撤回してしまったほどです(『【速報】自称元徴用工側が金銭債権差押を「取り下げ」』等参照)。

また、2についても、韓国で立候補を表明している大統領候補者のなかに、韓国が勇気をもって国際法を守るという方向に舵を切ろうとする指導者は見当たりませんし、むしろ「保守系」の候補者ほど、日本に対して譲歩を強硬に迫るのではないかという気がしてなりません。

さらに3については、日韓議連の河村建夫幹事長が引退したうえ、日曜日の衆院選でも立憲民主党などが議席を減らし、自民党が多少議席を減らしながらもそこそこの勝利を収めたという事情もあり、岸田文雄首相にとっては韓国に対して譲歩する必要はなおさら低くなりました。

これで、韓国に対して宥和的なことを主張しそうな政党が躍進すれば話はまた変わってきたのかもしれませんが、韓国に対する強硬路線は継続するでしょう(もっとも、岸田首相の姿勢に若干の不安もないではありませんが、これはまた余裕があれば別稿にて議論します)。

結局のところ、自称元徴用工問題についてはさらに長期化し、そのうちに「まったく別次元の問題」(たとえば米韓同盟消滅、米軍の韓国からの撤収に伴う韓国の国家体制の崩壊、あるいは徐々に進む日韓テーパリングなど)によって問題自体が強制終了(または自然消滅)する可能性が最も高いのです。

実際、すでに日本が米国とともに主導し、推進している「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)には韓国の姿は見えません。

【参考】FOIP

(【出所】防衛白書)

この期に及んで韓国企業との連携強化などと言い出している某社の経営者のセンスのなさにも驚きますが、むしろ、韓国が勇気をもってこの問題の解決に当たらないならば、日韓関係は自然消滅に向けての歩みを進めざるを得ないのではないかと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. だんな より:

    >この問題、そもそも論として「ありもしない歴史問題を韓国側が捏造して日本を糾弾している」、そして「1965年の日韓請求権協定に反する判決を下した」という、韓国の国を挙げた日本に対する「二重の意味での不法行為」です。

    朝鮮脳は、「日帝の韓国併合は違法ニダ」ですので、交わる所は無いでしょう。

    話がずれますが、「ホワイト国に戻すニダ」の話。
    韓国政府の対日通商官らが相次ぎ退職か 「政権の無理な要求に懐疑を育んだ」韓国紙
    https://korea-economics.jp/posts/21110102/
    韓国政府の日韓関係の本丸は、「ホワイト国に戻せ」です。
    それを交渉する、韓国産業部の担当者が名誉退職して、民間企業の役員になっているとの事。
    また
    >2019年にWTO(世界貿易機構)で日本の水産物輸入禁止措置のパネル紛争で逆転勝利を導いた事務官も産業部を去ったという。
    事で、もう交渉する人材が居ません。
    青瓦台と外交部が何を言っても、日本の経産省は、交渉する相手さえも分からないでしょう。
    という事で、文政権の間にホワイト国に戻す交渉は、もうあり得ないという話になります。
    青瓦台と外交部が、輸出規制についてなんか言っても、気にしなくて良いという事です。

    1. 匿名 より:

      経営者の無茶振りが酷すぎて
      現場の優秀なスタッフが退職するーあるあるですね。
      問題の本質は、無茶苦茶な一握りの政治家ではなく
      そういう政治家を選び続けている大多数の韓国人が原因なんですよねぇ

  2. 七味 より:

    ٩(。•ω<。)وピコーン

    自称さん側にたって・、企業からの謝罪を得るための現実的な方法を思いついたのです♪

    ①企業の株式を51%以上買い付ける
    ②株主提案で、息のかかった者を社長にする&自称さんに謝罪することを議決する
    ③謝罪を実行する

    これなら日本政府が拒否しても、企業からの謝罪を引き出せるんじゃないかな?

    ( -`ω-)✧ドヤッ

    1. 七味 より:

      三菱重工の時価総額は1兆円くらいなので、5000億円もあれば実行可能だし、謝罪したあとは買った株式を全部売れば、実質タダでできるのです♪

    2. カズ より:

      特定された企業が299社もあるのですから、現存企業の中でもっとも脆弱な組織を買収してからのことですね・・。

  3. がみ より:

    日本からならなに言っても条件反射で「反対」「拒絶」「諦めない」「何度でも」なんじゃないですかね?

    その習性を活用出来ないものか?

  4. 匿名 より:

    「日韓テーパリング」の次はどうなるのでしょうか? 関係が疎遠になった韓国は一層やりたい放題。また、他国のサプライチェーンにさっさと入るでしょう。学生時代に日本史で習った「百姓は生かさず殺さず」ではないですが、搾取するという観点ではなくバランスの観点から「韓国は生かさず殺さず」というのもありのような気がします。

  5. 宇宙戦士バルディオス より:

    『鳩山元首相、歴史問題で「日本が韓国人の心情を理解すべき」と主張=韓国ネット「また首相になって」』
    https://www.recordchina.co.jp/b884407-s25-c100-d0191.html
    >鳩山元首相は同日、駐日韓国大使館に設置された盧元大統領を追悼するための焼香所を弔問した。そこで「日本側に解決するべき問題がいくつかある」とし、「(日韓両国が)互いに歩み寄ることが必要だが、元徴用工問題や慰安婦問題においてだけでも日本側はもっと韓国人の心情を理解しなければならない」との考えを示したという。
     理解した結果、「もう付き合いきれん」とスコップを投げたのが今の日本人。
     ポッポには、是非これからも、あちこち活動して欲しい。但し「元民主党代表」の肩書で。

    1. ちかの より:

      宇宙戦士バルディオス様
      >スコップを投げた
      匙を投げるから、さらにスコップに進化ー? w
      座布団1枚進呈致します。

      1. 宇宙戦士バルディオス より:

         なお、憲法上の理由により陸軍を名乗れない某国陸軍もどきの組織では、スコップのことを、円匙(えんぴ)あるいは大円匙(だいえんぴ)と呼びます。

  6. 名無しの権兵衛 より:

    (北朝鮮)経済制裁を解除すれば、弾道ミサイル発射実験を中止する。
         経済制裁を解除しなければ、弾道ミサイル発射実験を進める。
    (韓国)日本企業が和解協議に応じれば、その間は現金化手続きを止める。
        日本企業が和解協議に応じなければ、現金化手続きを進める。
    (リスカブス)私の言うことを聞いてくれれば、手首を切るのを止める。
           私の言うことを聞いてくれなければ、手首を切る。
    ⇒以上三者の共通点は、要求事項と交換条件が釣り合っていないのに、本人は釣り合っていると思い込んでいることです。韓国も、最終的には北朝鮮と同じ運命を辿るような気がします。

    1. 七味 より:

      名無しの権兵衛様

      (韓国)日本企業が和解協議に応じれば、その間は現金化手続きを止める。
      (日本)ごめんなさいm(_ _)m

      (韓国)日本企業が賠償に応じれば、その間は現金化手続きを止める。
      (日本)(っ・ω・)っ【お金】

      (韓国)日本企業がお代わりに応じれば、その間は現金化手続きを止める。

      こうなるの目見見えてますよね♪

  7. 大袈裟 より:

    >万が一、いますぐ「日韓断交」のような極端なシナリオが実現しようものなら、常時数万人は韓国に滞在しているとされる日本人の身の安全はもちろんのこと

    国交断絶したぐらいで当該の在留日本人の身の安全が侵されるなんて大層なことが起こるのでしょうかね?
    てかそんな想定ができるような事例はいくつもあるんでしょうか?
    日本と台湾(中華民国)は国交断絶しましたけど当時の在台日本人は身の安全が侵されたでしょうか?
    台湾と国交のある国々は中共の圧力で国交の断絶を選んだところがいろいろありましたが、その中で在留台湾人の安全が脅かされた事例があるのでしょうか?

    在韓日本人が危険になるのはそれこそ本物の日韓全面戦争勃発した時ぐらいでしょう。

  8. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    韓国は自分が「弟の鳥」だと日本に思われていることを実感しているからこそ
    しきりに「韓国は兄の国、日本は弟の鳥」と言い張るわけだが
    日本が弟の鳥だとしたら、韓国は弟の鳥の飼い主ではなく、烏である

  9. しきしま より:

    テーパリングではなくシャットダウンで良いと思います。

    >「マジノ線」
    迂回されて無用の長物になるアレですね。

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