韓国が暗号資産大国なら、北朝鮮はその「窃盗大国」か

これほどまでに話がつながるとは、自分自身にも想像がつきませんでした。何の話なのかといえば、おそらく経済制裁で資金不足に陥っているであろう北朝鮮が、いまや米ドルの印刷にかわって目を付けているのが、サイバー犯罪なのかもしれない、という話題です。以前の『韓国ウォン、ビットコイン取引量で「世界3位」の衝撃』でも述べたとおり、世界的にも珍しい暗号資産大国が、38度線のすぐ南に存在しているからです。

北朝鮮に対する経済制裁と物価

実際のところ、北朝鮮に対する国連安保理の経済制裁は、効いているのか、いないのか――。

これについては、当ウェブサイトではかなり以前から議論してきたつもりです。

当ウェブサイトとしては、国連安保理が決議した2017年9月の『第2375号』や同12月の『第2397号』については、北朝鮮に対し、それなりの打撃を与えていることは間違いないとは考えています。

ただ、現実にはこれらの経済制裁から一部の事業が明示的に除外されていること、海上における「瀬取」と呼ばれる密貿易などが横行していることなども含めて考えるならば、経済制裁もそれなりに穴があることは間違いないでしょう。

ことに、『国連パネル「北朝鮮が暗号通貨3億ドル窃盗」等を報告』などでも触れたとおり、北朝鮮はここ数年、とくにサイバー空間における暗号通貨窃盗などの国際犯罪に積極的に手を染めているフシが見られます。

実際、わが国でも2018年1月に発生した「コインチェック窃盗事件」(『580億円窃盗事件:暗号通貨を金商法の対象にせよ』等参照)に関しては、その後、北朝鮮の関与説などが浮上しています(※異説もあるようです)。

このように考えると、2017年の安保理制裁がじわじわとボディブローのように北朝鮮経済を痛めつけ、とくに北朝鮮出身労働者の海外派遣が2019年以降ほぼ全面禁止になったこと、コロナ禍で観光収入が落ち込んだことなどが追い打ちをかけている可能性は相応にあるでしょう。

経済危機なのに物価が上がらないとしたら、その理由は?

もっとも、『「物資不足」なのに「物価安定」?北朝鮮経済の謎解き』や『住民から外貨紙幣奪う?北朝鮮当局の外貨不足深刻化か』を含め、当ウェブサイトでは「知的好奇心を刺激する話題」のひとつとして取り上げて来たのが、「北朝鮮の物価」という話題です。

国連安保理制裁が北朝鮮経済をかなり痛めつけているというのが事実であれば、北朝鮮では物価の高騰が発生していなければおかしい、という議論もあります(実際、過去の読者コメントでは、北朝鮮の物価が安定していることだけをもって「経済制裁は効いていない」と主張された方もいらっしゃいました)。

しかし、そもそもその北朝鮮物価情報自体が信頼できるのか、という議論は脇に置くとしても、経済がなかば崩壊状態であるにも関わらず、物価が安定しているという点については、理屈のうえでは説明は可能です。

物価とは「モノの価値をカネで測定した尺度」のことですが、それは同時に「カネの価値をモノで測定した尺度」のことでもあります。「コメ1キロ2000円」とは、「コメ1キロを円という通貨単位で測定したら2000単位だった」という意味であり、逆に、「1円はコメに換算して0.5グラム」、という意味でもある、ということです。

そして、経済学の鉄則上、「モノの価値」は需給で決まりますが、じつはこの「需給で価格が決定される」というのは、「カネの価値」に関してもまったく同じです。つまり、北朝鮮の紙幣自体の供給が貨幣需要に比べて不足していたとしたら、「カネ不足」という状況が生まれるのです。

だからこそ、仮に北朝鮮国内で極端な「モノ不足」が生じていたとしても、「カネ不足」がそれ以上に深刻であれば、物価は安定する(あるいはむしろ下がることもある)のです。

(※余談ですが、北朝鮮経済について論じると、「北朝鮮では市場経済が機能していないから自由主義経済の考え方は通用しない」などと批判なさる方もいらっしゃいますが、そうしたコメントは、社会体制としての自由主義と経済学の市場原理を混同した、まことに底が浅いものであると断じざるを得ないでしょう。)

以上より、経済を見る際には物価などの指標も大切ですが、科学の鉄則でもある「なぜ」がもっと重要でもあるのでしょう。

北朝鮮のハッキング資産を米検察が没収訴訟

さて、北朝鮮とサイバー犯罪という視点では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、こんな話題が掲載されていました。

米検察、北朝鮮のハッキング暗号資産没収へ…「資金洗浄犯罪者と共謀」

―――2021.10.19 14:42付 中央日報日本語版より

中央日報は米メディア『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』の報道を引用する形で、米ワシントン連邦検察が北朝鮮の暗号資産ハッキング関連犯罪収益に対する追跡を続けており、また、米連邦検察はここ数年間に発生した暗号資産取引所ハッキング犯罪の背後に北朝鮮を挙げた、などと報じています。

米検察当局が起こした、北朝鮮ハッカーによる違法収益と推定されるものが、また壮絶です。

中央日報によると、昨年3月時点で米検察が起こした没収訴訟は暗号資産口座が146件(当初113件)、これとは別に昨年8月にも追加で280件の暗号資産口座の没収訴訟を進めたのだとか。

ただし裁判所からマネロン犯罪の成立要件や没収の根拠などを明らかにするように求められたため、今度は「国連安保理の専門家パネルの報告書」(先ほど紹介したものでしょうか?)なども引用して再度訴状を提出したのだそうです。

北が南をロックオン

しかも、もっと驚くのは、この先の、こんな趣旨の記述です。

VOAによると、2018年末に韓国の取引所でビットコインやイーサリアムなど約2億3433万ドルにのぼる暗号資産を北朝鮮ハッカーに奪取され、翌年⑪月にも韓国のほかの暗号資産取引所が4850万ドル相当の被害を受けた」。

要するに、盗んだのは北朝鮮、盗まれたのは韓国、というわけです。金額にしておよそ3億ドル弱、といったところでしょうか。

この点、『韓国ウォン、ビットコイン取引量で「世界3位」の衝撃』などでも述べたとおり、韓国といえば、個人が金融機関などから借金をして株式や暗号資産などのリスク資産に投資をする、世界でも有数の「暗号資産大国」です。

しかし、実態は北朝鮮によるハッキング犯罪を許すという意味で、ずいぶんと規制が緩い国だという印象を受けてしまいます。

いずれにせよ、かつては「世界で唯一、米国外で米ドルの印刷所を持っている国」などと揶揄されたこともある北朝鮮にとって、暗号資産の世界は新たなフロンティアなのかもしれません。

読者コメント一覧

  1. ちかの より:

    おはようございます。
    要するに、暗号資産の横流し~?ですか。
    なるほど、韓国は「被害者ニダ!」アピールは出来るし、北とwin-win な新しい送金方法ですねー。

    1. 赤ずきん より:

      投稿しようと思ったら 全く同意見でした。

    2. イーシャ より:

      ちかの 様
      皆さん考えることは同じ ^^

  2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    暗号資産の大量窃盗は昔からその危険性が指摘されていた

  3. だんな より:

    ちかのさんのコメントの通りでしょう。
    韓国は、中朝の窓口。
    以下妄想です。
    韓国に北朝鮮工作機関が作った仮想通貨会社が有れば、資金が丸々北朝鮮に流れて行くでしょう。
    先月、韓国内で取引出来る仮想通貨取引所が、減る事になりました。
    WOW KOREAから
    韓国の仮想通貨取引所、「ビッグ4」以外は事実上全滅
    https://news.yahoo.co.jp/articles/94d5b32e45f274ee4328f9d330a2f37df4a3de66
    小さな仮想通貨取引所は、規制対応出来ずに無くなったようですが、そこの資金が何処に行くのか?、ちゃんと引き出し出来るのか?には、疑問が残ります。
    仮想通貨取引のメインの顧客は、「借金して投資をしている若者層」だと思いますので、蟻さん達の資金が抜かれる事になります。韓国政府は、一銭も出さずに、北朝鮮に資金供与出来るという、工作員大統領にはもってこいのやり方だと思います。

    話は変わりますが、文政権になってから若者層を経済的に圧迫(貧乏に)する、印象が有ります。
    若者を貧しくした方が、南北統一に便利なのかなぁ?。
    誰か分かれば、教えてください。

    1. イーシャ より:

      だんな 様
      若者窮の方が、「ヘル朝鮮より地上の楽園の方がよい」と洗脳し易いのではないでしょうか。
      個人的には、アリンコが繁殖能力の高いものから駆除されることを期待してしまいます。

    2. マスオ より:

      だんな様、私も妄想です。

      民衆が貧しい方が、左派は民衆を洗脳しやすく世論を誘導しやすい、とどこかで読んだことがあります。(どこかは忘れましたw)
      「貧困から抜け出そう!」を合言葉に支持を集めるそうです。

      しかし、彼ら民衆が貧困を抜け出すことはありません。貧困を抜け出すと左派は票を失うからです。

      所謂「飼い殺し」をするのが左派の常套だという事らしいのですが、貧しい若者は貧しい老齢になる可能性が高いと考えると、若者の貧困はこの路線の延長なのかもしれません。
      (その延長に南北統一があるのかもしれないです)

      1. なんちゃって より:

        どこかの政党も
        総中流

        貧民化を志向しておりますね

        1. マスオ より:

          なんちゃって様、私が面白いと思ったのは、党首討論会で、NHK党の立花さんが、れいわ新選組の党首の山本さんに「詐欺的な貧困ビジネス」って言ったことですw

          ご存じでしたら恐縮ですが、立花さん曰く、「奨学金をチャラにする」「消費税0%に引き下げる」「最低賃金を1500円以上に引き上げる」とし、『できもしない公約で生活に困った人からお金を集めている』と、痛いところを突いたところで、本当に生活困窮者を救う気があるのか、はたまた文字通り貧困ビジネスなのかと思ったことです。

          前の理論に基けば、れいわ新選組の山本さんは、貧困を救う気はなく、弱者の味方を気取る「貧困ビジネス」で合っていると私は思いました(笑)

  4. ねまき猫 より:

    たまに起きるパチンコ両替所の強盗みたいなもんか

  5. がみ より:

    北に廃人にされ実質殺されたオットー・ワームビアさんの御両親がアメリカ国内の裁判判決を経てユダヤ人金融ネットワークを部類稼働させて北の金融資産の差押えを続々と遂行中だそうです。
    武力に頼らずとも異議を唱え反抗することが出来る例かと。
    蓮池以外の日本の拉致被害者とも連携して欲しいものです。

    ところで中国や韓国で暗号通貨への締め付けが少なからず始まっていますが、中国はデジタル人民元を推進してもいます。
    デジタル人民元の流通のためだけに原発クラスの発電所がいくつ稼働しなければならないかと思うと嫌な感じです。

    米ドルを基軸通貨とするハードカレンシーの包囲と秩序を破壊すること自体が中国の至高命題になりつつあるのかもしれません。

    やはり中朝韓はさすが特別定年に扱って下にも置かない亜細亜の国と言われる特異性のある地域なんだなぁ。

    憲法変えなくても国際水路法で余裕で宣言出来る津軽海峡の領海宣言をとっととやって、露中北韓が勝手自由に通過出来ないようにして欲しいものです。

  6. カズ より:

    信用創造的に膨らませたボリュームのものを仮想通貨を介して送金する刹那には、韓国政府の懐は痛まなかったりするのかな?
    そして、ことの顛末はウヤムヤに・・。

  7. 愛読者 より:

    通貨が機能しなくなると,市場から商品が姿を消す,という現象はケインズ経済学でも説明できると思います。政府が市場価格を統制しているので,物価は上がっていないように見えますが,実際には政府の強制による公定市場価格による取引がごく僅かあるにすぎない,と考えたほうがいいでしょう。現実の取引は,特権層と商人の間の裏取引で,公定価格無視でおこなわれている,という報告もあります。
    北朝鮮の幹部への報酬は,現金より,欧米の高級品で支払われているでしょう。北朝鮮の現金よりそちらのほうが信用も価値もあるので。お金(ウォン)で物は買えない,というのが現実でしょう。
    北朝鮮は国家の秀才を集めてハッキングしているし,中国も国の秀才を集めてサイバー攻撃の研究をしています。薄給の公務員自衛隊での防御は難しいでしょうが,MicrosoftやGoogleが協力してくれれば強いかも。
    > 実態は北朝鮮によるハッキング犯罪を許すという意味で、ずいぶんと規制が緩い国
    法律の問題ではなく,技術力の問題です。韓国や日本の法律で北朝鮮を罰するわけにはいきませんから。日本も結構被害にあっているようです。

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