本稿ではＧ７に関連し、ちょっとした「こぼれ話」をいくつか紹介したいと思います。それらのなかでもとりわけ群を抜いて興味深いのは、韓国の『ＮＥＷＳ１』というウェブサイトに掲載された、「韓国は事実上のＧ８の仲間入りした」という趣旨の記事でしょう。いずれにせよ、危機にある文在寅氏がこれから退任までの間、どういう行動をとるのかについてはたの心配でなりません。

Ｇ７での菅総理の地味さ

『英Ｇ７サミット、日本にとっての「成果と課題」とは？』などでも紹介したとおり、英国・コーンウォールで開催されたＧ７首脳会合では、菅義偉総理大臣は英国、ドイツ、フランス、豪州、カナダの５ヵ国の首脳と会談を行い、別途、ジョー・バイデン米大統領とも打ち合わせを実施しました。

また、Ｇ７共同声明では、「自由で開かれたインド太平洋」（最近では、英語の “Free and Open Indo-Pacific” を略して「ＦＯＩＰ」と称します）を始め、日本が以前から主張してきたさまざまな内容（対中牽制、対北朝鮮牽制、台湾海峡安定、東京五輪など）が盛り込まれました。

菅総理、安倍晋三総理大臣と比べて「地味」な印象があるため（失礼！）、正直、ちゃんとＧ７をこなせるのかという不安もあったのですが、ふたを開けてみたら、「外交デビュー」としてはまずまずの及第点、といったところではないかと思います。

もちろん、国際的な首脳が集まる舞台という「絵」にしてみたら、安倍晋三、麻生太郎両総理の「偉大さ」がひときわ目立つ、というのもまたたしかなのですが、それでも個人的には、菅総理の安定の仕事ぶりについては有権者の１人として正当に評価したいと感じた次第です。

日韓首脳会談巡り「失礼がないよう挨拶（だけ）はしっかりした」

さて、今回のＧ７では、豪州、インド、南アフリカの３ヵ国に加え、東アジアからは韓国がゲスト国として招かれました。

ただし、事前に一部メディアで「開催される」との観測もあった「日米韓３ヵ国首脳会合」に加え、菅義偉政権発足後初となる日韓首脳会談については、いずれも開催されず、見送られました。文在寅（ぶん・ざいいん）韓国大統領とは、ほんの少しだけ、立ち話程度にあいさつした程度でした。

これについては日経電子版に、こんな記事が掲載されていました。

日米韓首脳会談「環境にない」　首相、元徴用工など挙げ

―――2021年6月14日 1:50付　日本経済新聞電子版より

日経によると、菅総理は現地時間13日（＝日本時間14日未明）、同行記者団との懇談で、「元徴用工や元慰安婦の問題が解決されていない」、などと指摘したうえで、「日米韓」、「日韓」いずれについても「国と国との約束が守られていない状況でその環境にはない」、と述べたのだそうです。

まさに、状況の形容詞としては、「バッサリ」という言葉が似合います。要するに、自称元徴用工・自称元慰安婦の問題で日韓関係を破壊したのが韓国側なのだから、韓国側がその状況を整理しない限りは、（今回は）会談を行うことはない、というのが菅総理の認識なのでしょう。

ただし、菅総理は文在寅氏のあいさつに応じたのですが、これについては「あいさつに来られて私も失礼のないようにあいさつした」と述べたのだそうです。

意訳すれば、「いちおう、あいさつ『だけは』ちゃんとしましたよ」、という意味でしょうか。

何というか、官房長官時代の「安定のガースー」を思い出す対応ですね。

日経にはまた、菅総理が「文在寅大統領が指導力を発揮し、問題をしっかり整理してほしい」と述べた、とも記載されているのですが、残り任期が１年を割り込み、事実上のレームダック状態となるなかで、「何をご無体な…」という感想しか持ちません。

「日本が会議をキャンセルした」＝聯合ニュース

いずれにせよ、日経電子版の記事が正しければ、もともと日韓間の諸懸案を作り出した韓国の側が、それらの諸懸案を放置している状態で、日本側が首脳会談に応じるつもりはない、というのが菅総理の認識であり、それはそれで正当なものでしょう。

ただ、日韓首脳会談が見送られた理由を巡っては、違う見解もあるようです。韓国メディア『聯合ニュース』（日本語版）に、こんな記事も発見しました。

Ｇ７での韓日会談開催合意　日本が一方的に取り消し＝韓国当局者

―――2021.06.14 11:52付　聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースは本日、日韓両国政府は首脳会談開催に合意していたにも関わらず、「日本が一方的に取り消したことが14日にわかった」と報じました。情報源は、例によって韓国政府です。

「韓国の外交部当局者によると、両国は11～13日に英南西部のコーンウォールで開かれたＧ７首脳会議の期間中、略式会談を行うことで暫定的に合意していた」。

そして、韓国政府側は「最初から開かれた姿勢で日本側の呼応を期待していたが、日本側が（韓国軍の）恒例の東海領土主語訓練を理由に、実務レベルで暫定合意していた略式会談に応じなかった」、などと述べているのだそうです。

どうでも良い話ですが、韓国政府の言い分をそのまま断定調で垂れ流すというのも、何だかとても違和感があります。

韓国政府には2018年12月の火器管制レーダー照射事件の際を含め、過去に何度も何度も、見え透いたウソをついて日本と世界を騙そうとした実績があります。そのウソツキ韓国政府の言い分をもとに、「日本が一方的に取り消したことがわかった」と断定されても、読者としては少々困惑しますね。

さらに、驚いたことに、聯合ニュースはこの日本の対応について、「過去から存在してきた問題を理由に首脳間対話をキャンセルすることは非常識な対応といえる」などと述べています。非常識なのは、このように報じる聯合ニュース自身でしょう。

ただし、事実として日韓首脳会談は開かれなかったわけです。

聯合ニュースは「韓国政府は両首脳の会談を実現させるため、相当な力を入れて来た」などと報じており、また、略式会談について「韓国は最後まで期待を捨てなかったようだ」、などとも述べています。

文在寅政権発足以来の４年余の期間、あそこまで日本を挑発しておきながら、日本との協力を求めるという姿勢にも驚きますが、日本の今回の対応も、文在寅政権の「実績」を踏まえたものと見るのであれば、あながちおかしな話でもないのでしょう。

「韓国は事実上のＧ８」＝韓国メディア

こうしたなか、本稿の「おおとり」（？）です。

韓国の『ＮＥＷＳ１』というウェブサイトに、ちょっと変わった記事を発見しました（話題を提供して下さったのは、匿名のコメント主様です。大変ありがとうございました）。

米バイデンと英ジョンソンの間、事実上の『Ｇ８』を誇示…これが大韓民国の今日の姿だ（総合）【※韓国語】

―――2021-06-14 02:02 付　ＮＥＷＳ１より

副題に「英連邦であるオーストラリア、インド、南アフリカ共和国を除けば、唯一の招請国が大韓民国だ」、などとあります。記事の書き出しを、日本語に意訳すると、こんな具合です。

「ムン・チェイン大統領はＧ７（主要７ヵ国）首脳会議に２年連続で招待され、主要国首脳らと肩を並べながら、事実上の『Ｇ８』の地位を全世界に誇示した」。

この文章がいわんとするところは、おそらく、拡大Ｇ７会合で文在寅氏の席がジョンソン英首相の右隣で、同じくジョンソン首相の左隣に座ったバイデン大統領を引き合いに、「米国と並んで議長国の隣に座るくらい地位が上がった」、ということでしょうか。

そして、今回招待された国のうち、「豪州、インド、南アフリカの３ヵ国は、すべて英国と密接な関係にある」ため、「韓国が実質的に唯一の招請国だ」、などと述べています。

「世界10位の経済水準を踏み台に、世界最高水準のＫ防疫や文化・市民意識などの韓流ブランドパワーを踏んで、事実上の『Ｇ８』と位置付けられた瞬間だった」。

また、現地時間12日に行われた記念撮影でも、最前列中央のジョンソン英首相の「右側に文在寅大統領が、左側にバイデン大統領が立った」、などとも大絶賛しています。

なんだか、とっても楽しそうですね。

また、これを受けて、韓国大統領府の朴洙賢（ぼく・しゅけん）国民疎通首席秘書官は、次のようにも述べたのだそうです。

「文在寅大統領の席は大韓民国の今日であり、私たちの後世の大統領の席は、より栄光のある場になっていくことを確信する。今回のＧ７の最も大きな成果のひとつは、大韓民国の過去が積み重ねてきた『現在の達成感の確認』と、『未来の自身に対する自信』だ」。

その後、文章はダラダラとさらに続くのですが（たとえば新型コロナウィルス感染症を巡る「Ｋ防疫」で「韓国は世界の模範国となった」、「ノーマスクで握手をした場面は全世界に象徴性を誇示した」など）、この手のポジティブさは少しだけうらやましい気もしないではありません。

もっとも、「見た目」は控え目であるものの、共同声明などにおいて大きな成果を上げた日本と、さしたる成果も見当たらないわりに「ジョンソン首相の隣に立った」だ、「世界がＫ防疫を羨んだ」だといった「自信」だけの韓国を比べると、やはり非常に大きな違いを感じずにはいられない、というわけです。

文在寅さんにとっても良い思い出となったのではないでしょうか？

いずれにせよ、韓国メディアの楽しげな報道ぶりを眺めていると、まことにおせっかいながら、文在寅氏にとっても、大変に良い思い出となったのではないかと思います。

主催国の首相の隣に座らせてもらったこと、日本の総理大臣にあいさつだけは返してもらえたこと、「Ｋ防疫」で世界が韓国を羨んでいるという【幻想】に浸れたこと…。

文在寅氏の大統領退任後の行き先が監獄なのか天国なのか地上の楽園なのかは存じ上げませんが、どれも、来年５月に退任後、もしかすると二度と娑婆（しゃば）に出て来られないかもしれない文在寅さんにとっては、本当に楽しかったのではないでしょうか。

もっとも、ご本人が監獄行きを全力で回避するために、これから全力で「任期末期を迎える韓国大統領のいつもの定番」である本格的な反日行動に手を染めるのかどうかがたのし心配で心配で、個人的には食欲もわかず、本日夜も、せいぜいご飯３杯とステーキと竹島エビのフライとカニクラブケーキ、デザートの台湾パイナップルくらいしか喉を通らないのではないかと懸念している次第です。