X
    Categories: 文芸

歴史は繰り返す:「新発見・万葉集は韓国語だった!」

本稿では、今まで隠されていた、大変な秘密を暴露したいと思います。上代日本語で書かれているとされる万葉集は、じつは、韓国語で解読可能であり、しかも新羅の「郷歌」だったのです!(な、なんだって~!?)…という驚きの新説(珍説)に接してしまいました。

2021/04/18 20:15追記

本文中の誤植を修正しております。

野平俊水氏の20年前の名作

日曜日の昼下がり、書架を整理していると、今から約20年前に刊行された、1冊の本を再発見しました。野平俊水氏が執筆した、『韓国人の日本偽史』という書籍です。

【参考】『韓国人の日本偽史

(【出所】アマゾンアフィリエイトリンクより)

初版第1刷が2002年5月、つまり今から約19年前に刊行されたという、非常に古い本ですが、驚いたことに、現在になって読んでみても、内容自体はほとんど陳腐化していないのです。

当時は「日韓ワールドカップを機に、隣国である韓国のことに興味を持った」という人もいたでしょうし、また、時期的に、『冬のソナタ』が日本でも話題になるより前でもあります。韓国のことをわざわざ調べようとする人が、今日と比べて多かったとも思えません。

そんな時代に刊行された本書のコンテンツは、第1章の『韓国人による文化伝達偽史と侵略偽史』、第2章の『日韓合作による「偽史」』、第3章『歴史歪曲の法則』など、まさに時代をかなり先取りしたものでもあります。

というよりも、韓国メディアで今日出てくる、日本に対するルサンチマンに満ちた社説、コラム記事などを読んでいると、韓国国内の反日のパターンは20年経ってもまったく進歩がないと思わざるを得ません。

ただし、まことに残念ながら、アマゾンでの評価はそれほど高くありません。

本書が刊行されたのがアマゾンの初期だったということもあり、レビューも2000年代前半のものが中心で、正直、これらのレビュー自体も、明らかに内容を読んでいないレビューや、具体的な指摘がなく感覚だけで書かれたレビューなども多く、正直、「低い評価」は信頼に足るものではありません。

しかし、レビューの評価が低いためでしょうか、本書を現代風にアレンジして再刊する、といった話は聞きませんし、おそらく書店でももう手に入らない可能性が高いでしょう。もし読者の皆さまが図書館に行かれる機会などがあれば、ぜひとも本書を検索し、ぜひとも手に取って読んでいただきたいと思う次第です。

「万葉集は日本語だった」、「な、なんだって~!?」

さて、本書の中で、興味深い記述はたくさんあるのですが、そのなかでもとくに面白いのは、第2章第8節の『日韓合作偽史⑧ 万葉集は韓国語である』(同著P126~)です。

野平俊水氏によると、「万葉集は韓国語である」という主張は、1980年代から90年代はじめにかけ、日韓双方でベストセラーになったのだそうであり、「一時期は書店の歴史書コーナーがこの手の本に占領されていた」としています。

これらは、個人的にも記憶に残っています。1990年代のベストセラーでもある『トンデモ本』シリーズでも取り上げられていたからであり、とくに「上代日本語を韓国語(しかも酷い場合は現代韓国語)で解読するらしい」という部分が、まさに噴飯物だったと思います。

それはさておき、野平氏によると、こうした「万葉集=韓国語」説の代表格が、韓国の作家・李寧熙(り・ねいき)氏による『もう一つの万葉集』(1988年、発行元は池田書店、出版元は文芸春秋)という書籍なのだそうです。

また、この李寧熙氏の著書を熱心に支持していたのが、発行元の「池田書店の前社長・池田菊敏氏」(※肩書は原著通り)で、池田氏は『週刊朝日』1989年10月6日号で、こんなことを述べたのだとか。

あるとき、ソウルで、李さんに、『万葉』には読めない歌がある、と座興で話したんですよ。すると、たちどころに解いて見せたじゃないですか。これはいけると、その場で執筆を頼んだのがこれです。彼女の分析は四百首ほどで終わってますが、これがこじつけなら彼女は天才ですよ」。

もちろん、この手の「上代日本語を韓国語で読む」というのは、言語学的にはメチャクチャな解釈です。しかし、出版の世界では、「売れたものが勝ち」という風潮があったことはたしかであり(※これは今でもあまり変わらないのかもしれませんが)、実際に同著はよく売れたのでしょう。

かくて歴史は繰り返す

なぜ唐突に、こんな昔の話を持ち出したのかといえば、韓国で『日本の万葉集は郷歌だった』という書籍が、韓国で出版された、という話題を見かけたからです。

ブックラブが『日本の万葉集は郷歌だった』を出版【韓国語】

―――2021/04/15 10:30付 『イッシュー・イン・ファクト』より

韓国の『イッシュー・イン・ファクト』というウェブサイトによると、問題の書籍の主張は、日本の万葉集は古代の新羅の「郷歌」だったとするもので、この「郷歌」の解析に関する研究結果を応用した結果、万葉集4516編の多くは「新羅郷歌」だったことが判明したのだそうです。

リンク先記事の記載の一部を日本語で要約しておきましょう。

  • この本は、1970年代からの新羅郷歌の研究結果をもとに、金●●先生が新たに発見した新羅郷歌を適用して、日本の万葉集の難読句の解読を試みたものだ(※●●部分は人名と思われますが、うまく訳せなかった部分です)
  • 万葉集は朝鮮半島から日本に渡った人々と天皇と天皇家を中心に活動して作られた作品であるが、今回の解読結果では、日本の天皇家の極秘事項と韓日古代史が綴られていることがわかった
  • 著者は「万葉集は新羅郷歌解析法によって完全に解釈が可能」としたうえで、「この解析法を韓日どちらの国が先に受け入れ、今後の韓日古代史の解釈の主導権を握るのか、成り行きが注目される」としたうえで、「日本に解釈の主導権を奪われた広開土陵碑の悲劇を繰り返してはならない」と述べた

…。

「万葉集は朝鮮半島からの渡来人や天皇家を中心に作られた」云々の時点で、なんだか脱力してしまいます。万葉集には「防人歌」など、「読み人知らず」、つまり今風に言えば一般人の作品が多数含まれている事実を無視している時点で、なんだか脱力してしまいます。

ちなみに記事によると、著者はソウル大学を卒業し、1970年代以降、郷歌の研究を続けており、北東アジアの古代文字解読と「郷万葉コラムニスト」(?)として活動されているのだそうです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

この点、「郷歌」について、ちょっと調べてみたのですが、どうもよくわかりません。日本語版だと、『ウィキペディア』というウェブサイトくらいしか、説明が見当たらないのです。

しかも、この『ウィキペディア』の説明も、「新羅時代の朝鮮語の歌謡。25首が現存し、新羅の言語を知るための重要な資料である」といった具合に、非常に漠然としたものです。

ただ、25首しか現存しないという「郷歌」とやらを使い、4500首を超える和歌を解読するという試みは、言語学の専門家ではなくても「かなり無理がある」と思わざるを得ません。

ちなみに、一般にトンデモ本と呼ばれているものは、どんな国であろうが、どんな時代であろうが、コンスタントに発行され続けるものなのだと思います(著者私見)。したがって、本書が「現代韓国人の対日コンプレックスの証拠だ」と断言するのは、やや尚早でしょう。

しかし、まさか今から20年前の書籍を現時点で読んでもまったく色あせていないとまでは思っていませんでした。

いずれにせよ、書架の古い書籍を漁るのも、たまには良いものですね。

新宿会計士:

View Comments (69)

  • なるほど、「郷歌」のほうがやたら少ないからこそ、他国のものに当てはめるのも容易なわけですね。

    まあ、当てはめて偶然の一致があると楽しいのはよくあることです。ただ、そういうのは素人、在野の歴史家たちが趣味でやるもので、それ以上の意味はありません。

    ただ、韓国にはまともな歴史学や考古学が全くないので、そういった在野の楽しみの研究レベルがこの国の歴史学のすべてだったりするんですよね。

    ちなみにこういったトンデモものについてすら、日本の方がずっと凌駕して膨大な量になります。ただし、その上位にしっかりした歴史研究や過去からの蓄積もあるので目立ちませんが。

  • ムーなブックスとか、衝突する宇宙とか、トンデモ本は分かって読む分には詭弁理論のこじつけ方を知れたりトンデモな結論へ進むファンタジーを読めたりして結構面白いです。

  • 「手搏図」も抑えておきましょう。「酢」のように何にでも使用できます。

  • 何十年か前に万葉集が朝鮮語で読めるとの本が出版され、著者は女性で韓国の国会議員とかのふれこみだったと記憶しています。
    手に取って読んだところ下品下劣な訳でとても読むに堪えない代物でした。
    題名も作者も記憶していませんが、日本を馬鹿にしていることがよく分かりました。

  • 祭りで使われる日本語の「わっしょい」は朝鮮語の「わっそ」らしいです。
    その「わっそ」は「来た」という意味らしく、古代朝鮮人が各種文化を日本に伝えるために来たということで、大阪の四天王寺で1990年以降「四天王寺ワッソ」祭りが開催され、地元自治体や財界が協力してNPO法人が設立されました。
    アンミカ氏等の在日コリアンの人たちが毎回多数参加し、古代朝鮮人から日本にもたらされた文化に感謝し、韓日友好のための大イベントになっています。

    以上、妄想が制度化された祭りにまで発展し、人々が自然に洗脳されてしまった危機的状況の説明でした。

      • りょうちん様

        「わっしょい」が本当に朝鮮由来の言葉だと信じている大阪人は少ないでしょうが、韓国と仲良くなるんやったらええんちゃうん、というのが私の知る大阪人の反応です。

        そういった寛容の心が事態の悪化をもたらすのでしょうね。

        ちなみに、各地の自治体の協力で、最近は韓国のハイキングコース「オルレ」が従来の由緒ある古道に上書きされるように設定されはじめ、古い案内標識が外されて大極旗のようなのぼりに置き換わっているようです。
        そのコース上の古寺などにも朝鮮半島からの由緒が記載されはじめ、そのうち日本は完全に古代朝鮮半島の一部であったとの主張が出てくるのでしょう。

        自治体職員の韓国びいきは困ったものです。

  • もし韓国人の願望の「日本は百済の末裔」が本当なら、
    言語や書物にかなりの程度、影響が残って無いと成立しないですけどね
    なのに、全く無いって何?

    宗主国側()が日本に王子を人質を送ってるって何?
    宗主国側()の王様に倭人がいるって何?
    宗主国側()がいつも侵攻されてて、その逆は皆無って何?
    宗主国側()に属国()タイプの古墳が残ってるって何?

    古代から朝鮮半島は日本と比べ、寒冷・乾燥地で人口が少なく、
    日本より優越した時期なんて皆無だと思います

    • 根拠は?ですが 1万年以上前 縄文人が朝鮮半島南部にも住んでいたが 北方勢力に押されて(嫌気がさして) 日本列島にひきこもった という学説も有るようです。[縄文人 朝鮮半島]でググると見つかります。

      • いつもお世話になっております。

        匿名様 
        朝鮮半島南部・済州島から九州北部まで、縄文・弥生時代同一文化圏と
        する論文が多く出ております。
        朝鮮半島南部に日本様式の全ぽ後円墳があり、日本由来古墳だと埋め戻すか
        ブルで破壊しているようです。(任那の名残)
        又、奈良時代の税金の一部に挑戦地名鮑があります。

        • 結局 Y染色体・mtDNAからも 歴史、文化的にも大きく異なるため 完全な異邦人(違法人)なのに なまじ顔つきが似ているため かえってこじれるのでしょうね。

      • 匿名様

        御返信ありがとうございます。
        縄文時代の事なら、書かれた通りの可能性は、充分あると私も思っております
        私が書いたのは、歴史をある程度書かれ、残っている時代以降では、
        例えば「百済の遺民が当時の日本の支配階級」などという事は考えられないという事です
        むしろ単に日本への入植を許されただけでしょう

        そもそも当時の中華は、(現在と全く違って)世界のスーパー先進圏であり、
        三韓も中華から流れて来た者達が主導して作った国だと思います
        大和王朝でさえ、中華の遺民、或いはそれと大和・河内辺りの豪族との連合政権の可能性があると思います

        「半島から文化が伝わった」と言いますが、伝えたのは楽浪郡・帯方郡に居た中華の先進的で現地の支配階級の人間でしょう、王仁博士の様に(この人物も実在したか分かりませんが)

      •  確か、半島南部の古代人骨を調査した話だったかと。
         何かで見たか読んだかしたのですが情報源を思い出せず、検索しても見つかりませんでした。
         なので、以下はウソ書いてるかもです。

         朝鮮半島南部において、古代人骨に当時の縄文人の特徴が見られる。
         その特徴はその前にも、そののちにも半島人骨には見られない。
         縄文人が古代の一時期において半島進出していた可能性がある。
         少なくとも、縄文人と同じ骨格特徴と文化を持った人類が、一時期ながら半島南部に居た可能性が高い。
         といったようなものだったかと。

         であれば、百済のルーツは半島に渡った日本人という可能性もあり、「日本人は百済の末裔」という話は必ずしも全面的な間違いではないとも考えられます。
         ただし、百済人というか百済国のルーツが渡来日本人(縄文人)という話になりかねず、当時から植民地みたいな感じで、彼らにとっては都合悪そうですね。

         上記を仮定として、なぜ縄文人が半島から撤退して、その後逆に流入した半島人が弥生人となって日本人化したのか。
         なんとなく、近代における日本と半島の関係と被って見えなくもないような。

    • 百済王朝が古大和語を遣っていたとすれば可笑しくないですね。
      百済の王族が大和に来ていきなり高級官僚に任命されたりしてるんですから。同じ言葉を話していたのではないでしょうか。
      百済王朝公用語が王国民と同じ言葉であったと断定も出来ません。
      ロシア王朝の公用語はフランス語であったとも言われてます、そんな関係じゃ無かったでしょうか。大和でもハヤトの言葉は能く通じなかったようですし。

      百済王朝の支店が大和朝廷だとも、大和の出張所が百済だったとも、どっちも考えられるでしょう。稲作の伝播を考えると後者の可能性が高いと思いますけど。

      • 下のほうにも書きましたが、多くの人が現在の国境線が古代から続いているように考えているのが不思議です。民族についても大人しい定住農耕民族ばかり考えていて、馬や船で広域を常に往来している武器を持った支配層の存在を無視している気がします。5世紀ころは、現在の国境線とは無関係に、南朝鮮と日本(東北部をや北海道を除く)が一体となった「倭」と呼ばれる地方があって、支配層の民族はほぼ同じ言語で話ができた、と考えるほうがいいと思います。ただし、中国の地方政権である高句麗の支配者層とも、似た言語だったようです。農民とは別の民族だった可能性も高いです。定住農耕民族は、最初は被支配民族だったでしょうから、その言語は現在の標準語には、ほとんど反映されていないと思います。隼人は農耕民族だったのでしょうか。

        • 愛読者 様
          国境線の件同感です。
          そもそも当時韓国なんて国は無く、当然韓国語なんて言葉も無かったんですがね。
          ハヤトについては海の民で、ヤマトが山(陸?)の民という説もあるようです。何れにしても異民族と言って良い関係だったのでしょうね。

  • オレオレ詐欺の注意文句で言えば、「朝鮮人の起源主張は、全て嘘」。
    半万年の歴史が嘘なんだから、後は推して知るべし。

  • トンデモ本と言えば、昔 太平洋に大和大陸が出来てそれが日本の領土となる未来を予言した本がありました。
    子供の頃の私はそれを、日本の未来スゲーと興奮して読んだ記憶があります。
    韓国のそれは、日本の皇室は元々半島からのものだ、桜は半島起源だ、茶道も剣道も寿司も何でも、世界に評価されるものは全て韓国が起源だというのは コンプレックスの裏返しでしょう。
    あんなスゴイものが、日本で出てくる訳ない。それらは全て韓国が教えたから出来たんだ。という見方と、両班は下のモノの全てを奪っても差し支え無しとおもってるのか。
    日本人は、それらを笑って見てるのもいいのですが、いつの間にか何も知らない外国人が韓国の嘘を本当と勘違いする可能性があります。テコンドーの様に。
    奴等の広報能力を甘く見てはいけない。

    • sey g 様

      >奴等の広報能力を甘く見てはいけない。

      同感です、KPOPの韓国芸能事務所が豊富な資金力でアメリカの芸能事務所を買収し始めているようであり、そのうちハリウッドにも進出するでしょう。

      アメリカ人も中国なら拒否感を示しますが、韓国ならウエルカムのようですし、日本と韓国を同じように見ているようです、中国とは違って信用できる国だと。。

  • 歴史を捏造しまくってるので、もはや本当の朝鮮歴史は分からないしょうね。知るつもりもないと思いますが。

1 2 3