当ウェブサイトではときどき議論する話ですが、外交・国際関係を議論するのは外交官や学者の特権ではありません。なぜなら、国というのも結局は人間の集合体であり、外交も「人間関係の延長」で議論するのが妥当だからであり、その意味では、むしろビジネスマンという感覚は外交を議論するのに役立つと思うからです。最近、少し時事的な話題が続いてきたのですが、ここで改めて、「外交」について深く考えてみたいと思います。

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「外交」は難しくない!

当ウェブサイトを以前からご愛読いただいている方であれば、当ウェブサイトでときどき、「外交もしょせんは人間づきあいの延長に過ぎない」と申し上げていることをご存知かと思います。

「外交」という言葉を聞くと、「なんだか国際政治学者や外交官など、ごく一部の限られた専門家が安全保障だのODAだの社交だのについて議論する高度な世界だ」と勘違いする人が多いのではないかと思いますが、これは完全に間違いです。

もちろん、外交とは「国と国との関係」のことであり、スケールが非常に大きな話であることは間違いありません。しかし、それと同時に、国といってもしょせんは「人間の集合体」に過ぎません。そして、古今東西、人間の考えることなど変わらないわけですから、外交も「人間づきあいの延長」に過ぎないのです。

どうしてそういうことを考えるようになったのかといえば、外務省や経産省などのご出身の著名人のなかには、日本の国益を外国に売ることを外交だと勘違いしているとしか思えない人が、非常にたくさんいらっしゃることに気付いたからです(あえて実名は出しませんが…)。

また、新聞やテレビで偉そうに「外交」について論じている人を眺めていると、どうも金融規制や輸出管理、会社法など、社会の「基本的なしくみ」を理解せず、非常にアサッテなことを議論しているな、と感じるような議論に出会うこともあります。

そこで、本稿ではあらためて「外交」に関する当ウェブサイトなりの理解について、説明しておきたいと思う次第です。

人間関係の基本

人間関係の2類型

さて、当ウェブサイトの読者の皆さまには、高校生、大学生、専門学校生などの学生の皆さん、民間企業で働くビジネスマン、役所で働く公務員、専業主婦、仕事を引退された方など、それこそさまざまな立場の方がいらっしゃると思います。

自分自身の人間関係に照らして考えるならば、多くの方にとっては

  • 家族(両親、配偶者、子供など)、親戚
  • 仕事付きあい(職場の同僚、上司、部下など)
  • 学校付きあい(先生、同級生、先輩、後輩など)
  • 仕事・学校を越えた個人的な友人

など、さまざまな関係があるはずです。

これらの人々とどう付き合うのかを考えていくと、家族・親族を除けば、人間の結びつきには、究極的には2種類しかありません。

それは、「利害関係があるかどうか」と、「ウマが合うかどうか」、です。

利害関係のお付き合いとは?

まず、「利害関係のお付き合い」とはいったい何でしょうか?簡単にいえば、「その相手と付き合わなければいけない状態」のことです。

たとえば、職場では、仮に上司が嫌な人であっても、無視するというわけにはいきません。相手の指示にはちゃんと従わなければなりませんし、場合によっては緊密に報告、連絡、相談をしなければなりません。また、接客業などであれば、どうしても嫌な人間を相手にしなければならないこともあるでしょう。

(※ちなみに著者個人的には、それまで勤めていた会社を辞めて起業したことで、いちばん良かったことは「上司がいなくなったこと」だと思っています。)

また、学生の場合、仮に嫌な先生がいたとしても、単位をもらうためには我慢してその先生に教えてもらわなければなりませんし、同じクラスに嫌な同級生がいたり、同じ部活に嫌な先輩がいたりしても、多くの場合は、我慢して付き合う必要があります。

では、なぜ嫌な相手と付き合わなければならないのでしょうか?

それは、その相手と付き合うことであなたが「利益」を得るからです。

仕事の場合だと、究極的には「カネを稼ぐ」ことが目的です。給料をもらうためには嫌な上司ともうまく付き合っていく必要がありますし、昇格するためには、人事上、上司から評価してもらわなければなりません。学生の場合だと、卒業するためには単位が必要です。

つまり、「カネを稼ぐ」「人事上、評価される」「単位をもらう」というのは、いずれも、「何らかの利益を得る」と言い換えても良いと思います。いわば、「嫌な人と無理やり付き合う」のも、「何らかの利益を得る」ことが最大の目的です。

そして、日本は「奴隷社会」ではありませんから、もしどうしてもその相手が嫌ならば、その相手と付き合うのをやめる、という選択肢もあります。会社の場合だと退職すれば良いですし、学校の場合だと退学すれば良いのです(あるいは、必修単位でなければその単位を落としてしまえば良いのです)。

ウマが合うお付き合いとは?

これに対し、「ウマが合うお付き合い」とは、「カネなどの利害関係がなくても仲良くお付き合いできる関係」のことです。具体例としては、たとえば共通の趣味を持っている友人であっても良いですし、昔の学校や職場で仲良くなり、今でも付き合いが続いている、という関係であっても構いません。

この「ウマが合うお付き合い」とは、「利害関係のお付き合い」とはまったく性質が異なります。なぜなら、「嫌ならば相手とのお付き合いをやめればよい」、という関係でもあるからです。

読者の皆さまにも、今でも親しく付き合っている、昔の学校の恩師や学友、昔の職場で仲良くなった元上司や元部下、先輩・同僚・後輩などがいる、という方は多いのではないでしょうか。そして、カネなどの利害関係が絡まない分、「ウマが合うお付き合い」は長続きする傾向にあります。

ホンネが言い合える関係はどっち?

この「利害関係」と「ウマが合うかどうか」という2つの軸は、非常に重要です。

もっといえば、「相手に自分のホンネをそのまま伝えても問題がないかどうか」、という点から、両者は厳格に区別する必要があるのです。

たとえば、Aさんは職場で、何だか苦手なBさんが上司になってしまったとしましょう。この場合、AさんはBさんに「苦手意識」を感じるだけではなく、何とかしてBさんとうまく付き合っていかなければ、自身の給料も上がらず、昇格することも難しいかもしれません。

そんなとき、同じ職場で「ウマが合う」Cさんという人がいたとします。そのとき、Aさんは「私は何となくBさんが苦手で…」と誰かに相談したいと思えば、Aさんが相談する相手はBさん本人ではなく、Cさんではないでしょうか?

これを一覧図にしておきましょう(図表1)。

図表1 人間関係の一覧図
区分ウマが合う相手ウマが合わない相手
利害関係がある相手①とても重要な相手②嫌でも付き合わなければならない相手
利害関係がない相手③利害得失を超えて付き合える相手④無視して良い相手

(【出所】著者作成)

まず、「①利害関係があり、ウマも合う人」がいたとしたら、それはそれでハッピーなことですし、それこそ自分の人生の中で、もっとも大切にしなければならない部類の相手でしょう。「仕事で素晴らしい上司に出会った」、「学校で自分とウマが合う先生が担任になった」、といった人は、本当に幸運です。

一方、先ほど例に挙げた嫌な上司、嫌な先生のように、「②ウマが合わないけれども利害関係を考えたら付き合わなければならない」という相手もいます。おそらく多くの人が「人付き合いに悩んでいる」と感じるのは、得てしてこの②の類型の相手でしょう。

これとは逆に、「③利害関係はないけれどもウマが合う相手」というのは、その相手と付き合うことで何らかの金銭的・物質的利益を得るわけではないにせよ、利害得失を超えて付き合える相手であり、ホンネを言い合える、とても重要な相手でもあります。

なお、最後の象限にある「④利害関係もないしウマも合わない相手」なる人がいたとしたら、そんな人と付き合う必要などありません。放っておけば良いと思います。

外交はまったく同じ

基本的価値と戦略的利益

以上、人間関係でいうところの「利害関係」だの、「ウマが合う、合わない」だのといった表現は、いずれもざっくばらんとしていて、「こんなざっくりしたコトバが外交にどう関係するのか、わからない」と感じる方も多いでしょう。

  • 利害関係のお付き合いとは?…仕事、学業などの都合で、その相手と付き合わなければいけない状態のこと。
  • ウマが合うお付き合いとは?…カネなどの利害関係がなくても仲良くお付き合いできる関係のこと。

しかし、実は、私が考える「外交論」とは、まさにこの「利害関係」と「ウマが合うかどうか」という、人間関係の考え方を、そのまま応用したものではないかと思うのです。

国家というものも、しょせんは人間の集合体です。

ということは、国(たとえば日本)が他の国(たとえばアメリカ)と付き合う時にも、その国と「付き合う必要があるかどうか」(利害関係があるかどうか)と、「友人として付き合うに値するか」(ウマが合うかどうか)という、2つの評価軸があるはずなのです。

この2つの評価軸のことを、難しい言葉で「基本的価値」、「戦略的利益」と呼びます。

といっても、別に難しい考え方ではありません。

「基本的価値」とは、利害得失を越えて相手の国と仲良くできるかどうか、という評価軸であり、「戦略的利益」とは、「国益のためなら相手国と付き合わなければならないかどうか」、という評価軸のことです。

  • 戦略的利益とは?…国益を最大化するために、その国と付き合わなければならない状態にあること。
  • 基本的価値とは?…利害得失を越えて、その国と分かり合える関係にあること。

この2つの評価軸は、非常に重要です。

日本にとっての戦略的利益

では、「国益」とはいったい何でしょうか?

わかりやすくいえば、「平和と繁栄」のことです。

台湾のように、中国大陸の政府が「いつか攻め込んでやるぞ」というファイティングポーズを取ってくる敵対国に直面している状況だと、いわば、自分たちの生命や財産が常に脅かされているという状況にあるといえます。

また、北朝鮮のように、生まれてくる階級を間違えると、どんなに努力しても絶対に豊かになれないという国もあります。せっかくこの世に生まれて来るのなら、しっかり努力すれば豊かに暮らせるような国の方が良いに決まっています。

つまり、「平和と繁栄」とは、「国民みんなが安全かつ豊かに暮らしていけるような社会を実現すること」であり、これをもう少し専門的な言葉で、「平和」は「安全保障」、「繁栄」は「経済的利益」と言い換えることができるでしょう。

たとえば、日本には石油、天然ガスなどの自前資源がないとされており、エネルギーはどこかの国から買って来なければなりません。このため、石油や天然ガスの輸送路(シーレーン)の安全な通行を外国の軍隊に妨害されると、日本はそれこそ国家存続の危機となります。

さらには、シーレーンを邪悪な国が抑えてしまい、日本に対して「領土を寄越せ、さもなくば日本に石油が入らない状態にしてやるぞ」などと脅して来たとすれば、これなどは「安全保障」と「経済的利益」の両方を侵害されている状況にほかなりません。

そして、非常に残念な話ですが、日本の周囲には国際法を破る国だらけです。中国やロシアの場合、日本との境界線を頻繁に侵犯して来ますし、北朝鮮は工作員を日本領土内に送り込み、日本国内で無辜の日本人を誘拐して北朝鮮に連れ帰り、監禁し続けているという犯罪者集団です。

さらに、最近まで韓国は日本の友好国だと信じている人は多かったと思いますが、その韓国にしたって、島根県竹島を不法占拠し続けていますし、自称元徴用工判決問題や慰安婦問題で日本の経済的検疫を犯してきます。

へたに日韓通貨スワップなど結ぼうものなら、通貨安競争を仕掛けられ、日本の虎の子の産業を韓国によって潰されてしまうのです。

このように考えていくと、日本にとって守らなければならない戦略的利益とは、まずはきちんと国益を守ること――具体的には、ルールを守らない犯罪国家、ウソツキ国家からの窃盗行為を防ぐこと、危険で邪悪な軍事独裁国家との軍事衝突などを防ぐことです。。

日本にとっての基本的価値

もう1つ重要な考え方が、「基本的価値」です。

私たち日本国民にとっては当たり前の話ですが、日本は民主主義国であり、また、言論の自由、経済活動の自由などが保証された「自由主義社会」です。

日本国憲法にはさまざまな問題点があることも事実ですが、やはり、日本国憲法の優れている点は、自由主義、資本主義、民主主義、法治主義、人権尊重にあります。また、日本国憲法が掲げる平和主義について、「理念としては」素晴らしいと考えています。

(※もっとも、日本国憲法には国と国民を守るという基本的な規定が欠落しているため、この欠陥については早急に修正する必要があることは当然のことですが…。)

しかし、この「自由主義」だの、「民主主義」だの、「法治主義」だのといった価値観は、万国に通用するものではありません。

たとえば、私たちの近隣諸国の例でいえば、北朝鮮にはそもそも自由主義も民主主義も法治主義もありません。そこにあるのは独裁者・金正恩(きん・しょうおん)とその一味を讃えることしか許さない、おそるべき全体主義です。

あるいは、隣国・中華人民共和国の場合、共産党の一党独裁が国としての方針でありますし、最近になって習近平(しゅう・きんぺい)国家主席の個人思想(いわゆる「習近平思想」)が憲法に書き込まれたという話も聞きます。

その中国は、昨今の武漢コロナ騒動を巡っても自由で透明な情報開示を拒んでいますし、『どうせ法治国家でない中国、無理に法を作らなくても…』でも触れましたが、西側諸国のルールを採用している香港の一国家二制度を事実上潰すような暴挙に出ています。

いずれにせよ、少なくとも中国、ロシア、韓国、北朝鮮が日本と「基本的価値」を共有していないことは明白でしょう。

日本にとって「ホンネ」が言える国とは?

ただ、南北朝鮮はともかく、中国はアジアの「地域大国」であり、日本の「国益」を実現するためには、否が応でも関わらなければなりません。この「関わり方」を巡っても、論者によって異なるでしょう。個人的には、日本には次のような思考があると考えています。

  • ①日本は中国と対決するのを避け、中国に全面降伏し、中国の植民地になる
  • ②中国は変わらないという前提のもと、距離を置きつつ限定的にお付き合いする
  • ③憲法を改正して武器を持って中国と対峙し、中国の民主化を図る

(※余談ですが、この①~③だと、個人的には②のアプローチがもっともしっくりくると思いますし、①③はあり得ないと思いますが…。)

ただ、先ほどの図表1では、人間関係で「ホンネ」が言い合える関係は、「利害関係」ではなく「ウマが合う関係」だったはずです。そこで、図表1に倣い、これを「国と国との関係」に置き換えたものが、図表2です。

図表2 国家関係の一覧図
区分基本的価値を共有する相手基本的価値を共有しない相手
戦略的利益を共有する相手①とても重要な相手②嫌でも付き合わなければならない相手
戦略的利益を共有しない相手③利害得失を超えて付き合える相手④無視して良い相手

(【出所】著者作成)

まず、「①戦略的利益と基本的価値を両方とも共有する国」があったとしたら、それはそれでハッピーなことですし、それこそ国家単位でもっとも大切にしなければならない部類の相手でしょう。

一方、「②基本的価値は共有しないけれども戦略的利益を考えたら付き合わなければならない」という相手もいます。この場合、嫌でも付き合わなければならないわけであり、また、多くの国が「外交上の悩みがある」と感じるのは、得てしてこの「価値を共有しないが利益を共有する相手」のことでしょう。

さらに、「③戦略的利益は共有していないが基本的価値を共有する相手」というのは、利害得失を超えて付き合える相手でもありますし、また、ホンネを言い合える、とても重要な相手でもあります。

最後に、「④価値も利益の共有しない相手国」は、外交上、お付き合いする価値はありません。

具体的当てはめ

①基本的価値、戦略的利益の両方を共有する国

そこで、最新の状況をもとに、①~④を具体的な国と対応させておきましょう。

まず、①の象限に当てはまる国といえば、真っ先に思い浮かぶのは米国です。経済的にも軍事的にも重要な友好国であり、日本が米国を必要とするのと同じく、米国は日本を必要としています。まさに理想的な関係です。

(※もちろん、本当の文化的な点で日米が完璧にわかり合えるというものではないかもしれませんが、少なくとも「ウソをつかない」、「約束を守る」などの価値観の大切さについては共有しているはずです。)

ただし、米国だけが①の象限に当てはまる国であるべきではありません。やはり、地球上に心強い友邦を増やしていくのは外交の鉄則です。

こうしたなか、『安倍総理に核心突かれ逆ギレ=中国のわかりやすい反応』でも触れましたが、安倍晋三総理大臣は5月25日の新型コロナウィルス感染症に関する記者会見で、WSJのピーター・ランダース(Peter Landers)東京支局長の質問に対し、次のように答えました。

  • 米国は日本にとって唯一の同盟国であり、日本は同盟国として、また、自由や民主主義や基本的人権、法の支配といった基本的な価値を共有する同盟国として、米国と協力をしながら、様々な国際的な課題に取り組んでいきたい
  • 全世界に甚大な影響を与える感染症に対しては、自由、透明、迅速な形で情報や知見が共有されることが重要であり、日本は自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的な価値を共有する国々と手を携えながら、中国も含め、国際社会がよって立つべき原則を築き上げていく

…。

なかなか力強い発言です。

要するに、日本にとっては戦略的利益よりも基本的価値を共有する相手の方が大事だ、と、ハッキリ断言したのです。この安倍総理のセンスはなかなか優れていると個人的には思います(※もっとも、経済界には国益より自社の利益が大事だという経営者もたくさんいるのは事実ですが…)。

いずれにせよ、「海洋の航行の自由」という、日本にとって死活的な利益と、「自由・民主主義」などの基本的価値を共有すべき国は、米国だけでなく、英国、フランス、豪州、ニュージーランド、台湾などに広げていくべきでしょう。

②戦略的利益のみ共有する国

一方で、日本が基本的価値を共有していないが、どうしてもお付き合いしなければならない国の典型例が、中国とロシアの2ヵ国です。

中国は日本領である尖閣諸島周辺海域への侵犯を日常的に行っていますし、ロシアは戦後のドサクサに紛れて不法占拠した樺太、千島列島をいまだに日本に返そうとしません。いずれにせよ、どちらの国も日本とは価値観を共有できない国であることは間違いありません。

ただ、それと同時に、中国、ロシアを「同時に敵に回す」ことは、日本外交にとってはタブーです。

第二次世界大戦に敗北した要因は、さまざまな人がさまざまに指摘していますが、やはり、とくに終戦間際では中国、ロシア、米国の3ヵ国を同時に敵に回す状況を作ったことについては、反省しなければならないでしょう。

したがって、中国、ロシアの両国とは、表面上はニコニコしながら握手しつつ、テーブルの下で思いっきり足を蹴っ飛ばすくらいでちょうどよいのではないかと思います。

とくに、ロシアに奪われたままの北方二島(千島+樺太)については、平和交渉で返って来るとは思えません。結局のところ、もし戦争によらずにこれらの領土を取り戻すならば、ロシアという国自体を衰退させるよりほかに方法はないのです。

日本は国家が存在する限り、北方領土を取り返すチャンスは必ずやって来ます。そのときに備えて、日本はとにかく国力(経済力)を維持・拡充することが先決なのです。

③基本的価値のみ共有する国

さて、「戦略的利益は共有していないが、基本的価値を共有する国」というものがあったとすれば、日本にとってはそのような国も大切にすべきでしょう。ただ、考えてみれば、日本の場合はほぼ全世界と貿易を行っており、「日本にとって利益を共有していない相手」というものは、ほとんど存在しません。

敢えて言えば、欧州のなかの輸出大国・ドイツは、日本と自由主義、民主主義などの価値を共有している(かに見える)国ではありますが、「利益」を共有しているのかといえば微妙です(いや、そもそも「緊縮財政原理主義国」であるドイツと「価値」自体も共有しているかどうかという問題もありますが…)。

④価値も利益も共有していない国

そして、日本にとって価値も利益も共有していない国とは、北朝鮮や韓国がその典型例でしょう。

北朝鮮と友好関係を持ったとしても、あまりにも価値観が違い過ぎることに加え、中国、ロシアとの勢力争いに巻き込まれる可能性があるなど、却って日本の国益を毀損しかねない相手国の典型例こそ、北朝鮮だと思うのです。

また、最近だと韓国も、日本と利益を共有しているのか怪しいものです。

とくに当ウェブサイトでは最近、「朝鮮半島生命線説」については間違いだと考えています。

朝鮮半島生命線説とは?
  • ①地理的に近い朝鮮半島が日本の敵対勢力に入れば、日本の安全保障に深刻な脅威をもたらす
  • ②だからこそ、日本はあらゆるコストを払ってでも、朝鮮半島を日本の友好国に引きとどめておかなければならない

この「朝鮮半島生命線説」のうち、①については正しいのですが、②については必ずしも正しいとは言えません。韓国や北朝鮮がウソツキで約束破りの常習国であることは事実ですが、それは彼らが悪いわけではなく、彼らがそういう性質の国だということに過ぎません。

そして、外交の世界においては、相手を変えるよりも、「相手が変わらない」ことを前提に、いかに自国の国益の最大化を図っていくかが重要なのです。

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永続的なものではない

もっとも、全世界の国が①~④にスパッと割り切れる、というものでもありません。

たとえばインドの場合は日本と同じ民主主義国であり、中国を牽制するという観点からは、地政学的にもきわめて重要な相手国ですが、それと同時にインドはカースト制度など前近代的な遺物が残っている国でもあり、「100%、日本と基本的価値を共有しているのか」といわれれば、微妙です。

また、東南アジア諸国連合(ASEAN)の多くは民主主義国であるとともに、日本にとっては戦略的利益を共有する相手ですが、約束を平気で破るインドネシア、半ば独裁体制のシンガポール、共産主義のベトナムなどもあるため、「100%、価値を共有している」とはいえません。

さらには、日本と同じ自由民主主義国でありながら、国際法違反の判決を放置し、日本の自衛隊哨戒機に向けて火器管制レーダーを向けて来た韓国の場合、そもそも価値も利益も共有する相手国ではない、という可能性を疑うべきでしょう。

このように考えていけば、「世界のどの国が日本と価値、利益を共有しているのか」、「その関係は永続的な物か」という点については、じっくりと考えるべきであり、これこそまさに「ウェブ評論」の醍醐味でもあるのだと思うのです。

TPP+東アジア版NATO

さて、先ほどの『どうせ法治国家でない中国、無理に法を作らなくても…』のタイトルは、ジャーナリストで優れたチャイナ・ウォッチャーでもある福島香織氏がJBプレスに寄稿した次の論考を紹介しました。

香港「国家安全法」の衝撃、習近平が暴挙に出た理由/香港の一国二制度が終わる日

中国の全人代(全国人民代表大会)の最終日の5月28日、いよいよ「香港特別行政区における国家安全保護に関する法律制度」、通称「香港版国家安全法」「香港国安法」が可決される。<<…続きを読む>>
―――2020.5.28付 JBプレスより

この論考の末尾には、次のような記述があります。

私のひそやかな願いとして、もし国際金融都市で自由都市である香港が消滅するのであれば、台湾が香港を吸収する形で香港の役割を肩代わりできるようにはならないだろうか。米国や英国、日本、EU、オーストラリアあたりが本気で協力すれば、台湾を正式メンバーとして組み入れた国際社会の枠組みを再構築することも可能だと思うのだが、どうだろう。

個人的には、香港が国際金融都市かつ自由都市でなくなるのかどうかについては、もう少し見極めが必要だと思いますが、台湾が自由・民主主義を愛する国際社会の構成員となり、価値と利益を共有する壮大な国際共同体を構成するという考え方には、強く賛同する次第です。

とくに、さしあたって台湾をTPPという「経済同盟」に招き入れ、将来的に東アジア版NATOを創設したあかつきには、自由と民主主義を愛する東アジア・太平洋諸国でこれを構成するということを、そろそろ日本は本気で検討しなければならないのではないでしょうか。

※本文は以上です。

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  • 2020/06/26 11:00 【時事|外交
    イージス・アショア配備中断、河野太郎氏が丁寧に説明 (41コメント)
  • 2020/06/26 08:00 【時事|韓国崩壊
    「蚊帳の外」にいたはずの日本に「逆ギレ」か?=韓国 (49コメント)
  • 2020/06/26 05:00 【金融
    いまこそ確かめたい、「財政再建=増税」論の大間違い (69コメント)
  • 2020/06/25 17:00 【数字で読む日本経済|金融
    【速報】家計が相変わらず一千兆円超の現金預金を保有 (18コメント)
  • 2020/06/25 12:15 【時事|金融
    韓国政府が外国為替平衡基金債券発行へ=韓国メディア (15コメント)
  • 2020/06/25 08:00 【日韓スワップ|時事|韓国崩壊
    CMIMでなぜか「支援受ける気満々」=韓国メディア (7コメント)
  • 2020/06/25 05:00 【マスメディア論
    産経記者「共同通信は毒水を流すインフラ屋」と苦言か (25コメント)
  • 2020/06/24 12:30 【時事|韓国崩壊
    韓国が「輸出規制」と騒ぐこと自体、日本の脱韓を促進 (23コメント)
  • 2020/06/24 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/24(水) (98コメント)
  • 2020/06/24 10:30 【時事|外交|金融
    日本が香港の金融業を誘致:課題もあるが着眼点は秀逸 (15コメント)
  • 2020/06/24 08:00 【時事|経済全般
    「PCR検査を全国民に実施せよ」を数学的に論破する (53コメント)
  • 2020/06/24 05:00 【金融
    多国間通貨スワップ「CMIM」増額などは見送られた (12コメント)
  • 2020/06/23 16:30 【金融
    トルコが中国との通貨スワップを実行し人民元を引出す (14コメント)
  • 2020/06/23 11:11 【読者投稿
    【読者投稿】在韓日本人が写真で見る「現在のソウル」 (30コメント)
  • 2020/06/23 10:00 【時事|国内政治
    安倍総理は消費税と憲法争点に解散総選挙に打って出よ (23コメント)
  • 2020/06/23 08:00 【韓国崩壊
    意識だけ先進国?信頼を踏みにじる韓国が払う「対価」 (27コメント)
  • 2020/06/23 05:00 【時事|経済全般
    産経「日中往来制限の長期化により中国で不良品頻発」 (15コメント)
  • 2020/06/22 17:45 【時事|国内政治
    入管への抗議デモは筋違い 「出国の権利」を行使せよ (18コメント)
  • 2020/06/22 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/22(月) (81コメント)
  • 2020/06/22 11:45 【時事|韓国崩壊
    日韓関係「自然消滅」論を裏付ける韓国メディアの記事 (20コメント)
  • 2020/06/22 08:00 【マスメディア論|時事
    河井夫妻逮捕という「不祥事」なのに支持率が上昇の怪 (22コメント)
  • 2020/06/22 05:00 【韓国崩壊
    韓国メディア「日本の対韓制裁は殴るフリだけで効く」 (34コメント)
  • 2020/06/21 12:00 【経済全般
    「戻ってきてほしいトップは台湾」=訪日外国人観光客 (38コメント)
  • 2020/06/21 05:00 【韓国崩壊
    なぜ「日本は韓国に一本取られた」と勘違いするのか (65コメント)
  • 2020/06/20 15:00 【時事|韓国崩壊
    【補遺】韓国で国産化したフッ化水素は5Nに過ぎない (69コメント)
  • 2020/06/20 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/20(土) (78コメント)
  • 2020/06/20 09:00 【マスメディア論
    世論調査不正問題、むしろ焦点は「他社の対応」では? (27コメント)
  • 2020/06/20 05:00 【経済全般
    韓国メディア「日本の輸出規制で対日貿易赤字幅縮小」 (26コメント)
  • 2020/06/19 11:30 【時事|経済全般
    入国制限の緩和は4ヵ国からスタート 台湾・香港は? (24コメント)
  • 2020/06/19 09:00 【金融
    日欧韓で全体の8割占める=米FRBドル為替スワップ (8コメント)
  • 2020/06/19 08:00 【時事|韓国崩壊
    WTO提訴する韓国は「グループB」にすら値しない (19コメント)
  • 2020/06/19 06:00 【経済全般
    テレビ局「今すぐ事業をやめて解散した方が儲かる」? (17コメント)
  • 2020/06/19 05:00 【時事|韓国崩壊
    韓銀「韓米通貨スワップ延長は市場状況を見て決める」 (11コメント)
  • 2020/06/18 12:12 【時事|韓国崩壊
    運転席理論は幻想!この難局を韓国はどう乗り切るのか (55コメント)
  • 2020/06/18 11:00 【時事|国内政治
    「ネズミも逃げ出す泥の船」と化しつつある立憲民主党 (13コメント)
  • 2020/06/18 08:00 【時事|経済全般
    米系投資ファンド「日本の地上波テレビに将来性なし」 (7コメント)
  • 2020/06/18 06:00 【韓国崩壊
    日本政府、韓国に輸出規制など経済制裁の発動は可能か (15コメント)
  • 2020/06/18 05:00 【マスメディア論|時事
    不要なのはコメンテーターか、テレビ局そのものなのか (31コメント)
  • 2020/06/17 12:30 【日韓スワップ|時事|金融
    国際競争力で日本を上回る相手国に通貨スワップは不要 (27コメント)
  • 2020/06/17 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/17(水) (122コメント)
  • 2020/06/17 11:00 【時事|国内政治
    山尾志桜里議員:「肥溜め」→「三角コーナー」へ移籍 (32コメント)
  • 2020/06/17 08:00 【時事|外交
    北朝鮮による事務所爆破と金正恩危篤説はつながるのか (40コメント)
  • 2020/06/17 05:00 【経済全般
    【総論】経済制裁「7つの類型」と「5つの発動名目」 (3コメント)
  • 2020/06/16 22:30 【時事|外交
    【速報】「北朝鮮が開城連絡事務所破壊」は権力承継? (22コメント)
  • 2020/06/16 15:00 【時事|国内政治
    毎日新聞によると大串博志氏も「#」と発音したらしい (14コメント)
  • 2020/06/16 11:11 【時事|韓国崩壊
    非上場株式の売却を「時限爆弾」と呼ぶ韓国メディア (17コメント)
  • 2020/06/16 08:00 【韓国崩壊
    「約束破り」の常習国家が日本に「約束を守れ」と要求 (36コメント)
  • 2020/06/16 05:00 【時事|国内政治
    コロナ禍と不法滞在、そして「強制退去違反罪」の創設 (10コメント)
  • 2020/06/15 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/15(月) (72コメント)
  • 2020/06/15 11:00 【時事|韓国崩壊
    韓国で「資産現金化でも日本の経済報復に耐えられる」 (105コメント)
  • 2020/06/15 08:00 【韓国崩壊
    相次ぐ韓国の自爆、日本が「エサ」与えなくなったから (34コメント)
  • 2020/06/15 06:00 【マスメディア論|時事
    NHKにとっては企業倒産よりも受信料収入の方が大事 (12コメント)
  • 2020/06/15 05:00 【時事|韓国崩壊
    北朝鮮の軍事行動示唆発言に感じる「不自然さ」の正体 (38コメント)
  • 2020/06/14 11:30 【時事|国内政治
    足を引っ張る野党とメディア、まったく休まぬ安倍総理 (37コメント)
  • 2020/06/14 09:00 【時事|韓国崩壊
    「輸出規制」巡る一般読者の反応のレベルは総じて高い (17コメント)
  • 2020/06/14 05:00 【国内政治
    テレビ見る人ほど安倍総理を「信頼できない」と考える (37コメント)
  • 2020/06/13 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事通常版 2020/06/13(土) (88コメント)
  • 2020/06/13 08:00 【時事|経済全般
    まだ間に合う?中韓に対し「輸入国」に転落する前に… (42コメント)
  • 2020/06/13 05:00 【マスメディア論
    新聞社説のブログ化、そして相次ぐ虚報がもたらすもの (23コメント)
  • 2020/06/12 14:14 【時事|韓国崩壊
    毎日新聞社説「日韓両国指導者は失ったもの直視せよ」 (33コメント)
  • 2020/06/12 11:35 【日韓スワップ|時事|韓国崩壊
    「真の友人」なら、もう日韓スワップを結んでいるはず (24コメント)
  • 2020/06/12 11:00 【時事|金融
    日本が6割、韓国が3位に浮上=米ドル為替スワップ (5コメント)
  • 2020/06/12 08:00 【時事|経済全般
    PBデザイン騒動は消費者がローソンを愛している証拠 (17コメント)
  • 2020/06/12 05:00 【経済全般
    中韓との往来断絶長期化なら日本経済にも影響は生じる (14コメント)
  • 2020/06/11 17:00 【時事|外交
    日本が入国を認める相手国に中韓台港米は含まれない? (15コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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